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護憲=自立国家

   右派の基本的な図式は、愛国主義VS反日である。しかしこの愛国主義には、絶対的と相対的の間に様々な色合いの違いがある。

 愛国主義の行きすぎを危険視する穏健な愛国主義もあれば、ほとんど宗教に近いものまである。1990年頃には冷戦の終焉ということもあって、イデオロギーの終焉などということも言われていたが、それどころか、今では、愛国主義イデオロギーが幅を利かせるようになっている。

 そのことを示しているのが、「五十嵐仁の転成仁語」で批判されている『毎日新聞』の岩見隆雄氏の「転向」である。それによると、岩見氏は、むかしは護憲であったが、情況や大衆の意識変化を見て、自立国家となるために改憲が必要だと考えを改めたという。かれは、愛国主義意識の広まりは、自立国家を要求しており、それには「押しつけ憲法」の改憲が必要だという愛国主義イデオロギーに「転向」したのである。

 問題は、この自立ということである。岩見氏は、「アメリカの51番目の州」と言われるような対米従属を断ち切るためには、「押しつけられた憲法」を改憲することが必要だというのである。しかし、アメリカの憲法にない9条2項を持っていることは、この規定がアメリカ合衆国憲法に明記されない限り、「アメリカの51番目の州」にはなりえないということを意味している。もちろん前文のところもだ。イラク侵略戦争を強引に仕掛けて世界から孤立し、占領への抵抗に苦しんでいるアメリカが、日本国憲法を受け入れて、改憲して、アメリカ合衆国の一員にむかえる可能性はない。

 しかし、逆に、「普通の国」の憲法になれば、アメリカ合衆国との統合あるいは一体化の障害は減るわけである。あるアメリカの元高官は、日本はNAFTA(北米自由協定)に参加すべきだと言っている。つまり、9条2項があるから、自立が守られているとも言えるのだ。時代状況の変化とは、「押しつけ」という性格が強かった占領から半世紀以上たった現在では、こういうことである。自立国家たりえるには、アメリカが統合しにくい憲法を持つことも重要だということだ。

 ところが、五十嵐氏も指摘するように、現在の小泉自民党の改憲は、日本の歴史や伝統を強調した中曽根元総理の前文案を、小泉首相が直接指示して削除してしまったように、アメリカとの一体化、親和性を示すことに重きが置かれており、自立に向かう改憲ではなく、「アメリカの51番目の州」により近づく改憲なのである。

 こんな日米一体化、アメリカへの統合を促進する改憲を、日本の自立国家化と錯視していることが、岩見氏の文章にも現れているのであり、こうした混乱を正さないといけないというのが五十嵐氏の批判であり、それはもっともな意見である。

 「押しつけられた」ことばかりを強調していると逆に余計に「押しつけられる」という逆説的な事態になる。それが、現在の改憲論議の特徴であり、それが時代状況の違い、意識の変化がもたらした新しい情勢なのである。それがわからないのが、古い頭で、新しい情勢に対応している大新聞の古いところだ。

 護憲の方が、自立国家たりうるというのが現在の特徴なのである。

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