« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »

2006年7月

中東事態-7月29日

 29日、イスラム教シーア派武装組織の拠点から、イスラエル軍が撤退した。これについては、態勢建て直しのためだと伝えられている。このことは、ある程度は、イスラエル軍の作戦がうまくいっていないことを表しているのだろう。

 同日、イスラエル高官は、ヒズボラの即時武装解除を求めないと述べ、停戦条件で、柔軟な姿勢を示した。おりしも、双方の停戦合意後の国連憲章第7章にもとづく国際部隊派遣を盛り込んだ国連安保理決議案が、フランスから提示されるというタイミングであった。もちろん、即時停戦は、アメリカ・イスラエルの望むところではなく、これにはアメリカが抵抗することが予想される。

 イスラエル空軍の空爆で、南部のカナで、民間人避難民多数が死傷した。イスラエルは、同地域を戦闘地域として、避難するように呼びかけていたと述べた。多くは障害を持つ子供たちだったという報道もあり、犠牲になったのは逃げ遅れた人々だった可能性が高い。国連はこうして逃げ遅れた人々を避難させるための三日間の人道停戦をイスラエルに求めたが、イスラエルは拒否したばかりである。

 イスラエルを再訪問したライス国務長官は、笑顔でオルメルト首相との会談にのぞんだ。笑顔だったのは、ライス氏とブッシュ政権とイスラエルの今回の作戦が思い通りに進んでいると思っているからだろう。しかし、イラク政策について、誤報を平気で報告したCIAなどの情報機関の情報の正確性は信用できる水準に回復しているのだろうか? 確実な情報に基づいてライス氏の判断が形成されているのかどうか、疑わしいものだ。

 レバノンのシニョーラ首相は、停戦がなるまでライス氏とは会わないことを表明し、国民に対して、侵略者イスラエルへの徹底抗戦を呼びかけた。

 オーストラリアでは、イスラエルを非難し、即時停戦を求めるデモ隊が、イスラエル支持を表明した首相が乗った車を一時取り囲み、抗議した。ベルギー進歩的ユダヤ人協会の会長が、イスラエルの軍事攻撃を非難し、即時停戦を訴えた。氏は、シオニストとユダヤ人は違うと述べている。他方で、アメリカのワシントン州シアトルでのイスラム教徒によるユダヤ人施設での死者を出した乱射事件は、シアトルのユダヤ人4万人、イスラム教徒4万人の間に衝撃を与えたとNHKが伝えた。

 アメリカのテレビ・ニュースも新聞も連日、レバノンでのイスラエルの攻撃による犠牲者の姿を取り上げ、報道している。イギリスの新聞も、ブレア政権内の閣僚らの意見が分裂していることやロンドンなどでの即時停戦を求める反戦デモの様子などを伝えている。

  イスラエル空爆で避難民が死傷 レバノン南部

   レバノン・ティール(CNN) レバノン南部カナ市内で30日午前、民間人の避難所として使われていた4階建ての建物にイスラエル軍のミサイルが着弾した。ロイター通信は、死者が少なくとも40人に上り、うち23人が子どもだったと伝えた。レバノン国内では、子ども27人を含む50人が死亡との報道もある。

 レバノン軍関係筋は、建物に女性や子どもを中心に約60人が避難していたと述べた。また、緊急対策当局者がアラブ首長国連邦の衛星テレビ局アルアラビーヤに語ったところによると、これまでに15人の遺体が収容され、推定50人ががれきの下敷きになっている。捜索救助活動は重機不足が足かせとなり、進んでいない。治安当局者はCNNに対し、死亡したのは20─40人と述べた。

 現場で遺体収容にあたった赤十字スタッフによると、建物内に避難していた子どもの多くは身体障害者だったという。

 一方、イスラエル軍のダラル報道官はCNNに対し、カナがイスラム教シーア派民兵ヒズボラのロケット弾発射拠点となっていたと述べた。カナからはナハリヤを含む西ガリラヤにロケット弾が打ち込まれていたとされる。イスラエル軍は現場周辺が戦闘地域だとして、ラジオやビラで住民に避難を呼びかけていた。イスラエルのペレツ国防相は同軍に対し、事件の調査を指示した。

 ヒズボラは報復の意向を明言。また、レバノンの首都ベイルート市内の国連施設には、事件に抗議する数百人のデモ隊が乱入し、建物のガラスを割るなど暴徒化した。(7月30日CNN)

 レバノン空爆で重油流出、地中海の汚染深刻
 
 【ベイルート=柳沢亨之】イスラエル軍の攻撃が続くレバノンで、空爆を受けた火力発電所から1万5000トンに上る大量の重油が漏れ出し、地中海岸沿岸が約80キロにわたって汚染される深刻な事態となっている。

 首都ベイルートの「アルラムレ・アルバイダ」公共海水浴場。「白砂」を意味する砂浜が、真っ黒に変わり果てていた。重油のにおいが鼻を突く。魚の死骸のそばで、黒い油にまみれた瀕死のカニが足をもがいている。

 重油が漏れ出しているのはベイルート南方30キロのジイエ火力発電所の燃料庫。14、15両日に空爆を受けた。被害はシリアやキプロス、トルコにまで広がる勢いで、国連環境計画(UNEP)は30日、「停戦後に専門家を派遣する」との声明を発表したが、肝心の停戦の見通しは立っていない。(7月30日『読売新聞』)

 「即時戦闘中止」を要求 仏が安保理決議案提示

 【ニューヨーク30日共同】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの戦闘をめぐり、フランス国連代表部は29日夜、紛争当事者に「即時戦闘中止」を要求、双方の合意に基づく停戦成立後、国連憲章七章に基づく安全保障理事会決議で承認された国際部隊を展開させるよう求める決議案を安保理各国に提示した。複数の安保理筋が明らかにした。

 米英両国首脳が28日、七章に基づく国際部隊の早期派遣を盛り込んだ決議採択を求めたことを受けた措置。安保理は今週、レバノン情勢をめぐる緊急の外相級会合を開く方向で調整しており、開催の場合はフランスの決議案をめぐる突っ込んだ議論が交わされそうだ。(2006年07月30日『東京新聞』)

 即時武装解除求めず イスラエルが軟化か

 【エルサレム29日共同】イスラエル外務省高官は29日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘終結の条件として即時武装解除は求めないと述べた。ロイター通信が伝えた。武装解除を強く求めていたイスラエルが姿勢を軟化させたとみられる。ライス米国務長官は同日、再びイスラエルを訪問。国際部隊のレバノン南部への早期派遣や武装解除問題について協議する予定で、レバノン情勢沈静化に向けた仲介外交を再開した。

 ライス長官は同日夜、イスラエルのオルメルト首相と会談し、国際部隊派遣の根拠となる国連安全保障理事会決議の内容などを話し合う予定。決議案採択に向けた重要課題の一つである武装解除問題でイスラエル側が現実的な姿勢を示せば、一定の前進が図られる可能性も出てきた。

 外務省高官は「現段階でのヒズボラの武装解除を求めているわけではない」とし、国際部隊の任務に武装解除は含まれなくてもよいと言明。ヒズボラを国境地帯から遠ざけ、シリアやイランからの武器流入を阻止することを国際部隊に求めると述べた。

 長官はオルメルト首相らに対し、2004年9月の安保理決議に基づく「永続的な和平構築」を目指していると強調、攻撃停止を促す見通し。

 長官はレバノンも訪問しシニオラ首相らと会談、ヒズボラの拠点がある南部へのレバノン軍展開を国際部隊が支援する考えを伝達。ヒズボラと太いパイプを持つ国民議会のベリ議長らを通じ、国際部隊派遣実現の協議を行うとみられる。(2006年07月30日『東京新聞』)

  イスラエル軍、ヒズボラの拠点から撤退

 【エルサレム=三井美奈】イスラエル軍は29日、レバノン南部のイスラム教シーア派組織ヒズボラの重要拠点、ビントジュベイル村に展開していた大部分の部隊を撤退させた。

 同軍は「当初の計画通り」と説明したが、ヒズボラのゲリラ戦を前に態勢立て直しを迫られたとの見方も強い。

 イスラエル軍は25日に「ヒズボラの首都」と呼ばれる同村を包囲、地上作戦の最大の焦点になっていた。同軍報道官は29日、本紙に「部隊は移動したが、ビントジュベイルにも一部駐留している」と述べた。

 イスラエル軍はこれまで、レバノンでヒズボラ兵200人以上を殺害したとしているが、ヒズボラ側は死者は30人余りだと反論している。AP通信によると、国連監視員は、ヒズボラ戦闘員は南部一帯で約800人にのぼると見ている。

 一方、ヒズボラはイスラエル側に1日約100発のロケット弾を発射し続けており、AP通信は、この国連監視員が「ヒズボラへの武器供給は止まっていない」と述べた、と報じた。(2006年7月30日1時43分  読売新聞)

| | コメント (0)

レバノン情勢 EUと米英の対立が深まる

 イスラエルの非道な民間人への大量無差別攻撃が続いている。報道によると、イスラエル軍は、クラスター爆弾や白りん爆弾などの人道的に問題視されている兵器を使っているようだ。レバノン側の死者は公式に440人を超えている。イスラエルが、この攻撃の口実とした自軍兵士拉致は2名、死者8人であった。これらはいずれも戦闘員である。国際人道法は、民間人を攻撃することを制限しており、国連副事務局張がレバノン侵攻時に指摘したとおり、イスラエルは国際人道法に違反している。

 イスラエルは、おそらくは、アメリカが、「テロリスト」には国際人道法は適用されないとして、グアンタナモ収容所などで、収容者に対してジュネーヴ条約を適用してこなかったのをまねて、「テロリスト」であるヒズボラには、国際人道法は適用されないと考えているのだろう。シオニスト・イスラエルの神権体制では、トーラー(ユダヤ教の戒律や教え・とくにモーセの戒律)が法の基礎とされている。それは国際人道法の考え方とはとてもことなるものである。もちろん、イスラエルは国連加盟国だから、国際法を知らないわけがない。それを知りながらのイスラエルの国際法を踏みにじる行為は、アメリカに支えられているのである。

 この間、イスラエル側からは、国際人道法や国連についての公式な言及が聞こえてこない。あるのは自衛権に基づく攻撃だという自己弁護である。しかし、パレスチナ自治政府の自衛権をこれまで踏みにじり続けてきたことにはまったく触れていない。イスラエルは、ハマスとヒズボラは、「テロリスト」であり、テロからの自衛のためには、民間人も攻撃してよいと考えていることを行動で示しているのである。

 しかし、ハマスは、PLOは独裁だ、独裁はよくない、民主選挙をしろとアメリカなどから言われて、選挙をしたところ、圧倒的多数のパレスチナ人から支持されて、政権の座に着いたのである。ところが、政権をとったとたんに、ハマスは「テロリスト」だから、支援できないと経済支援をうち切られ、政権基盤は弱体化し、治安能力も低下させられてしまったのである。財政危機状態の中で、どうやって警察機構が勝手に動いている武装グループを管理・規制できるというのか? 

 そして、度重なるイスラエルによる挑発行為である。6月の海水浴場への攻撃では、海水浴に来ていたパレスチナ人に多くの死者が出た。イスラエルに巣くうアシュケナージ・ラビのメシア待望の神秘主義的ユダヤ・カルトの攻撃的民族差別主義。それをアメリカで後押しするキリスト教原理主義カルトとシオニスト・ロビーとネオコン。

 だが、アメリカ軍が、中東深く誘い込まれ、身動きが取れなくなっている間に、かつての「裏庭」から、ヨーロッパから、アジアから、アメリカの世界体制を崩す動きが大きく育ってきている。

 この問題で、アメリカとイスラエルは、世界から孤立した。停戦のためには、シリア・イランと交渉することが重要だが、アメリカのブッシュ政権は、イギリスのブレア首相と組んで、第7章を根拠に入れた国連安保理決議を採択し、多国籍軍を派遣し、ヒズボラを武装解除させるという方針を明らかにした。もちろん、この決議案には、イスラエルへの非難は盛り込まれず、ヒズボラ非難を盛り込むものとなるだろう。それには、イスラム・アラブ諸国は反発するだろう。そして、EUもレバノン首相の停戦案を支持しているので、そういう英米の決議案を批判するだろう。

 EU議長国は、フィンランドであり、国連レバノン停戦監視部隊でイスラエルの攻撃で死亡した1人の故国である。フィンランドは、アメリカ・イスラエルに厳しい姿勢を見せるだろう。そうしなければ、国内世論が納得しないにちがいない。イギリスのブレア降ろしが強まってきたように、下手な対応をすれば、政権批判が強まることになろう。

 なお、イスラエルは29日、国連が求めていた72時間の「人道停戦」を拒否した。

  イスラエル紙世論調査、死者増で強硬意見やや減る

 【エルサレム=三井美奈】28日付イスラエル紙イディオト・アハロノトの世論調査によると、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する同国軍の攻撃への支持率は82%で、今月18日付の前回調査より4ポイント下落した。

 「国軍はヒズボラを抹殺するまで戦うべき」との強硬意見も48%で前回調査比で10ポイント下落。代わりに、「戦いは国境からヒズボラを排除するまででよい」の意見が前回より7ポイント増の30%となった。

 ヒズボラ攻撃への支持率は依然として高いが、イスラエル側の死者が50人を超え、世論に変化がでてきていることがわかった。(2006年7月28日『読売新聞』)

  EU代表団がレバノン首相らと会談「停戦案を支持」

 中東歴訪中の欧州連合(EU)の代表団が28日、レバノンのシニョーラ首相らとベイルートで会談し、レバノンで続く戦闘について同首相が表明している停戦案を支持する考えを示した。AFP通信などが伝えた。

 シニョーラ首相の停戦案は「即時停戦」「赤十字国際委員会を通じ、ヒズボラが拘束したイスラエル兵と、イスラエル当局に拘束されているレバノン人の交換」「イスラエル軍の撤退」などからなる。これについて、代表団を率いるEU議長国フィンランドのトゥオミオヤ外相は「合意の基盤になる」と評価。「EUは即時かつ永続的な停戦を求めている」と語った。

 米国はヒズボラの武装解除を停戦の前提としており、EUとの溝が深まっている。トゥオミオヤ外相は27日にも、即時停戦などの合意に至らなかった関係各国・機関のローマ会議の結果について「イスラエルが攻撃継続に青信号が出たと理解したとすれば、それは間違いだ」と述べた。 (2006年07月29日『朝日新聞』)

 部隊派遣へ安保理決議を レバノン情勢で米英

 【ワシントン28日共同】ブッシュ米大統領とブレア英首相は28日、ホワイトハウスで会談し、イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの戦闘を停止させるため、国連憲章7章に基づく国際部隊のレバノン南部への早期派遣などを盛り込んだ決議採択を国連安全保障理事会に求めることで合意した。両首脳はレバノン南部を強固な基盤とするヒズボラの弱体化に照準を定め、国際社会の支持を求める姿勢を鮮明にした。

 一方、安保理筋によると、フランスなどは将来の国際部隊派遣を念頭に、即時停戦を求める安保理決議案の作成に着手。アナン事務総長は同日、国際部隊を構成する可能性のある国々を集めた会合を31日に開催したいとの意向を表明した。(7月29日『東京新聞』)

 ユダヤ関連施設に乱入し無差別乱射、死者 シアトル

 シアトル――米連邦捜査局(FBI)などによると、西海岸のワシントン州シアトルにあるユダヤ人連盟の関連施設内で28日、無差別の乱射事件があり、1人が死亡、少なくとも5人が負傷した。男の犯人は逮捕された。

   犯人は乱射前、「イスラエルに腹が立っている、米国のイスラム教徒だ」と発言したとの目撃者情報がある。警察はこの事実を確認していない。FBI当局者は、同施設に敵意を持つ単独犯の行動と理解している、と述べた。

  イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは、イスラエル兵拉致などが原因で交戦している。米治安当局は、レバノン情勢の悪化を受け、米国内のユダヤ人団体などに警備に留意するよう勧告していたという。

  調べによると、犯人は、同施設の従業員が暗号のコードを打って施設内へ入る後に続いて、乱入、乱射した。シアトル市警幹部によると、犯人は自ら警察に電話した後、連盟施設内から出てきたという。

  同連盟のウェブサイトによると、イスラエルや世界各国でのユダヤ人の生活向上を目指す活動が連盟の職務となっている。(2006.07.29- CNN/AP)

 「米の言いなり」、英国でブレア批判噴出 レバノン巡り

 緊迫するレバノン情勢の打開に向け、ブレア英首相は28日、ワシントンでブッシュ米大統領と会談し、緊密ぶりを強調した。ローマで26日開かれた国際会議では、両国が他の欧州諸国が主張した「即時停戦」を求める声明に反対。英国では、イラク戦争で顕在化した米国と欧州の亀裂が再現することへの懸念が広がり、ブレア政権の親米路線の「行き過ぎ」への批判が高まっている。

 ブレア政権への不信が深まった引き金は、今月中旬の主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)。ブッシュ大統領が口に食べ物を含みながら「おい、ブレア」と首相を呼びつけ、レバノン情勢について私見を語った様子が、スイッチを切り忘れたマイクで報道陣に筒抜けになった。英メディアは、ブレア首相の「追従ぶり」をこぞって批判した。

 27日に公表されたYouGov社の世論調査によると、64%が「ブレア首相は米国の言うことは何でも聞く」と回答。25日付のICM社の世論調査では、63%が「あまりに米国寄り」と答えており、ブレア政権に対し、米国主導の対中東政策に是々非々で対応するよう促す声が高まっている。

 イスラエル向けの高性能爆弾「バンカーバスター」を積んだ米政府のチャーター貨物機2機が今月、必要な手続きを怠ったまま、英スコットランドの空港で給油していた新たな疑惑も浮上。英政界では、対米関係の見直しを求める動きが加速している。

 野党・自由民主党のキャンベル党首は「ブレア首相の無批判な米政策受け入れは間違っているばかりか、英国の国際的評判を傷つける」との声明を発表。レバノンを支援する超党派の議員連盟代表のアンドルー・ラブ労働党議員は「イスラエル軍の攻撃はヒズボラよりレバノン政府に打撃を与えている」と語った。

 最新のICM社の政党別の支持率調査では、最大野党の保守党が39%と労働党を4ポイント上回り、同社調査では92年以来で最高となった。9月の労働党大会をひかえ、「ブレア下ろし」の動きは激しさを増しており、レバノン情勢をめぐる外交の行方は、ブレア首相の政治生命にも影響を与えるとみられている。(2006年07月29日『朝日新聞』)

 ライス中東訪問、クリストファー元国務長官が批判

 クリストファー元米国務長官は28日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿し、イスラエル・レバノン危機の沈静化を目指したライス国務長官の中東訪問について「焦点を誤った外交」と批判した。「殺戮(さつりく)をやめさせることに焦点を置くべきだ」と即時停戦の重要性を主張。ブッシュ政権が敵視するシリアを「重要な参加者」と位置づけ、同国との早期対話を促している。

 クリストファー氏はクリントン政権1期目の93年から4年間、国務長官を務めた。寄稿文では、今回の状況について、長官時代の93年と96年に、イスラエルとレバノンのシーア派武装組織ヒズボラが武力衝突した状況に似ていると指摘。当時は即時停戦を最優先したと振り返り、ライス長官がヒズボラの武装解除を念頭に「恒久的で」「持続可能な」事態解決を掲げ、即時停戦交渉の提案を拒んだことを「特に失望した」としている。

 さらに、両年ともヒズボラを支援するシリアを巻き込むことで停戦合意を成立させたとして、同国との関係を悪化させたまま改善を図らないブッシュ政権を「北朝鮮やイランの状況が示すように、嫌悪する国々との対話を避けることはフラストレーションや失敗を招きがちだ」と批判した。(2006年07月28日『朝日新聞』)

 ライス米国務長官、中東再訪へ 安保理決議案を提示か

 ライス米国務長官は29日、クアラルンプールでの東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)への出席を終え、レバノン紛争対応のため、再び中東へ向かった。ブッシュ大統領は28日、ライス長官の任務を「国連安保理決議案を来週に提案できるようイスラエル、レバノンと協力すること」としており、両国政府に国際部隊の展開などを柱とした決議案を提示し、了解を取り付ける意向とみられる。

 米ABCテレビは同日、ライス長官が、安保理決議案の内容について(1)イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの武装解除(2)国際部隊の派遣(3)ヒズボラが拉致したイスラエル兵の即時解放(4)それを受けた形でのイスラエルのレバノン領、係争地からの撤退(5)レバノンの社会経済復興、の5本柱からなる包括提案を提示する方針だと報じた。

 ライス長官は、公式には訪問地としてはイスラエルだけを挙げているが、イスラエル入りの前、29日の日中にもベイルートを再び訪れる可能性がある。(2006年07月29日『朝日新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

イスラエルはパレスチナへの蛮行をやめよ

 25日『毎日』、27日『東京新聞』、28日『朝日』『日経』の社説が、レバノン情勢について書いている。おりしも、レバノン南部の国連停戦監視軍の要員4人がイスラエルの執拗な攻撃によって死亡するという事件が起き、国連が、アメリカの抵抗によって後退したが、イスラエルに事態への憂慮を表明し原因究明を求めた議長声明を採択するというタイミングである。

  『毎日』「レバノン 市民の流血避ける方策探れ」は、「中東に大きな火種が生じているのに、なぜ米国は即時停戦の呼びかけを控えるのか。「人権」を外交の看板とする米国だけに、ブッシュ政権の姿勢は理解に苦しむ」とアメリカの人命軽視を批判する。そして、アメリカがかつて中東和平交渉を仲介する強いリーダーシップを取ったことを指摘して、現ブッシュ政権に、関係諸国と交渉するように求めている。「この「中東和平会議体制」が壊れたのは米国だけの責任ではないが、イスラエルの「自衛権」のみ尊重すればアラブ側の不満が募るのは目に見えている。米国は少なくとも、イスラエルの自制をもっと強く求めるべきだ」とまずは、市民の犠牲者が増え続ける事態を止めるために、アメリカが積極的に行動すると同時にイスラエルに自制を強く求めるように訴えている。

 『朝日』「レバノン攻撃 即時停戦に舵を切れ」は、2週間でレバノン側400人、イスラエル側50人の犠牲者数をあげ、「ヒズボラの民兵を掃討するためとはいえ、イスラエル軍の無軌道ぶりは目に余る」とイスラエルを批判している。そして、「イスラエルはレバノンへの攻撃を直ちにやめるべきだ。イスラエルの後ろ盾である米国も、即時停戦に舵(かじ)を切り、関係国との交渉を急ぐ必要がある」と主張している。

 『東京新聞』「レバノン危機 即時停戦を優先せよ」は、「レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ壊滅を図るイスラエル攻撃は拡大の一途で、市民の犠牲は増えるばかり。即時停戦が急務なのに、異を唱える米国の仲介は世界を納得させられまい」とイスラエルとこれを擁護するアメリカを批判する。また、「テロ撲滅こそ「恒久的な根本解決策」として、それなくしては即時停戦を愚策視する米国の姿勢は頑(かたく)なに過ぎるし、非現実でもある」ことを的確に指摘している。そして、「何をおいても、罪なき市民の犠牲をなくさねばならない。双方の「撃ち方やめ」が急務、最優先である。米国の「根本策」主張が、ヒズボラ、ひいてはパレスチナ・ハマス政権つぶしのための時間稼ぎであってはならない」と主張している。

 『日経』「米欧不一致で遅れるレバノン停戦」は、「レバノンでは多くの民間人が死傷し、80万人以上の国民が国内外への避難を余儀なくされている。人道的問題は看過できない。これ以上の犠牲と緊張拡大を抑えるため、イスラエルに最大限の自制を求めるのは当然である。イスラエル軍の国連施設攻撃も非難されるべきであり、イスラエル擁護に傾きすぎた米国の姿勢への疑問を強めざるを得ない」とやはりイスラエルとアメリカを批判している。そして、「シナリオは見えてきたが、問題は時間だ。さらに血が流れる間に、米国やイスラエルへの反発が一段と強まれば、今後の中東和平外交やレバノンの安定、イランの核問題への対応にも影響が及ぶ。米国も大局的な政治判断をこれから問われる」と、アメリカの中東政策の変更を暗に求めている。

 これら各紙の主張は、これ以上の市民の犠牲を増やさないために、即時停戦を実現し、同時にアメリカが関係諸国と直接交渉し、中東和平の新たな枠組みづくりのために、積極的な役割を果たすように求めている。それには、アメリカが、ブッシュ政権のイスラエル一辺倒の中東政策ではなく、シリア・イランなどの関係諸国とも交渉を進め、包括的な中東和平の仕組みを作るために努力しなければならないということである。

 日本は、イスラエル・イスラム諸国双方とおおむね良好な外交関係を築いており、本来ならもっと積極的な仲介を行えるポジションを潜在的には有しているが、小泉政権のアメリカ一辺倒の政策が足かせとなって、そうした役割を十分果たせなくなっている。それでも、イスラエル・ヨルダン・パレスチナ・レバノン4者の間で「平和と繁栄の回廊」構想を協議することを合意した。しかし、このうち3者が現在の紛争の当事者であり、今はそれどころではない状態である。

 そういう難しい時期に、政府外務省は、伊藤外務省政務次官を中東に派遣することを公表した。訪問先には、イスラエル・パレスチナ自治区がある。28日外務省は、その目的を「4.イスラエル及びパレスチナ自治区においては、現下の中東情勢を踏まえ、当事者の最大限の自制を働きかけつつ意見交換を行うとともに、先般小泉総理が共存共栄に向けた取組として発表した「平和と繁栄の回廊」構想のフォローアップのため、双方要人と会談を行う予定である」としている。現況ではまず即時停戦が必要であるが、その後の中東和平に関わる中長期的なプランである。もちろんそこには、大企業の利害も絡んでいるに違いないが、利をもって敵対勢力を結ぶという「薩長同盟」策を進めた坂本龍馬的なやり方のようにも見える。

 また、日本政府は、レバノンへの緊急人道支援を決定した。レバノン大使は、日本を大切な友人であり、謝意を表すると述べた。パレスチナにも緊急人道支援が求められている。外務省は、7月26日の外務報道官談話で、ヒズボラへの拉致兵士解放とロケット攻撃の停止、イスラエルには国連監視団への攻撃にたいする深い憂慮の表明と強い自制を求めている。

  「レバノンに対する我が国の緊急人道支援」

  1. 7月28日午後、村上駐レバノン日本大使は、サッルーフ・レバノン外務大臣と会談し、我が国は、現下のレバノンの人道状況にかんがみ、国連が発出したフラッシュ・アピールを受け、当面の緊急人道支援として200万ドルの支援を行うこととした旨伝達した。
  2. これに対し、サッルーフ外務大臣より、貴国からの人道支援に心から感謝する、今回だけでなく、これまでにもレバノンに対する支援を提供してくれてきた日本はレバノンの大切な友人である、日本国政府の関係者にくれぐれもよろしくお伝え願いたい旨謝意の表明があった。(28日 外務省ホームページ)

 ブッシュ政権は、世界への影響力が弱まってきていて、アメリカが単独で解決できる領域は小さくなっているのに、そういう「裸の王様」であるという現実を見ようとしていない。『毎日』社説は、未だにアメリカの力を過大評価しているような感じだが、それは現実と合わなくなっている。イスラエルにとって、アメリカは、昔のような強大な後ろ盾たりえない。

  NHKの『クローズアップ現代』でも、この問題が取り上げられ、ブッシュ政権の米安全保障会議の元中東部長が、シリア・イランとの交渉で、事態を打開すべきだと主張した。『産経』『読売』は、ちょっとだけ、以前に社説で、経過説明みたいなことを書いただけである。

 日本政府は、表向きはアメリカをはばかって、なんらの公式な態度表明を示していないが、アセアン外相会議では、イスラエルを非難し、自制を求めた議長声明に賛成しており、アメリカが拒否権を使ったイスラエル非難の国連安保理決議にも賛成している。サンクトペテルブルク・サミット前に、イスラエルを訪問し、オルメルト首相と会談し、経済協力を確認した。ちょうど、イスラエル軍のレバノン侵攻が起きた時で、小泉総理は、イスラエルの自制を求めたのだが、オルメルト首相は即座にこれを拒否した。

 中東に石油の大部分を依存する日本にとっては、サウジアラビア・イラン・イラクがイスラエルを非難している中で、いくらアメリカの同盟国だからといって、公然とイスラエルを擁護するのはリスクが大きすぎる。クウェートやアラブ首長国連邦でも、ヒズボラと同じシーア派住民が多くいる。それに、イラクで、対立している宗派・民族も、反イスラエルでは、一致しているように、イスラム世界全体が、対イスラエルでは団結するので、それは、インドネシア・マレーシアなどのアジアのイスラム系諸国との関係にも影響する日本外交上の大問題なのである。

 ガザでは、13歳の少年がイスラエルの攻撃によって死亡するなど、犠牲者も百人を超えて増え続けている。パレスチナのひどい情況を忘れてはならない。イスラエルは蛮行を止めろ!

  ASEAN、ライス長官孤立無援 中東情勢で厳しい視線

 ライス米国務長官が27日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との一連の会議のため、マレーシア入りした。28日に開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)では緊迫する中東情勢が議題となる見込みで、イスラム教徒も抱える東南アジア諸国からはライス長官に厳しい視線が注がれている。昨年のASEAN関連の外相会議に欠席し、東南アジア外交での失点を回復したいライス長官だが、会場外では抗議運動もある手荒い歓迎になった。

 「いつでも中東に戻る準備はできている」

 27日のASEAN拡大外相会議の記者会見。ライス米国務長官が米メディアから受けた質問は、悪化するレバノン情勢に集中した。

 ライス氏はこの日午後、レバノン情勢を協議するために訪れた中東、ローマからマレーシア入りした。米とASEANの外相会議に間に合わず、最後の文書調印式に駆け込んだ。ARFに出席後、28日夕にはマレーシアを離れる予定で、再び中東入りとの観測も出ている。

 強行日程でも顔を見せたのは、会合の中身以上にASEANの会議に「初参加した」という事実を残したい事情があった。ライス氏は昨年のARFを欠席し、「東南アジア軽視」との批判を招いた。このため、今回は「はずせない日程」(国務省当局者)として位置づけられていた。

 しかし、タイミングが悪かった。イスラム国を含む東南アジアやイスラエルの国連施設空爆で犠牲者を出した中国が待ちかまえる。イスラエルを擁護する立場の米国には針のむしろだ。

 オーストラリアなどとの拡大会議後に記者会見した議長国マレーシアのサイドハミド外相はレバノン情勢について、イスラエルの名指しは避けながらも「ASEAN外相は、特別声明で示した見解を強く主張した」と強調。「意味のない殺害と破壊を終えるために、すべての関係者に、停戦と、包括的で持続的な平和への取り組みを求める」と述べた。

 ASEANは、25日まで開いた外相会議で「イスラエルによる一方的で無差別かつ過剰な武力行使を深く憂慮する」とする特別声明を採択。シンガポールなどが抵抗したが、イスラエルの国名を挙げて批判する厳しい姿勢を示している。

 会場の外では、マレーシアの政治団体やNGOでつくる団体がライス長官の訪問に抗議する集会を開いた。約100人が集まり、「ライス帰れ」「レバノンでの戦争をやめろ」と叫んだ。参加者は「強硬路線で世界各地に衝突を起こしている」と批判した。(2006年07月27日『朝日新聞』)

  攻撃継続 閣議が方針

 イスラエル政府は27日、国防関係閣僚による閣議を開き、当面現在の規模でレバノンへの攻撃を継続する方針を決めた。26日に国境近くのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの拠点をめぐる戦闘で兵士30人が死傷したことから、今後の戦闘方針を検討した。

 首相府によると、攻撃規模は変えないが、地上部隊の編成のし直しなどのため予備役を非常招集することも決めた。イスラエル放送によると、閣議でオルメルト首相は「これまでの戦闘は所期の目標に達している」との認識を示した。

 イスラエル紙ハアレツ(電子版)によると、空爆を伴う大規模な地上侵攻を求める軍などの強硬意見と、「大規模な地上攻撃はシリアを刺激する」などとする慎重論の双方があったという。

 ローマで26日に開かれたレバノン情勢に関する国際会議が停戦に道筋をつけられなかったことについて「攻撃を継続してもいいという青信号だ」(ラモン法相)と受け止める声も上がっていた。

 イスラエル軍はこの日も南部での地上攻撃を継続、レバノン各地のヒズボラ関連施設への空爆も強めた。AP通信によると、12日の攻撃開始からの死者数はレバノン側423人、イスラエル側51人。

 イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻撃も強化。26日の攻撃でパレスチナ市民を含む23人が死亡。27日もミサイルを撃ち込み、多数が負傷した。(2006年07月27日『朝日新聞)』

  イスラエルとの戦闘へ参加求める、アルカイダ幹部

イスラエル北部――国際テロ組織アルカイダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ容疑者と名乗る人物が27日、ビデオの声明を中東の衛星テレビ、アルジャジーラに送り付け、イスラエル・レバノン情勢に関連して、イスラム教徒に対し、レバノンでイスラエルとの戦いに加わるよう呼び掛けた。

声明は、アルカイダは、パレスチナとレバノンのイスラム教徒が直面している事態に座視しない、と何らかの行動を取ることも示唆している。「世界の至る所で攻撃する」とも述べている。

  また、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラやパレスチナのイスラエルとの戦争は、停戦や合意で終わるようなものではないと主張。聖戦であり、イスラムが勝利するまで続くとしている。

   ビデオの真偽や、作成した時期は不明。イスラエル・レバノン情勢をめぐる関係各国・組織による外相級の緊急会議が、ローマで26日開かれ、緊急停戦などに関する合意は得られず、不調に終わっている。 (2006.07.27- CNN/AP)

  ヒズボラ支援へ、イランの「ボランティア」が出発

  テヘラン――イスラエル・レバノン情勢で、イランの非政府機関(NGO)である学生組織は26日、イスラエルと戦い、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラを支援するため、十代を含む60人以上の「ボランティア」が26日、レバノンへ出発した、と述べた。レバノンでは既に、約200人が活動しているとしている。

  トルコ、シリア経由でレバノンに入る見込み。武器は携帯していない、という。トルコ外務省はこれらのイラン人の入国を認めるかについては触れなかった。イラン人は通常、査証なしでトルコに入国出来る。

  イラン政府は、正規軍をレバノンに派遣することは否定しているが、「ボランティア」を送ることには反対していない。

  イスラエル軍は、ヒズボラの無力化を目標に、レバノン内の拠点への攻撃を加速している。イランは、シリアと同様、ヒズボラを物資両面で支援しているとみられる。(2006.07.27- CNN/AP)

 イラン義勇兵60人、レバノンに向け出発
 
  ≪10代の若者から72歳の高齢者まで≫

 AP通信によると、イスラエルと戦闘を続けるイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラを支援するため、イランの義勇兵60人が26日、レバノンに向け出発した。ほかの義勇兵200人と合流する予定という。

 義勇兵は10代の若者から72歳の高齢者までで「イスラエルに対する聖戦に加わる」と主張。陸路でレバノンに向かうが、隣国トルコが入国を許可するかどうかは不明という。

 レバノン情勢をめぐり、ヒズボラとの密接な関係があるイランは捕虜交換による解決を主張。軍事介入の可能性を強く否定している。(共同)(07/27『産経新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

シオニスト=ユダヤ原理主義者の横暴を止めよう

 7月26日のイタリア・ローマでのレバノン情勢などを話し合う外相級国際会議は、案の定、アメリカの抵抗によって、即時停戦についての合意ができないまま、終了した。シリアとイランがヒズボラ側の停戦についての鍵を握っているが、アメリカはこれらの国と交渉しないし、アメリカは、イスラエル側に立って、即時停戦に難色を示したからである。

 さらに、国連安保理は、イスラエルによる国連レバノン暫定軍(UNIFIL)に対する攻撃で死者4人が出たことを非難する議長声明をめぐって、やはりアメリカのボルトン国連大使が非難の表現に難色を示し、持ち越しとなった。

 こうしてアメリカの強引な停戦のばしやイスラエル擁護の行動によって、イスラエルは、ヒズボラ弱体化作戦を今後も続けられる時間を与えられた。

 今日、ホロコースト関係の歴史資料の研究用途に限定した公開が発表された。タイミングから見ると、イスラエルをホロコーストの犠牲者の国とするシオニストの歴史ねつ造を補強することで、イスラエルの現在の虐殺行為を正当化する狙いがあるのかもしれない。

 しかし、ドイツやヨーロッパが行ったユダヤ人差別とシオニスト国家イスラエルの建国は直接的な関係はない。イスラエル建国の直接のきっかけは、第一次世界大戦で対独戦に勝つために、イギリスがユダヤ金融王のロスチャイルドに資金提供と引き替えに、シオニスト国家をパレスチナに建設することを容認したことである。

 このシオニズム運動は、社会主義運動にも浸透し、ロシアでは、ロシア社会民主労働党内のユダヤ人ブントという党内党を要求するようになり、レーニンは、党を民族別に分割することに反対して、対立し、第二回党大会で、ユダヤ・ブントは党を脱退した。このユダヤ・ブントも、イスラエルに移住して、シオニスト国家建設を推進したと言われている。

 そして、シオニスト・イスラエルは、ユダヤ神秘主義の一派の神権国家であり、国教のラビ(聖職者)が国によって養われており、西欧儀式のラビ(アシュケナージ)と東欧儀式のラビ(セファルディ)を「イスラエル大ラビ職」が指導し、祭祀を管轄し、宗教政党が政治を担当するという体制を敷いているのである。イスラエルの宗教省は、ユダヤ教を支援する任務にあたっている。われわれは、アメリカの自由主義的なユダヤ人の姿をハリウッド映画などによって見慣れているので、こういう祭政一致的な神権国家シオニスト・イスラエルのユダヤ人像には違和感を感じる。

 ユダヤ人といっても、キリスト教に改宗した者も多いし、「神はさいころをふらない」と言った汎神論者アインシュタインは、シオニズムを嫌っていたのであり、カバラーやグノーシス主義などの神秘主義と結びついた祭政一致のシオニズムを信奉するユダヤ人は、そんなに多くはない。

 ヨーロッパにおけるユダヤ人差別は、ヨーロッパが責任を持つべき問題であって、パレスチナやアラブには責任のない問題である。だから、シオニスト国家イスラエルの問題とヨーロッパのユダヤ人差別は、直接的な関係はない。これらを意図的に混同させるというのが、シオニストの手口である。

 今ではすっかりこの問題では日和ってしまい、「へたれ」となった『Will』の花田編集長は、かつては、『マルコ・ポーロ』という雑誌で、ホロコーストの嘘を暴く特集を組んで、アメリカのシオニストから猛抗議を受けて、廃刊に追い込まれるという目にあった。氏は、我が身がかわいくなってしまったのか、言いやすい相手を選んで口先だけの「正論」を吐くばかりの「ポチ」になり下がった。シオニストは、今、ドイツでマスコミの「偏向」報道を批判すると称する活動を展開し、アメリカでは、シュワルツネッガー・カリフォルニア州知事などを動員して、イスラエル支持のキャンペーンを組織している。今こそ、言論人は、こういうシオニストによる言論抑圧に対して闘うべき時ではないのか。

 イスラエル当局は、数週間でレバノン南部のヒズボラを壊滅できると強気の見方を示している。しかし、ヒズボラ的なものは、イスラエルのパレスチナ人への抑圧・差別から発生しているのであり、この状態が続く限りは、何度でも蘇ってくるのである。そして、それは、シリアとイランだけではなく、広くイスラム世界の人々によって、支援されているのである。

 ヒズボラの強さは、パレスチナ民衆の独立と解放への欲求の強さの反映であり、シオニストのアパルトヘイトへの憎しみ・怒りの強さの反映なのである。

 イスラエル非難の議長声明持ち越し 安保理、米国が難色

 国連安全保障理事会は26日、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)関連の国連施設がイスラエル軍に空爆され、停戦監視要員4人が死亡したことを受け、安保理として「深い衝撃と悲しみ」を表明し、イスラエルの攻撃を非難する議長声明採択に向けて断続的に協議を続けた。しかし、非難をめぐる表現をめぐって米国が難色を示し、同日中の合意に至らなかった。

 議長声明は、死亡した停戦監視要員のうち1人を送っていた中国が同日中の採択を要請。議長国フランスもこの日、国際社会としての強いメッセージを出す必要性を強調していた。

 中国が示した声明の原案は「イスラエルによる意図的な攻撃」を安保理として非難するとともに、さらにイスラエル政府に対して事件の全容解明のための調査を求めていた。

 安保理外交筋によると、米国が非難をめぐる表現の修正を要求。各国との話し合いの末、非難の対象からイスラエルの国名をはずして「あらゆる意図的な国連要員への攻撃を非難する」と表現をぼかしたが、夜になって米国務省がこれにも難色を示した。

 一時は非難に関する表現をすべて削除する案も検討されたが、協議は27日に持ち越された。米中の対立で安保理が立ち往生をしたことで、イランの核関連活動停止を求める安保理決議に関する交渉に影響を与える、との見方も出ている。(7月27日『朝日新聞』)

 レバノンへの国際部隊派遣決まらず ローマ国際会議

 レバノン情勢をめぐる関係各国・機関による国際会議が26日、ローマで開かれた。イスラエル軍による攻撃が激化し、国連の駐留部隊にも死傷者が出る事態を受け、各国と国連は、レバノン南部に国連安全保障理事会が承認する本格的な国際部隊を展開させる意見で一致した。しかし、具体的な部隊の編成方法や派遣時期を含む停戦への道筋は決まらなかった。

 レバノンのシニョーラ首相は会議で、「イスラエル人の涙の一滴はレバノン人の血の一滴よりも価値があるのか」と強い語調でイスラエルを非難した。アナン国連事務総長やアラブ諸国などは、イスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラ双方に即時停戦を強く求めたとみられる。

 しかし、会談後の共同記者会見でライス米国務長官は、「元の不安定状態に戻ってはならない」と述べ、「即時停戦」は呼びかけなかった。

 共同議長声明は「停戦の実現へ最大の緊急性を持って行動する」と表現しつつ、「永続的で持続可能な停戦」をめざすとの文言も盛り込み、米国の立場を反映させた。

 国際部隊について声明は「国連(安保理決議)によって権限を付与されるべきだ」と明記。ライス氏は、数日中に主要国が具体策を協議する見通しを明らかにした。欧州連合(EU)は8月1日に中東問題で緊急外相会合を開く。

 会見でアナン氏はヒズボラを支えるシリア、イランを名指しし、「問題解決のために力を合わせねばならない」と述べた。ライス氏も「シリアにも責任があり、イランの役割にも強い懸念を持っている」と語った。

 会議は米国とイタリア両政府の共催。18カ国・機関が参加したが、イスラエルやシリア、イランは加わっていない。 (2006年07月27日『朝日新聞』)

 国連施設空爆、イスラエル非難決議へ 国連安保理

 国連安全保障理事会は26日、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)関連の国連施設がイスラエル軍に空爆され、停戦監視要員4人が死亡したことを受けて、緊急の非公開協議を開き、イスラエルの攻撃を非難し、再発防止を求める議長声明を採択することで合意した。26日中にも採択される見通しだ。一方、イスラエルのオルメルト首相は同日、「深い遺憾の意」をアナン国連事務総長に伝えた。

 朝日新聞が入手した議長声明案によると、国連施設への攻撃について安保理として「深い衝撃と悲しみを受けた」と非難。イスラエルに対して、事件究明のための調査と、国連の施設と要員への攻撃停止を要求している。

 死亡した4人の停戦監視要員の1人の出身国中国の王光亜国連大使は朝日新聞に対し「事態は非常に深刻だ。受け入れがたい行為で、言い訳できない。犠牲の出た施設以外にも、レバノン南部で国連施設が攻撃を受けたという情報も寄せられている」と厳しい表情で語った。

 米国のボルトン国連大使は「イスラエルが早期の調査を行うことを歓迎する。文案には非常に早期に合意できるだろう」と述べ、採択に賛成する考えを示した。

 また議長国フランスのドラサブリエール大使は空爆を受けた施設について「まわりにヒズボラの存在もなく、隔離されていた」としてイスラエルの主張する誤爆にはあたらないと強調。「UNIFILの司令官が攻撃をしないよう、空爆のあった日に何度もイスラエル当局に求めていたとも聞いている」と述べた。

 オルメルト首相はアナン事務総長に対し「軍に徹底的な調査を指示した。結果は国連事務総長と共有する」と伝えた。一方で、事務総長が空爆を「意図的にみえる」と指摘したことに対して「故意と見なされるとは信じられない」と不快感を表明した。

 イスラエル軍は26日もイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの攻撃を続け、これに抵抗するヒズボラとの激しい戦闘がレバノン南部を中心に続いている。AP通信によると、これまでの死者数はレバノン側442人、イスラエル側42人に達した。

 同通信によると、ヒズボラのロケット弾攻撃拠点、ビントジュベイルで村を包囲するイスラエル軍と立てこもっている約200人のヒズボラ戦闘員が激しい戦闘を続けている。イスラエル放送は、イスラエル兵20人以上が負傷、ヒズボラ戦闘員50人が死亡したと報じた。ヒズボラ側はイスラエル兵13人が死亡したと主張している。

 ヒズボラはイスラエル北部へのロケット弾攻撃を継続。イスラエル軍や病院関係者らによると、ハイファやティベリアスなどに119発が撃ち込まれ、少なくとも31人が負傷した。

 一方、イスラエル軍は26日、パレスチナ自治区ガザを武装ヘリコプターなどで攻撃、イスラム過激派ハマスの武装集団、近くにいた3歳の女児を含むパレスチナ市民計16人が死亡した。(2006年07月27日『朝日新聞』)

 中東情勢に強い懸念、ASEANと日中韓が外相会議

 【クアラルンプール=石沢将門】日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は26日、クアラルンプールで外相会議を開き、東アジア共同体形成の作業を加速させることで一致した。議長声明では原油高を受けてエネルギー分野の協力を確認する方針を確認。戦闘が拡大しているイスラエル・レバノン情勢に強い懸念を示した。

 マレーシアのサイドハミド外相は会議後の記者会見で「域内の開発格差を緩和するため、東アジア共同体の形成を進めなければならない」と強調。出席者はASEANが共同体形成で中心的な役割を果たし、日中韓がそれを支援する枠組みを再確認した。

 イスラエル・レバノン情勢については、イスラエルによる「不釣り合いで無差別、過剰な武力行使」に強い懸念を示した。同時に、国連施設へのイスラエルの攻撃を「深い衝撃を受けた」と非難。麻生太郎外相は「イスラエルに最大限の自制を求める」と発言した。 (2006年7月27日『日経新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

シオニストの邪悪な意志をうち砕け

 神からの悪霊が激しくサウルに降り、家の中で彼をものに取りつかれた状態にした(『旧約聖書』「サムエル記上」)

 こういうことなのかもしれない。サウルは初代のイスラエルの王であるが、今シオニスト・イスラエルには神からの悪霊が激しく降りて、ものに取りつかれた状態(すなわち預言する状態)におちいっているのかもしれない。イスラエルの神は、イスラエルをうち負かすことも繁栄させることもできる全能の神である。神は、ペリシテ(パレスチナ)人に、イスラエルをうち負かさせることもあったのである。もちろん、それは『旧約聖書』の昔の物語の話である。

 25日、イスラエル空軍が、レバノン南部の国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設を14回も空爆し、4人の停戦監視要員を殺害したのは、目の前の現実である。26日のイタリアでのレバノン情勢を話し合う国際会議の前に、このような行動に出たのは、イスラエルが、国際社会の停戦圧力に抗して、軍事作戦を継続する意志を表したものなのかもしれない。しかしだとしたら、イスラエルは、「悪霊」につかれたに違いない。すでに攻撃で殺害された停戦監視要員の出身国が怒ってイスラエルに抗議している。イスラエルは、世界からの孤立を深めている。

 当然にも、アナン国連事務総長は、国連施設と要員に対するこのようなイスラエルの攻撃を非難した。アナン氏は、意図的な攻撃ではないかと述べ、イスラエル政府に対して、徹底的に事態を究明するように求めた。イスラエルのオルメルト首相は、国連施設を攻撃しないと確約しており、UNIFILのベリグリーニ司令官は、国連施設を守るようにイスラエルに再三要請してきたと語っている。イスラエル当局は、これが誤爆であり、故意ではないと強調した。

 しかし、この施設は、国連施設であることを示す明確なマークを付けており、また、イスラエル軍には、この施設を記した地図があるはずで、それが14回も攻撃したということは、ミスではすまされない。イスラエルは、国連に対して、攻撃する意図があったと見なされたのは当然である。

 こうした事態に対して、さすがのボルトン米国連大使も、事態を深刻に受け止めると述べた。犠牲となった兵士の故国のカナダ・中国・オーストリア・フィンランドは、イスラエルに対して厳しい非難の声をあげることは確実である。26日にイタリアでの国際会議で、イスラエルの立場が不利になったことも間違いない。

 さらに、アメリカが停戦に消極的で、レバノン人やパレスチナ人の民間犠牲者が増え続けるのに対して、さすがにヒズボラを非難しているサウジアラビアも、「我慢にも限界がある」と早期和平ができなければ、参戦すると警告を発した。

 26日からのイタリア・ローマでの国際会議は、多国籍軍派遣をめぐる協議を中心に行われているようだが、フランスが、その国際舞台の中心的役割を果たすことを表明したという。ドイツは、ことが、ユダヤ人問題に触れるということもあって、国論が二分しているようだ。しかし、イスラエルはシオニスト・ユダヤ人が主で、その多くは、ユダヤ教に改宗したハザラ人という説もあり、ホロコーストを逃れたユダヤ人の故国というのはイスラエルの実態と全く異なるシオニストの作り上げた虚偽のイメージにすぎないという説がある。シオニスト以外のユダヤ人は、二級市民的に差別的に扱かわれているという情報もある。

 ブッシュ政権は、国連部隊を攻撃し殺害してしまったシオニスト・イスラエル、ついに「やってしまった」シオニスト・イスラエルを、どこまでかばい続けるのか? 

 7月27日、イスラエル大使館に対する「戦争と占領をやめろ! 駐日イスラエル大使館・緊急申し入れ行動」がある。

 フランスがレバノンへの国際部隊で主要な役割果たす可能性=仏大統領
 
 [パリ 26日 ロイター] シラク仏大統領は、特定の状況のもとで、フランスがレバノンへの国際部隊で主要な役割を果たす可能性がある、との見解を示した。また、国際部隊は、イスラエルを攻撃するレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、武装解除を強要すべきでないと指摘した。26日に掲載された仏ルモンド紙とのインタビューで語った。
 大統領は、フランスは国際部隊を指揮する用意があるかとの質問に対し、「フランスはレバノンでの責任を担うだろう。特定の条件に基づいて決定する」と答えた。 
 また、「我々は停戦を望んでいる。この方針をはっきりとした方法で実行する任務を負った国際部隊が必要だ」と述べ、その上でフランスの役割について考慮する、との考えを示した。(ロイター) - 7月26日 

レバノン派兵めぐり、ドイツの世論二分
 
 【ベルリン=黒沢潤】レバノン南部への国際部隊の派遣をめぐって、ドイツの世論が真っ二つに割れている。ユング独国防相は24日、「部隊派兵を否定しない」と派兵に前向きな姿勢を示したが、独誌シュピーゲル(同日発売)の世論調査では、国民の53%が派兵に反対している。
 派兵反対の背景には、ドイツがユダヤ人大虐殺という「過去」を持ち、イスラエルのある中東地域への派兵が「タブー」だったという事情があるためで、野党90年連合・緑の党からも「中東地域でドイツは外交官など仲介者だけが歓迎される」との声が上がっている。

 ドイツでは現在、派兵するにしても「(実戦部隊ではなく)衛生部隊や技術部隊になる」(ベルリン自由大学のイザベル・シェーファー講師)との見通しが強まっている。(07/26『産経新聞』)

 イスラエル、国連レバノン暫定軍の施設空爆 4人死亡か

 国連は25日、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)関連の国連施設が同日午後から少なくとも14回、イスラエルによる空爆などの攻撃を受け、2人の停戦監視要員の死亡を確認、さらに2人が死亡したとみられると発表した。26日に開かれるレバノン情勢に関する国際会議のためローマ入りしていたアナン事務総長は「明らかに、イスラエル軍による意図的な攻撃だ」と激しく非難した。レバノンのシーア派組織ヒズボラによる攻撃を防ぐ目的だとしてレバノン攻撃を続けているイスラエルに対する批判的な国際世論が高まることは必至だ。

 AP通信によると4人の国籍はカナダ、中国、オーストリア、フィンランド。

 空爆されたのはイスラエルとの国境に近い町ヒアムにある停戦監視のパトロール基地。国連によると、UNIFILは救援と医療チームを現地に派遣したが、がれき除去に追われて満足な活動ができていないという。

 アナン氏は「(イスラエルの)オルメルト首相が、国連の駐留地への攻撃を回避すると私に確約したにもかかわらず、長く設置され、明確に国連のものと記されている施設に対する空爆が実行された」とイスラエルを強く非難する声明を発表。

 さらに、UNIFILのペリグリーニ司令官が25日「イスラエル当局に対して、この国連施設を守る必要があると繰り返し訴えていた」ことを明らかにし、イスラエル政府による徹底した調査と、国連の施設と要員を対象とした攻撃停止を求めた。

 米国のボルトン国連大使は「非常に残念だ。事件の性質などについて情報を集めるが、深刻に受け止めなければならない」と国連本部で記者団に述べた。

 安保理議長国フランスのドラサブリエール国連大使は、UNIFILは撤退すべきかとの記者団の質問に対し「明らかに違う。しかし、彼らは非常に危険で難しい任務を遂行中だ」と述べて、安全保障理事会としてUNIFILを支援する姿勢を示した。

 イスラエル外務省報道官は、「悲劇的な死を心から悼む」と述べて、事件に遺憾の意を表明した。しかし、「国連の要員を標的にしていない」と強調した。(2006年07月26日『朝日新聞』)

 国際部隊の論議加速へ イスラエル、国連施設空爆

 レバノンでのイスラエル軍による攻撃がついに国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)の死者を出したことで、停戦を求める国際世論が高まり、国際部隊派遣の論議が加速されるのは間違いない。欧米とアラブ諸国、国連など18カ国・機関が集まって26日にローマで開く国際会議では、緊急対応の必要性がいっそう声高に訴えられることになろう。

 中立の立場にある国連駐留軍をも巻き込んだことで、これまでの400人を超すレバノン人の死亡と合わせ、イスラエル軍の行動の正当性に深刻な疑問符がつけられることになる。

 停戦を実現するには、国際部隊を派遣するしかないことは、すでに関係国と国連の間で一致している。UNIFILのような小規模部隊ではなく、ヒズボラの武装解除を強制するとともに、イスラエル軍にもにらみをきかせられるほどの本格部隊が必要とされる。

 だが、これまでの論議で、それほどの部隊を短期間に編成することは簡単ではないことは明らかだ。イスラエル側は、1万~2万人規模の国際部隊を想定しているが、兵力をどの国が負担するかが問題だ。

 北大西洋条約機構(NATO)軍はアフガニスタン、旧ユーゴスラビアへの展開を続けており、そのうえにレバノンも抱えることが出来るのか。欧州だけの軍部隊という性格にするにしても、イスラエルと歴史的に微妙な関係を持つドイツや、イラクで負担を抱える英国はどうするのか、といった各国の事情も絡む。

しかし、そうした事情を克服して国際社会が何らかの対応策を急がねば、事態は一層悪化することを今回の事件は示した。(2006年07月26日『朝日新聞』)

 サウジ国王、「和平失敗なら戦争」・イスラエルに警告

 【カイロ=横田一成】サウジアラビアのアブドラ国王は25日、国営サウジ通信を通じて声明を発表、「イスラエルのごう慢さにより和平という選択肢が失敗した場合、戦争の道以外になくなる」と警告、イスラエルに対しレバノン、パレスチナ自治区への攻撃停止を求めた。国王は「アラブ各国は和平を進めるため、過激派の呼びかけも無視してきた。しかし我慢にも限界がある」と指摘した。

 サウジはこれまでイスラエルを批判するとともにイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの行動も非難、このため国内世論に反発が生まれていた。

 声明は同時にイスラエルからの空爆を受けているレバノンに5億ドル(約580億円)、パレスチナにも2億5000万ドルを支援することを明らかにした。(7月26日『日経新聞』)

 レイバーネットより転載

 2006/07/27 駐日イスラエル大使館への緊急申し入れ行動@東京
 駐日イスラエル大使館への緊急申し入れ行動に参加を!


 個人の有志による呼びかけですが、以下のような形で駐日イスラエル大使館への緊急申し入れ行動を行いたいと思います。ぜひ参加してください。
7月27日(木)18:00
地下鉄有楽町線「麹町」駅/日本テレビ方面改札口(6番出口に通じる改札)に集合
http://www.tokyometro.jp/rosen/eki/kojimachi/map_rittai_1.html

申入書やパネル、チラシなどを用意しますが、個々人でも創意工夫をこらして持ち寄ってください。

戦争と占領をやめろ! 駐日イスラエル大使館・緊急申し入れ行動
palestine_ppc@excite.co.jp

*****

 イスラエルによる対パレスチナ戦争、そして対レバノン戦争が続いています。
 6月25日に「パレスチナ武装勢力」がイスラエル軍に対して奇襲攻撃を行い兵士1人を捕虜としたこと、そして7月12日にレバノンのヒズブッラーが国境地帯での攻撃で兵士2人を補足したこと──イスラエル政府は、これらの兵士の奪還のために攻撃を開始した、と主張しています。
 では、一体イスラエルは、その「発端」とされる6月25日以前には、何をしていたのでしょうか?
 「東京新聞」は6月23日(金)、次のように伝えています。

 「国際人権団体によるとイスラエルは昨年九月の撤収以降、ガザに五千発以上を打ち込んだ。同国紙の報道では、ガザでは今月だけで五十二人が死亡。……イスラエル軍は『攻撃途中などの過激派を標的にしている』とするが、人口密集地などでの暗殺作戦が市民の犠牲の原因だ。」

 イスラエルは、昨年9月のガザ回廊からのイスラエル軍と入植者の「一方的撤退」を、「和平に向けたシャロンの英断」のごとく「演出」しようとしました。しかし、ガザ回廊への人と物の出入り、制空権と沿岸海域のコントロールは、イスラエルが手にし続けました。ガザ回廊を「分離/隔離」して丸ごと巨大な監獄のごとき状況に置くという「新しい占領政策」が開始されたのです。
 同時にイスラエル軍は、「対テロ」を名目とした暗殺「作戦」や、法的根拠のない捜索・拘束・没収・破壊を続けました。
6月9日には、ガザ回廊北部の海岸で海水浴をしていた家族連れのパレスチナ人7人がイスラエル軍の砲撃で 殺されるという事態さえ起きています。西岸地区では、パレスチナ人たちの土地と資源を、これまで以上に、さらに一方的に強奪するための「分離壁」の建設が継続されています。
 イスラエルが核兵器を保有し、しかもそれを「公然の秘密」とすることで、中東地域全域に対する軍事的な脅迫を行い続けていることも重大な問題 です。
 この地域で軍事的・政治的に突出するイスラエルが、東エルサレムを含むパレスチナ人たちの土地を、そしてシリアのゴラン高原を軍事占領し続けていること、そうしたイスラエルの歴史的な政策自体が、イスラエルの市民を含む、この地域に生きる人々の生命と安全を脅かし続けているのだ、と考えます。
 7月12日の対レバノン戦争開始についての報道は、「レバノンの時計を20年巻き戻してやる」という、イスラエル陸軍参謀Dan Halutz中将の発言も伝えています(ベイルート発・AP電「Japan Times」7月13日(木)付)。そしてイスラエル軍の攻撃が、最初にベイルート国際空港や発電所、橋や港などのインフラに対して向けられたことは、イスラエルにとっての現在の対レバノン戦争の目的が「兵士の奪還」などではないことを示しているでしょう。レバノンと、その地に生きる人々の殺戮が最初から目論まれていたと言わざるを得ません。

*イスラエルは戦争をただちに止めろ!
*東エルサレムを含む西岸地区、ガザ回廊、ゴラン高原の軍事占領を止
めろ!
*入植地を全て撤去せよ!
*占領下のパレスチナ人、そしてイスラエル国内のパレスチナ人に対す
る、人種差別的政策の一切を止めろ!
*中東地域に生きる全ての人々の安全のために、核兵器保有を含む軍事
的な脅迫を止めろ!
*1月25日のパレスチナ自治評議会選挙が民主的に実施されたことを
認め、対等かつ公正な和平の実現のために、パレスチナ人たちとの対話を
開始せよ。パレスチナ難民の帰還の権利を認めろ!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

非人間的なライス氏の中東訪問

 25日の『朝日新聞』の「米国務長官「ヒズボラ抜きの新しい中東を」という記事を読んで、ぞっとした。ライス国務長官には、同じ人間とは思えないような冷酷非情な人という印象があったが、それを実証する話だ。前日に、レバノンで、市民の犠牲者の増大に懸念を示した言葉は、その底に何か冷徹な政治的打算を潜めた上での言葉だったのだろうか。

 「ライス氏は「この地域の人々はあまりに長く恐怖の下での暮らしを強いられてきた。永続する解決策は、平和と民主主義に立つ勢力を強化するような形でなければならない」と主張した」そうだが、ガザは、今、「巨大な懲罰房」(25日『毎日新聞』「レバノン侵攻 歴史的憎悪の拡大再生産」変換キー)と化している。

 イスラエルのために、ガザのパレスチナ人は、「長く恐怖の下での暮らしを強いられてきた」のであり、民主的に選ばれたハマス政権は、その言論・政治主張ゆえに、イスラエルが代理徴収している税金をハマス政権に引き渡さないなどの兵糧攻めを受けたあげく、イスラエル兵1人が生きたまま拉致されたことを口実に、ガザは「懲罰房」化され、百人以上のパレスチナ人(多くは民間人)が殺害されたのである。もし、この拉致されたイスラエル兵が帰還して、自分の解放と引き替えに何百人もの民間人が死んだことを知ったら、まともな良心の持ち主なら、自殺したくなるかもしれない。

 ライス氏は、一方では市民被害について懸念を示したというが、他方では、中長期の解決策ができなければならないという。しかし、それは、即時停戦後でよいはずだ。ヒズボラを武装解除したところで、パレスチナ人は別の抵抗組織を生みだし、支持して、武器が必要になれば、また、どこかから仕入れてくるだけなのだ。

 おそろしいのは、「「新しい中東」の提唱も、ブッシュ政権が外交の旗印として掲げる対テロ戦と中東の民主化にとっては、今回の紛争がむしろ好機になる可能性があるとみなしている」らしいことである。これは、ネオコンが主張するシリア・イラン軍事攻撃論と同じである。すでにイラクで失敗し、米軍が消耗しているし、アフガニスタンも不安定化してきて、イギリス軍がイラクから引き上げアフガンに派遣されたというのに、さらに、中東まで戦火が続けば、事態は、ますます悪化する。

 ネオコン・ブッシュ政権は、どこまで自己を過大評価しているのか、どこまで冷静かつ客観的に自己分析し把握できているのか、という疑問が湧く。かれらは、すでに自惚れすぎているのではなかろうか。以前とは違って、アメリカの識者の多くも、議会も、マスコミも、世論も、ブッシュ政権とは違う考えを持つようになり、ずいぶん冷静で客観的な自己像を描き、表明するようになっているように見えるのだが。

 マレーシアとインドネシアなどが中心になって、アセアン外相協議で、イスラエルのレバノン侵攻に深い憂慮を示す「イスラエル非難声明」が採択された。当初、ライス氏はこの会議に参加する予定であった。彼女は、26日にはイタリアでの緊急のレバノン情勢対策の外相・国際機関の国際会議に参加するが、そこには即事停戦を求める欧州各国とレバノン外相、アナン国連事務総長などが参加する。この場で、ふたたび、アメリカは、孤立の路を選択するのだろうか?

 それにしても、この問題で、日本の顔が見えない。外交は機能しているのかと疑いたくなる。レバノンには、緊急援助物資が届けられ始めたという。ガザにも緊急支援が必要だ。

   イスラエル非難声明を採択 ASEAN議長国

 【クアラルンプール=藤本欣也】東南アジア諸国連合(ASEAN)は24日夜、クアラルンプールで加盟国の外相による協議に入り、イスラエルのレバノン侵攻を非難する特別声明を採択した。特別声明はイスラエルの過剰な軍事力の行使に懸念を表明し、イスラエルに対し、即時停戦を要求する内容。国内に多数のイスラム教徒を抱えるインドネシアとマレーシアが採択を強く主張し、文言をめぐり、最終調整が続いていた。

 一方、ASEANの議長国であるマレーシアのサイドハミド外相は24日、クアラルンプールで記者会見を行い、北朝鮮の白南淳外相が28日に当地で開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議に出席することを確認するとともに、並行開催が調整されている6カ国外相会議には参加しないとの見通しを示した。 (07/25

 米国務長官がレバノンに停戦条件提示、議会議長は難色

 エルサレム(CNN)中東歴訪中のライス米国務長官は24日、イスラエル軍とイスラム教シーア派組織ヒズボラとの交戦で情勢が悪化しているレバノンの首都ベイルートを電撃訪問し、シニオラ同国首相とベリ国民議会議長(イスラム教シーア派)と会談した。ライス長官はレバノンの民間人の被害を懸念し、人道支援について協議する意向を示すとともに、持続可能な停戦に向けた方法を模索する意向を示した。

 ヒズボラやシリアとの太いパイプを持つベリ議長の関係筋がCNNに語ったところによると、ライス長官はレバノン側に対し、停戦合意と国際部隊派遣、ヒズボラ武装解除、レバノン避難民の帰還、復興計画という複数条件の一括履行を求めた。ただ、議長は実行不可能として難色を示しており、まず停戦を優先するべきだとの考えにある。レバノン政府は停戦が履行された後に、ヒズボラに拉致されたイスラエル兵2人をはじめとする他の問題を協議するとしている。議長は、拉致されたイスラエル兵と、イスラエル側に拘束されているレバノン人囚人を交換する可能性に、ライス長官が言及しなかったことにも驚いたという。

 ライス長官は既にイスラエルに移動しており、エルサレムでオルメルト首相と会談する予定。また、パレスチナ自治政府のアッバス議長と、ヨルダン川西岸ラマラで会談する。イスラエル軍は、同自治政府を主導しているイスラム原理主義組織ハマスも攻撃対象としている。

 米当局者はCNN記者に対し、ライス長官の中東歴訪による停戦実現は期待できないとの認識を示した。ライス長官は先週、ヒズボラがレバノンの問題の源であると言明したうえ、現状に戻るだけの即時停戦は意味がないと述べた。今回の歴訪で、ヒズボラやシリアの指導者らとの会談は予定されていない。

 イスラエルのリブニ外相は、「イスラエルとレバノン国民の間に紛争はないが、イスラエルは自国民を守る最大限の責任を負っている」と述べ、国際社会に「ヒズボラと対決しているレバノン政府」への支持を呼びかけた。

 こうしたなか、国連緊急援助調整官室(OCHA)のエグランド室長(事務次長)は、イスラエル軍の攻撃で避難を余儀なくされた推定80万人のレバノン人を対象とする1億5000万ドルの人道支援を呼びかけた。米国は直ちに3000万ドルの支援を発表し、25日から米軍を通じて支援物資の輸送を援助する意向を明らかにした。支援物資はベイルート港に荷揚げされ、非政府組織が配布する。

 ただ、レバノン南部で身動きが取れなくなっている人々への支援は危険であり、空爆で多くの道路は通行不能になっている。エグランド室長はベイルートでCNNに対し、停戦の必要性を強調した。(2006.07.25- CNN)

 米国務長官「ヒズボラ抜きの新しい中東を」

 中東歴訪中のライス米国務長官は25日、イスラエルのオルメルト首相と会談した。会談に先立ちライス氏は記者団を前に、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラが無力化され、シリアやイランがレバノンに干渉することのない「新しい中東」の創設を提唱。イスラエルの軍事行動を全面的に支持し、即時停戦は求めない姿勢を繰り返した。

 こうした米側の姿勢を受ける形で、オルメルト首相も「イスラエルはヒズボラに対する戦いをあくまで続ける決意だ。最も激しい手段を取ることもいとわない」と述べ、当面は軍事介入の手を緩めない方針を確認した。

 ライス氏は「この地域の人々はあまりに長く恐怖の下での暮らしを強いられてきた。永続する解決策は、平和と民主主義に立つ勢力を強化するような形でなければならない」と主張した。

 米国は市民被害には懸念を示しつつも、即時停戦の呼びかけには「数週間か数カ月すれば現状に戻るような間違った約束になりかねない」(ライス氏)と一貫して抵抗感を示し、まずヒズボラを排除する必要性の方を強調してきた。

 「新しい中東」の提唱も、ブッシュ政権が外交の旗印として掲げる対テロ戦と中東の民主化にとっては、今回の紛争がむしろ好機になる可能性があるとみなしていることを裏付けた形だ。

 ライス氏は24日にはレバノンを電撃訪問し、シニョーラ首相に続き、シーア派組織アマルの指導者で、シーア派武装組織ヒズボラとのパイプを持つベリ国会議長と会談。AP通信によると、ライス氏はレバノン南部への国際部隊とレバノン軍の展開を条件とする停戦案を提示したが、ベリ氏は即時停戦の原則を譲らなかったという。(2006年07月25日『朝日新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

孤立し追いつめられるイスラエル

 23日の米紙『ロサンゼルスタイムズ』は、ロサンゼルスで開かれたイスラエル支持集会について書いている。この集会には、シュワルツネッガー・カリフォルニア州知事とアントニオ・ロサンゼルス市長が出席して、イスラエルに対するハマスとヒズボラによる攻撃を非難し、イスラエルの軍事行動を「テロリスト」に対する正当な戦いであり、自衛のための行動であると擁護した。

 自称「人権の国」アメリカの驚くべき低レベルの人権感覚である。イスラエル兵3名の拉致問題を解決するために、すでにガザ、レバノン合わせて、四百数十人が死亡した。しかも、その大半が非戦闘員の民間人である。また、イスラエルのハイファなどでも自国の非戦闘員の民間人が数十人死亡している。イスラエル兵3名の拉致は、これだけの民間人の命の犠牲に値するというのか? 戦闘員である兵士3人の拉致には、敵兵3人の拉致で釣り合うのではないか? そのための捕虜交換要員は、イスラエルの獄中にある9000人もの拉致被害者の中にいくらでもいるだろう。げんに、ヒズボラが拉致後に要求したのは、イスラエルに拉致された捕虜との交換であった。

 ところが、これを口実に、イスラエルは、一気にヒズボラ壊滅を狙い、レバノンに空爆と侵攻を開始し、多くのインフラを破壊し、多くの非戦闘員・民間人を殺戮したのである。それは、2004年のヒズボラ非難国連決議から、2005年のアメリカからのハイテク兵器の購入契約の締結、そして、今年1月のハマス政権誕生に対する兵糧攻めの経済封鎖、そして6月のガザでの海水浴場でのパレスチナ人の無差別殺戮等々と、挑発行為を繰り返しながら、長期に渡って計画され、準備されてきたパレスチナ解放闘争壊滅作戦の一環であった。イスラエルは、この計画遂行のための口実を必要とし、挑発に乗るのを待っていたのである。

 そうでなければ、あれだけ、早い段階で、インフラ施設や道路などを破壊する作戦を実行できるわけがない。あらかじめ、こういう場合の攻撃目標を調べ、攻撃方法も決まっていたに違いない。そういう作戦を作るにあたっては、武器を提供し、シリア、イランを非難して、イスラエルを支援してきたアメリカが、関与していたことは十分ありうる話である。アメリカは、イスラエルへのハイテク兵器の売却を決定した時には、その使い道を把握していただろう。

 ブッシュ政権は、イギリスがイスラエルの軍事行動拡大を非難するようになって以後、世界で、イスラエルのこの軍事行動を支持する唯一の大国となった。イスラエルには自衛権があるとそれを正当化しているが、権利には濫用の禁止という制約がついているものである。レバノン・パレスチナの400人を超える死者とイスラエルの死者数十人というアンバランスな数字を見れば、イスラエルに自衛権の濫用があることは明らかであろう。

 23日の『毎日新聞』の記事は、イスラエルが、停戦交渉が本格化するまでに、ヒズボラの攻撃能力をできるだけ低下させ、多国籍軍の駐留で、ヒズボラをレバノン南部から追い出すことを狙っていると伝えている。しかし、この問題の根本にあるのは、レバノン南部にヒズボラを支持してイスラエルの抑圧に抵抗するパレスチナ人などのイスラム住民が多く暮らし、生活し続けているということだ。これまで、パレスチナ人は、インティファーダに示されたように、イスラエルに対して、素手で立ち向かい、投石などの手段ででも抵抗を続けてきたのである。だから、ヒズボラのロケットなどの武器がどうのこうのというのは、根本的な問題ではないのである。

 レバノン南部からのヒズボラのロケット攻撃が止んでも、パレスチナ人の解放闘争は別の形態で今後も続くのである。そもそも建国すべきではないシオニスト国家イスラエルを作ってしまったことから、問題が始まっているのである。ユダヤ人とパレスチナ人が共存するのは、シオニスト国家の下では不可能だということである。新たな多民族共生国家が必要なのである。そのさきがけとなる姿を示したのが、戦時下のイスラエルでのイスラエル人とパレスチナ人・アラブ人が共闘した2500人(5000人という記事もある)反米反戦集会であった(イスラエルの人口は、688万人(2005年5月イスラエル中央統計局))。これは人口の約3.6%、日本なら人口1億2千万人として、432万人に相当する数である。

 イスラエルが、ヒズボラの力が予想外に強く、当初の目的を達成できそうもないと判断したことが、多国籍軍派遣提案受け入れに傾いた理由だろう。長期戦になって、イスラエル側の消耗が激しくなり、犠牲が増えると、国内から厭戦気分が広がりかねないのである。

 シリア政府は、事態打開のために、アメリカとの直接交渉を提案した。シリアは、それに、イスラエルが占領するゴラン高原返還要求を加えている。アメリカのネオコン一派のボルトン国連大使は、この提案を拒否した。サウジアラビア外相も、アメリカに停戦の仲介をするように求めた。ドイツのメルケル首相は、ドイツがレバノン南部の多国籍軍に参加することを今は想定していないと語った。ドイツは、アフガニスタンでのNATO主導の多国籍軍の中心的存在で、これ以上の負担が難しいという事情もあるのだろう。

 イスラエル:レバノン南部で陸上戦拡大 停戦圧力にらみ

 【エルサレム樋口直樹】レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの掃討を目指すイスラエル軍は、砲爆撃中心の攻撃では巧みに隠ぺいされたヒズボラの陣地を排除し切れないと判断、レバノン南部への陸上部隊の投入による戦略的要衝の奪取に軸足を移した。国際的な停戦要求が熟すまでにイスラエル北部を脅かすヒズボラのロケット発射地点などを制圧し、将来の停戦交渉でレバノン南部からのヒズボラの完全撤退を実現させる意向だ。

 イスラエル軍のハルツ参謀総長は陸上部隊の本格投入を前に、砲爆撃によるヒズボラの死者は100人以上に上り、ロケット発射陣地などにも多大な損害を与えていると分析。レバノン南部への陸上部隊の投入は限定的なもので、再占領は考えていないと強調した。

 だが、レバノン側は12日間の砲爆撃で死亡した約360人の大多数は民間人だと主張。イスラエル軍陸上部隊がレバノン南部への侵攻を本格化させた22日にも、イスラエル北部に約100発のロケット弾が着弾した。ヒズボラが依然として相当な戦闘力を維持していることを裏付けている。

 23日付のイスラエル紙ハーレツによると、イスラエル政府はブッシュ米政権が今後少なくとも1週間はヒズボラへの攻撃続行を容認するとみているという。現地観測筋の間では、今後1~2週間のうちにイスラエル軍がレバノン南部のヒズボラの戦略拠点を掌握し、その後の停戦交渉で国際社会にヒズボラの南部撤退を確約させ、レバノン正規軍か国際部隊に同地の治安権限を引き渡せるかどうかが今後の焦点になるとみられている。(2006年7月23日『毎日新聞』) 

 戦闘続くレバノン情勢、サウジが停戦呼び掛け

 ベイルート(CNN) イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの交戦は23日も続き、イスラエル北部にはヒズボラのロケット弾60発以上が撃ち込まれた。ライス米国務長官は同日夜、中東訪問に出発。これに先立ち、ブッシュ米大統領や同長官と会談したサウジアラビアのサウド外相は、即時停戦の必要性を主張した。

 ヒズボラのロケット弾はハイファ市内などに着弾し、民間人2人が死亡、20人以上が負傷した。同日夜には民家にロケット弾が命中し、中にいた数人が負傷している。また、イスラエル軍はレバノン南部のヒズボラ拠点などを標的に空爆を続行した。

 訪米中のサウド外相は、ホワイトハウスの会談後、記者団に「停戦を求めるアブドラ国王の親書を渡した」と語り、「停戦を成立させた上で、レバノン軍や同国政府の能力を強化することが重要」との考えを示した。アラブ諸国を含めた国際社会から即時停戦を求める声が高まっているのに対し、米政府は「ヒズボラを完全に掃討する必要がある」との立場を貫いている。

 一方、イスラエルのオルメルト首相は同日、シュタインマイヤー・ドイツ外相との会談で、国連がレバノン南部への国際部隊派遣を提案していることについて、「強力な部隊であれば解決策として受け入れる」との柔軟姿勢を示した。(2006.07.24- CNN)

  ライス国務長官、ベイルートを電撃訪問

 イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとの戦闘の沈静化を目指し、ライス米国務長官が24日午後(日本時間同日夜)、急きょレバノンの首都ベイルート入りした。停戦の可能性などを巡り、シニョーラ首相らと会談した。12日にヒズボラとイスラエルの戦闘が始まって初めて米国高官がレバノンに入り、直接の外交交渉に入った。

 ライス国務長官は予定されていた24日午後のイスラエル訪問に先立ち、レバノンに立ち寄った。

 AP通信によると、ライス長官はイスラエルに向かう直前にアイルランドで記者団に「戦闘をすぐに終わらせることが、われわれの共通の目的だ。しかし、数週間で戦闘が再開してしまうような停戦からは得るものはない」と語り、ヒズボラの武装解除など停戦への条件を整えることの重要性を指摘した。

 即時停戦を求める国連や欧州各国と米国の溝は深まっている。ヒズボラ軍事部門の武力はレバノン国軍を上回るとされ、政治部門はシニョーラ政権と連立しているため、同政権が独力でヒズボラを武装解除できる可能性は低い。武装解除を条件とするならば、即時停戦は難しい情勢だ。

 AP通信によると、イスラエル軍は24日、レバノン南部ですでに制圧したマルンアラスからさらに2キロ北上し、ヒズボラの対イスラエルロケット攻撃の拠点とされるビントジュベイルに迫り、ヒズボラの戦闘員2人を拘束した。ヒズボラは対戦車砲などで応戦し、激しい戦闘が続いている。

 ヒズボラの指導者、ナスララ師は24日付の地元紙に「イスラエル軍の地上侵攻で我々のロケット攻撃を止めることはできない」とのコメントを発表した。AP通信によると、戦闘による死者はレバノン側が381人で、イスラエル側が37人になった。(2006年07月24日『朝日新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

イスラエルが方針転換か?

  7月23日の英紙『ガーディアン』は、「戦車が押し寄せた時、イギリスはアメリカと分かれた」と伝えた。記事は、昨夜、イギリスは、レバノン危機に対するジョージ・ブッシュとの隊列を劇的に崩し、公式にイスラエルのレバノン戦略を批判し、一般のレバノン市民が高いツケを支払っていることを「理解する」ようにアメリカに迫った、と書いている。

 その発言は、英外務担当閣外相キム・ハウエルズによってベイルートでなされたイスラエルの軍事攻撃についてのイギリスで初めての公的批判であった。それは、アメリカのイスラエルへの強力な支持に対する不和の表明であった。ブレア首相は、イスラエル軍が国境を超えてレバノン領内に侵攻したことを受けて、昨日のイスラエルのオルメルト首相との私的な電話会談で、イスラエルの軍事攻撃がエスカレートしていることを懸念していることを伝えた。

 昨夜、ブレア首相は、イスラエルがミサイル攻撃の脅威やシーア派組織によるイスラエル兵士の拉致という挑発に対して自衛する権利があると語った。しかし、政府筋は、それはハウエルズ大臣が、イスラエルの軍事戦略をひどく非難したこととは矛盾しないと語っているという。ベケット英外相も、民間人犠牲者が増えていることに懸念を示した。

 ロンドンなどイギリス各地で、ストップ・ザ・ウォー連合などによる反戦デモが行われるなど、世界各地で、反戦行動が取り組まれた。戦時下のイスラエルでも、反戦集会デモが約2500人規模で行われた。イランでは、ヒズボラ支持のデモが行われた。アメリカでも、数度にわたって、即事停戦を求める反戦行動がすでに行われている。日本でも、アジア共同行動によるイスラエル大使館への緊急抗議行動が行われた。

 アメリカのブッシュ政権は、イスラエル支持で一致しており、ブッシュ大統領も、積極的な調停を行っていないが、議会は、それを批判し、議員の特使を中東に派遣するように大統領に求めている。

 イスラエルのベレツ国防省が、レバノン南部への多国籍軍派遣を容認という記事がある。これが事実で、実際に、多国籍軍が派遣されれば、局面の大きな変化を意味する。多国籍軍を攻撃すれば、国際社会を敵に回すリスクを負わなければならないからである。しかも、今のところ、アメリカが多国籍軍参加を拒んでいることから、アメリカ抜きの多国籍軍になる可能性がある。

 やはり、いかにヒズボラ非難の国連決議があるとはいえ、アメリカしか後ろ盾のないような孤立状態では、分が悪いと思ったのだろうか。あるいはレバノン南部を占領するつもりはない、多国籍軍に引き渡して、引くということをあらかじめ宣言しようということか。真意ははかりかねるが、いずれにしても、ドイツ・イギリス・フランスが外相をすでに送り、国連も特使を派遣したし、アメリカのライス国務長官が到着する前のこのような発言は、イスラエルの大きな態度変更を示したものといえる。もし、これが実現すれば、EUのレバノンへの1億ドル規模の人道支援と即事停戦のメッセージや国連外交が一定の成果をあげたものということができよう。

 しかし、依然として、イスラエル軍は、レバノンへの空爆を続けているし、ヒズボラのロケット攻撃も続いて、双方の犠牲者は増え続けている。ヨーロッパ諸国や国際機関や反戦運動や人権運動が停戦に向けた動きを活発化している中で、日本の麻生外務大臣は、この問題での外交努力を見せていないし、メッセージも発していない。レバノン南部への多国籍軍派遣に対してなんらかの協力をするのかしないのか? そもそも多国籍軍派遣に賛成なのか反対なのかすら明らかにしていない。こういう時に、外交能力を鍛えなければ、難しい外交交渉を乗り切る力は養われないのではないだろうか。

 <イスラエル>国防相、レバノン南部への多国籍軍派遣を容認

 イスラエルのペレツ国防相は23日、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘が続くレバノン南部への多国籍軍の派遣を容認する考えを示した。EUや国連が提唱する国際部隊の派遣に消極的だったイスラエルが方針転換したことで、停戦に向けた枠組みの協議は国際部隊の派遣を軸に進められる公算が大きくなった。(毎日新聞) - 7月23日

 英担当相が米政権も?イスラエル軍侵攻を非難

 中東歴訪中のハウエルズ英外務担当閣外相は22日、イスラエル軍のレバノン侵攻について「局地的な攻撃ではなく、このような軍事作戦を理解することは非常に困難だ」と非難した。訪問先のベイルートで英BBC放送に語った。

 英国民のための避難船などを視察した同相は、レバノン国内でインフラが破壊され、多くの子どもや人々が犠牲になっていると指摘。さらに「レバノンで起きていることを米国人が理解してほしい」と、イスラエルの攻撃を容認しているブッシュ米政権への批判ともとれる発言も口にした。(ロンドン 共同) (07/23『産経新聞』)

 「子供殺すな」 英国各地でレバノン侵攻に抗議デモ

 イスラエル軍のレバノン南部侵攻に抗議する大規模行動が22日、ロンドン中心部であり、警察発表で約7000人(主催者発表は2万人)が国会議事堂近くの官庁街からハイドパークまでデモ行進した。

 抗議行動は反戦団体ストップ・ザ・ウォー連合と、イスラム教団体などが主催。英国イスラム協会のアハメド・シェイク・モハメド会長はデモに先立ち「このばかげた戦争を止めなければならない」と訴えた。

 デモ参加者は「レバノンの子どもを殺すな」などと声を上げ、イスラエルの攻撃を容認している米、英両政府の姿勢も批判。米国大使館前で若干の混乱があったものの、逮捕者はなかった。

 抗議行動はマンチェスター、エディンバラ、バーミンガムなどの都市でも行われた。(ロンドン 共同) (07/23『産経新聞』)

 EU、レバノンに15億円の緊急人道援助へ

 【ブリュッセル=林路郎】欧州連合(EU)は22日、レバノンからの大量の避難民の中継地点となっているキプロスに、医療支援などにあたる専門家チームを緊急に派遣することを決めた。

 EUはまた、イスラエル軍とイスラム原理主義組織ヒズボラの戦闘による被害が拡大しているレバノンに対し、1000万ユーロ(約14億7000万円)の緊急人道援助を実施することを決め、近く供与する。

 ルイ・ミシェル欧州委員(人道援助担当)は「約50万人が国内避難民となり、レバノンは深刻な人道の危機に直面した」と言明。状況によって援助を追加拠出する用意があることを明らかにしている。(2006年7月23日『読売新聞』)

  レバノン情勢で特別声明採択へ ASEAN外相会議

  東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国マレーシアなどは23日、24日に始まる外相会議を前に開かれた高級事務レベル協議で、レバノンでの停戦を求める特別声明案を提示した。しかし、イスラエル非難を盛り込みたいマレーシアなどイスラム教徒の多い国と、イスラエルと関係の深いシンガポールなどが対立し調整が難航。共同声明の一項目にとどめるべきだとの意見も出た模様で、加盟国間の立場の違いがあらわになった。

 特別声明を提案したのはイスラム諸国会議機構(OIC)の議長国でもあるマレーシアや、世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア。

 たたき台になったマレーシア案は、非同盟諸国(NAM)議長国としてサイドハミド外相が19日に出した声明に近いとされる。NAMの声明はイスラエルを名指しし「過剰で無差別な武力行使」「国際法の原則を無視したガザとベイルートにおける野蛮な軍事行動」と非難を繰り返している。

 しかし、会議筋によるとシンガポールは、特別声明の採択自体には賛成したが、イスラエルを名指しで非難すべきでないと強く主張。イスラム諸国と対立した。

 シンガポールは、建国当初にイスラエルの協力で軍を整備し、経済関係も深い。同国を擁護する米国とも良好な関係にある。18日には外務省報道官が「過激派のイスラエルに対する攻撃が、暴力の連鎖と地域の不安定化の引き金を引いた」とコメントした。

 フィリピンやタイも「停戦を求めるのは当然」(比外務省高官)としながら、イスラエル非難には慎重な姿勢だ。

 両国にとって中東は出稼ぎ先。フィリピンは計6万人以上の労働者をイスラエルとレバノンに送り出す立場から、どちらも批判したくないのが本音だ。タイも数万人がイスラエルなど中東で働いている。米国の影響力が強いタイやフィリピンには、イスラエルを刺激するのは得策ではないとの思惑もある。

 一方で両国ともイスラム系過激派との衝突を国内に抱え、中東原油への依存も高く、イスラム諸国との良好な関係の維持も不可欠となっている。(2006年07月23日『朝日新聞』)

  ヒズボラとの即時停戦要求、イスラエルで初の反戦デモ

 【エルサレム=林路郎】イスラエル中部のテルアビブで22日夕、イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘が始まって以来初めての反戦デモが行われ、約2500人が即時停戦と交渉開始を訴えた。

 ユダヤ系とアラブ系の左派政党が合流して反米スローガンを掲げており、地元紙は「異例の共同歩調」(ハアレツ紙)と伝えている。

 イスラエル世論の圧倒的多数はヒズボラに対する軍の作戦を支持しており、デモが世論の変化を示すものかどうかは定かでない。

 参加者は、ユダヤ系世俗主義左派連合の「メレツ」、ユダヤ人国家からの脱却を目指すアラブ政党「国民民主同盟」など国会(クネセト)に議席を持つ左派小政党のメンバーら。
(読売新聞) - 7月23日

| | コメント (0) | トラックバック (3)

レバノンへの地上軍侵攻が始まっている

 英紙『ガーディアン』は、21日の記事で、イギリスのブレア首相が、カンタベリー大司教がイスラエル・パレスチナ・レバノンの戦闘の停戦を働きかけるよう提言したが、それを退けたと報じた。イスラエル軍は、レバノン南部の住民に避難するよう警告した。イスラエル北部の予備役を招集し、レバノン国境地帯に戦車部隊を集結させている。これは本格的な地上戦に備える動きである。それに対して、レバノン政府は、イスラエルの侵攻には、国防軍が撃退する準備ができていると述べた。

 イスラエル正規軍対非正規軍(ゲリラ)という非対称型戦闘から、正規軍同士の戦争に事態が変化しようとしている。戦時法の世界に本格的に入ろうとしているのである。たまたまだが、この間の歴史修正主義者などによる「南京事件」見直し議論などの中で、ジュネーブ条約とかハーグ陸戦協定とかの戦争法規という普段われわれがめったに見ることもないものが議論の俎上に上がるなどしたため、これに関心を持った人には多少その知識が広まっているので、イスラエルの不法性を判断する能力が高まっていることだろう。

 アメリカは、ライス国務長官を23日に中東に派遣、その後、26日のイタリアでのレバノン情勢に関する国際外相会議に参加する予定である。この会議には、レバノンや米英仏、エジプト、サウジアラビアの外相が参加、国連や欧州連合(EU)の代表外交が参加する予定だという。今のところ、日本の名前は見えない。またしても、後から費用だけ分担させられるのだろうか? それとも蚊帳の外? ライス国務長官は、この中東歴訪やこの国際会議では、即時停戦を訴えず、根本的解決を目指すと述べている。すなわち、ヒズボラを弱体化させるまで、イスラエルが軍事攻撃を続けるのを容認するということである。

 北朝鮮のミサイル発射は、環太平洋合同軍事演習への対抗であったと北朝鮮当局が語ったが、この合同軍事演習で、日本の海上自衛隊の護衛艦がミサイル発射訓練をしたという記事があった。合同軍事演習は、28日まで続けられる。北朝鮮のミサイルよりも高性能で破壊力が強いアメリカ製の最新鋭ハイテク・ミサイルや爆弾がイスラエルにまもなく渡るかもしれないという。

   22日の米紙『ニューヨークタイムズ』は、21日政府筋からの話として、先週のイスラエルによるレバノン空爆が開始された後のイスラエルからの要求に応えて、精密誘導爆弾を大量にイスラエルに送るのを急いでいると伝えた。それはブッシュ政権の短い会議で決定された。イスラエルは、すでに2005年には、衛生誘導モニターとコンクリートの地下掩蔽壕を破壊できるバンカーバスター爆弾と5000ポンド・レーザー誘導爆弾をアメリカから購入することを決めていたという。イスラエル空軍は、F‐15戦闘機に、そのGBU-28を搭載できるようになるだろうというのである。

 米政府筋は、これがアラブ世界に知られれば、反発を買うことになると述べたというが、いずれにしても、アメリカのブッシュ政権が、これほどまでにイスラエル寄りの立場を鮮明にしている以上、アメリカの立場を支持しているイギリスを除いた欧州諸国、日本、国連をはじめとする国際機関などが、停戦に向けて外交努力をする必要がある。

 なお、小泉首相の先の中東歴訪について、外務省ホームページに「小泉総理のイスラエル、パレスチナ自治区及びヨルダン訪問(概要と成果)」(7月15日)が公表されている。

 それによると、この訪問の狙いは、日本の中東和平問題解決に向けた独自の役割発揮であり、「歴史的に負の遺産を持たない我が国から、イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けて、対話を通じた和平の実現を働きかける」、「当事者双方に最大限の自制と問題解決の努力を求める」、「対話による和平路線を堅持するアッバース大統領を支援することにより、パレスチナ自治政府内における同大統領の指導力を向上させる」、パレスチナへの新規人道支援、「平和と繁栄の回廊」構想で域内和平への中長期的枠組みをつくる、そして、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンとの二国間関係を強化することで、「中東和平問題における我が国の発言力拡大」である。

 その成果として、「平穏な状況を取り戻し、対話を促すための働きかけ」を行い、イスラエルのオルメルト首相に理性的に自制するよう求めたこと、対話路線をとる「アッバース大統領に対する支援」を約束したこと、「パレスチナ人の生活状況の悪化に鑑み、医療・衛生状況改善及び雇用創出などのため計約3000万ドルの支援を表明。これにより今後4ヶ月間、1日最大約2000人の雇用を創出」という人道支援を継続することを伝えたこと、「日本・イスラエル・パレスチナ・ヨルダン4者」による「平和と繁栄の回廊」構想を推進することで合意できたこと、である。なるほど日本の独自性が発揮されている。イスラエルのレバノン攻撃の最中でなければ、小泉外交の大きな成果として評価されただろうに。

 このような戦争の悲劇を止めるために、国際的な反戦運動の連帯と働きかけの拡大が求められている。英米政府下の反戦運動は、政府に即時停戦への政策転換を、そして即時停戦を求めている政府には、それを国際機関やイスラエル・英米政府に強く迫るように求め、そして、人道危機に見舞われているパレスチナ・レバノンの人々を救うために、人道援助を強めるように、全ての政府に要求することだ。

 イスラエルの民衆は、戦争を利用しているイスラエル政府と支配層の下では、民族同士の平和的共存はいつまでも実現できないし、平和も安定もなく、不必要なパレスチナ・アラブ人との対立が繰り返されるのは、自らの利益にならないことに覚醒して、そういう民族抑圧・対立の政治を続ける現政府ではなく、民衆自身の政府をつくって、和平を実現することが必要である。困難ではあるが、パレスチナ民衆とそういうイスラエル民衆が手を結ぶことで、将来の共存のさきがけをつくることも必要だ。対立ではなく共存が双方の利益になるようになれば、ヒズボラは用済みになるだろう。もちろんイスラエルの核爆弾を含む巨大な軍事力も。そこまでには、大変な努力と時間が必要となることはいうまでもない。

 今は、地上戦が開始されるかもしれないという緊急事態であり、すでに多くの民間人犠牲者が出ており、ガザなどで医療・食料・衛生設備などの不足で、人道的危機に多くの人々がさらされている時である。即時停戦と人道支援が緊急に必要とされている時である。

 イスラエルの地上軍は、レバノン南東部のマルンラス村を襲った。イスラエル当局は、同村を制圧したと語ったが、レバノン当局はそれを否定した。空爆は、キリスト教徒地区に拡大した。

 レバノン南部に退避警告 イスラエル軍

 レバノン各地では21日もイスラエル軍の攻撃があり、レバノン保健省によると、12日の攻撃開始からの死者は362人になった。レバノン側ではイスラエル軍がレバノン南部への大規模侵攻を準備していると伝えられ、同軍が国境のレバノン側の住民に退避するよう警告している。

 イスラエル軍は21日、レバノン南部や東部ベカー高原で空爆を続けた。また現地メディアによると、イスラエル軍が南部国境に続々と集結。国境沿いの12の村に同日午後までに退避するよう警告したことから、大規模侵攻が近いと伝えている。

 AFP通信によると、イスラエルの警告に対し、レバノンのムル国防相は「レバノン国軍が迎え撃つ用意ができている」と述べた。同国軍は、基地を空爆され兵士10人以上が死亡したが、これまでほとんど反撃していない。

 AP通信によると、南部ティールで同日、最近の空爆で死んだ大勢の子供を含む72遺体をレバノン軍兵士が埋葬した。

 保健省が発表したレバノン側の死者には、ヒズボラ民兵6人が含まれているという。イスラエル軍側は攻撃開始以来、21日までに民兵100人近くを殺害した、としている。事実とすれば、レバノン側の死者は大きく増えることになる。(2006年07月22日『朝日新聞』)

 米国務長官、レバノン「即時停戦」認めず

 【ワシントン=加藤秀央】ライス米国務長官は21日の記者会見で、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの戦闘で緊迫するレバノン情勢について、「政治的な環境を伴わない即時停戦は意味がない」と述べ、欧州やアラブ諸国が求める即時停戦は認められないとの考えを示した。

 長官は23日に中東歴訪に出発。イスラエルのオルメルト首相やパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談する。一方、イタリア政府は21日、レバノン情勢を協議するため、関係国による緊急外相会合を26日にローマで開くと発表した。レバノンや米英仏、エジプト、サウジアラビアの外相が参加。国連や欧州連合(EU)の代表も出席する見通しだ。

 ライス長官は会見で、戦闘を早期に停止させる必要性は強調した。しかし「(戦闘が始まる)前の状態に戻すだけの停戦合意ではヒズボラが再び攻撃するだけで、6カ月後にはまた停戦合意が必要になる」と語り、ヒズボラの武装解除が必要との立場を強調した。 (7月21日『読売新聞』)

  イスラエルが予備役兵の招集拡大、レバノン侵攻備えか

 エルサレム――イスラエル・レバノン情勢で、イスラエル軍は21日、レバノンと接する同国北部の戦力を補強するため予備役兵の招集を拡大した、と発表した。追加招集は旅団規模に匹敵するとしている。イスラエルの旅団は通常、1500人─3500人。

 この追加招集を受け、レバノンへの地上軍の本格侵攻が近い、との見方が強まっている。これまでは、小規模部隊による、時間限定的な侵攻を実施している。

  イスラエル国境に近いレバノン南部は、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの事実上の「支配地域」。今回のヒズボラ攻撃について、イスラエルは同組織を無力化するまで続行する、と宣言している。(2006.07.21- CNN/AP)

 交戦10日目に、増える一途の死傷者 レバノン情勢

  ベイルート――イスラエル軍と、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの衝突は10日目の21日も続き、ヒズボラはイスラエル北部のハイファ市に複数のロケット弾攻撃を加え、医療当局者によると10人が負傷した。メロンなどの町にも着弾した。

   イスラエル軍が20日夜から、北部国境沿いのレバノン南部にあるヒズボラ本部、ミサイル発射基地など40カ所を空爆したことへの報復とみられる。首都ベイルート、シリアに近い東部地域も爆撃した。レバノン保健省によると、この空爆で少なくとも8人が死亡した。

   同軍はまた、国境線からレバノンへ約40キロ入った地域中心にビラをまき、住民に退去を要求。同地域への今後の攻撃強化を示唆した。レバノン南部は、ヒズボラの事実上の「支配地域」。イスラエルへの攻撃を阻止する緩衝地帯の構築を狙っているともみられる。

   イスラエル軍は21日、北部の戦力補強のため予備役兵の追加招集を決定、レバノン南部への本格侵攻の構えを見せている。レバノンのラフード大統領はCNNに対し、イスラエルが地上侵攻に踏み切るなら、レバノン軍は領土を防衛する用意があるとけん制した。

   ロイター通信によると、ヒズボラはこれまでイスラエル北部に900発以上のロケット弾を撃ち込み、民間人15人が犠牲になった。イスラエル兵19人も死亡している。一方、レバノン保健省によると、イスラエル軍の攻撃による死亡者は343人に達している。(2006.07.21- CNN/AP/REUTER)

  海自護衛艦がミサイル訓練 ハワイ沖リムパック
 
 【ホノルル8日共同】日米など8カ国が参加した環太平洋合同演習(リムパック2006)で、海上自衛隊は7日、ハワイ諸島カウアイ島沖で護衛艦3隻によるミサイル発射訓練を実施した。

  カウアイ島を飛び立った無人標的機に対し、護衛艦「ひえい」「さみだれ」「ありあけ」が各1発ずつ対空誘導ミサイルを発射。海自発表によると、命中が確認されるなど訓練は成功した。標的機の大きさや速度などは明らかにされていない。

  記者会見した派遣部隊トップの泉三省海将補(第1護衛隊群司令)は「リムパックは始まったばかりだが、今日のミサイル訓練を含め、良いレベルにある」と話した。リムパックは6月26日から7月28日まで。(共同通信) - 7月8日

| | コメント (0) | トラックバック (1)

レバノン・ガザ緊急行動など

 人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、7月21日、イスラエルに対して、イスラエルには、民間人犠牲者を出さない義務があるとして、レバノン南部からの民間人の安全な避難路を認めるように警告した。イスラエルは、レバノン南部に地上部隊を侵攻させ、本格的な地上戦を開始しようとしている。民間人犠牲者は増え続けている。

 アメリカ政府が、イスラエルの軍事行動を容認し、国連の動きが鈍い中で、イスラエルは早期の軍事目標の達成に向けて、民間人多数を巻き添えにしながら、軍事侵攻を拡大している。日本政府は、人道危機を深刻化させているイスラエルの非道な侵略行為に対して、沈黙している。

 今年1月に民主的選挙で誕生したハマス政権に対して、欧米日などが、アメリカ・イスラエルが「テロリスト」呼ばわりするのに影響されて、パレスチナを兵糧攻めにするイスラエルの手助けをし、それがイスラエルの挑発と軍事攻撃を誘発したようにみえる。経済封鎖は、イスラエルにとっては、パレスチナの抵抗運動をたたきつぶす好機ととらえられ、軍事攻撃の前段階として、利用されたのである。この戦争を止めるためには、経済封鎖に反対する運動がもっと早くから行われるべきだったのだろう。戦争準備の段階での反戦運動の重要性と課題が浮き彫りになったといえよう。

 ドイツ・フランスが本格的に調停に乗り出してきた。しかし、イタリア首相が、イスラエルを非難したのとは、ちょっと異なる動きのようである。ドイツは、イスラエルとヒズボラの捕虜交換の交渉仲介であり、フランスは、ヒズボラをレバノン内で穏健化する方針を見直すものだという。フランスは外相を中東に送り、エジプト、ヨルダン、イスラエルと会談する予定だという。しかし、エジプトのムバラク政権では、イスラム原理主義組織イスラム同砲団が入閣しており、ヨルダンにはパレスチナ人が多数住んでおり、政権は不安定要素を抱えている。イスラエルにしても、国民の圧倒的多数がこの軍事攻撃を支持しているとはいえ、シャロンなき右派リクードは、以前ほどの力を持っていないだろうし、イスラエル政局は安定しているとはいえないだろう。むしろ、オルメルト首相は、このような軍事攻撃の成果を強調することで、政権の求心力をつくろうとしているのではないだろうか。

 いずれにしても、イギリスは国連と協力して国際平和部隊派遣を主張し、ドイツは拉致兵士の解放交渉の仲介役、フランスは、周辺諸国とイスラエルの間の交渉の仲介、アメリカも遅まきながらライス国務長官の来週の中東派遣を決め、等々と中東和平に向けた欧米諸国の動きが活発になってきた。アラブ連盟は、内部がまとまらず、統一した態度を決められていない。しかし、この問題は、イラクの紛争を続ける各派・各民族も、一致して、イスラエルを非難しているように、反イスラエルでイスラム・アラブを団結させる。

 日本の小泉政府は、戦闘中の中東歴訪を強行し、パレスチナに世界食料機関を通じた人道援助再開を約束し、ヨルダンなどとの平和開発構想をぶちあげてきた。この戦火の拡大と地域の破壊は、かかる日本の中東貢献策に泥を塗るような行為である。国連安保理で、せっかく、アメリカの拒否権に逆らって、イスラエル非難決議に賛成して、外交の独自性を発揮したのだから、イスラエルを停戦に導くための外交努力を尽くすべき時であろう。もっとも、日本のマスコミは、注目していないが、日本政府は、中東に特使を派遣し、中東和平への日本の存在感を示す動きをした。戦火の拡大は、ゴラン高原にいる自衛隊のPKO部隊の安全や石油の安定供給や原油価格に悪影響を及ぼす恐れがある。

 アメリカ、イギリスなどで、反戦団体が、緊急行動を組織し始めた。それに対して、日本の反戦運動は、北朝鮮によるミサイル実験によってつくられた異常な興奮状態にのみこまれたためか、反応が鈍いように感じられる。とはいえ、すでに早くからアムネスティ・インターナショナルによるイスラエル・ヒズボラ双方への停戦の訴えとパレスチナなどの人道危機を解決するように求める声明が出されている。そしていくつかの動きが出てきている。

  レバノン南部にイスラエル軍侵攻…本格地上戦の可能性

 【エルサレム=三井美奈】イスラエル軍は20日、国境に近いレバノン南部アビビム近郊に地上部隊を侵攻させ、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと戦闘した。この戦闘でイスラエル兵2人が死亡した。

 地上部隊侵攻は19日に続く。2日間の戦闘でイスラエル軍の死者は4人となった。同国のペレツ国防相は20日、ヒズボラ掃討作戦について「どんな手段も辞さない」と述べ、本格的な地上作戦に乗り出す可能性を示唆した。(2006年7月21日10時39分  読売新聞)

 崩壊した生活 空爆続くヒズボラ地区 ベイルート

 煙と異臭が漂う通りに熊の縫いぐるみが転がる。コンピューター店のがれきの下から、ゲーム機らしい電子音が鳴り続けている。20日午後、シーア派武装組織ヒズボラの案内で、イスラエル軍に破壊されたベイルート南部の「ハレト・フレイク」中心部に入った。崩壊したビルの谷間に、人々の生活の痕跡がそのまま残っていた。

 ここは本部ビルなどがあるヒズボラの拠点だ。だが、数万人がひしめく首都で最も人口密度の高い最貧困地区でもあり、政治とは無縁の市民の方が多い。

 ヒズボラの広報担当ナブルシ氏は「これが軍事拠点かどうか、じっくり見てくれ。ヒズボラの兵士は南の国境付近にしかいない」と叫んだ。

 「1 レオナルド・ダビンチは、どこに住んでいたか」「2 どこで芸術を学んだか」――。

 崩壊したビルの前に、英語のテスト用紙が落ちていた。

 生徒の名は「ヒバ・マルジ」。少女らしい丸文字のアルファベットだ。つづりの間違いが8カ所もあり、先生が赤ペンで記した点数は「0.5(50点)」。

 外国語は仏語が主流のレバノンだが、貧しいシーア派地区ではアラビア語しか学ばない生徒も多い。が、世界を夢見て英語に挑む子も増えている。ヒバもそんな一人だったのか。その生死は分からない。

 がれきの山が続き、人気の絶えた通りを、2週間前に結婚したばかりというナビールさん(32)が泣きながら歩いていた。縫製の仕事でやっとためた600万円で、買ったばかりの新居が消えていたという。

 「私はヒズボラ支持ですらない。2人のイスラエル兵が拉致されたことへの報復で、こんなことが許されていいのか!」

 現地に入った外国人記者は約50人。ナブルシ氏は「今は静かだが、いつ空爆が始まるかわからない」と警告した。イスラエル軍機が近づけば各所に配置した要員が警報を出すから、「とにかく走れ」という。

 地区中心部は「モラバ・アムニ(治安本部)」と呼ばれ、ヒズボラ本部や専属テレビ局、指導者ナスララ師ら幹部の自宅もあった。被害のアピールのため外国メディアを招いたのだろうが、崩壊したはずの本部ビルの取材は許されず、「撮影がわかればカメラを没収、破壊する」と警告された。 (2006年07月21日『朝日新聞』)

 パレスチナ住宅地への爆撃実施へ イスラエル軍機がビラ投下で警告

 【アルジャジーラ特約20日】イスラエル軍機が20日、パレスチナ・ガザ地区上空から、パレスチナ人住民に対し「武装民兵が使う住宅などから即時退去するよう」警告するビラを投下した。

 アラビア語で書かれたビラは、「イスラエル国防軍は武装民兵が立てこもったり、弾薬や軍用機器などが隠されている建物や拠点をすべて攻撃対象とする。一般住民はそうした建物から即時退去し、また近づいてはならない」と警告。

 イスラエル軍当局者によると、今回のビラ投下は「一般住宅も攻撃対象にするとした新戦術」の実施を意味しており、これにより、同軍は武装民兵らによるロケット弾攻撃を阻止するとともに、隠された武器などの破壊を狙っている。

 民兵組織に拉致されたイスラエル軍兵士の奪還を目指すイスラエル軍は現在、攻撃対象を主にパレスチナ自治政府施設や、民兵組織がイスラエル向けのロケット弾攻撃に使う空き地にしてきたという。

 イスラエル軍はこれまでにも、新たな攻撃を加える前に、こうした内容のビラを投下し、パレスチナ住民たちに警告してきた。

 一方、イスラエル軍はこの日もガザ地区にあるマグハジ難民キャンプに攻撃を加え、パレスチナ人3人が死亡、12人が負傷した。この結果、今回実施された同軍による攻撃ではパレスチナ人14人が死亡、110人以上が負傷した。

 パレスチナ側の医療関係者によると、イスラエル軍は海軍艦艇からガザの海岸地区を走る道路を砲撃、救急車1台が被弾したという。被害の程度は不明。

 また、ガザ地区の住民約400人はこの日、レバノン国旗を手にデモ行進し、レバノン国民との連帯を叫ぶとともに、イスラエル軍の連日にわたる砲撃を非難した。その際、デモ隊は負傷者に見立てた子どもを担架に乗せて、同軍が子どもを含む市民へも攻撃していることに怒りを表していた。

 ヨルダン川西岸のナブルスでも同日、イスラエル軍とパレスチナの民兵組織がにらみ合いを続けた。同軍は戦車2台を出動させ、自治政府の治安施設を包囲した。

 ナブルス住民約4000人はこれに激しく抗議するとともに、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの支持と同組織による対イスラエル攻撃を叫ぶなど気勢を上げた。

 これに対しイスラエル軍は強化ゴム弾を住民に向けて発砲、医療関係者によると、この発砲で住民5人が負傷した。(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)(2006年7月21日ライブドアニュース)

 レバノン・ガザ緊急デモ

   レバノンはずたずたに切り裂かれている。

 イスラエルの人道に対する犯罪を終わらせろ。

 7月22日のデモに参加しよう。

 300人以上が殺された。

 50万人が故郷から逃げている。

 すべての主要道路が破壊され、多くの地域に援助物資が届いていない。

 アパート、教会、モスク、ガソリンスタンドが爆撃された。

 レバノンの最大の酪農場と製薬工場が破壊された。

 イスラエルの爆撃からの避難民に、水、医薬品、衛生が大量に必要だ。

 緊急デモ

 イスラエルの野蛮主義をすぐに終わらせろ。

 7月22日土曜日昼、ロンドンのホワイトホール・プレイス、トラファルガー広場。

 呼びかけは、Stop the War Coalition, Palestine Solidarity Campaign, Muslim Association of Britain, British Muslim Initiative, Lebanese organisationsの各団体。 

 イギリス国内での他の緊急行動。バーミンガム、ブリストル、エディンバラ、エクスター、グラスゴー、キルカルディ、マンチェスター、ニューカッスル、ノルウィッチ、シェフィールド、ヨーク、等々。

 アメリカのANSWERによる緊急行動は、8月12日ワシントン行進。ANSWER Coalition, the National Council of Arab-Americans (NCA), the Muslim American Society Freedom Foundationの共同呼びかけ。

 「レイバーネット・ジャパン」からの転載

 キリスト教事業所連帯合同労組です。

 ガザにある、パレスチナ人による唯一の病院「アハリー・アラブ病院」を支援 しています。下記、緊急募金の依頼です。皆さま、ご協力お願い申し上げます。
転送、転載、歓迎です。

***************************
 アハリー・アラブ病院に緊急支援を! 目標額:200万円

 6月22日、120万円の献金をアハリー病院に送金することができました。しか し新聞等の報道でご承知のように、パレスチナはこれまでにない大変な状況で す。引き続き病院への献金・カンパをお願いします。
<エルサレム管区リアハ・アブ・エル・アッサール主教からのメッセージ>
                   (2006年7月13日)
 主イエス・キリストより平和と恵みがありますように。 私たちのところで起こっていることがらに真摯なご関心を払ってくださるこ とに感謝いたします。お返事が遅くなって申し訳ありません。状況はさらに悪 化しているように思われます。イスラエルが発電所を破壊したことはお聞き及 びのことと存じます。75万人のガザ住民が暗闇のなかで生活し、冷蔵庫のなか では食べ物が腐っています。

 イスラエルは3つの橋も破壊し、人々が自由に出入りすることもできなくしま した。イスラエルはさらに攻撃を続行し、ハニヤ首相の官邸を攻撃し、一部を 破壊しました。そのうえ、拉致された兵士の問題を解決するための交渉も拒絶 しました。反対に、60人近い議員と大臣を監禁・拉致しています。

 国際社会は、耳も聞こえず、目も見えないかのようです。貧しく弱い者が、 残酷で巨大な力に苦しめられているというのに、誰も助けてくれません。

 新たに起こっている出来事に、緊張感はいや増しています。国際社会が平和 に目を向け、手を携えてすべての人々の幸福のために努力する時が来ているの ではないでしょうか。アハリー・アラブ病院を支える会と、すべての兄弟姉妹 に、心からの祈りをこめて。

 キリストがあなたとともにありますように。
 キリストにあって、リアハ

送金先:郵便振替口座番号00150-7-601525
   口座名称「アハリー・アラブ病院を支援する会」
169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18日本キリスト教団社会委員会内               アハリー・アラブ病院を支援する会

 「市民意見30の会・東京」の2006年7月21日付の意見から一部引用。 

私たちは、イスラエル政府に対しパレスチナ・ガザ地区とレバノンへの侵略
をただちにやめることを要求します


 侵略戦争が「自衛」の名においておこなわれることを、私たちはまたもや目の当たりにしています。いうまでもなく、イスラエル政府がパレスチナ・ガザ地区とレバノンに対して強行し拡大している侵略のことです。圧倒的に優勢な武力によって大勢の無辜の民が殺傷され、交通網を含む生活基盤が破壊されています。その暴虐・非道なありさまは、イスラエル政府がパレスチナやレバノンの人びとすべてをこの地上から抹殺しようとしているのではないかとさえ思わせます。米ブッシュ政権がまたもや拒否権を行使して国連安全保障理事会に提出されたイスラエル非難決議を葬り去ったことにも私たちは深い憤りをおぼえます。私たちは、イスラエル政府がただちに攻撃を停止し撤兵することを強く要求します。(AMLより転載)

  イスラエル、ドイツの仲介に期待
 
 【ベルリン=黒沢潤】レバノン空爆のきっかけとなったヒズボラによるイスラエル兵士の拉致解決をめぐり、ドイツがイスラエルとヒズボラとの交渉の仲介に乗り出したもようだ。ドイツはこれまでに2回、ヒズボラとイスラエルとの間の捕虜交換を成功させた実績を持っており、事態打開につながるのではないか、と期待が高まっている。

 イスラエル外務省のパルモル報道官は20日、独公共放送ZDFに対し、「ドイツは過去数回にわたって捕虜問題で重要な役割を果たしてきた。今こそドイツが再び、その役割を果たすときだ」と強調した。ヒズボラが12日にイスラエル兵士を拉致したことをきっかけに起きた戦闘は今や泥沼の状態。イスラエルは、双方に広い人脈を持つドイツの仲介に期待をかけた形だ。(07/21『産経新聞』)

 仏、レバノン調停作業を本格化へ

 【パリ=山口昌子】フランスのドストブラジ外相は21日、レバノンの首都ベイルートに到着した。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラエルの間で続く戦闘停止へ向け、フランスとしても調停作業に本格的に乗り出した。外相はレバノン国内を視察した後、エジプトやイスラエル、ヨルダンを訪れる。

 シラク大統領はこれに先立ち、ヨルダンのアブドラ国王やエジプトのムバラク大統領らと電話で会談し、事態解決に向けた糸口を探った。

 仏外交筋によると、フランスはこれまで、ヒズボラが武装闘争を放棄し、穏健な政治勢力としてレバノン国内に残るべきとの立場を取ってきた。しかし、今回の戦闘でヒズボラが使った兵器がイラン、シリアから供与されている疑いが強いことから、ヒズボラの存在を認める従来の立場の見直しも視野に入れているという。(07/21『産経新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アメリカの反戦運動が動き始めた

 『ニューヨークタイムズ』は、イラクのマラキ首相が、イスラエルのレバノン攻撃を公然と非難したと伝えた。19日には、イラク各地で、イスラエルを非難する民衆がデモを行い、「われわれはイスラエルと闘う義勇軍に志願する」と叫んだという。レバノンでは、シリア軍の撤退後の総選挙で、欧米が期待したヒズボラ惨敗というシナリオ通りにはいかず、ヒズボラは国会に14議席を獲得し、2人の閣僚が政府に入っている。

 この戦闘によって、連日、民間人犠牲者が増え続けている。ようやく、国連安保理での平和維持部隊の派遣が協議されている。すでに、レバノン南部には、多国籍部隊が駐留している。中国軍も工兵隊を中心に、部隊が派遣されているが、今、孤立状態にあるという。シリア・イスラエル国境地帯のゴラン高原には自衛隊のPKO部隊がいるはずで、シリアに戦火が拡大すれば、危険にさらされるだろう。

 CNNの世論調査によると、レバノン情勢に介入するのに消極的なアメリカ人が多いという。「紛争の当事者への「同情」については、57%がイスラエルに感じる」という数字が出ているが、やはり、アメリカでは、「哀れな小国イスラエルがその存亡を賭けて、巨大で凶悪なイスラム国家と戦っているというハリウッド流のストーリーを黙従している」ようだ。もとよりこれは633人という少人数の世論調査結果にすぎない。

 しかも、ネオコン一派のボルトン国連大使は、レバノン・パレスチナ情勢が日々深刻化しているにもかかわらず、イランの核開発問題の討議を優先させている。ネオコン雑誌『ウィークリー・スタンダード』は、この機会に、イラン・シリアを軍事攻撃しろと煽っている。ボルトンの狙いは、ヒズボラの背後にあるイランを叩くことで、イスラエルの軍事作戦を後方支援しようということにあるのかもしれない。

 日本ではようやくマスコミが大きく報道し始めたが、政府閣僚からの発言は聞こえてこない。日本からの援助も含まれているだろうパレスチナの公共施設が破壊されたが、それにも抗議していないようだ。犠牲者のほとんどは民間人であり、ガザの人道危機が深刻化している。停戦に向けた緊急行動をあらゆる方面から働きかけていかなければならない。アメリカの反戦団体が動き始めている。その一端を紹介する。

 アメリカの反戦団体ANSWERのホームページに、この事態についての西海岸コーディネーターのリチャード・ベッカー氏の「アメリカーイスラエルの攻撃の目的は何か?」(2006年7月5日)という文章が公開されている。大意は以下のようである。

 ガザと西岸地区に対するアメリカがバックにあるイスラエルの攻撃は、今年1月のパレスチナ評議会選挙でのハマスの勝利でできたパレスチナ政府(PNA)を破壊し、パレスチナの抵抗運動を鎮圧することにある。

 イスラエルは、占領軍兵士1人の拉致を口実に、パレスチナ政府の閣僚、議会の議員、自治体の首長、高官を拘束した。すでに、イスラエルは、パレスチナ人約9000人を故郷から拉致し、獄中に閉じこめ続けている。何年もの経済封鎖に加えて、ハマス政権誕生後、ガザは完全封鎖された。そして、EU、アメリカ、カナダ、日本などの諸国は、国際援助と貿易を停止した。悪名高い人種差別主義者(レイシスト)のオルメルトを首相とするイスラエル政府は、医薬品、食料、その他の生活必需品を不足させ、パレスチナ人を締め上げている。

 「6月中旬の9日間に、14人のパレスチナ市民が、ガザで、イスラエルのミサイル攻撃で殺害された。最後に殺されたのは、ファティマ・アフメッド、二人の幼い子供の母親で、妊娠中のファティマ・アフメッド、そして彼女の兄弟のザカリア、13人の他の家族も負傷し、家は破壊された。/新たなイスラエルの攻撃は、6月27日に、ガザの唯一の発電所、水道施設、南北をつなぐ主要道路の破壊に始まった爆撃だった。イスラエル空軍は、多くの空爆を実行し、絶え間ない轟音が、居住区に重く響いていた。イスラエルの重砲弾幕は一日中続いている。7月1日、パレスチナ首相、イスマイル・ハニヤの事務所は、イスラエルの爆撃で破壊された。/7月5日には、11人のパレスチナ人が殺害され、多くの人々が負傷した。イスラエルの兵隊と戦車とヘリコプターが、ガザに再侵攻し、北部のベイト・ラヒヤとベイト・ハヌンの町、そして南部の都市ラファを包囲している」。

 イスラエルの計画的な破壊行為と人道に反する犯罪行為に対して、ワシントンは、これを支持しているように見える。ライス国務長官は、拉致されたイスラエル兵を解放すべきだと述べていることが、なによりもこの攻撃がアメリカ政府の全面的な支持がある証拠である。

 「北朝鮮のスカッド・ミサイルが海に試射されたことについてのグローバルな異常興奮をつくることが企てられている間に、ライスも他のワシントン高官も、数え切れないハイテク・ミサイルがパレスチナ人居住地域に撃ち込まれたことを非難する言葉を発しなかった」。

 パレスチナに対するアメリカとイスラエルの戦略は、イラクに対するものと似ている。経済制裁とそれに続く強力な軍事攻撃という点で。

 パレスチナ首相は、「この戦争全体は、あらかじめ計画されたものであることは明白である」と声明した。この攻撃は、時間をかけて考え抜かれたものであることは間違いない。このような最重要で潜在的な政治的諸結果をもたらす作戦が、ワシントンからの賛成と親密な助言なしにイスラエルだけで企てられることはありえない。

 この戦闘は、中東地域全体に拡大するかもしれない。アメリカとイスラエルの支配階級が共に、シリアの「体制変更」を求めているからである。

 アメリカとイスラエルは、パレスチナ民衆の士気をくじくことを狙っている。イスラエル政府の主要なメッセージは、すべての抵抗は空しい、 あなた(パレスチナ人)が、イスラエルの下で、奴隷民族となることを受け入れなければならない、さもなければ、あなたは去ることができる、というものだ。

 イスラエルによる植民地支配によって、あらゆるたとえようもない苦しみが課せられているにもかかわらず、パレスチナの人々の闘志は非常に強く見える。

 しかし、パレスチナ人は自分たちだけで勝つことは難しい。 かれらに対して連合して加えられる力は、単独で打ち勝つことができないくらい強力である。 現在必要なのは、かれらの主な敵であるこの帝国主義国の中でのより強い国際的な連帯である。

 アメリカ―イスラエルのパレスチナ人民への攻撃を停止しろ! 

 アパルトヘイト国家イスラエルへのアメリカのあらゆる支援を終わらせろ!

 帰還権を含むパレスチナ人の自決権を!

  レバノン情勢で国連安保理が非公開緊急会合へ
 
 【ニューヨーク=長戸雅子】国連安全保障理事会は20日午前(日本時間同夜)、ヒズボラとイスラエルの戦闘をめぐり、非公開の緊急会合を開く。アナン事務総長は国連主導の重装備の国際部隊派遣を検討するよう安保理に要請、これを受けて安保理の対応が本格化する。7月の議長国を務めるフランスは国際部隊派遣の可能性を検討する決議案のたたき台を18日に提示している。

 ドラサブリエール仏国連大使は19日、「安保理がこの危機にどんな貢献ができるかについて協議を始めるときが来た」と安保理が積極的な役割を果たすことに前向きな姿勢を示したが、ボルトン米大使は、ヒズボラが拉致したイスラエル兵を解放すれば、「停戦は即時に実現する」との立場で安保理の介入には消極的だ。(07/20『産経新聞』)

 イスラエル攻撃でレバノンの死者300人超
 
 レバノンのシニオラ首相は19日、各国大使を前に演説し、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対するイスラエル軍の攻撃で、これまでにレバノン人ら300人以上が死亡、約1000人が負傷したと述べ、停戦に向けた国際社会の介入を訴えた。フランス公共ラジオが伝えた。

 首相は50万人以上が避難を余儀なくされ、食料や医薬品が不足しているとして、緊急の人道援助も国際社会に要請した。

 一方、ロイター通信によると、ヒズボラが拠点を置くレバノン南部などで、イスラエル軍が19日に行った空爆による死者は64人に達した。12日の戦闘開始以来、1日の死者数としては最多。(共同)(07/20 『産経新聞』)

 米国民65%が自国の積極介入に反対と、レバノン情勢

  (CNN) イスラエル軍と、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの武装衝突が続くレバノン情勢で、米国民の65%が、米国は事態打開へ向けての積極的な役割を果たすべきではないと、介入に否定的な考えを示していることが19日分かった。CNNが委託した最新世論調査で判明した。

  同紛争では、アナン国連事務総長らが国際和平維持軍派遣などを想定しているが、米国民の45%がこれを支持、42%が反対。13%が分からない、だった。

   ブッシュ大統領の対応については、45%が指導力不足と回答、38%が満足していると答えていた。紛争の当事者への「同情」については、57%がイスラエルに感じるとし、4%がヒズボラと応じていた。20%がどちらにも感じないと回答、4%が両方に感じるとしていた。

  また、イスラエル兵が拉致された後の同国の軍事行動については、35%が正しいと主張、31%が「度を超している」、14%が抑制された軍事作戦と考えていた。20%は意見がなかった。

  停戦については、43%がイスラエルは即時に応じるべきだとし、39%はヒズボラが攻撃を仕掛けないまで、イスラエルは軍事行使を続けるべきだと応じていた。

 調査は成人633人を対象に電話で実施した。(7月20日CNN)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

戦争はハリウッド映画じゃない

  19日の英紙「タイムズ」の「世界がよそを見ている間に、ガザの死傷者が増えている」という記事は、イスラエル・レバノン戦闘に世界の目が向いている中で、イスラエルのガザ攻撃でパレスチナ民間人が、負傷、殺害されていることが忘れられていると指摘している。

 この戦争の評価についての記事などには表面的なものが多い。ことに、アメリカのネオコン流のヒズボラ=シリア=イランという図式を描いて、結局イラン対イスラエル(アメリカ)の代理戦争とする見解は、皮相である。その例が、19日の『東京新聞』の「核心」の「イスラエルVSヒズボラ 代理戦争 レバノン泥沼」という文章である。イスラエルを唯一説得できる米国は、レバノン空爆を擁護し、民間人殺害を黙認する。同記事は、「ヒズボラを配下に置くイランも、まだ本格仲介に踏み切らない。結局、イスラエルと周辺の思惑に左右され、レバノンの破壊が進み、遺体の山が築かれていく」という。皮相な見方だ。

 それに対して、元CIAテロ対策アナリストのラリー・ジョンソン氏のブログ記事「イスラエルの愚かな選択」の翻訳が、「暗いニュースリンク」というブログにあるが、ラリー氏のハマス・ヒズボラ観は、まったく違っている(『阿修羅掲示板』戦争板に同記事の投稿がある)。ラリー氏は、ハマスとヒズボラは「テロリストではない。テロ攻撃を実行しているが、テロリストとはいえないのだ。むしろ、彼等はそれよりはるかに危険だ。テロ行為を行う彼等は政治、社会、宗教、軍事組織として完全に機能しており、アルカイダやバスクのテロ組織よりもはるかに厄介な存在である。軍事行動を支える資源と人材に恵まれ、我慢強く作戦遂行でき、簡単には敗北しない」と書いている。

 ハマス・ヒズボラが、貧困層への社会福祉活動を通じて、かれらの強い支持を得ていることは、よく知られている。大体、貧困層をこうした政治勢力から切り離すには、貧困層の中から、中間層へ上昇する者を増やし、穏健化させるというのが一般的なやり方であるが、イスラエルはそれを妨害し、貧困層をなくすための医療や福祉や経済建設の発展を押しとどめ、今度も病院・公共施設・電力施設などのインフラを破壊している。ハマス政権が民主選挙で誕生すると、欧米日は、経済支援を停止してしまった。一方では穏健な政治を望みながら、他方でそれを担える中間層の成長を止めるような政策をやったのである。

 ラリー氏は言う。「アメリカ合衆国のほとんどの人々は、哀れな小国イスラエルがその存亡を賭けて、巨大で凶悪なイスラム国家と戦っているというハリウッド流のストーリーを黙従しているが、テレビ画面から伝わる現実は別の物語を示している」。その現実とは、「ハマスとヒズボラは軍事目標を攻撃した-偵察中の兵士を拉致するという事実は戦争行為であり挑発的だが、しかしテロリズムではない」ということだ。「イスラエルは兵士を撃った個人に攻撃しているのではない。イスラエルは大衆の懲罰に打って出たのだ」。つまり、兵士の拉致は、戦闘員同士の戦闘行為であり、それに対して、民間人を攻撃することは許されないことなのである。

 「イスラエルはどのように対応したか?彼等は市街地と民間施設を爆撃し、多くの一般市民を殺害している。自分にこのような権利が許されたらどうなるか考えてみよう。アラブ人『テロリスト』は軍事目標を攻撃し、少なくとも一台の戦車を破壊したので、テロリストと認定される。イスラエルはその復讐に、陸・海・空軍の戦力で市街地を攻撃し、それを正当防衛だとしている。もしもこの論理の偽善性に気づかないとしたら、我々はすでにプロパガンダと感情に深く蝕まれており、イスラエルやヒズボラ、ハマス同様、冷静に考えることができなくなっている。頭に浮かぶのは、部族主義と復讐心だけなのだ」。こうした偽善性は、すでにイラク侵略戦争にあったのである。9・11事件に関与していなかったフセイン政権が、テロとのつながりを疑われただけで、戦争を仕掛けられ、「テロリスト」とは何の関係もないイラク民衆が、空爆などで多く犠牲になったのである。

 ヒズボラが、仮に、イランやシリアの傀儡であって、軍事的に敗北し、解散したとしても、ヒズボラを支持したパレスチナ民衆は、別の対イスラエル抵抗組織を作り、支持し、参加するだろう。だから、イランが仮にヒズボラを支援しなくなったとしても、やはりイスラエルの偽善が続き、パレスチナ人への抑圧が続くうちは、第二第三のハマスやヒズボラが生まれてくるだろう。それがこれまでのパレスチナ解放闘争史の示してきたところである。それがあって、それに大国などが介入してきたのであって、大国などが、パレスチナ解放闘争を作ってきたのではない。上の『東京新聞』の記事は、それがまったくわかっていないから、皮相なのである。同記事が紹介している「「シリア・イラン(連合)と、イスラエルの戦争」。レバノンの進歩社会党のジュンブラット党首は、ヒズボラとイスラエルとの戦闘を「代理戦争」とみる」というのは、レバノン進歩社会党が、小ブル社会主義政党で、中間的立場で、事態を眺めているからこういうことを言っているのである。

 アメリカは、ブッシュが思わずサンクトペテルブルク・サミットの昼食会でイギリスのブレア首相相手にぼやいたように、このような事態をコントロールできないのをシリアのせいにしている。しかし、かつて、レーガン大統領は、イスラエルの反対を押し切って、アラブ諸国との友好関係を進めたし、クリントン大統領は、パレスチナ・イスラエルの和平合意を結ばせ、ワシントンで、アラファトとイスラエル首相を無理やり握手させるなど、中東和平で存在感を示してきた実績がある。ところが、ブッシュ大統領は、ただイスラエルの軍事行動を自衛権があるなどといってかばい、軍事攻撃がエスカレートするのを黙認し、国連やEUが国際平和軍派遣を言えば、それを止めようとし、できるだけイスラエルが、攻撃目標を達成するための時間稼ぎをしてやっている。

 ブッシュ政権は、こうして国連を軽視し、馬鹿にして、国際法もどんどん形骸化させ、自ら国際秩序を破壊しているのである。しかし他方では、9・11後の「対テロ戦争」の捕虜には、ジュネーブ条約は適用されないとしてきたアメリカが、その大統領令の一部を改定し、ジュネーブ条約第3条が適用されるようにするという。アメリカは、自国内でのスパイ活動や外国勢力による政治介入を強く警戒し、排除してきたが、世界中で、工作活動やスパイ活動を行ってきたし、今も行っている。最近では、ウクライナのオレンジ革命で、ユーシェンコ陣営に民間NGOを通じて、資金提供や政権転覆の指導を行っていたのが有名だが、日本でも、CIAによる自民党議員や社会党右派(後の民社党)に同様の工作活動が行われていたことが、公式に明らかになった。冷戦時代に、ヨーロッパで、反ソ反共のデタラメを宣伝するためにマスコミ対策として多額の工作資金をばらまいていたことも、CIA関係者から暴露されている。そういう活動は、日本でも、今も行われているのかもしれない。

 イスラエルやユダヤ人への同情を呼び起こすようなプロパガンダの背後にどんな勢力やどんな意図があるのか。ラリー氏がいう「アメリカ合衆国のほとんどの人々は、哀れな小国イスラエルがその存亡を賭けて、巨大で凶悪なイスラム国家と戦っているというハリウッド流のストーリーを黙従している」状態は、誰がなんのためにまたどのようにして作られたのか。それらは興味深いものではあるが、しかし今は、まず、これ以上犠牲者が増えないように、あらゆる方面から働きかけて、戦闘を止め、犠牲者を救うことが必要である。

  イスラエル軍がレバノン南部侵攻 ベイルート郊外を空爆

   ベイルート──イスラエル軍とイスラム教シーア派組織ヒズボラの交戦が続くレバノンでは19日未明、同国南部にイスラエル軍が侵攻した。イスラエル軍関係者がCNNに語った。イスラエル軍はこの数時間前、首都ベイルート南方郊外の空港付近を爆撃し、大規模な爆発による閃光が夜空を走った。今のところ死傷者の報告はない。

  18日にはイスラエルとレバノン両国で合計12人の死亡が確認された。レバノン東部の兵営を標的とするイスラエル軍の空爆では、レバノン兵11人が死亡。また、イスラエル北部ナハリヤではヒズボラのロケット弾が民家に着弾し、1人が死亡した。

イスラエル軍はここ1週間、ヒズボラに拉致されたイスラエル兵2人の無事解放を求めて、レバノンを集中攻撃している。イスラエル軍によると、ヒズボラはイスラエルに向けて、これまでに750発のロケット弾を発射した。

イスラエル北部の死者数は、民間人13人を含めて25人。一方、レバノン治安部隊は、同国の死者を183人、負傷者を456人としているが、民間人と兵士の内訳は不明。

   ヒズボラのメンバーはCNNに対し、イスラエルの空爆は士気に影響していないと述べ、徹底抗戦の構えを強調した。ベイルート南方郊外を独占取材したCNN記者によると、ヒズボラは記者の現地取材を急がせた。ヒズボラが主張する通り、民間人を標的にしているか、武器の備蓄がないかなどは確認できなかったという。

  ;ヒズボラは18日、イスラエル北部ハイファもあらためて攻撃。午後には警報サイレンが鳴って爆発音が4回響き、市民があわてて避難した。警察当局は、死傷者の報告はなかったとしている。また、医療関係者によると、サフェドやアッコなど4カ所もロケット弾攻撃を受けた。

   ;一方、イスラエル軍は、ベイルート北方ジュバイルでトラック2台を攻撃したほか、港町ティールを無人航空機で爆撃した。ティール市内にはヒズボラ支持者が多く、街中には指導者ナスララ師のポスターが張られている。

  ただ、レバノン駐留国連部隊のフランス軍関係者はCNNに対し、多くの住民が恐怖を感じて北方に避難していると述べ、外交努力による停戦の必要性を訴えた。

  こうしたなか、西側各国は現地からの自国民避難を急いでおり、米海軍の艦船が紅海から地中海に向かっている。

  ライス米国務長官は18日、訪米したエジプトのゲイト外相との会談後、条件が整った際に停戦を求める姿勢を示した。また、イスラエルのリブニ外相はエルサレムで、国連特使のビジャイ・ナンビアール事務総長政治顧問率いる代表団と会談した。(2006.07.19- CNN)

   レバノン問題 事務総長、20日に安保理に調停案

   イスラエル軍の攻撃が続くレバノン情勢について、国連安保理は20日にアナン事務総長から調停案の報告を受けることになった。事務総長が現地に派遣した特使チームが関係国の意見聴取を終えて19日に戻る予定を受けてのことで、国連による停戦の働きかけがようやく本格化する見通しだ。

   アナン事務総長は18日、ブリュッセルの欧州連合(EU)本部を訪問し、バローゾ欧州委員長と会談。その後、先にブレア英首相と提案した国際部隊の派遣を含む包括的な調停案を、安保理に示す意向を表明した。国際部隊について、アナン氏は情勢の安定化を図るためとして、現在展開している約2000人規模の国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)と比べて「ずっと大規模な部隊が必要だ」と指摘した。また、兵力の提供については「欧州諸国や他の地域の国々に期待する」と述べた。

   ロイター通信によると、国際部隊派遣に消極的な米国も、ライス国務長官を20日にニューヨーク入りさせ、アナン事務総長と協議する見通しだ。

 対ヒズボラ、1000カ所超攻撃 イスラエル、救援車空爆も

 【エルサレム18日共同】レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対する軍事作戦を指揮するイスラエル軍のアイゼンコット司令官は18日、記者会見し「これまでに1000カ所を超える標的を攻撃した」と述べ、空爆の成果を強調した。

 また、シリアがヒズボラにロケット弾などの武器供給を続けているとして、シリアからレバノン南部に向かうトラックも空爆したことを明らかにした。

 しかし、レバノンのテレビ報道によると、救援物資を運んだトラックも攻撃を受けて運転手が死亡しており、無差別空爆に批判が広がりそうだ。

 ロイター通信によると、イスラエルの攻撃によるレバノン側の死者は計235人。ヒズボラの攻撃によるイスラエル側の死者は計25人。(共同通信2006年7月19日)

  [イタリア]外相がイスラエルと米国批判

  イタリアのダレーマ外相は18日に国会下院で、レバノンとパレスチナ・ガザ地区に対する軍事攻撃を続けるイスラエルを「(中東において)憎悪感情を募らせ、不安定な状況をもたらしている」と批判した。さらに米国主導の過去数年の対イラク政策が中東に危機をもたらした一因とも指摘した。(2006年07月19日『毎日新聞』)

 左派弱体化へ秘密資金 米CIA、保革両勢力に

 【ワシントン18日共同】米中央情報局(CIA)が1950年代から60年代にかけて、日本の左派勢力を弱体化させ保守政権の安定化を図るため、当時の岸信介、池田勇人両政権下の自民党有力者と、旧社会党右派を指すとみられる「左派穏健勢力」に秘密資金を提供、旧民社党結党を促していたことが18日、分かった。

 同日刊行の国務省編さんの外交史料集に明記された。同省の担当者は「日本政界への秘密工作を米政府として公式に認めたのは初めて」と共同通信に言明した。

 米ソ冷戦が本格化した当時、日本を反共の「とりで」にしようと、自民党への支援に加え、左派勢力を分断する露骨な内政干渉まで行った米秘密工作の実態が発覚。日本の戦後政治史や日米関係史の再検証にもつながる重要史実といえそうだ。(共同通信2006年7月19日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

レバノン攻撃は数週間続くとイスラエルの軍高官が語る

 18日の「ニューヨークタイムズ」は、イスラエルのコプリンスキー副参謀長が、イスラエル軍のレバノン攻撃は、数週間続くだろうと述べたと伝えた。レバノンでの死者は200人を超え、イスラエルの死者は24人だという。アメリカ政府は、ライス国務長官を中東に特使として派遣することを決定したが、日時や訪問先などの具体的なことは発表していない。

 ブッシュ大統領は、イスラエルの軍事行動を自衛権の発動として支持している。パレスチナ武装勢力が拉致したイスラエル軍兵士は一人で、ヒズボラが拉致したイスラエル軍兵士は2人であるが、これまでにイスラエルが拉致監禁しているパレスチナ人などは数千人に達している。軍人を拉致したことに対して、民間人多数がイスラエルの攻撃で死傷しており、さらに、パレスチナ評議会の議員多数や政府要因を拉致している。これまでにイスラエル軍に殺害されたパレスチナ人などは、パレスチナ武装勢力に殺害されたイスラエル人の何十倍である。人権は、イスラエル人もパレスチナ人も平等であるから、あまりにも釣り合わない数字だ。

 ネオコン一派は、好機だとして、シリアとイランをたたけと煽っている。ネオコン雑誌「ウィーイクリー・スタンダード」のクリストルは、ABCニュースで、そう語った。しかし、おおかたの識者は、米軍はイラクで手一杯で、これ以上の軍事行動は無理だと述べている。ネオコンの軍事解決一辺倒の「いけいけどんどん」の超楽観主義は、常軌を逸している。いわゆるプラス思考とかポジティブシンキングとかいうアメリカのニューソート宗派の極端な感じである。人が死ぬことも、考え方次第だというような。しかしそれは、あくまでも自分たちの安全のためであって、そのためには、他人がいかに犠牲になってもかまわないという感じである。

 帝国主義戦争や侵略を、民主主義的な民族解放のためと偽るのは、どこの帝国主義国もやってきたことである。そういうことをやろうとして挫折したのが、「新しい歴史教科書をつくる会」であった。イスラエルが、やっているのも、そういう類のことだ。列強のイギリスが、第一次世界大戦で、対ドイツ戦争に勝つために、ユダヤの金融王のロスチャイルドからの資金獲得と引き替えに、パレスチナへのシオニスト国家建設を容認し、同時に、アラブ人にも同じ土地に建国を認めたことから、今日のパレスチナ問題が発生したのである。その後、パレスチナには、ヨーロッパで差別抑圧されたユダヤ人が移住して、1948年にアラブの反対を押し切って、イスラエルを建国した。

 第一次世界大戦では、イギリスは、アジア戦線でも、中国のドイツの利権を日本に与えるなど、日本の対独戦協力を誘うために、秘密協定を結んだ。この時、日本が、そんなものはいらないから、イギリスもドイツもアジアから手を引けと言っておれば、アジアの欧米の植民地人民も喜んだに違いないのだが。朝鮮半島についても、自由に独立する権利を認めていれば、よかっただろうに。

 イスラエルは、国連ができ、侵略を非合法化した後に、戦争によって、領土を拡大し、占領を続けている侵略国家である。イラクのクウェート侵略が非合法なら、イスラエルの侵略も非合法である。イラクは多国籍軍の軍事攻撃によって、クウェート国境から追い出されたのに、イスラエルはそのまま占領を続け、そればかりか、今、パレスチナ「領内」やレバノン領内に平然と国境を超えて軍事攻撃を続けている。

 先の中東歴訪で、小泉首相は、パレスチナへの人道援助の再開を約束してきたばかりである。しかし、今は緊急事態である。イスラエル軍は、病院や電力施設などのインフラを破壊しており、けが人や病人に対する医療活動も十分に行えない状態になっている。長引けば、人道問題が深刻さを増す。レバノン攻撃では、カナダ人家族も犠牲になったという。日本政府は、イスラエルの首相に自制を求めたが、即座に拒否された。日米は、先の日米首脳会談で、人権などの価値観を共有する強力な地球規模の同盟関係であることを高らかに宣言したのだから、さっそく、地球上で今起きている人道危機に対して、アメリカが立派に行動するように、促すべきだろう。

  イスラエルのレバノン攻撃続く 民間人ら死者230人

 イスラエル軍はレバノン攻撃開始から7日目の18日、空爆を続行した。ロイター通信によると、住民ら26人が死亡、イスラエルの7日間の軍事作戦によるレバノン側の死者は約230人になった。大半はイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとは無関係の民間人が巻き添えになっている。イスラエル軍高官は、戦闘の長期化や地上部隊による大規模侵攻の可能性を示唆した。

 イスラエル軍のカプリンスキー副参謀長は同日、地元ラジオに対し、戦闘終結まで「数週間かかる」と明言。「何カ月も続くわけではなく、また何週間もかからないことを望むが、目標を達成するにはまだ時間が必要だ」と述べた。「目標」について具体的には語らなかったが、ヒズボラのレバノン南部からの撤退や兵士の解放などを指すとみられる。さらに、地上部隊の大規模侵攻については「現段階では考えていないが、必要があれば行う」と述べた。

 一方、ヒズボラのロケット弾攻撃は同日もイスラエル北部の各地を襲い、ナハリヤで1人が死亡した。これまでのイスラエル側の死者は市民13人、兵士12人。

 また、レバノン国内の避難民は同国政府推計で40万人に達した。国連児童基金(UNICEF)や国際赤十字が、推定約3万6000人にのぼる首都やその周辺の学校、公園に集まった避難民に、水や衛生品の供給を開始した。また、欧米各国は陸海空のあらゆるルートでレバノンからの避難活動を本格化させており、米CNNなどによると、数万人規模に達するとみられる。(2006年07月18日『朝日新聞』)

 ブッシュ大統領の本音、マイクに筒抜け 米英首脳会談

 「(国連が)シリアに、(イスラム教シーア派武装組織の)ヒズボラのくそみたいな行為をやめさせるべきなんだ」――。主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)で17日、ブッシュ米大統領がブレア英首相に私的に話した内容が、スイッチが入ったままのマイクを通じて取材陣に筒抜けになった。大統領は、国連への不信感をあけすけに語った。

 マイクを通じて漏れ伝わったのは、昼食会での両首脳の会話。これに先だってブレア首相と会談したアナン国連事務総長は、イスラエルとヒズボラ双方に暴力の即時停止を求める考えを表明していた。

 メディアが報じた会話記録によると、ブッシュ大統領は「コフィ(アナン氏)に、『アサド(シリア大統領)へ電話をかけて、何とかしろ』と言いたい気分だ」「彼(アナン氏)の停戦案が気に入らない。彼の言うことは、基本的に停戦すればすべて何とかなる、というものだ」などと述べ、アナン氏への不満をぶちまけた。(2006年07月18日『朝日新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

G8での中東紛争問題協議によせて

 ロシアのG8サミットが終わった。北朝鮮のミサイル問題やイスラエルのレバノンへの軍事攻撃が激化する中での、サミットで、これらの問題が重要な議題にのぼった。

 北朝鮮のミサイル問題では、国連決議の内容を確認するというようなもので、その肝心の国連決議は、中国の拒否権発動をさけて、制裁の根拠となる国連憲章第7条の記述を削除した非難決議の意味合いの強いものになった。アメリカの国連大使は、イラク侵略戦争を推進したネオコン派のボルトンであった。挙手採択の時に、中ロの国連大使が、にやにや笑っていたのが、印象的であった。その後、ロシアのサミットでも、中国の胡首相が、満面の笑みをたたえて、米中首脳会談などにのぞんでいたのも印象的だ。小泉首相は、もはや隠居気分で、はしゃいでいる。はやく総理をやめて自由に遊びたいという気持ちが素直に現れているようだ。

 イスラエルとヒズボラなどの戦闘については、声明で、「レバノンの武装勢力のテロ行為を非難するとともに、レバノン攻撃を続けるイスラエルに自制を求めた」に止まった。しかし、国連のアナン事務総長とイギリスのブレア首相が、ヒズボラの攻撃を停止させるために、レバノン南部に、国際部隊を派遣する必要があるという意見で一致したという。フィンランド外相も、国連かEUの国際軍を、平和維持軍として派遣する必要があると述べたという。国連決議に基づく平和維持軍が編成されて派遣された場合、日本はどうするのだろうか? すでに、PKO活動のために、シリアのゴラン高原には、自衛隊が派遣されているのだが。国連安保理では、イスラエルと兵士拉致の両方を非難する国連決議には、日本は賛成したが、アメリカの拒否権発動によって葬り去られた。イスラエルは、イギリスの国際軍の派遣提案を、「ヒズボラの武装解除が先だ」と即座に拒否した。

 17日の『日経新聞』社説は、なんだかぐちゃぐちゃとわけのわからぬことを書いた上で、「主要国は、どちらか一方の立場に共感を示すのではなく、これ以上の情勢悪化を防ぐため双方に「撃ち方やめ」を強く迫るべきだ。米国も含め、中東の戦火拡大を防ぐ一致した意志を示す必要がある」と主張している。遅ればせながらも、国際平和部隊の派遣の話が出ているというのに、この程度の結論でいいのだろうか? シオニスト・ロビー、ネオコン、キリスト教原理主義、と、シオニストと親シオニストが、今のブッシュ政権に強い影響力を持っているので、アメリカがイスラエルに「撃ち方やめ」を強く迫ることは難しい。

 ヒズボラの攻撃を止めるためという名目をたてて、アメリカを引き込んで、国連平和部隊を派遣するための国連決議を採択して、実際にはイスラエルの軍事行動を止めるということも考えられる。しかし、それで、イスラエルのガザでの軍事行動を止めることができるかどうか。ガザへの国連平和軍の派遣には、アメリカが拒否権を使うことは目に見えている。しかし、この戦闘が拡大していくと、世界のイスラム教徒の憤激が高まり、その怒りの矛先は、イスラエルはもちろん、イスラエルを擁護し続けるアメリカに向くことは明らかである。そのアメリカは、13万人の軍隊をイラクに置いているが、それも戦線が延びきって、消耗してきており、手一杯である。アメリカの識者からは、イラク戦争を、ベトナム戦争に喩える声や、アメリカ政治史では、こういう時に、政権交代で、事態を打開してきたことを思い出させる意見も出ている。

 フランスは、レバノンに利権があり、イスラエルのレバノン攻撃に憤慨している。G8では、エネルギー問題で、省エネや石油生産増強のための投資拡大などが合意されたが、中東が戦火で不安的な情勢のままでは、この地域の石油生産増強への安定的な投資は困難であり、原油高が止まらないことも明らかである。G8では、声明というメッセージ以外に、実効的な方策はとれない。したがって、サミットの意味を疑問視する声も出るわけである。イスラエルへの制裁は、アメリカが、安保理決議で拒否権を使うし、イスラエルを支援している以上、実効性のあるものにはならない。

 しかしながら、イスラエルのパレスチナ人への抑圧がなくならない限り、この地に本当の平和が訪れることはない。シオニスト・イスラエルが、パレスチナ人を奴隷的地位におとし込めているうちは、パレスチナ人の抵抗は止まないのである。まずは、緊急の行動として、この戦闘を止めなければならないが、問題の根本的解決には、さらにねばり強い努力が必要である。イスラエルがあくまで武力に頼るのであれば、パレスチナ人は武力による解放闘争を続けるほかはなく、シオニスト・イスラエルが倒れるまで、闘わざるをえないだろう。イスラエルが共存を望むのならば、軍事的解決の道を自ら捨てるほかはない。

  国際部隊の派遣拒否 イスラエル、攻撃続行

  【エルサレム17日共同】イスラエル軍は17日もレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘を続け、ベイルートなどを空爆した。国連や英国は事態収拾に向け国際部隊の派遣を提唱したが、イスラエルは「ヒズボラの武装解除が先」と事実上拒否した。

 イスラエル軍放送は、国境1キロ以内にヒズボラが近づかないようレバノン領内に「安全保障地帯」をつくる作戦を同軍が検討していると伝えた。

 イスラエル政府報道官は「作戦を止めるつもりは今のところない」と攻撃続行の姿勢を示しており、国際的な仲介努力は活発化せず、戦闘はさらに激化しそうな気配だ。

 イスラエル軍は17日、艦船への攻撃に使用されたとしてレバノン北部の海岸にあるレバノン軍施設を空爆。ベイルート国際空港の燃料タンクも破壊した。(共同通信) - 7月17日

 レバノン侵攻 報復攻撃では解決せぬ

 イスラエルはパレスチナのガザに続き、レバノンへの大規模攻撃に踏み切った。拉致兵士の奪還というが、度を越す。一つ間違えば新たな中東戦争の懸念すらあり、国際社会の早急な介入が必要だ。

 イスラエル軍のレバノン空爆はベイルート国際空港や幹線道路、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの拠点、発電所、市街地にまで及ぶ。陸海空を封鎖し、予備役兵の招集も始めた。

 イスラエルの攻撃は、ヒズボラに拉致された兵二人の奪還を名目にしながら、市民もろともヒズボラつぶしを狙い、国際社会に「やり過ぎだ」と非難の声が広がった。フランスのシラク大統領も「レバノンを破壊するつもりか」と批判する。

 ヒズボラはレバノン議会に議席を持つ公認政党だ。その民兵に対してはアラブ強硬派の隣国シリア、さらにシーア派原理主義のイランが支援を続けてきている。

 イスラエルのオルメルト首相は「兵士拉致の黒幕は両国だ」と名指しで批判するが、万一シリアなどに対し軍事行動を起こしたら、それこそ中東戦争に発展しかねまい。

 イスラエルのレバノン攻撃は、パレスチナへの空爆・侵攻と二正面である。パレスチナではイスラム原理主義のハマス政権が、イスラエルと国際社会による経済制裁の“兵糧攻め”、支援停止に遭い、政権が崩壊寸前、住民も飢餓の窮地にある。ハマス軍事部門が打開策としてイスラエル兵を拉致し、イスラエルに収監中のアラブ人捕虜との交換を求めたのと呼応するように、ハマスと連帯するヒズボラも同様作戦でイスラエルの挟み撃ちに出たとみられる。

 イスラエルは過剰な報復攻撃を拡大させる一途のようだが、軍事力での兵士奪還は至難と悟るべきだ。イスラエルは過去にヒズボラと捕虜交換をした実績がある。現オルメルト政権が「弱腰」との批判をかわそうと軍事に頼り続けるなら、それは愚策と言わねばならない。むろん、ヒズボラ、ハマス側も兵士の解放を含め、現実的な交渉による戦火拡大回避に向かうのが急務である。

 イスラエルを抑える役目は第一に米国が負わねばならない。国連安保理のイスラエルに対するガザ侵攻非難決議案を、拒否権行使で米は葬ったが、レバノン侵攻にも“理解”を示し続けることはもう許されまい。

 アナン国連事務総長が現地に使節団を派遣するが、国際社会の動きはまだ鈍い。主要国首脳会議、アラブ外相会議では、中東の戦火をこれ以上拡大させない論議と知恵を期待したい。(2006年7月17日『東京新聞』)

 議長総括で北朝鮮ミサイル、拉致に懸念…サミット閉幕

 【サンクトペテルブルク(ロシア)=田中隆之、黒川茂樹】第32回主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)は17日午後(日本時間17日夜)、北朝鮮のミサイル発射や拉致、核問題への懸念を盛り込んだ議長総括を発表し、閉幕した。

 議長総括は、拉致問題の「早急な解決」を求めた。

 悪化する中東情勢については声明を発表し、レバノンの武装勢力のテロ行為を非難するとともに、レバノン攻撃を続けるイスラエルに自制を求めた。

 議長総括では、北朝鮮のミサイル発射について、北朝鮮を非難する15日の国連安全保障理事会の対北朝鮮決議を支持したうえ、北朝鮮に対し、「ミサイル発射のモラトリアム(凍結)に関する既存の約束を再確認するよう求める」として、2002年の日朝平壌宣言や6か国協議の05年9月の共同宣言に基づき、ミサイル発射の凍結を求めた。

 拉致問題に関しては、「早急な解決を含め、国際社会のほかの安全保障および人道上の懸念に対応するよう求める」と明記し、重大な人道問題であることを確認した。さらに、核兵器と核計画の放棄と、6か国協議への即時・無条件復帰も北朝鮮に要求した。

 サミットの議長総括に、北朝鮮のミサイル、核、拉致の3問題が同時に盛り込まれたのは初めてだ。

 中東情勢に関しては、国連が中心的な役割を果たし、政治的、外交的な解決を追求するよう求めた。さらに、別の声明では、イスラエル軍と対立するレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラなどを非難するとともに、暴力の中止を要請した。

 議長総括は経済分野で、閣僚級協議が難航している世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の年内最終合意が不可欠だとし、全加盟国に交渉を促した。農業、非農産品の2分野の大枠合意を8月中旬をめどにした「1か月以内」に実現するため、WTOのラミー事務局長に努力を求めた。

 また、世界のエネルギー安全保障では、エネルギー市場の透明性向上や省エネルギーの推進などの「サンクトペテルブルク行動計画」に沿って、G8が協調する姿勢を打ち出した。

 「省エネはエネルギーの生産と同じである」と位置づけ、包括的なエネルギー利用効率化の取り組みが重要との認識で一致した。原子力発電がエネルギー安保に貢献するとの認識も盛り込んだ。

 世界経済については、「力強く拡大している」と評価しながらも、「高く不安定な原油価格」や「世界的な不均衡」「保護主義の増大」に懸念を示した。(2006年7月17日『読売新聞』)

 レバノンに国際部隊派遣で一致…国連事務総長と英首相

 【サンクトペテルブルク=飯塚恵子】アナン国連事務総長とブレア英首相は17日、サミット開催中のサンクトペテルブルグで会談し、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる戦闘を沈静化させるため、紛争地帯のレバノン南部に、国際部隊を派遣する必要があるとの認識で一致した。

ブレア首相は会談後の記者会見で、「我々が(暴力停止の)条件を生み出さない限り、この暴力は止まらない。唯一の方法は、(ヒズボラの)イスラエルへの爆撃を止められる国際軍を派遣することだ」と述べた。

 英首相官邸筋によると、国連安全保障理事会は20日、現地入りしている調査団から報告を受けた後、国際軍の派遣についてただちに検討に入るという。

 アナン事務総長は共同会見で、イスラエルに対し、国際法に従い、一般市民にに被害が出ないよう自制を求めた。

 また、欧州連合(EU)議長国のフィンランドのトゥオミオヤ外相は17日、ブリュッセルで、「国際軍は国連かEUが派遣し、平和維持軍的な役割を果たすことになるだろう」と述べた。(2006年7月17日『 読売新聞』)

| | コメント (0) | トラックバック (2)

イスラエルを止めないと世界が危ない

 イスラエルの軍事攻撃とヒズボラの間の戦闘が激しくなっている。これは、日本にとって、遠い出来事のようだが、そうではない。例えば、中東情勢の不安定化を受けて、原油が値上がりしている。

 そして、9・11事件以来、アメリカは、「テロとの戦争」に突入を宣言し、それをブッシュは第三次世界戦争と呼んでいる。つまりは、アメリカは戦時中である。そしてこの戦争の戦場は、世界中であり、日本でも「テロ対策」として、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(国連国際組織犯罪条約)に基づく国内法整備として、継続審議になったが、「共謀罪」新設が目論まれたのである。

 アルカイダなどのイスラム系武装集団は、世界各地で、爆弾攻撃などを行い、スペインの列車爆破事件、ロンドンでの地下鉄・バス同時爆破事件などを起こしている。イスラエルによるパレスチナ攻撃は、全世界のイスラム教徒の怒りを呼び起こし、最大のイスラム人口を抱えるインドネシアなど各地で、イスラム教徒のイスラエルへの抗議デモが起きている。こうしたイスラム教徒の反イスラエル感情を利用するのが、アルカイダなどのイスラム系武装組織のやり方だから、今、世界のどこかで、また爆弾攻撃などの準備を急いでいるかもしれない。日本は、もともとは中東諸国と良好な関係を持ってきたが、あれだけ、対米追随が露骨な小泉首相の姿を見れば、日米が一体に見えてもおかしくない。もちろん、在日米軍基地・施設や米国大使館やイスラエル大使館などもターゲットになりうるのである。

 かれらの攻撃の口実となるイスラエルの軍事攻撃を早く止め、和平協議を進めることだ。非軍人の子供を含む民間犠牲者が増大している。親を殺されたり、傷つき、殺害された子供たちの姿が、イスラム世界に流され続ければ、イスラム教徒のイスラエルへの怒りは、増大していくばかりである。

 「イスラエル軍は国際法違反」国連事務次長が非難
  パレスチナ問題

 【ジュネーブ=渡辺覚】国連人道問題調整事務所(OCHA)のヤン・エグランド所長(国連事務次長)は14日、イスラエル軍によるレバノン空爆やパレスチナ自治区侵攻などに対し、「国境・港湾の封鎖や空港空爆で罪のない第三者が健康や生活の被害を受けるなら、それは誤りで、国際法違反に相当する」と述べ、イスラエル軍を非難した。

 さらに、エグランド氏はパレスチナ自治区が食料・エネルギー供給、医療・衛生などの点で深刻な状況にあると指摘し、「現状は過去10年間で最悪の水準だ。すべての当事者に抑制を求める」と語り、事態の沈静化への努力を強く訴えた。

 また、ルイーズ・アーバー国連人権高等弁務官も同日、イスラエル軍とイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの双方に、民間人に対する攻撃の即時中止を訴える声明を発表した。(『読売新聞』7月15日)

 「ヒトラーと同じ」イラン大統領がイスラエル非難
 パレスチナ問題

 【テヘラン=工藤武人】イランのアフマディネジャド大統領は15日のテヘランでの演説で、「シオニストはヒトラーの犠牲者だと言っているが、本質はヒトラーと同じだ」と述べ、レバノン侵攻を続けるイスラエルをナチス・ドイツの独裁者ヒトラーになぞらえ激しく非難した。

 イラン国営テレビなどが伝えた。

 大統領は、「ヒトラーは(他国を)攻撃するための口実を思い付いたが、シオニスト政権(イスラエル)もイスラム世界を攻撃するためヒトラーと同様に振る舞っている」とイスラエル兵拉致を理由に攻撃を続けるイスラエルを批判した。

 さらに、大統領は、「このままでは、この地域の人々の怒りが爆発するだろう」と警告、イスラエル寄りの姿勢を取る米国に政策見直しを求めた。(『読売新聞』2006年7月16日)

 ヒズボラとイスラエル軍の交戦続く 非常事態宣言も

  エルサレム、ベイルート(CNN) レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは16日、イスラエル北部ハイファをロケット弾で攻撃し、イスラエル人8人が死亡した。イスラエル警察当局が明らかにした。イスラエルとヒズボラの交戦が12日に始まって以来、ハイファでは2度目の攻撃。ヒズボラはイスラエルによる15日夜の空爆の報復攻撃として、ハイファを標的に「数十発」のロケット弾を発射したことを認めた。

  イスラエル軍が同国軍兵士2人を拉致したヒズボラへの報復攻撃を継続する一方、ヒズボラの指導者ナスララ師はイスラエルに対する宣戦を布告している。AP通信によると、イスラエル軍は16日未明、ヒズボラの拠点であるレバノンの首都ベイルート南部にある発電所を空爆。15日にはベイルート南方の郊外ダヒヤや、シリア国境に近いレバノン北部を爆撃した。また、ヒズボラが14日にレバノン沖でイスラエル軍艦艇を攻撃したことの報復として、海岸沿いにあるレバノン軍のレーダー施設を空爆。イスラエル軍は、艦艇攻撃がヒズボラとレバノン軍の連携で行われたとの認識を示した。

  レバノンのメディアによると、イスラエル軍は15日、陸空海でベイルートやトリポリ、ジュニエといった標的への攻勢を強めた。内務省関係者によると、ベイルート市内のヒズボラ拠点は14日に続いて再び空爆された。死傷者は報告されていない。イスラエル軍は空爆を認めるとともに、レバノン国民に向けて現場付近に近寄らないようビラなどで警告したと説明した。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは、空爆の標的がヒズボラの精神的指導者モハメド・フセイン・ファドラーラ師だったと伝えている。イスラエル軍はこのほか、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスのベイルート本部も攻撃した。

  イスラエル軍がレバノン海上を封鎖したため、南部海岸沿いのサイダは漁船が出港できない状態となった。イスラエルは15日、ヒズボラやその指導者ナスララ師がレバノンを破壊しているとする宣伝ビラを空から播いた。サイダとベイルート間の橋はイスラエル軍の空爆で破壊されたため、道路交通も途絶えている。

  この5日間の軍事衝突では、少なくともレバノン人93人、イスラエル人13人が死亡した。

  レバノンのシニオラ首相は15日、イスラエル軍を「戦争機械」と非難し、イスラエル軍の攻撃によってレバノンが「惨事地域」になっていると指摘。即時停戦に向けた国連の介入と国際社会の協力を求め、停戦によって1949年の休戦協定に基く「全領土の主権」が確立できるとの認識を示した。首相はまた、イスラエルが道徳や合法性を欠いたままレバノンを集団で処罰していると述べ、国民に団結を呼びかける一方、レバノン政府がヒズボラの計画について何も把握していないと明言した。

  一方、イスラエル外務省のレゲブ報道官は、「ヒズボラが武装解除に応じた場合、危機は直ちに緩和されるだろう」とコメント。また、イスラエルがヒズボラのロケット弾攻撃の標的となってきた北部ガリラヤ地域に非常事態宣言を出したと発表した。イスラエル政府はこれで、同地域の学校や商業施設、飲食店などに閉鎖を指示できるようになる。報道官はそのうえで、レバノンのシニオラ首相が適切に職務を遂行し、国連安保理決議に従ってヒズボラを武装解除していた場合、今回の危機は回避されただろうと述べ、レバノンが今回の危機を招いたとの認識を示した。報道官はまた、イスラエルの攻撃が精密であると主張する一方、ヒズボラの攻撃は無差別的だと批判した。

  こうしたなか、アラブ連盟のムーサ事務局長は、エジプトの首都カイロで行われた外相会談の終了後、中東和平プロセスが死んだ状態にあるとコメント。「特定勢力がイスラエルを支援し、放任したことが原因だ」と述べた。

  主要国首脳会議(サミット)の開催地であるロシア・サンクトペテルブルクでは、ブッシュ米大統領がシリアに対し、武装解除に向けてヒズボラを説得するよう促した。ブッシュ米大統領はまた、今回の暴力沙汰の責任はヒズボラにあるとの認識を示し、シリアのヒズボラ支持勢力も批判した。(2006.07.16- CNN)

 ヒズボラにイランがミサイル供給か、命中精度が向上

 【エルサレム=三井美奈】レバノンのシーア派組織ヒズボラは16日、ハイファを攻撃した際に、イラン製ミサイル「ラード」を使ったとの声明を発表した。

 同ミサイルはこれまで対イスラエル攻撃に使われた旧ソ連開発のカチューシャ・ロケット砲より射程が長く、命中精度も高い。イスラエル軍はイランが兵器性能を著しく向上させている上、ヒズボラに大量に供給していることに衝撃を受けている。

 イスラエル軍によると、「ラード」ミサイルは射程40キロ以上。ハイファでは一部が列車の操車場に着弾した。元参謀総長のモファズ運輸相は、被弾した操車場を訪れ、根拠は明らかにしなかったが、「弾薬はシリアが提供した」と述べ、イランとシリアがヒズボラの装備拡大の背後にいるとの見方を示した。(『読売新聞』  7月17日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

イスラエルの軍事行動を止めないと犠牲者が拡大する

 イスラエルの軍事行動が拡大の一途をたどっている。明らかに、イスラエル兵拉致を口実に、一気に、ヒズボラやハマスの弱体化をはかろうという狙いがあり、事前に何度もシュミレーションした計画をこの機会に実行に移したものである。そうでなければ、沖合に艦艇を並べた上での、空港などのインフラをねらい打ちにした素早い攻撃はできなかっただろう。きっかけは、自然発生的なものであったとしても、イスラエルは、この種の攻撃チャンスを狙っていたことは明らかである。それに、ハマス政権の誕生以来、イスラエルはことあるごとに、挑発を繰り返しており、小競り合いが続いてきたのである。その上での、今回の大規模軍事行動なのである。そのことがよくわかる資料が、「アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名 事務局」のサイトにあるので、「反占領・平和レポートNo46」「イスラエル軍はガザ侵攻を即刻中止せよ!―「拉致兵士救出」のまやかしを暴露し、イスラエル非難の声を広げよう―」の一部引用させていただく。

  • 6月7日、衝突と対立を繰り返していたハマスとファタハが衝突停止で合意。
  • 6月8日、ガザ地区南部ラファへの空爆。パレスチナ人民抵抗委員会の創設者で自治政府の内務省監察官に任命されていたアブサムハダナ氏ほか4人が殺害され、10人以上が負傷。
  • 6月9日、ガザ北部海岸へ地中海から砲撃。海水浴の子どもと女性を含む7人が殺害され、数十人が負傷。車を標的にしたミサイル攻撃も数回行われ、民衆抵抗委員会の活動家3人が殺害される。ハマスは、停戦を破棄し十数発のロケット弾攻撃。死傷者なし。
  • 6月11日、ハマスのロケット弾攻撃によりイスラエル南部スデロト付近で3人が重軽傷。イスラエル軍によるミサイル攻撃でハマスの地区幹部2人が殺害され、数人が負傷。5月中旬のパレスチナ各党派の合意文書への署名をハマスの一部メンバーが撤回表明。イスラム聖戦も署名撤回を表明。
  • 6月中旬、ハマスとファタハの対立が再度激化。
  • 6月13日、ガザ空爆。子ども2人を含む10人が殺害され、20人近くが負傷。6月9日の海水浴家族への砲撃に対する国際的非難が高まる。イスラエルは砲撃を否定し、海岸に埋まっていた爆発物によるものだと強弁。
  • 6月17日、米国、EU、ロシア、国連の4者が自治政府を通さない形での住民への直接支援について合意。アッバス議長を調整役とすることで新たな分断策。しかし、アッバス議長は不満を表明。
  • 6月下旬、ハマスとファタハの合意へ向けた協議が進展。
  • 6月20日、ガザ空爆。子ども3人が殺害される。
  • 6月21日、ガザ地区南部ハンユニスで、イスラエル軍によるミサイル攻撃が民家を直撃し、2人が殺害され、妊婦や子どもを含む十数人が重軽傷。イスラエル軍当局は、武装勢力を狙ったミサイルが軌道を外れたと釈明
  • 6月25日、イスラエル南部の軍拠点をパレスチナ武装勢力8人が襲撃し、イスラエル兵2人を殺害して1人を拉致。パレスチナ武装勢力側は2人が射殺された。ハマスの軍事部門とガザの民衆抵抗委員会が共同で、「イスラエル軍による市民殺害への報復」と声明を発表。
  • 6月27日、ファタハとハマスの間で政策文書が合意され、まもなく正式発表される見通しであると報じられた。
    ※この合意文書の要旨は次のようなものであると報じられている。「イスラエルによる占領を容認しない。エルサレムを首都とし、1967年に占領された全ての土地で構成される国家創設を要求する。パレスチナ人民の唯一の合法的な代表としてのPLOを強化する。パレスチナ人民には1967年に占領された土地で、さまざまな手段による抵抗の権利がある。パレスチナ人民にとって公正でパレスチナ人の権利を保護する国際的決議に基づいた包括的な政治プランを要求する。パレスチナ人民、アラブ諸国、世界各国の支持を得られる統一されたパレスチナ政府を追求する。イスラエルとの交渉はPLOとパレスチナ自治政府議長の権限である。占領に対し、パレスチナ人民のより高次の利益を考慮に入れた最適な抵抗手段を模索する。」
  • 6月28日未明、イスラエル軍、ガザ南部に侵攻し今回の軍事行動を開始。

 こうして時系列で見ると、パレスチナ側で、ハマスとPLOファタハの間の協定が進展し、合意に向かっている時に、イスラレル側が繰り返し、小攻撃を仕掛け、挑発していることがわかる。イスラエル兵拉致事件は、こうした挑発に対抗するものであったことは明らかである。しかし、それに、レバノンにあるヒズボラが、突然イスラエルに越境してイスラエル兵士を拉致するなどしたのはなぜかはわからない。パレスチナを援護するつもりだったのかもしれない。イスラエルは、かつて、ヒズボラに追いつめられて、レバノン国境地帯から引かざるを得なくなったことがあり、北部に安保上の弱点があると認識しているはずで、ヒズボラからの攻撃に、トラウマ的な過剰反応を起こしたのは予想どおりである。

 それにしても、ハマス政権誕生以来の、欧米の態度は、表裏がある薄汚いものであった。とくに、アメリカは、一方では中東民主化構想なるものをぶちあげ、民主選挙を実施するように中東に迫りながら、他方では、民主選挙で選ばれたハマス政権への支援をうち切るというもので、選挙で選ばれたのではないPLO政府には援助してきたのは何だったのかと思わざるを得ないダブルスタンダードを平然と行っている。結局は、独裁か民主主義かという基準はタテマエで、アメリカの意志にそうかどうかが本当の基準だということなのである。パレスチナ人の民主的な選挙結果に示された民意はどうでもいいわけだ。

 また、アメリカは、イスラエルの自衛権は尊重するが、パレスチナ人の自衛権は尊重しないという態度を明らかにしている。イスラエルは自衛のためなら、パレスチナの土地に軍隊を送り込んでもいいというのである。それなら、パレスチナ人も自衛のためなら、イスラエル領内に軍事侵攻してもよいのではないか? しかし、イスラエルは核武装し、アメリカ製の武器で重武装し、戦車・空軍機・戦艦を持っているが、パレスチナには、そんな大量殺戮兵器などはない。イスラエルは、そんなものを持とうとしただけで、自衛権を主張して、先制攻撃するに違いない。

 ユダヤ人はすでに千年以上もヨーロッパに住みながら、数十年前にひどく差別され、虐殺された。ヨーロッパ、とりわけドイツがひどかった。パレスチナ人もアラブ人もそれには無関係である。パレスチナに逃れてきたユダヤ人は、パレスチナ人やアラブ人たちと当初は仲良く共存してきた。そのまま仲良く共存し続ければよかっただけだ。しかし、シオニストは、『旧約聖書』の神が、モーセに、ユダヤ人の土地を与えたという啓示を下したといって、無理やり独立国家を作った。それに、イギリスが秘密協定でおすみつきを与えた。イギリスは、こうした過去の植民地支配についての責任はまぬがれない。もちろん、それを基本的に引き継いだアメリカもである。まして、現在の不当なイスラエルの軍事行動をイスラエルには自衛権があるなどとかばって、パレスチナ人・レバノン人が大量殺戮されている事態にお墨付きを与えるなどもってのほかだ。

 これだけの事件に対して、7月4日には、まだ『読売新聞』は、イスラエル側に立つような姿勢を取っていたが、手遅れになる前に、情勢の緊迫を認識し、「当事者のみならず国際社会も、事態の悪化を食い止めるため、迅速な行動を取るべきだ」とずいぶん強い調子で、国際社会の介入を要求するようになった。「イラク情勢も、混迷から抜け出せないでいる」と以前の民主化が進んだ式の空想物語を書いていたころよりも、ずっとリアルな認識を示しているのもいい。「イスラエルの目的が、レバノン南部に拠点を置き、イランやシリアと関係の深いヒズボラの掃討にあるのは間違いない」というのもおそらく正しい。拉致への対応は、たんなる口実で、この機会に、ヒズボラを一掃するのが、イスラエルの狙いなのである。だから、この戦いは、さらに拡大する恐れが強く、非戦闘員が多数犠牲になる可能性が高いのである。したがって、迅速かつ強力に国際社会が介入する必要があるのである。

 国連安保理は、アメリカ主導の環太平洋合同軍事演習への対抗として、ロシア近くに向けて打った北朝鮮のミサイル問題などは後回しにして、イスラエル・パレスチナ・レバノン問題の方を緊急に力を入れて協議しなければならないのである。日米政府は、ロシアサミット向けの政治圧力に、ミサイル問題を利用したのである。そんな政府の茶番劇にいちいち踊らされてる場合ではない。

 パレスチナの隣のヨルダンには、パレスチナ人が多く住み、エジプトでは民主選挙で、イスラム同朋団などのイスラム原理主義政党が躍進し、イラクでは、内部紛争が激化しており、イランは、イスラエルに対して、これをイスラム世界全体への攻撃と見なすと警告を発している。アルカイダ系などの武装グループも、これを口実に行動を起こすかもかもしれない。

 『読売新聞』は、15日の社説では、4日の段階よりはずっと危機感を強めているのだが、16日の『朝日新聞』社説は、問題の明確な認識もなく、危機感もあまり感じられないトンデモなことを主張している。「どんな政治的な主張があるにせよ、拉致という卑劣な行為は許しがたい」とこの社説は主張するが、その前に、イスラエルによる軍事攻撃が繰り返されてきたのであり、そのようなイスラエルの卑劣な行為を『朝日新聞』が見逃してきたことを自覚していない。その上で、「世論の怒りを背景に、イスラエル政府が強硬な態度に出ているのだろう」と推測しているが、それは上記の通り、『読売新聞』社説が、この狙いをヒズボラ掃討にあるとしている方が、正しい。 ヒズボラ掃討作戦は、以前から準備され計画されていたのだろう。

 「国連は関係国への調停団派遣を決めた。ロシアでの主要国首脳会議(G8サミット)でも停戦の具体策を探るべきだ」というのは、今度は『読売新聞』が、触れなかった点で、確かに、これはサミットで重要な緊急の議題にあがってしかるべきである。しかし、議長国ロシアは、チェチェンで、イスラム独立派掃討作戦を展開している国であり、イスラム主義勢力に対抗するという点では、アメリカとも共通するところがあり、中心的議題になるかどうかは微妙だろう。しかし、この社説が言うとおり、それはG8で緊急に取り上げるべき課題である。

 「何らかの形で過激派も関与する、新しい対話の枠組みを考える時期なのではないか。その土俵をつくるのは国際社会の役割だろう。過激派を「テロ組織」と非難するだけでは解決につながらない。 /その手がかりをつかむためにも、今回の事態の収拾に国際社会が早く手を差しのべる必要がある」とこの社説は最後に主張する。ハマスが過激派かどうかは疑問だが、「新しい対話の枠組みを考える」のが、必要なのは確かだろう。いずれにしても、早く、イスラエルの軍事行動を止めないと、犠牲者は拡大し続ける可能性が高いのだから、国際社会は迅速かつ強力に介入すべきである。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

アメリカは、イスラエルの自衛権をパレスチナ人の命よりも強く尊重する

  イスラエルによるパレスチナ・レバノンへの軍事侵攻は激しさを増している。ようやく、国連安保理が、協議を行ったが、パレスチナ人やレバノン人の命よりも、イスラエルの自衛権を尊重するアメリカのブッシュ政権が、パレスチナ軍事侵攻についての非難決議案に拒否権を行使した。レバノンへの軍事攻撃については、現在、安保理で協議中である。アメリカは、何度も拒否権を行使して、こうしたイスラエルの非道をかばってきた。

 イスラエル:レバノン侵攻 「イスラエルの自衛権を尊重」--ブッシュ米大統領

 【シュトラールズンド(ドイツ北東部)笠原敏彦】ブッシュ米大統領は13日の共同記者会見で、イスラエルのレバノン侵攻について「イスラエルの自衛権」を尊重する意向を表明した。一方で、「レバノンの民主主義は地域の平和の基盤にとって重要だ」と表明し、イスラエルに自制を促した。

毎日新聞 2006年7月14日 

国連安保理:イスラエルのガザ侵攻停止決議案に米が拒否権

 【ニューヨーク坂東賢治】国連安保理は13日、イスラエル軍によるパレスチナ自治区・ガザ地区侵攻を受け、カタールが提案した軍事行動の中止を求める決議案を採決したが、米国が拒否権を行使し、否決された。日中露仏など10カ国が賛成し、英、デンマーク、ペルー、スロバキアの4カ国が棄権した。

 米国が安保理で拒否権行使をするのは04年10月にイスラエル軍によるガザ地区での大規模軍事作戦の即時中止を求めた決議案を阻止して以来。ボルトン米国連大使は「(決議案は)バランスを欠き、地域の情勢に悪影響を与える」と拒否権行使の理由を説明した。

 北朝鮮の制裁決議案に中国が拒否権行使を明言し、安保理常任理事国5カ国の特権である拒否権への関心が高まる中、大国が国益のためには拒否権行使をためらわないことが改めて示された形だ。

 否決された決議案はアラブ諸国の支持を受けてカタールが提案したもので、イスラエル軍によるパレスチナ住民の殺害と、パレスチナ武装勢力によるイスラエル兵拉致を共に非難し、兵士の即時釈放やガザでの軍事行動の中止を求めていた。

毎日新聞 2006年7月14日

 レバノン国際空港を再度空爆、攻撃拡大 イスラエル  2006.07.14CNN

   ベイルート――イスラエル兵を拉致したレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの軍事的報復を続けるイスラエル軍は14日、ベイルート国際空港を再度空爆、市東部のヒズボラ本部、シリアが支援するパレスチナの反主流派組織、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)本部なども爆撃するなど、攻撃を拡大した。レバノン国境近くにあるヒズボラの拠点、武器保管庫、燃料貯蔵所も攻撃した。

   ベイルートとシリアの首都ダマスカスをつなぐ幹線道路も標的にした。ヒズボラは、シリア、イランの支援を受けているとされる。イスラエル軍は、ヒズボラの戦闘能力を削ぐとして、長期にわたる攻撃を示唆している。ヒズボラ指導者の抹殺(まっさつ)を狙っている可能性もある。

   国際空港への空爆は2日連続。再度の空爆は、最初の攻撃で被害を受けた滑走路などの修理が終わり、業務を再開した後に実行した。燃料タンクなどが炎上するなどの被害が出た。13日から14日にかけ、イスラエル軍はレバノンの18カ所を爆撃。ヒズボラ本部へつながる道路、橋も破壊した。

   レバノンの治安当局によると、両国国境付近の衝突では少なくともレバノン人55人が死亡、160人が負傷した。ヒズボラはロケット弾をイスラエル領内に撃ち込むなどして応戦、家屋などに被害が出た模様。イスラエル北部の中心都市ハイファにもロケット弾が着弾したが、ヒズボラは関与を否定した。

   ヒズボラは、レバノン南部を活動地域にしており、イスラエル政府は「事実上、同組織の自治区に等しい」としてレバノン政府の怠慢を非難している。イスラエル政府が、レバノン南部の再度の「占領」を検討しているとの見方もある。イスラエルは1978年から2000年まで、同地域を支配下に置いていた。

  レバノンのシニョーラ首相は事態の悪化を受け、包括的な停戦を要求。ライス米国務長官に対し、調停を求めた。首相の報道官によると、長官は、停戦へ向け、努力することを約束したという。首相はまた、国連安保理の常任理事国5カ国の代表と会い、協力を要請する予定。

  イラン:イスラエルに警告 レバノン攻撃で

 【テヘラン春日孝之】イランのアフマディネジャド大統領は13日、イスラエルのレバノン攻撃に関し「エルサレムの占領政権(イスラエル)が(次に)シリアを攻撃すれば、イスラム世界全体への攻撃とみなす。占領政権は激しい反撃に直面するだろう」と警告した。国営イラン通信が14日伝えた。

 同通信によると、アフマディネジャド大統領は13日、シリアのアサド大統領と電話で協議し、シリアとの結束を確認した上で、イスラム諸国に共同戦線の構築を呼び掛けたという。

 イスラエル兵2人を拉致したレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは、シリアやイランに支援されている。

毎日新聞 2006年7月14日

 <イスラエル>空港空爆は「国際法違反だ」国連事務次長

 国連のイゲランド事務次長(人道問題担当)は14日、ジュネーブで会見し、イスラエル軍によるベイルート国際空港空爆などを「国際法違反であり、和解へ向けた努力に反する」と批判した。同氏は「国境や港を封鎖したり、空港を空爆することは、民間人の移動の自由を侵すことであり、国際法違反だ」と述べた。(毎日新聞) - 7月15日

| | コメント (0) | トラックバック (0)

イスラエルは、軍事攻撃と虐殺をただちに中止せよ

 パレスチナ情勢は、緊迫している。アムネスティも、パレスチナの人権悪化に懸念を表明している。イスラエルは、兵士拉致を口実に、パレスチナ人の発電施設などのライフラインを破壊し、一般民間人を巻き込んで殺害している。明らかに、過剰な攻撃であり、蛮行である。ただちに、イスラエルは、これ以上犠牲者を出さないように、軍事攻撃を止めるべきだ。イスラエルに大きな影響力をもつアメリカは、ただちにイスラエルの軍事行動を止めるように働きかけるべきだ。国際社会は、イスラエルの不当な軍事攻撃と虐殺を止めるために行動を起こすべきである。転載歓迎とあるので、PLOファタハの出した文章の翻訳文も掲載する。

 イスラエルは、アメリカの武器で、パレスチナ人を殺害している
 
アルジャジーラ06年7月13日(タイトルのみ)

 レバノンを海上封鎖、空港空爆 イスラエル兵拉致で
 CNN2006年07月13日

 ベイルート(CNN) レバノンのイスラム教シーア派、民兵組織ヒズボラによるイスラエル軍兵士2人の拉致を受け、イスラエル軍は13日、ベイルート南部にある国際空港の滑走路3本を空爆、この後、レバノンに対する海上封鎖にも踏み切った。

 イスラエル軍は、海上封鎖は「テロリスト、武器の移動を阻止するのが目的」と述べた。

 空爆で空港は閉鎖され、着陸便がキプロス島へ向かうなどの影響が出た。ターミナルに被害はない模様。空爆は、ヒズボラへの支援物資への流出を防ぐのが狙いとしている。

 レバノン政府は、戦争行為であるとイスラエルの行動を非難した。イスラエルのオルメルト首相は、ヒズボラによるレバノン内での活動を踏まえ、拉致はレバノン政府の責任でもあると述べている。拉致を受け、イスラエルはレバノンへの厳しい対応を決めていた。

 イスラエル軍はまた、ヒズボラが使用するテレビ局施設も空爆した。活動家を募る宣伝活動に従事していると主張しているが、レバノン治安筋によると、同テレビ局は放映を続けている。

  イスラエル、レバノン国境付近での武装衝突は13日も続き、イスラエル側には多数のロケット弾が着弾。家屋への被害も出た。イスラエル軍によると、女性1人が死亡、15人が負傷。レバノン治安当局によると、イスラエル軍がレバノン南部に侵攻した12日以降、最大で27人が死亡している。イスラエル軍は13日も南部を空爆している。

 国連安全保障会議への緊急アピール

 パレスチナの地と人々にたいするイスラエルによる大規模な軍事作戦、その15日間の諸結果を今世界が認めなければならない:

*ガザ回廊のほとんどにおけるインフラの破壊

*ガザへの食料および燃料供給の遮断

*数々の省および地域事務所の破壊

*大臣や議員の拉致

*国境の閉鎖ならびにガザ内部の通行不能

 こうした軍事作戦によって、130万のパレスチナ人は、家に監禁され、食料、水、電気などの生存のための必需を奪われている。過去3日間に、40名のパレスチナ人が殺され、約170名が負傷した。

 このようなわが地への無慈悲な侵略は、イスラエル政府によってなされる口実いかんにかかわらず正当化できない。もしいくらかの戦闘的グループがここそこでたまたま活動的であったにしろ、非武装で無抵抗の市民にたいするかかる侵略をなにものも正当化できない。イスラエルの軍事作戦の真の動因は、イスラエルが長らく暖めてきた一方的な計画を強制し、課すことにある。

 安全保障会議は、最新のガザ侵略でイスラエルにたいして行動を起こすのに躊躇するかもしれないが、しかし、私たちは、安全保障会議がそのような行動が必要不可欠だと合意するよう期待している。私たちは、いかなる先入観や予断もなしに世界中で正義と平和を実現するあなたたちの役割を信じている。

 あらゆる諸民族の中で、おそらくパレスチナ民族は問題の解決のためにつねにもっとも国連に依存し、頼ってきた。長年におよんで採択されてきたパレスチナ問題についての国連決議が何一つイスラエルによって実行されていないにもかかわらず、私たちは、この地域における不釣り合いな状況をただすあなたがたの能力に信頼を寄せている。

 ほとんどの欧米諸国がここパレスチナで生起していることに目を閉じ、耳を塞いでいる今こそあなたがたの立場がさらに重要となっている。さらに不思議なことに、世界のほとんどの人権団体や市民社会の擁護者たちが、ことパレスチナに関しては休暇中であるかのごとき今だからこそ、そうなのです。

 アラブ・国際関係局DAIR-パレスチナ解放機構PLOは、すべてのパレスチナ人の声とともに、安全保障会議にたいして訴えます。パレスチナ人とそのあらゆる生活手段、土地、インフラ、地域的あるいは私的な機関にたいするイスラエルの殺人的侵略を止めるために行動するように。

アラブ・国際関係局DAIR-パレスチナ解放機構PLO
パレスチナ・ラマラ

2006年7月10日

(翻訳:津村 洋)

 アムネスティ・インターナショナル: パレスチナ・ガザ地区における人道の危機に関する緊急声明

 私たち、「Stop the Wall! 実行委員会」を構成する日本のNGOは、現在、著しく悪化しているガザ地区の人道状況に深い憂慮の念を表明し、イスラエル軍によるガザ地区侵攻を非難するとともに、日本政府が外交的な介入を行うよう、強く訴えます。

 6月28日未明に始まったイスラエル軍のガザ地区への侵攻は、同地区における発電所、水道施設、橋、道路など、民間のインフラを意図的に、繰り返し攻撃しました。このような攻撃により、ガザの人口の半数近い住民が電気も安全な水も十分に得られず、日常の生活に極端な打撃を受けています。また復旧に数ヶ月かかることから、一般住民の健康に一層長期的な人道的危機をもたらすことが危惧されます。

 民間人の財産やインフラ(社会基盤)に対する意図的な攻撃は、国際人道法に違反し、戦争犯罪です。ジュネーブ第四条約(戦時における文民の保護に関する条約)は、私有もしくは公共の財産の破壊を禁止し(第53条)、また国際刑事裁判所ローマ規程は、「民間の人や物を意図的に狙った攻撃」は戦争犯罪を構成するとしています(第8条(b)(ii))。

 イスラエル軍は、今回の軍事侵攻は、6月25日以来パレスチナ武装勢力によって拘束され続けているイスラエル兵の解放のための圧力であり、また武装勢力が「カッサム」ロケットをイスラエル市街地近くへ向けて発射していることへの対抗手段だと主張しています。しかし、一部の武装勢力に対する対抗措置として一般住民に甚大な被害を及ぼす行為は「集団的懲罰」と見なされ、このような行為も国際人道法で禁じられているということを、私たちはイスラエル政府に強く主張します。

 今年1月にハマス政権が発足して以来課されている制裁措置によって、パレスチナの経済はすでに疲弊しきっています。これ以上パレスチナの一般住民が犠牲になること、軍事侵攻によって政治的解決がさらに遠のき、暴力の連鎖が拡大することを、私たちは強く憂慮します。

 7月8日、パレスチナ自治政府のハニヤ首相は、イスラエル軍と武装集団の双方に停戦を呼びかけたと報道されています。私たち、「Stop the Wall! 実行委員会」は、イスラエル政府および武装勢力の双方がこの呼びかけに応じ、政治的交渉のためにあらゆる努力を尽くすことを要請します。

 同時に私たちは、パレスチナの人道危機を憂慮するNGOとして、日本政府が外交を通じて双方の停戦を呼びかける努力を最大限行うよう、要請します。

イスラエル政府に対して
- ガザへの軍事侵攻を直ちに停止し、政治的交渉を再開すること。
- 占領者としての責任において、イスラエル軍が破壊した電力・水道設備の修復のために、早急な対策を講じること。
- 6月29日にイスラエル軍によって捕らえられたハマス政権の閣僚や国会議員を解放すること。
- この数ヶ月間のイスラエル軍の砲撃や空爆による市民の死傷者について、独立した調査を実施すること。

パレスチナ自治政府に対して
- 現在パレスチナ武装勢力によって拘束されているイスラエル兵が、危害が与えられず、直ちに解放されるよう、あらゆる影響力を行使すること。

パレスチナ武装勢力に対して
- 人質にとったイスラエル兵を直ちに釈放し、そのような人質行為を止めること。
- イスラエルの市街地に向けたロケット弾攻撃など、イスラエル市民を標的にする攻撃を止めること。

日本政府に対して
 - イスラエル政府に対し、ガザ地区侵攻に抗議の意を表明すること。
 - イスラエル、パレスチナ両者が政治的対話を再開するよう、あらゆる外交手段を通じて要請すること。

以上。

2006年7月11日

Stop the Wall! 実行委員会
(特活)アーユス仏教国際協力ネットワーク、(社)アムネスティインターナショナル日本、(特活)シェア=国際保健協力市民の会、CHANCE!pono2、(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)、(財)日本クリスチャンアカデミー関東活動センター、日本キリスト教協議会(NCC)、日本パレスチナ医療協会、(財)日本YMCA同盟、日本YWCA、(特活)パレスチナ子どものキャンペーン、パレスチナの子供の里親運動、グループ・サフ-リア、ピースボート

ガザ地区緊急アクション
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=464

| | コメント (0) | トラックバック (1)

イスラエル軍の軍事行動が拡大している

 小泉首相が、イスラエルを訪問している最中に、イスラエル軍は、レバノン国境地帯でシーア派民兵組織ヒズボラによって拉致されたイスラエル軍兵士2名の救出を名目に、レバノン領内に侵攻した。小泉首相は、イスラエル首相との会談で、この間のイスラエル軍のガザでの軍事行動を控え、理性的・自制的に行動するように求めたばかりであった。すでに、パレスチナ人約50人以上、イスラエル兵1人が死亡している。

 イスラエル軍、レバノンに侵攻=ラジオ

 [エルサレム 12日 ロイター] イスラエル軍は12日、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラに身柄を拘束されたイスラエル兵2人を捜索するため、レバノンに侵攻した。

 イスラエル陸軍ラジオが報じた。多数の兵士と航空機がレバノン領内に入ったという。

 イスラエル軍がガザ空爆、ハマス軍事部門幹部も負傷か=子供含む6人が死亡

 【ライブドア・ニュース 07月12日】- AP通信によると、イスラエル軍は12日未明、パレスチナ自治区のガザ市を空爆し、子供2人を含む、少なくとも6人が死亡、24人が負傷した。同軍によると、負傷者の中には、イスラエルが過去十年にわたって指名手配し、行方を追っていたイスラム原理主義組織ハマスの軍事部門幹部、モハメド・デイフ氏も含まれているが、けがの程度は不明だという。

  一方、ハマス軍事部門の報道官は、デイフ氏が、「健康で、安全な場所にいる」と強調したが、これ以上の詳しい情報を明かさなかった。イスラエル軍の空爆の対象となった建物では、ハマス軍事部門幹部の会合が行われていたとされる。ハマスは、イスラエル軍の空爆を受けて報復を宣言。パレスチナ武装勢力は12日朝、イスラエル南部の都市アシュケロンの発電所に向けてロケット弾2発を発射したが、ともに失敗した模様だ。

  イスラエル軍は、同軍兵士が先月25日にパレスチナ武装組織に拉致されたことを受けて、同28日からガザ地区への攻撃を開始しているが、パレスチナ武装勢力によるロケット弾攻撃を阻止するため、先週からガザ侵攻を拡大している。イスラエル軍による一連の攻撃を受けて、ガザ市の電力供給の多くは途絶え、これまでにパレスチナ人50人以上が死亡した。一方、イスラエルでは、同軍兵士1人が死亡している。【了】

 ライブドア・ニュース 岩城伸也記者

イスラエル軍がガザ地区中部に侵攻 8人死亡
2006年7月12日CNN

 ガザ市(CNN) イスラエル軍は12日、新たにガザ地区中部に侵攻して空爆を行い、少なくともパレスチナ人7人が死亡、15人が負傷した。パレスチナ関係筋によると、ミサイル2発が発射され、1発は車に、残り1発はイスラム大学教授が所有する民家に着弾した。

 イスラエル軍は、民家がイスラム原理主義組織ハマスの軍事部門幹部数人の潜伏先として使用されていたため、攻撃したと説明した。ハマス軍事部門はイスラエルへのロケット弾攻撃を実行しているとされ、近く新たな攻撃を実行する計画だったとされる。

 AP通信やロイター通信は医療関係者の発言として、死者の中に複数の子どもが含まれていたと伝えた。

 イスラエル軍はこのほか、パレスチナ治安部隊と交戦し、パレスチナ人兵士1人が死亡、数人が負傷した。

 これに先立つ11日午後8時頃、イスラエル軍はパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの武装組織「アルアクサ殉教者旅団」の訓練拠点をミサイル3発で攻撃した。同組織はベイトラヒヤからイスラエルに向けてロケット弾を発射する準備を進めていたとみられる。ただ、ミサイル着弾時、武装勢力は現場にいなかった。

 イスラエルのオルメルト首相は10日、パレスチナ武装組織に拉致された兵士ギラド・シャリットさん(19)が無事解放され、武装組織がロケット弾攻撃を中止するまで、ガザ地区での軍事行動を継続する姿勢を示した。一方、シリアに滞在しているハマス強硬派メシャル氏は、イスラエルが拘束しているパレスチナ人1万人余りが釈放されるまで、シャリットさんの解放はないと主張。イスラエルは武装組織側との交渉を拒否した。

 メシャル氏は、シャリットさんが戦争捕虜として人道的に扱われているとしたうえで、国際社会がシャリットさんに関心を寄せる一方、イスラエル国内のパレスチナ人被拘束者の状況を無視していると指摘した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

イラク・パレスチナの悲劇は続いている

 イラクのサマワからの陸上自衛隊撤退の開始の一方で、イラクの悲劇的情況の一端を示す事件として、以下の記事がある。極刑が相当の極悪な事件である。米兵の戦死者は、2500人を超え、傷病者多数、身体障害・精神障害を負った者も多数でている。そして、イラク人の犠牲者はその何十倍である。

  アメリカの友好国イスラエルのパレスチナ軍事侵攻では、ついにパレスチナ側に死者が出た模様である。拉致されたイスラエル兵は一人であり、生きているかもしれないのに、イスラエルは明らかにやりすぎである。ただちにイスラエルの蛮行を止めなければならず、事は緊急を要するとパレスチナ政府の対話路線のファタハのアッバス議長が、国際社会に介入を要請したのも当然である。

 2006年7月10日CNN「イラク一家殺害、女性暴行の共犯で米兵5人訴追」

 イラク首都バグダッド南方のマハムディヤでイラク人一家4人が殺害され、うち女性1人が生前に暴行を受けていた事件で、米軍は9日、現場近くにある基地の米兵5人を共犯者として起訴したと発表した。同事件ではすでに、米連邦捜査局(FBI)が主犯とされる元上等兵を起訴している。

 5被告のうち4人は犯行に加担し、1人は犯行の報告を怠ったとされる。被告の名前は公表されていない。国防当局者がCNNに語ったところによると、現在も全員がマハムディヤの基地に配置されているが、武器を没収され、当局の監視下に置かれている。

 元上等兵、スティーブン・グリーン被告に対する訴状などによると、同被告は今年3月、兵士3人とともに、マハムディヤの検問所近くの民家に侵入し、イラク人男女と子どもを殺害。さらに女性1人を暴行、殺害した。この間、兵士1人が見張りに立っていたという。グリーン被告は事件後、人格障害を理由に除隊され、帰国後に通常の刑事裁判を受けている。6日の予備審理では無罪を主張した。

 暴行を受けた女性の年齢は、グリーン被告の裁判では25歳前後とされている。一方ロイター通信は9日、身分証明書や死亡診断書に記載された生年月日から、14歳だったことが判明したと伝えた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

本居宣長その他について徒然想った

  7月6日の「西尾幹二のインターネット日録」に、西尾氏が、今度、松山で行うという講演会の話題が載っている。7月4日に拓殖大学日本文化研究所(所長井尻千男氏)の公開講座「新日本学」の最終の第十二講と同じ内容で、「古き良き日本人の心(日本人の魂を考える)」というテーマで、主に本居宣長の話が中心だという。

 それは、「冒頭、日本人が歪みをもった茶器を好むのを永く不思議に思っていた呉善花さんが、ご両親を日本に招いて、信楽の茶碗にご飯を盛って出すと、「あんな犬の茶碗のようなみっともないものを捨てて」といわれるエピソードから、日本人の風雅として通例いわれている器の歪みを考えてみる」というところから始まるという。日本びいきだという呉善花さんが、信楽焼のゆがんだ茶碗を使う日本の文化を理解できなかったというのである。それなら、豊臣時代に、わざわざ茶碗を壊して、つぎ直して、ひびだらけにしたというようなことも、理解を超えているに違いない。逆に日本人が朝鮮半島の文化を頭だけでわかろうとしても、なかなか難しいということも言える。

 そういう頭や理屈で物事を考え、判断することを、「漢意」(からごころ)とよんで批判し、頭で認識する以前の直感による認識を重視したのが、本居宣長である。そこで、「漢意」で書かれた『日本書紀』ではなく、歌、踊り、神事、儀式そのままを伝えたとして、『古事記』を重視する。それは、西郷信綱氏の立場でもある。彼は、『古事記』の多くの部分が、実際に、儀式で使われた言葉を写したもので、踊りもついていただろうと述べている。したがって、それらは、リズム、発声、動作を伴っていたはずだというのである。しかし、それを直接知ることはできないので、想像する外はないのである。

 この宣長の「漢意」について、松岡正剛氏が、「千夜千冊」というHPに、長谷川三千子氏の『からごころ』という本の書評を載せている。彼女は、「日本的なもの」をどこまでも追求してゆかうとすると、もう少しで追ひつめる、といふ瞬間、ふつとすべてが消へてしまふ。我々本来の在り方を損ふ不純物をあくまで取り除き、純粋な「日本人であること」を発掘しようと掘り下げてゐて、ふと気が付くと、「日本人であること」は、その取り除いたゴミの山にうもれてゐる。(中略)/われわれ日本人の内には、確かに、何か必然的に我々本来の在り方を見失はせる機構、といつたものがある。本居宣長はそれを、「からごころ」と呼んだ」と書いているが、松岡氏は、「実にうまいところを突いている」と感心している。

 そんな純粋な「日本的なるもの」があるわけがないと言ってしまえばそれまでだし、実際に、弥生時代後期には、大陸や朝鮮半島との交流があったことが、九州北部の遺跡の発掘成果から明らかだし、北には、縄文文化が長く残存し、アムール川流域をはじめ大陸との交流があったことが考古学によって指摘されている。『古事記』にしても、多神的なアニミズムやシャーマニズムなどの多種多様な信仰生活や文化生活を雑多に含むものである。例えば、高天原の「神集い」は、族長共同体の会議の様子を反映しているように思われるし、アマテラスは、そうした部族共同体のシャーマン的(巫女的)首長をあらわしているようにも見える。あるいは、編者の太安万侶の序には陰陽説的な大陸思想の影響も見られるし、古代天皇制国家を正当化するような意図も感じられる。しかし、そういうものを「からごころ」として取り除いていって、宣長の言う「古意」(いにしえごころ)を追求していくと、「ふつとすべてが消へてしまふ」というのである。それは、「無」ということなのか? 

 司馬遼太郎の場合は、その答えが簡単に出る。幕末まで、日本人という意識は存在せず、藩がすべてであったと言っているからだ。氏は、そこには、藩を超えるような中心がなかったというのである。宣長にとっても同じである。だから、宣長は、「漢意」を批判しながら、儒仏を排除したわけではなく、自らの葬儀も仏式で行い、寺に墓を建てるように、遺言をした。それに対して、平田篤胤は、キリスト教の教義を取り入れて、一神教的な体系化を行った。それが、後の国家神道につながっていくのである。つまり、平田国学は、「漢意」なのである。

 それに対して、松岡氏によれば、「長谷川は、宣長の主張ははっきりしていると見た。宣長は、原理原則といったものを思想の力とは認めないと言ったのだ。そして、そんな原理原則を用いないで日本は育ってきたと見た」という。

 「宣長がわかりにくいのは、妙な言い方だが、宣長自身が「日本人であること」に気づいてしまったからなのである。そして念のために繰り返しておけば、そのことに気がつかないでいられる心情装置というものが「からごころ」というもの、つまりはグローバル・スタンダードというものなのだ」と松岡氏は言う。

 それから、松岡氏は、「ところで長谷川は、その後に『正義の喪失』(PHP)を書いてボーダレス・エコノミーとフェミニズムを批判し、さらに西尾幹二の鳴り物入りの『国民の歴史』が非難の嵐にさらされると、西尾と対談をして『あなたも今日から日本人』(致知出版社)に与したりした。/これはいかにも勇み足じゃないかと誰もが見たが、どうも長谷川は平ちゃらのようである。あまりにもモノカルチュラルな叙述しか展開できなかった『国民の歴史』にもまったく文句はないらしい。しかも、どうみてもデキの悪い教育勅語を絶賛して、そこに「本当の意味での自由と平等の精神がある」と言ってしまったりしたのは勇み足である。ぼくはこのような長谷川にさせたくはなかった」と言う。

 宣長は、古義学の影響を受けている。儒学においても、伊藤仁斎が、古義学を究めて、『論語』に戻った。仏教諸派においても、それぞれ宗祖への回帰がなされた。そのことが、後にどのような影響をもたらしたのかは、ヘゲモニーの領域の課題として研究する必要がある。そこには、ヘゲモニーの転回があったと考えられるからである。宣長の「からごころ」から「いにしへごころ」への転回がそれであったかどうかは、なお研究を要する。実際には、明治維新の過程でヘゲモニーを形成したのは、主に平田国学や後期水戸学派であって、宣長の思想ではなかったからである。宣長の思想では、神々の体系化などは思いもよらないことであったし、善悪を言い立てるのは「からごころ」に他ならなかったからである。

 したがって、「新しい歴史教科書をつくる会」のような日本人としての誇りをつくるための教科書をつくるなどというのも「からごころ」であり、ましてや藤岡信勝氏らの「自由主義史観研究会」などは、宣長的な「いにしへごころ」とはまったく相容れないものだ。西尾幹二が、一方で宣長を「古き良き日本人の心(日本人の魂を考える)」などとして利用するのも「からごころ」である。むしろ宣長には、鈴木大拙のいう「無分別の分別」という「日本的霊性」となった仏教的な「無分別の智」に近いものがあるのであり、だからこそ、仏式の葬儀と供養を遺言したのである。そしてそれは、共に生きること・共に生産すること・共に消費すること・共に祀ること、等々として、「私」を超えた共同性に生きる生産共同体としての村の無私共有・無私有の生活という「無」を対象にしようとしているのである。なぜなら、『古事記』は、共有制を前提として成立していたのであり、それを踏まえながら読まないと、現在の視点や価値観という「からごころ」が入ってしまうからである。それから、それは、無私ではあるが、「公」ではない。「公」には、朝廷とか幕府の意味が入るからである。今の教育基本法改定与党案に入った「公」には、国家という意味が入るのと同じである。それに対して、中世の公事には、逆に、「公」が従わなければならない共同体のルールの意味(呪術的な意味を含む)があったと網野善彦氏は書いている。

 長谷川氏が、教育勅語などという「からごころ」の文章を自由と平等の精神があるなどと絶賛してしまい、宣長が感じていた共有制の太古の精神と生活を「つかめない」のは、氏の頭が近代の私有制度にどっぷりとはまっているためなのである。長谷川氏が、宣長を引き合いに出して、日本的なものはわからないといっているのは、言い方で誤魔化しているのであって、「様々なる意匠」(小林秀雄)の一つに過ぎないのである。松岡氏は、自分の考えに合う人物があまりにも少ないかあるいはいないせいか、長谷川氏に過大に期待しすぎているのである。あるいは、あえて、そうしているのかもしれないが。

 西尾幹二は松岡氏のお眼鏡にかなうような「日本的なもの」を持ってはいない。彼は、是非善悪をはっきり立てる人物であり、そのことは、この間の、「新しい歴史教科書をつくる会」に関する氏の文章で明らかである。藤岡信勝氏は、もっとそうで、「からごころ」が洋服を着て歩いているような人物だ。ただ、西尾氏は、多少、宣長流のものを意識していて、「つくる会」の内紛から早く離れたいということは言ってはいた。宣長も、有名な『雨月物語』の作者の上田秋成との論争をしてはいる。しかし、宣長は、仏儒を排したわけではない。いわゆる鎌倉新仏教は、鈴木大拙によれば、大地化したのであり、「日本的霊性」に到達したのである。鈴木大拙は、伊勢神宮の「神道五部書」(度会神道)の成立に、神道の「日本的霊性」の成立を見ている。しかし、本居宣長は、逆に、それを「からごころ」として退けた。

 西尾氏は、「宣長は兼好法師が大嫌いなのです、仏教の影響を受けた風雅が大嫌いなのです」と書いているが、これは、理解が浅いといえよう。これからは日本から見た世界史だと言っているが、これも、「からごころ」である。過去に自我を投影して、歴史に自意識を見るという小林の「自我・自意識史観」はうんざりだし、それを世界史に拡大するなどというのも想像しただけで、げんなりするし、うさんくさく感じる。もちろんそれに対して、梅原猛史学の方から、縄文文化はどうしたという声も聞こえてきそうだ。

 西尾氏の拓殖大学での講義は、森鴎外や夏目漱石の留学話や小林秀雄のモーツァルト・ゴッホ論に飛びながらのものであったという。やはりというべきか、ニーチェ学者らしく、俗物性をニーチェから受け継いでいるようである。氏は、ポストモダニズムが作り上げたつまらないニーチェ神話以前の、俗物ニーチェの「正統?」な後継者と言えるのかもしれない。

 藤岡信勝氏が、「つくる会」を追い出された八木元会長らに対して、「この分野で何も苦労をしていない八木氏が軽口をたたくのは、軽薄そのものである」という「それをいっちゃおしまいだ」という悪罵を投げつけたのを見て、鼻白んだ人も多いに違いない。そういいたくなる気持ちはわからないでもないが、それを言いたくなるときは、大抵、運動情況が危機的で後退局面にある時である。そして、それを言ってしまったら、たいていは、その運動はお終いである。

 結局のところ、この運動は、ヘゲモニーというものをまったく理解していないのである。教科書問題をめぐる運動は、採択戦においては、陣地戦であって、それは、とてつもない消耗をともなう厳しい闘いであり、よほど有利な状況でもない限り、一時の熱情やブームなどではとうてい勝てるものではない。そして、そのためのヘゲモニーの形成には、世界観の更新、新しい人間観、知的道徳的文化的革新、あるいはもっと言えば、宗教性すらが必要である。そうでなければ、持続的な陣地戦を最後まで戦い抜くことはできない。てんでばらばらの寄せ集め集団が、一点で運動を組んでも、結局は、またばらばらになって、消えてしまうだけなのである。「つくる会」の分裂劇を見る限り、この会もそういう過程をたどったようである。そしてそれは、反省も改善もされていないので、またおなじ事を繰り返すことは明らかである。すでに、7月2日の総会で、内紛の経過報告文書が、「日本会議」副会長の小田村四郎(元拓殖大学総長)氏のツルの一声で、採択されず、撤回されたことに、その兆しが現れている。

 いずれにしても、「つくる会」には、新しいヘゲモニーをうち立てるだけのものがない。「つくる会」を出て、日本教育再生機構を立ち上げた新田均氏は、組織論を提示していて、多少はそういう傾向も見られるが、まだどうなるかはわからない。たぶん難しいだろう。西尾幹二氏には、宣長から、それを形成する力がなく、長谷川三千子の「からごころ」論にもそれがなく、藤岡信勝氏にもそれがないということは明らかである。結局は、それでは、西欧の自由民主主義のヘゲモニーには対抗することも、克服することもできないだろう。

 かれらのようなものではなく、平等で民主的で個性と自由が規律と合致する新たな共同体と人間と世界観を形成しうるヘゲモニーが形成されることが必要である。そのことは、そのような共同体の理念やイメージが、歴史的に繰り返し登場したこと(「世直し」「世均し」「一揆」等々)からも明らかである。それは、現代においては、労働の共同体といってもよいかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

7月4日『読売』パレスチナ問題の社説を評す

 7月4日の『読売新聞』社説は、最近のパレスチナ・イスラエル紛争について書いている。

 この社説は、事態の悪化を招いたのは、パレスチナ側のハマス強硬派などが、イスラエル兵士を拉致したためだとしている。そして、「人質を取り、新たな要求を突きつける武装勢力の行動は厳しく非難されるべきだ」と書いている。それに対して、「兵士の解放を求めるイスラエル軍は、パレスチナ自治政府の閣僚ら60人以上を拘束する一方、首相府や内務省庁舎を空爆し、軍事圧力を強めている」とあっさりと書いているのだが、しかし、連れ去られた兵士は、一人だ。それに対して、なんとパレスチナ自治政府の閣僚を含む60人もの人間を拘束した上に、首相府や内務省庁を空爆して、破壊するというなんとも不釣り合いに大きな破壊・人権抑圧行為をやったのである。これらのパレスチナ政府庁舎には、おそらく、国際社会の援助金が使われていただろう。

 こうしたイスラエルの国際社会を傷つけ、パレスチナ人とイスラエル人の人権は等しいという人権平等を大きく踏み外したイスラエル人の人権過大のパレスチナ人差別の人権侵害行為の原因を、この社説は、パレスチナのハマスのハニア政権の側にあるということを書いているのだ。なぜそうなるのか?

 それは、ハニヤ政権が、「ハマス強硬派を含む武装勢力を制御しきれない」ほど弱体化しているからであるというのである。つまり、これは、ハニヤ政権が武装勢力を抑えきれないから起きた暴発事件だったというのである。

 したがって、「そうした困難な状況の中にあっても、ハニヤ首相はアッバス議長と共に、まず拉致兵士の解放に全力を挙げるべきだ。さらに、イスラエルの生存権を明確に認め、暴力を否定する必要がある」ということになるのである。まず、事件の第一の責任は、ハマス強硬派などのパレスチナ側の武装勢力の跳ね上がり行為にあって、それは、厳しく非難されなければならないという。つぎに、責任があるのは、それを許したハニヤ政権の治安維持能力の不足である。そして、最後に、ようやくイスラエルの責任の番なのだが、それは、「国際社会は、イスラエルに対しても、行動の自制を求めている」とした上で、「自軍兵士の解放を要求するのは当然だとしても、相手側の首相府庁舎まで空爆するのは、救出作戦の域を逸脱してはいないか。穏健派も強硬派も区別しない手法は、ハマスつぶしが軍事行動の狙い、と見られても仕方がない」という程度でしかない。

 これは驚くしかない。そもそもパレスチナ人を武力で追い出し、土地を収奪して、無理やり建国したのがイスラエルであって、それを、ヨーロッパでユダヤ人差別が強まり、さらに民族自決の機運が高まったのに影響されたユダヤ人シオニストが、かつて神がユダヤ人に与えると約束した地だと言いたてながら、行ったのである。ユダヤ人差別は、ヨーロッパで解決されなければならない問題で、それをパレスチナが引き受けなければならないいわれはないのである。極論だが、どうしても国が欲しいと言うなら、ドイツにユダヤ人国家を建設するのが筋というものである。それなのに、イスラエルは、パレスチナを侵略して、しかもなんとベルリンの壁もどきの塀でパレスチナの土地を囲い込んで、交通を妨害し、パレスチナ人の生活を破壊している。

 それから、ハニヤ政権は、パレスチナ人の圧倒的多数によって支持されたのであり、それを弱体化させているのは、欧米の援助停止による兵糧攻めや医薬品などの不足などによる民生上の困難さが大きい。民主的に選ばれた政権を、政策が気に入らないからと、政策変更を迫って、豊臣秀吉得意の城攻めのように、兵糧攻めにしているのである。そういえば、NHK大河ドラマ「功名が辻」では、秀吉の兵糧攻めで、餓死者が出たり、衰弱した敵方の人々の悲惨な姿を見て、山内一豊が、「兵糧攻めは好かん」と言う場面があった。確かに、兵糧攻めのようなやり方には、卑怯さを感じる。欧米は、それを卑怯とも悲惨とも感じないようだ。日本では、戦国武将の武田信玄が、何度も川中島で合戦を繰り返した越後の敵将上杉謙信が、塩の不足に苦しんでいるのを知って、塩を送ったという「敵に塩を送る」という故事がある。欧米でも、立派な騎士道だのスポーツマンシップなどという美徳があると聞かされたものだが。 

 この社説は、イスラエルと仲良く平和的に共存できないのは、パレスチナのせいのように書いている。かつては被害者であったユダヤ人も今では抑圧者であり差別者であり、強者である。それが現実である。イスラエルの蛮行こそ、まず厳しく非難されなければならない。その上で、イスラエル兵拉致を非難するというならまだしも、この社説は、イスラエルに甘く、不公平で、不当である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

滋賀県知事選について

 今日の大新聞の社説は、『読売新聞』を除いて、すべて、7月2日の滋賀県知事選での社民党が支持する無党派の女性知事の誕生について書いている。

 『朝日新聞』「滋賀県知事選「もったいない」が勝った」。『毎日新聞』「利益誘導型より「もったいない」」。『東京新聞』「続く地方選へ警告だ『相乗り』敗退」。『産経新聞』「滋賀県知事選 読めなかった現職候補」。

 『産経新聞』が、社民党支持の嘉田新知事の路線を支持しているのが少々驚きである。『産経』社説は、嘉田知事の「一人一人の変えたい、どうにかしたいとの思いが社会を動かした」と語った言葉に、「今回の選挙の勝因」を見ている。「財政困窮な中での公共事業への多大な税金投下など、「もったいない」という主張は、選挙戦に入ると、多くの県民の支持を得、反対に国松陣営は、これら県民の風を読み切れなかったところに敗因があった」。そして、「有権者は無駄遣いを認めないという意思表示をしていることを、今回の滋賀県知事選は浮き彫りにした」と書いた。

 この選挙の最大の焦点は、栗東市に建設が始まった「南びわこ駅」(仮称)を推進するか凍結するかであった。凍結派の嘉田知事の誕生によって、こうした大規模開発の凍結が進むことになるかもしれない。ただし、嘉田氏を支持する県議会議員は少ないので、前途は容易ではない。

 このような、自公民相乗りの大組織に支えられた現職の敗北を、『毎日新聞』社説は、昨年の郵政解散選挙のような政策選択の直接投票的な要素が、選挙に加わってきた小泉改革の定着の一環だとしている。しかし、住民投票などの直接民主主義は、90年代の原発建設や市町村合併をめぐって行われたのであり、それを小泉改革のせいにするのは、違うと思う。それに、単独の課題のみを掲げて、議員の選挙を行うのは、他の多くの課題を忘却させる点で、ポピュリズム的な衆愚政治のやり方であり、それは、何らかの政策課題について、直接国民投票をするのとはちがう。この社説がそれらを混同していることは明らかだし、間違っている。

 嘉田新知事は、環境社会学を専攻する京都精華大学の教員。「環境社会学の第一人者。水環境と地域社会の関係を調べ、「暮らしの知恵」や「共同体」の精神を大切にしながら環境を考える「生活環境主義」の提唱者としてファンも多い」(7月4日『毎日新聞』「人」)。このことからも、嘉田知事の政治思想は、小泉改革(都市優先・地方切り捨て・競争主義・個人主義等々)とはまったく異なるものであることは明白である。これは『毎日新聞』社説が言うのとは真逆の小泉改革に対する地方の反乱・一揆である。小泉改革の反対派、財政出動主義の公共事業ばらまきではなく、「共同体」精神、すなわち人々の結合関係の変革による社会的力の発揮、それによる環境・社会・地域の力の再生である。

 これは、地方が反対した郵政民営化を強行した小泉改革などとは、全く違う。郵政解散総選挙が、もし郵政民営化賛成か反対かという国民投票だったら、否決だったという説もある。実際、小泉自民党は、都市部で圧勝したが、地方ではそれほどでもない。だから、『毎日新聞』社説が、阪神のベッドタウン化によって環境問題に意識のある人々が増え云々というのは、なにかしら図式的な思いこみが頭にあるような書き方だ。いくらベッドタウン化したといっても、こんなに多くの票があるわけがない。それに、長野は、ベッドタウンではない。無理やり、図式を現実に当てはめようとすれば、陳腐になるだけだ。

 この県知事選の自公民相乗り候補の敗北の結果は、与党に衝撃を与えたという。滋賀県の環境、琵琶湖の環境は、京阪神の水問題につながっている。近江のあたりは、中世には、進んだ農業地帯であり、水運も発達していた。惣村が早くにでき、農村自治が早くから発展した地域である。そういう風土についての感覚も認識も、大都市の空気につかっている大新聞の記者たちにはない。もちろん小泉総理にもないのであり、だから、滋賀県知事選の結果は、小泉自民党にも大新聞の記者たちにも、謎なのである。滋賀県や長野県の方が、東京などの都市部より進んでいるという事態が、飲み込めないのだ。彼らはあくまでも彼ら流のやり方でこういう現実を納得しようとする。しかし、彼ら流のやり方を反省しつつ、現実を見ないと、陳腐になってしまうのである。遅れた保守的な農村に、都市部からの新規住民が、進んだ環境意識などを外から持ち込んだという図式に、無理やり現実を当てはめてしまうという愚におちいるのだ。そういう人たちは、頭が現実に合うようになるまでは、何度でも、「謎」にぶつかり、「謎」は「謎」のままだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

西田幾多郎の宗教論から考える

  哲学者西田幾多郎が、1945年(昭和20)2月4日に書き始め、4月14日に完成した『第七哲学論文集』の最後の論文は、「場所的論理と宗教的世界観」であった。この完成の2ヶ月後に西田は亡くなる。大日本帝国敗戦の直前であった。

 この年の彼の日記には、4月6日「小磯数日前ガタルカナルまで取り返す自信ありと云ひ、舌根乾ざるに辞職、国民を欺くもの甚だし」とか、同8日、「鈴木総理日露戦争の時世界が日本の敗と思ったが勝った今度も勝つといふ。(国際関係が大分違う様だが。)日本の政治家は外交無視、あまり武力のみ見ていないか。判断あまりに抽象的」。5月10日、「徳富(蘇峰)は日清日露と違って今度の戦争には日本国民が気魂ない―つまり彼等の笛に踊らぬ―といふ。国民が徳富の如き指導者より頭が進んで居るのだ。グルーなど色々の実況をあげて日本の恐るべきを米国民に戒めている。徳富は敵を沖縄に撃破し尽くすは天与の神機だといふ」等々と、敗戦を確信しつつ、戦況を偽りながら戦争を煽る指導者たちを批判し皮肉りながら、彼等指導部より、国民の方が頭が進んでいるというのである。

 1911年(明治44)に、『善の研究』を出版し、大きな影響を与えた西田幾多郎だが、『善の研究』は、論理実証主義のマッハ批判を、「個人あって経験あるにあらず、経験あって個人があるのである」(序文)という思想によって行ったという。『善の研究』は4編からなり、第一編 純粋経験、第二編 実在、第三編 善 そして、最後の第四編は、「宗教」である。西田が、宗教を「哲学の終結」と考えていたから、第四編 宗教が、最後に置かれたのである。

 その後、絶対矛盾の自己同一や場所の論理などの独自の哲学的展開を遂げながら、しかし最晩年において、再び、宗教論がいわば遺稿(最後の「私の論理について」は短い草稿だけである)となったというのも、なにか因縁めいている。

 『善の研究』の宗教論は、「かく最深の宗教は神人同体の上に成立することができ、宗教の真意はこの神人合一の意義を獲得するにあるのである。即ち我々は意識の根底に於て自己の意識を破りて働く堂々たる宇宙的精神を実験するにあるのである」というのであるが、それを「ニュートンやケプレルが天体運行の整斉を見て敬虔の念に打たれたといふ様に我々は自然の現象を研究すればする程、其背後に一つの統一力を支配して居るのを知ることができる」という自然法則の統一力との合一、精神と自然の統一力としての神を根本にしたものであった。しかしながら、それを、この段階では、意識の統一に求めており、唯心論・観念論・唯識論的な宗教論だった。

 それが最晩年の「場所的論理と宗教的世界観」になると、「従来の日本精神は、島国的に、膚浅なる平常底に偏して、徒らに自負して居るに過ぎない。今日、世界史的立場に立つ日本精神としては、何処までも終末論的に、深刻に、ドストエフスキー的なるものをも含んで来なければならない」と、日本精神の批判や敗戦を見据えたかのような「終末論」的なものを含んだ日本精神の必要の強調が行われる。そして、最後は、国家論である。

 「国家とは、それぞれに自己自身の中に絶対者の自己表現を含んだ一つの世界である。故に私は民族的社会が自己自身に於て世界の自己表現を宿す時、即ち理性的となる時国家となると云うのである。此の如きもののみが国家である。かかる意味に於て国家は宗教的である。その成立の根底に於て宗教的なる、歴史的世界の自己形成の方式が国家的であるのである。歴史的世界は国家的に自己自身を実現するのである。併し斯く云ふことは、国家そのものが絶対者であると云うのではない。国家は、道徳の根源ではあるが、宗教の根源であるとは云われない。国家は絶対者の自己形成の方式として、我々の道徳的行為は国家的でなければならないが、国家は我々の心霊の救済者ではない。真の国家は、その根底に於て自ら宗教的でなければならない。而して真の宗教的回心の人は、その実践に於て、歴史形成的として、自ら国民的でなければならない。而も両者の立場は、何処までも区別せられねばならない。然らざれば、それは中世的として、却つて両者の純なる発展を妨げるものである。近代国家が信仰の自由を認めて来た所以である。君主的神のキリスト教と国家との結合は容易に考へられるが、仏教は、従来非国家的とも考へられて居た。併し鈴木大拙は大無量寿経の此会四衆、一時悉見、彼見此土、亦復如是という語を引いて、此土に於て釈尊を中心とした会衆が浄土を見るが如く、彼土の会衆によって此土が見られる。娑婆が浄土を映し、浄土が娑婆を映す、明鏡相照す、これが浄土と娑婆との聯貫性或は一如性を示唆するものであると云って居る(鈴木大拙著「浄土系思想論」一〇四頁)。私は此から浄土真宗的に国家と云ふものを考へ得るかと思ふ。国家とは、此土に於て浄土を映すというものでなければならない」。 

 西田幾多郎の「絶対矛盾の自己同一」とは仏教でいう生死即涅槃などという場合の「即」の論理のことである。国家と宗教は相互に絶対的に区別されたまま一如だというのは、それらが「即」という関係にあるからだというのである。そして、彼の国家論は、一見すると宗教国家論のようだが、そうではなく、政教分離によって、国家はあくまで歴史的世界の自己形成の方式であり、理性的でなければならないのである。つまり、絶対者の法則を表現しなければならないのである。それに対して、宗教は、あくまでも「親鸞一人のために」という個との関係において成立するのであり、それが同時に、歴史的世界という理性的な世界の形成者として、国民でなければならないというのである。

 鈴木大拙と直接意見が合致したのかどうかはわからないが、鈴木大拙が、開戦時より、日本の敗戦を必至と見て、戦況が刻々と悪化する中で、『日本的霊性』を著して、とくに、大地・農業に深く根づいた浄土宗・浄土真宗と禅宗に、日本的霊性を見出し、それを精神的基礎にして、戦後の日本精神の再生を展望したのと合わせるかのように、西田は、国家は浄土真宗的に「此土に於て浄土を映すというものでなければならない」と結論を下している。国家はあくまでも理性的で道徳的であるが、その宗教的根底からくるビジョンとしては、浄土を実現することだというのである。すなわち、苦から解放された平等な世界である。

 西田幾多郎は、原爆も敗戦も体験することなく、1940年6月7日、鎌倉の自宅で亡くなった。葬儀は、鈴木大拙が世話をして北鎌倉東慶寺で行われた。

 敗戦後、占領体制の下で、浄土真宗的な浄土国家ではなく、英米流の民主国家化が押し進められた。戦後に大きくなった宗派の多くは、現世利益を強調したところだった。西田哲学は、戦後左翼の中で、「主体性論」として継承された。矛盾を基礎に据えたその弁証法的な思考は、今こそ求められているのではないだろうか。もちろんそれはそのままでということではない。もともと、仏教発生時の思想は、無我無所有や平等主義などの原始共同体の原理を反映したものであった。自らの寺を持たず、在家のまま亡くなった親鸞は、いわば、釈迦の時代に回帰したようなものである。

 また、キリスト教は、確かに、君主的神のようなものに解釈されてしまったのだが、そういうものでもない。『旧約聖書』が、バビロン補囚からペルシャ支配時代に解放されてエルサレムに帰って、再建した時に、ユダヤ教の再構築を進めた改革派が、とりわけモーセの律法を中心に聖典編纂して作られたという事情が反映しているので、そうみえるということもあるかもしれない。この改革派は、エルサレムの街自体を建設しなければならなかったので、そこで、氏族別に住む地域や仕事を割り当てたり、ふたたび他民族によって脅かされないように、モーセ時代のように、異民族との結婚を禁止したりしなければならなかったので、似た状況の預言者であったモーセの律法を重視したのであろう。しかし、『旧約聖書』には、モーセの後、祭政一致の士師の時代というのがあって、それには、女預言者が士師としてイスラエルを率いたとか、共同体の時期があって、各部族が共同体を形成して、合議制をとっていたということが書かれている。その後、ダビデなどの王が立てられる王国時代になるのである。王国時代には、たびたび王が神に背き、他の神を信仰したり、他民族の女性を妻にしたりした。部族共同体的な時代があったのであるから、『旧約聖書』の神は君主的神というわけではない。

 『新訳聖書』の神は、ローマ・カトリックによって、三位一体の父なる神になったが、やはり初期の教会は、共同体的で、財産共有制をとって、ただ霊に導かれて伝道を行ったということになっている。イエス自身が、荒野で禁欲的な修行をする教団で修行をしたともいわれている。霊を唯心論的に我の外なる絶対唯一神から来るとするか、それともそれを我の内在的根底から来るとするかによって、違ってくるが、西田は汎神論的な後者の立場を取っている。どちらにしても、君主的神というようなイメージは、『新約聖書』からはうかがえない。バルト神学では、神の超越性が強調され、神と人間との同一性は否定されているという。『新約聖書』学者の田川健三は、「イエスは宗教家ではなく、とことんまで宗教を批判した人なのだ」(『批判的主体の形成』三一書房)と述べている。例えば、イエスは、カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返せと言ったのだが、それは通常言われているように、政教分離を主張したのではなく、神殿税などのユダヤ教が人々から取る宗教税を非難したというのである。

 西田の遺稿となった「場所的論理と宗教的世界」が、浄土国家論であったことは、すでに敗戦の必至なることを意識して、いかにして再生すべきかということの提言であったといえよう。日米戦争については、彼は、日本国民の力を思い知らせるというだけのものだと自覚していたようである。どうせ負けると思っていたが、ただでは負けないということだろう。そして、勝つぞ勝つぞと上から煽っている指導部に対しては、国民の方が頭が進んでいて、踊らされないことを冷静に見ていた。指導部と国民の間に信頼関係がなかったたわけである。これでは、指導部が、敗戦すれば、「国体」=自分たちが危ういと判断したのも当然である。もはや国民は、指導部が笛を吹いても踊らないまでに頭が進んでしまったのである。それもわからずに、徳富蘇峰などの指導部は、踊らぬ国民を非難し、沖縄で形勢逆転などと空語を叫び立てる。

 アメリカが「国体」護持を約束したというので自分たちの安全は確保されたと指導部が安心したのもつかの間、マッカーサーと米国様に頭を垂れたのに、「平和憲法」を採択させられ、東京裁判が始まる。近衛はまさかその被告になるとは思いもしなかったという。国民は、1946年5月の米よこせのデモで、宮城に押し寄せ、宮内省と交渉の末、皇族の台所に入った。冷蔵庫を開けると、中には、ブリやらヒラメやらのその頃一般では手に入らない高級食材が入っていた。国民の方が、頭が進んでいたのである。さらに、平和と民主主義、人格の形成を目的とする教育基本法が制定される。人格形成は西田の望むところであった。ただ、西田はやはり時代の人であり、天皇制への幻想を強く持っていた。しかし、国民はそれよりも頭が進んでいたのである。新しい情況に適応していくのである。

 それから60年、この国の指導部は、人格を形成する努力を忘れ、浄土の理念などとは反対の冷酷な競争主義を煽り、愛国心がないの道徳がないのと国民を責めながら、自らは毎日のように腐敗堕落者を出し続けている。指導部こそ道徳が欠けていることは明らかである。そして、福沢諭吉流の「内安外競」(国内を安らかにするために、外で争い、人々の目を外に向けること)という安易で危険な方法に頼っている。そういう時だからこそ、西田幾多郎を読み直し、根本から時代を考えてみた方がいいと思うのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »