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2006年8月

ガザを忘れてはならない

 30日の『ニューヨークタイムズ』は、アナン国連事務総長が、訪れたイスラエルで、イスラエルにレバノン封鎖を解除するよう迫ると伝えた。氏は、27日からレバノンを訪れた後、イスラエル入りした。国連レバノン暫定軍(UNIFIL)がまとめ、アナン氏がイスラエルのペレツ国防相に送ったレポートは、14日の停戦発効からこれまでの攻撃は、ヒズボラが4回だったのに対して、イスラエルは約70回と、圧倒的にイスラエルによる攻撃が多いことを指摘している。イスラエルは、国連決議1701で認められた攻撃だと弁明している。イスラエルは、レバノン沖に艦艇を置いて、ヒズボラへの武器輸送を遮断するとして海上封鎖を続け、陸上でのレバノン封鎖も続けており、暴騰の記事の見出しは、アナン事務総長が、これを解除するように求めたものである。この封鎖によって、援助物資などの輸送に支障が出ているからである。海上封鎖には、臨検などの行為を伴っているのだろう。

 アナン氏は、今回の事態の原因を国家内国家としてのヒズボラの武装解除が進まず、レバノンの国家体制が脆弱であったことに求めている。

  国連レバノン暫定軍(UNIFIL)増派部隊にイタリア2500人をはじめ、フランス、ベルギー、ポーランド、などが名乗りを上げ、第一陣のイタリア部隊は、すでにイタリアを出発し、9月1日にベイルートに上陸する見通しとなった。この国際部隊のレバノン南部展開にあわせて、イスラエル軍が撤退することになっており、アナン事務総長もそれを求める方針である。

  イスラエル国内では、予備役兵らの戦闘指揮の混乱などの原因追及を求めるデモなどが続き、さらに法相のセクハラ疑惑での辞任に続いて、大統領のセクハラ疑惑が出るなど、政治的混乱が続いている。イスラエルのオルメルト首相は、レバノン攻撃での指揮の混乱などの原因究明のための調査委員会設置を表明した。

 レバノン侵略については停戦や国際的な復興支援の動きがあり、国際社会の目が向いており、問題解決への動きが進みつつあるが、パレスチナの方は、相変わらず、イスラエルによる封鎖と軍事攻撃が続いて、パレスチナ側の犠牲者が増え続けているにもかかわらず、あまり注目されていない。イスラエルは、世界食糧計画などの国際機関による人道救援物資の搬入以外は、ガザを封鎖しており、外出禁止令によって、パレスチナ人を閉じこめたままである。外で遊んでいた子供にも容赦なく攻撃し、数十人を殺害している。パレスチナ政府職員にはこの約3ヶ月間の間、給料が支払われていない。外出禁止措置のために、工場・事務所は開かれず、農作業もできない。パレスチナ人は、ただ、国際機関による食料支援に頼って命をつないでいる状態だ。

 レバノンは、後は、不測の事態などによる停戦崩壊がなければ、すでにアメリカをはじめとする国々がレバノン復興資金の提供を表明しているから、それを実行していくことになる。パレスチナでは、和平がまだである。ハマスとファタハの間で、挙国一致政府の樹立に向けた協議がまとまりそうだという報道もあるが、難航しているという報道もある。イスラエル政府が、混乱しており、覚悟を決めて、パレスチナ国家樹立を支持し、建国を見守るのかどうかが、はっきりしない。

 5月のオルメルト連立政権の正式発足後、6月に入ってからの度重なる軍事的挑発、パレスチナ人への無差別攻撃による犠牲者拡大の中で、イスラエル兵1名の拉致事件が起きた。今、オルメルト政権への批判が高まっており、右派リクードなどの強硬派への支持が強まっている。大きくぶれる人々の意識に動かされて、政局が不安定化していること、そのことが、目的が明確でないこの間のイスラエル軍のぶれにつながっているように見える。ハマスとファタハが対立し、ハマスの支持率がファタハに並ぶなど弱体化が進んでいた6月に、なぜ、わざわざ、海水浴場を砲撃し、民間人多数を死傷させなければならなかったのか? それによって、ハマスとファタハは、対イスラエルの闘いを最優先することになり、パレスチナの団結を固めたのである。ハマスを弱体化し、ファタハを強化したかったのか? それなら結果は失敗であった。この間のイスラエル政府と国防軍の行動の目標が明確でないことは、予備役兵が指摘したように、志気にかかわるし、次の戦闘において失敗が繰り返される要因となるだろう。パレスチナ側においても、イスラエルと共存するパレスチナ国家樹立かイスラエルを否認するパレスチナ国家樹立かという政治目的の違いは、パレスチナ人の団結をはかる上で、解決すべき大きな問題になっている。

  イスラエルが調査委、対ヒズボラ紛争“失態”かわす?

 【エルサレム=三井美奈】イスラエルのオルメルト首相は28日、同国北部ハイファで演説し、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ攻撃をめぐる政府の指揮のあり方を検証する調査委員会を設置すると発表した。

 紛争中の政府の“失態”を指摘する国内の批判をかわす狙いがある。

 イスラエルでは、ヒズボラの攻撃力を破壊できず、拉致されたイスラエル兵の解放も実現できないまま、政府が停戦を受諾したことへの不満が高まっており、オルメルト首相は演説で、「必ずしも望んだ結果を得たわけではない。問題や失敗があった」と認めた。

 新設される委員会は、情報機関モサドのアドモニ元長官を委員長とし、元軍幹部や学識者が作戦の立案や決定が適切だったか否かを調べるという。このほか、国防省内に同国軍の攻撃を検証する委員会が置かれる。

 国内では、証人喚問権を持ち、判事を委員長とする「国家調査委員会」の設置を求める声が強まっているが、首相はこうした外部機関は「調査に時間を要し、国軍を無力化する」と述べ、要求を退けた。(2006年8月29日『読売新聞』) 

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ハイエクの社会保障論など

 ハイエクは、師のミーゼスと違って、自由放任主義者ではなかった。イギリスの古典派経済学者も自由放任主義者ではない。スミスやリカード派やJ・S・ミルなどは、急進派と呼ばれ、当時の保守派に対抗した。その際に、自由市場主義を軸に、保守派(重商主義派と地主階級)の保護貿易主義を批判したのである。また、彼らは、反帝国主義であり、反植民地主義であり、労働保護主義者であった。
 
  ハイエクは、サッチャー・レーガンなどの新自由主義者によって、再評価されて広まったためか、自由放任主義者の一部のような印象を与えているが、そうではない。彼は、『隷従の道』の第九章保障と自由で、「有限の保障というすのは、すべての人に与えられるものであり、したがって特権ではなくて、当然の要求目的である。・・・はなはだしい物質的窮乏に対する保障であり、すべての人に対する一定の最低生活の保障である。・・・健康を保持し、労働能力を維持するに足るある最低限の食糧、住宅、衣料が各人に保障されうるということに疑いはない」と述べ、それが市場外で、市場の作用に悪影響を与えないように行われることは、必要だし、自由を損なわないと書いている。また、同書において、小国の権利を守るべきだとか世界連邦構想とかを主張している。

  それに対して、師匠の限界効用学派のミーゼスは、「これらの戦争(植民地獲得戦争)の真の重要性を評価するには、もしインド、中国およびその奥地が世界の通商に閉ざされ続けていたならば、どんなことが起こっていたかを考えてみるがよい。個々の中国人やインド人だけでなく、ヨーロッパやアメリカの各個人も生活が悪くなっていただろう。もし今イギリスがインドを失い、大量の天然資源を持つその大地域が無政府状態になってしまって、もはや国際貿易のための市場―それは大市場である―がそこからなくなってしまうとすれば、それは第一級の経済的大災害をもたらしていたであろう」と述べたという。

 これは、森嶋通夫氏が『思想としての近代経済学』(岩波新書)で引用しているものであるが、氏は、これを以下のように批判する。

 「確かに、同書出版当時では、外国侵略に対する国際法は極めて寛大であったから、ミーゼスのように言うことも可能であったかもしれない。しかしイギリスの東洋侵略を正当化することは、すぐ続いて起こるナチスのヨーロッパ侵略をも、広域経済圏の効率性のゆえに正当化することになりかねない、それのみでなく彼は、インド人が隷従させられたことによる自尊の誇りを失って、彼らの効用関数がゆがめられてしまったことには何の考慮も払っていない。一方で彼がヤクザを排除していたのなら、他方で国際ヤクザを許容するのは、全く辻褄が合わない上に、政治学や社会学や倫理学を総動員して、総合的に判断しなければならない大問題への結論を、経済理論の一片の知識だけから引き出すという誤謬を、彼は犯している。・・・「主権は絶対だ」とイギリス人は考えるが、そうならインドや中国の主権も絶対である。そのことを認めない前記の第一の引用文での帝国主義の正当化は、全く一方的である。「不幸にして過去にそのような帝国主義的行為があった。したがって現在のイギリス人は、インドや中国の幸福と繁栄に責任を持たねばならない」というのが、現在のイギリス人の少なくとも公式上の弁明である。ミーゼスが『社会主義』を書いた当時でもそうであったはずである」。

  ハイエクは、自由放任主義よりもイギリス古典派の急進主義的自由主義に近く、連邦主義や自由と両立する社会保障政策・社会福祉政策の支持者であった。どういうわけか、日本では、ハイエクは、新自由主義ないし自由放任主義の中に混ぜられてしまっているような感じだが、そうではない。彼は、反帝国主義であり、小国の権利の擁護者である。ただ、それは、貫徹しきれておらず、また欺瞞にすぎなくなっているところもある。それは彼の自由主義もそうで、だから彼は、急進的自由主義者とリベラル派の双方から、中途半端だと批判されることになる。 サッチャーなどが師として持ち上げて以来、なにやら権威ある学者のように担ぎ上げられたが、実際には、折衷的で中途半端な知識人だった。   

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ケインズはよみがえるか?

 ケインズは、ケインズ革命を起こしたことで、20世紀で最も有名な経済学者となった。彼は、古典派を代表するマーシャルに始まるケンブリッジ学派の優等生として、出発した。しかし、1936年の有名な『雇用・利子および貨幣の一般理論』では、ついに古典派と決別するにいたる。なお、ケインズは、同書で、古典派に、リカードなどに加えて、マーシャル、ピグーなどのケンブリッジ学派を入れている。

 ケインズが、古典派に共通する問題として同書であげたのは、

  1. 実質賃金は現存雇用の限界不効用に等しい。
  2. 厳密な意味における非自発的失業というようなものは存在しない。
  3. 産出高および雇用のあらゆる水準にとって総需要価格は総供給価格に等しいという意味において、供給はそれ自らの需要を創造する。

 である。これはセーの法則と呼ばれるもので、古典派経済学が共通して前提してきたものであった。

 それに対してケインズは、まず、所得=産出高の価値=消費+投資
            貯蓄=所得-消費
    ゆえに    貯蓄=投資

 という式を提起する。

 それぞれは、消費性向・資本の限界効率・流動性選好(利子率)の三つの心理性向によって規定される。これらが、決定因である。基本的前提は、発達した貨幣経済ということである。それによって、貨幣は資産性を持つようになり、資産運用の判断が基本になる。資産を、債権で保有するか現金で保有するかという流動性選好が生じるのである。言うまでもなく、こうした資産選択が、大きな意味を持つのは、資産家に限られる。少額の現金を債権化するかどうかなどというのは、手間がかかるばかりで、たいした利益にもならない。債権や株式購入に最低いくら以上などの制限が設けられているのが普通である。ただ、最近は、それも小口化し、引き下げられてきている。

 だいたい、一般の多くの消費者にとっては、所得は、消費と貯蓄ないしローンの返済に充てられる。銀行に預金すれば、それは確かに、投資したことにはなる。古典派は、貯蓄の増加は、利子率を引き下げると考えた。古典派利子論では、貯蓄は、投資の供給であり、セーの法則によって、それはその需要である投資と均衡しなければならないからである。

 「投資は投資可能資金に対する需要を示し貯蓄はその供給を示し、他方利子率は両者が均等となる場合の投資可能資金の「価格」である。あたかも商品の価格が必然的にその需要と供給とが均衡となる点において決定されると同様に、利子率も必然的に市場諸力の作用を受けてその利子率のもとにおける投資量とその利子率のもとにおける貯蓄量が均等となる点において静止するに至る」(前掲書)

 それに対して、ケインズは、利子率は、「流動性を手離すことに対する報酬」「それは富を現金の形態において保有しようとする欲求を現在の消費を抑制しようとする心構えと均衡させる「価格」である」と、主観的・心理的な要因によって決まるとする。rを利子率、Mを貨幣量、Lを流動性選好関数とすれば、M=L(r)となるという。流動性選好の動機は、(1)取引動機、(2)予備的動機、(3)投機的動機の三つあるという。要するに、利子率は、こうした心理的要因あるいは慣習的なものによって決定されるというのである。それに対して、シュンペーターは、利子を決定するのは、企業家と信用供与者の間の市場の需給関係であり、それが金融市場だという。

 ケインズは、投資は、資本の限界効率によって決定されるというが、それは企業家の予想収益に依存するという。その場合に、利潤極大化という目的にあわせて、予想収益がたてられるとしている。しかし、株式会社が発展し、独占や寡占が一般化してくると、必ずしも、そうはいえなくなってくる。

 森嶋通夫氏は、ケインズ革命を、セーの法則を適応できる条件からそれができない反セーの法則の条件への変化に対応した経済学の変革と捉えている。小泉構造改革路線は、セーの法則を適応できる条件を上から作ろうとしたのだが、それは一方では、合併や企業買収や資本提携などの形での巨大株式会社の大独占体を生み出しつつある。また、「非自発的失業」の大量発生という不完全雇用問題が深刻化しているという反セー法則的情況が生まれた。再び、ケインズのいう「豊かさの中の貧困」という状態になっていて、ケインズ主義的政策が、有効性を取り戻したと言えるのだろうか?

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シュンペーターの企業者像など

 小泉構造改革路線の経済政策の中で、「創造的破壊」とかイノベーション(革新)とかいう言葉が聞かれたが、これらは、シュンペーター的概念である。

 シュンペーターは、新古典派的な資本主義像に対して、資本家(信用創造者)と企業者とを区別し、とくに、発展の原動力としての、企業者の役割を強調した。彼は、企業者機能としての新結合の5つの場合を列挙している。

   1.新しい財貨の生産
   2.新しい生産方法の導入
   3.新しい販路の開拓
   4.原料・半製品の新しい供給源の獲得
   5.新しい組織の実現

 このような新結合を遂行する典型的企業者は、「自分の引き受ける努力が十分な「享楽剰余」を約束するかどうかを問うものではない。彼は自分の行動の快楽的成果を気にかけない。彼は他になすべきことを知らないために、たえまなく創造をする。彼は獲得したものを享楽して喜ぶために生活しているのではない。もしこのような願望が現れたとすれば、それは従来の活動線上の停滞ではなく彼の衰滅であり、自己の使命の履行ではなく肉体的死滅の兆候である」というものである。

 そして、こうした企業者を刺激する動機は、

  1.  私的帝国を、また必ずしも必然的ではないが、多くの場合に自己の王朝を建設しようとする夢想と意志である。活動の余地と権力意識とを確保する帝国のごときものは、本来現代世界には存在しないが、現代世界において最も支配者的地位に近いものであって、その地位に到達する他の道をもたない人々にとってはとりわけ強く感じられるのである。
  2.  次に、勝利者意志がある。一方において闘争意欲があり、他方において成功そのもののための成功獲得意欲がある。経済生活はこのどちらの方向に対しても本来無関係な地盤である。これは、経済的なものとは特徴的に異なった動機であり、経済上の基準や法則とは縁遠い動機に他ならない。
  3.  最後に、創造の喜びは上述した一群の動機の第三のものであって、これは確かに他の場合にも現れるが、この場合にのみ行動の原理を定めるのである。「単なる業主」が一日の労働を辛うじて終えるのに対し、われわれの類型はつねに余力をもって他の活動領域と同じように経済的戦場を選び、変化と冒険とまさに困難そのものとのために、経済に変化を与え、経済の中に猪突猛進する。他方では、それはとくに仕事に対する喜び、新しい創造そのものに対する喜びである。それがそれ自体独立した喜びであるか、行為に対する喜びと不可分のものであるかは問題ではない。この場合にも、財貨獲得の「意味」を構成する根拠から、またこの根拠の法則にしたがって財貨が獲得されるのではない。

   このうち、第一の動機の場合にだけは、企業者活動の成果としての私有財産が本質的要因となる、とシュンペーターはいう。そして、これらの様式をなんらかの社会的取り決めによって置き換えることは可能だという。その場合には、「経済生活において確認しうる無限に多様な動機について、またわれわれの類型の行動に対する動機の事実的重要性について、さらには異なった環境やおそらく異なった制度のもとでのこれらの動機の存続可能性について、詳細な現実的研究をおこなうことは、真面目に考慮されるべき「計画経済」および真面目に考慮されるべき社会主義の一つの根本問題である」。

 シュンペーターのいう企業者像は、マルクスの『資本論』の第三巻7分冊の利子生み資本を扱った部分で、貸付資本家・資本所有者と産業(商工業)資本家・機能資本家の独立化を、利潤の利子と企業家利得への分割と関連づけて説明していることをより具体的に展開したものと言えなくもない。

 マルクスは、企業者機能の詳細な具体的な規定を与えていない。ただし、例えば、発明や技術改良の成果を取り込む企業の利益を特別利潤と呼んでいる。それから、シュンペーターが企業者利得の例としてあげている創業者利得については、マルクスもふれてはいるが、彼ほどは、強調はしていない。むしろ、創業者利得や独占利潤については、ヒルファーディングの『金融資本論』の方が具体的に指摘している。シュンペーターが、企業者機能を重視したのは、景気循環の要因を探るという動学を目指したためである。なぜ、近代経済において、好況・不況・恐慌などの景気現象が生じるのか?、なぜ、安定ではなく変化と飛躍が起きるのか?  なぜ、歴史的変動や社会変化が起きるのか? 等々という動きの原因を突き止め、その過程を明らかにしたかったのである。

 新古典派にかけており、ケインズにもかけていたのは、そうした発展する経済の動的な過程の分析であり、そうである限り、正確な経済像は描けないのである。それから、古典派以来のイギリス経済学では、政策論の混入があって、経済現象の理解に影響を与えていたことである。ケインズの場合もそうであり、その点をケインズ自身が認めていたが、それはイギリス経済学の主流をなすやり方を正統に継承したことを意味する。大陸の新古典派である限界効用学派とそれを受け継いだオーストリー学派は、それを批判した。この系譜に連なるシュンペーターは、ニューディールに反対した。ドイツでは、研究上の判断と価値判断をはっきりと分けるウェーバー社会学が生まれていた。
  
 シュンペーターの描く企業者が、経済とは別の価値観を持っているというのはユニークであり、それはウェーバーが、『プロテスタントの倫理』において、プロテスタントの宗教倫理が職業倫理へ転化し、職業生活・営利生活を支える使命感の源泉となったというのと似ていなくもない。ただ企業者の方は、冒険者である。しかし、創造の喜び、勝利の喜び、支配者となる喜び、という精神的獲得物以外の物的経済的利益に無関心な企業者というものは、純精神的なもので満足するという点では、宗教者に近いものがあると言えるかもしれない。それにそれは、ニーチェの超人像と似ているようにも思える。企業者の基礎にあるのは、権力への意志と言ってもよいのかもしれない。というのも、彼は、企業者を指導者機能とも関連づけているからである。ただそれは、労働の監督者であり、生産の指揮者・経常的活動の管理機能というだけではなく、新結合を実現する指導者機能であるという点に本質が置かれているのであるが。
 
 しかしながら、やがて、資本の集中・集積が進み、独占が起きてくると、指導者機能は、衰退する。組織の発展によって、冒険家に、合理化された専門化された事務官が取って代わるようになるからである。

  最後に、シュンペーターの資本主義崩壊論を、『シュンペーター』(岩波新書)のまとめで見ておこう。 

  1.  実業家階級の成功がすべての階級に対して新しい生活水準を実現し、そのことが逆説的に実業家階級の社会的・政治的地位を掘り崩してしまう。
  2. 資本主義的な活動が合理的な考え方を広めたために、生産工場内の忠誠心や上下の命令服従関係が破壊され、リーダーシップが有効に働かなくなったこと。
     
  3. 実業家階級が工場やオフィスの仕事に専念することが、結局、それに敵対的な政治上の制度や知識階級を出現させたこと。
     
  4. これらすべての結果として、資本主義社会の価値の図式(すなわち、「不平等と家族財産の文明」)は、世論に対してのみならず、資本家階層に対しても支配を失おうとしていること。

 小泉構造改革は、いくつかのスローガンをシュンペーターから借りているが、中身は似て非なるものであった。堀江貴文は、当初は、新結合を遂行する企業者的な感じだったが、次第に、山師的になった。村上ファンドは、もっとそうだった。新結合ではなく、それを装ったペテン的画像を描いて提示しながら、実際には、株価操作などを行って、見かけ上の自己価値の水増しをやっていただけなのである。今は、企業者機能は衰退し、集中と集積の独占の発展の時代にある。日本でも、銀行グループは四っつに再編されるなど、合併や資本提携、買収など、独占化の動きが激しくなっている。それは、日産・ルノーの提携などのように国境を越えた国際的な独占化の動きにも発展しているのである。
 
 近代経済学は、さらに寡占や独占、組織機能の研究、動学等々へと展開していく。途中で、新自由主義などのイデオロギー的な似非経済学のちん入ということもあったが、それは悲惨な結果に終わった。ブッシュ政権下では、ついに、自動車産業の世界の巨人のGMが、倒れかけた。あれほど、経営者や金持ちに対して優しくしたのに、こんなことが起きるのはなぜだろうか? そこに企業者機能の衰退ということがあったのではないか?

 日本では、あやまって「創造的破壊」とかイノベーションとかいう言葉が政権に都合のいいスローガンとして広められたが、例えば、郵政民営化は、それ自体は、なんら新結合をともなうものではない。新結合に企業の所有形態は関係ないのである。民営化自体は創造的破壊でも何でもない。

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古典派・新古典派経済学の人間像について

 古典派経済学では、リカードの次に、J・S・ミルが現れた。ミルもまた、分配法則の学としての経済学というリカードの説を継承した。しかし、ミルは、自由主義を基本にしつつも、社会主義者と呼ばれるほど、社会改良的な姿勢を取った。彼は、社会主義者を自称していた。彼は、後の社会民主主義に大きな影響を与え、リベラルの先駆けともいわれる。彼は、ベンサムの功利主義を受け継ぎつつも、功利の量よりも質を重視した。彼には、「満足した愚者であるよりも、不満足なソクラテスであるほうがよい」という有名な言葉がある。彼は、普通選挙権運動や女性解放運動や労働者保護やアイルランドの経済の引き上げのための運動などに理解を示し、かかわった。それには、ワーズワースなどのイギリス・ロマン派との交際による影響があったともいわれる。また、サン・シモン主義の影響も受けたと言われる。彼は、特に政府による再分配政策による貧困問題の解消を追求したという。

 余談だが、日本の明治初期に輸入され、自由民権運動に大きな影響を与えたのが、ミルの諸著作であった。自由民権運動は、ミルの社会改良的な思想を強く受け継いだのかもしれない。もっとも、自由民権運動は、秩父困民党などに象徴される社会革命的な内容にまで進んだ時、内部の分岐が深まり、明治政府からの弾圧の強化と国会開設という譲歩を契機に、自己崩壊を遂げることになる。

 J・S・ミルをもって、古典派経済学が終わり、新古典派が始まるとされている。その最大の経済学者は、マーシャルで、彼もまた、貧困問題、労働者階級の生活向上問題の解決を目指した。その際に、慈善ではなく、労働者階級の自立心による生活向上を目指したのである。それは、日本でも、数々の自立支援政策と呼ばれるものに受け継がれている考えである。しかし、それは自立のための様々なスキルを身につけさせるという能力主義的なやり方を基本にしているのだが、実際の資本主義経済においては、一部の熟練化を除いては、非熟練化が進められており、実現が困難な道なのである。

 それは、19世紀後半のイギリスでは、合資・合名会社が一般的で、熟練技能が一般的に必要とされていた時代の考えだったのである。アメリカでは、すでに、非熟練労働者による大規模生産の大工場が発展しつつあり、やがて、フォード・テーラー・システムと呼ばれる大量生産・大量消費の時代が訪れるのである。さらに、株式会社が発展して、一般化する。マーシャルは、こうした新しい時代に対しては十分に対応できなかった。そして、20世紀に入るとケインズが登場し、ケインズ革命を起こすのである。

 古典派の特徴について、『市場経済学の源流』で井上義朗氏は、「①ひとつは、「経済」というシステム全体に関するイメージについて。一九世紀的世界観の下で生まれてきた新古典派は、基本的に何か安定的な構造を経済の本質的な姿として捉えている。すなわち、種々の経済的活動は究極的にはその構造に向かって収束してゆく性質を持っており、構造そのものを変形させてゆく力は経済メカニズムのなかには含まれていない。そして、その収束性を保証するのが市場メカニズムであって、市場は利潤や損失を指標に、資源を市場間で次々に移動させ、最終的にはその構造への収束を達成する。/②いまひとつは、「人間」の捉え方について。新古典派における基本的な人間像は、一言でいえば、与えられた状況に応じて、何らかの意味での自己の利益をできるだけ大きくすべく、最も有利な方法・方向を選択するというものである。つまり、与件に対する適応的行動主体として、「人間」を規定しているわけである」と指摘している。

 いづれも、今日では、基本的には失効した考えだが、イデオロギーとしては生き続け、政策にも反映されている考えである。①は、この間の日本経済のバブルからバブル崩壊と長期不況等々の経済変動の経験から、誤りであることは体験的に理解できる。②のような人間は、教育などの人為的な手段で作り上げられなければ、ありえない。日常的にそんなことをしている人はそんなにいない。たいていは、会社などで、そうしろと言われるから、そうしているだけだ。多くの人は、日常生活で、それが最大の利益になるかどうかをいちいち計算しながら行動してはいない。

 「これは、外界からの刺激に対する反応の仕方が、ある程度の一定性をもっている考えることとほぼ等しく、この想定が、人間行動を「関数」に翻訳する今日の方法への道を拓いた。したがってこのような人間像は、刺激の刺激たる所以を、各人がそれに施す解釈の仕方に求め、刺激に対する反応の仕方も、解釈の内容に応じて多様なものになりうるとした、二十世紀初頭の能動的人間像とは対極的な位置にあるものである。しかし、新古典派的人間像に従うかぎり、各人の需要・供給の大きさは、外界からの情報に変化がない間は変わる理由がなく、それが①における構造の安定性を守る要因にもなっているのである」(前掲書)。

 古典派・新古典派経済学が前提とした人間像には当然、時代的制約があったのである。それに対して、20世紀初頭に生まれた能動的人間像というのは、いわゆる限界効用学派を引き継いだオーストリア学派やケインズ学派やシュンペーターなどのものである。19世紀の功利主義的人間観に対して、同時代ではロマン主義が対立した。経済学では、シスモンディ、サン・シモンなどである。

 アダム・スミスは、同職組合(ギルド)の解体と個人資本の発生期、リカードは個人資本の発展期、J・S・ミルは転換期、マーシャルは、合名資本・合資会社の時期、ケインズは株式会社の発展期という経済主体の各時期に対応した経済学を形成した。それは孤立した個人的経済主体から始まって、やがて、社会的経済主体たる株式会社に到達する。この過程において、経済学が描く人間像が変化した。古典派・新古典派経済学は、目的として掲げた人々すべてを豊かにするという目的を実現できなかった。労働貧民問題は、どうしても解決できなかったのである。ケインズは、その原因を有効需要の不足にあるとして、公共投資の意図的拡大を提言した。それぞれの時期の人間像があり、経済主体像と心理学があったのである。

 もう一つ、古典派・新古典派に共通する問題として、社会の捨象ということがある。それに対して、経済学を社会学・歴史学等と関連させたのは、ドイツの歴史学派やマルクス、ヴェブレン、ガルブレイス、マックス・ウェーバー、シュンペーターなどである。こうした新しい形の経済学は、近代経済学ないしポスト近代経済学と呼ぶべきかもしれない。 

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古典派経済学は目的を実現できなかった

 アダム・スミスは、経済学の目的を、結局は、人間全体を豊かにすることに置いた。彼は、国民と主権者を豊かにするためと書いたのだが、他方で、人間に備わる交換性向の漸進的発展を進歩と見なしているので、交換から分業が発展し、そして市場が拡大することも、必然的な発展だと主張していることになるからである。

 アダム・スミスを継承しながら、その業績に重要な変更を加えたリカードは、大地の生産物の社会の三大階級(地主・資本家・労働者)への分配を規定する諸法則を確定することを経済学の目的とした。すなわち、経済学は、分配法則を研究する学問だというのである。

 そして、『経済学および課税の原理』では、「人類の友が闘わないではいられないのは、すべての国で労働階級が安楽品や享楽品に対する嗜好をもち、それらの物を入手しようとする彼らの努力があらゆる合法的手段によって刺激されることである。過剰人口を防ぐには、これにまさる保障はない。労働階級が最小の欲望しかもたず、最も安い食物で満足している国々では、人民は最もひどい浮沈と困窮にさらされている」という。つまりは、労働階級には、高賃金が必要だというのである。そうなるには、「賃金は市場の公正で自由な競争に任せるべきであり、けっして立法府の干渉によって統制されるべきではない」というのである。

 したがって、アダム・スミスのいう労働貧民対策として救貧税を課すのは有害無益だから廃止するよう提言し、労働階級に入るようにするのがよいと主張する。貧民対策は、かれらの人口抑制がよいとリカードは言う。しかし、労働貧民ないし貧民は、近代経済体制が必然的に生み出し再生産している構造的な産物であり、特殊な人口法則によって規定されている存在なのである。それが過剰人口の法則であって、それによって、賃金が下方に引っ張られているのである。このような過剰人口問題についての誤った前提として、供給が自らその重要を作るというセーの法則が成立しないことを明らかにしたのが、ケインズである。

 ケインズは、労働供給と労働需要が、通常は一致しないことを指摘した。リカードは、社会の三大階級の間で、うまく分配ができれば、労働階級も豊かな生活ができるはずと考えたが、実際には、貧民すなわち失業者・半失業者が大量に生まれ、最好況期以外には解消しないのである。国民全体を豊かにする目的を掲げた古典派経済学は、結局は、目的を実現できなかったのである。

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アダム・スミスの限界について。少々。

 アダム・スミスは、『国富論』第一編第二章で、分業の利益を並べた上で、「第二章 分業をひきおこす原理について」の最初に「分業は、人間の本性にひそむ交換という性向から生じる」ことを説明する。

 彼によれば、分業は、人間の本性上の「ある物を他の物と取引きし、交易し、交換するという性向の、ゆるやかで漸進的ではあるが、必然的な帰結」である。そしてこの性向は、本能ではなく、理性と言葉という人間的能力の必然的帰結であるという。理性と言葉は、人間が共同生活をすることから生まれ、発展したのだから、結局、これは人間は社会的動物である(アリストテレス)というのと似たようなことである。言葉は、それを話す相手なしには生まれない。したがって、この性向は、共同体を前提とするということになる。

 ところが、アダム・スミスは、「われわれが食事をとれるのも、肉屋やパン屋の博愛心によるのではなくて、自分自身の利益にたいするかれらの関心によるのである」と、分業の一定の発展段階を一般化してしまう。肉屋という独立の商人が成立するまでには、長い歴史的経緯を経てきたのであり、かつて、狩猟採集の際に共同で狩りをし全員で分け合ったという段階があったし、今でもアマゾンなどの原住民の中には、それに近いことをしている部族もある。獲物を分ける仕方は、共同体の掟として決まっている。

 彼は、食事を得る際に、肉屋やパン屋に「われわれが呼びかけるのは、かれらの博愛的な感情にたいしてではなく、自愛心にたいしてであり、われわれがかれらに語るのは、われわれ自身の必要についてではなく、かれらの利益についてなのである」という。しかし、例えば、香港の庶民の市場で、消費者が語るのは、もっぱら自分の必要についてである。『旧約聖書』の物語では、イスラエル人の諸氏族にカナンの地を割り当てたのは、イスラエルの神がモーセに下した啓示によるもので、諸氏族の自愛心との取引の余地はなかったということになっている。神意は、絶対だから。

 彼は、そのような神意が幅を利かし、共同体の掟が支配する時代から、必然的に、ゆっくりとだが、人間の本性たる交換性向が発展したという。そして、「交換という性向は、利己心によって刺激されて分業へと導く」と、交換性向を利己心という心理と結びつける。

 分業を発生させるのは、取引きするという性癖であると彼は言う。そして、弓矢づくりに秀でたある個人は、それに専念して、弓矢と他の必要品と交換することに専念するという例をあげる。しかし、これは偶然の出来事であって、この人一代で終わりである。次に、弓矢づくりに秀でた人が誕生するのはいつのことかはわからない。だから、こういう分業は例外にとどまる。歴史事実は、弓矢づくりの分業は、たまたま弓矢づくりに秀でた個人が生まれたから、発生したのではなく、他の共同体との交換から、そういう需要向けに弓矢づくりに専念するような集団的生産が発生したのである。例えば、日本の縄文時代の遺跡からは、遠く離れた地方の生産物が数多く発見され、遠くの他の共同体との交流があったこと、取引があったことが明らかになっている。ペルーのナスカ地方の古代の共同体は、定期的に海岸の共同体と産物を交換していたことが明らかになっているが、それぞれ、ナスカの高原地帯ではもっぱら農業に、海岸地帯ではもっぱら漁業にたずさわっていたらしいのである。アダム・スミスが言うように、ある技術にたまたま秀でた個人が出てきて、分業が進んだなどというのは、違う。

 「取引きし、交易し、そして交換するという性癖がなかったならば、だれでも、自分の求める生活の必需品と便益品をことごとく自分で調達したにちがいない。すべての人が、同一の義務を果たし、同一の仕事をしなければならなかったにちがいない。そして、才能の違いをもっぱらひきおこすような、仕事の違いはありえなかったであろう」と彼は書く。彼が生きていた頃は、まだ、人類学もなく、こういうことを目の前の現実から抽象して、一般化するしかなかったとも言えるが、もともとの人類は、生活の必需品を自分一人で調達していたのではなく、共同体として行っていたのである。もちろん、核家族ではなく、大家族制であったので、共同家屋に大勢が住み、集団で狩猟採集をしていたのである。農耕段階になっても、やはり、仕事は基本的に集団で行われていたのである。

 「ひとはだれでも、自分自身の労働の生産物のうちで自身の消費を越える余剰部分を、他人の生産物のうちでかれが必要とする部分と交換することができるという確実性によって、特定の職業に専念するように力づけられる」とアダム・スミスは言うのだが、共同体のうちでは、余剰生産物は貯えられるか、使い尽くされるか、他の共同体との交換に使われることもある。やがて、足りなくなると、他の共同体から奪うようになる。スミスは、すべてを個人、あるいは人間一般の共通性向から抽象的に導き出そうとするから、実際の人類史と合わなくなるのである。

 そして、彼は、人間の理性と言葉の発展と交換性向の発展をほとんどイコールとして結びつけた上に、それを利己心という心理とも結び合わせ、さらに、それを個人的な技能の優劣・能力にも関連させて、分業の発生を説くという無茶をする。

 人間全体を豊かにするというアダム・スミスが掲げた経済学の目的はよいのだが、その他のところでは、いろいろと問題がある。彼が経済学の目的として主権者と国民を豊かにすると言ったことも、フランス革命後においては、主権在民、すなわち主権者=国民というのが一般的になったし、それはさらに人権概念の広まりと共に、国民を超えた人類一般の権利と福祉ということが人類の普遍的目的として顕揚されるようになってきたので、さらに、人類全体を豊かにするというように拡張されねばならなくなりつつある。

 アダム・スミス後、経済学は、一方で、国民経済学として発展し、他方で、普遍的な学問として発展してきた。彼自身は、国民経済学の範囲に止まっていたが、後の啓蒙主義同様、人間学とか理性の重視という傾向をも強く持っている。すなわち、人間の本質的性向の発展による進歩の過程を想定しているわけである。それが、彼の「個人の私利をめざす投資が、見えざる手に導かれて、社会の利益を促進する」という言葉に表れているのである。このテーゼについては、幾多の論争が繰り広げられてきたし、このテーゼと逆のことを実際に経験してきているわけで、このまま信じているのは、新自由主義原理主義者ぐらいしかいないと思う。ハイエクにしても、市場の欠陥を直すために制度的に介入することを主張しているので、このテーゼをそのまま信奉などはしていないのである。その他いろいろあるけれども、アダム・スミスが掲げた経済学の目的を実現するには、彼のやり方では無理だということははっきりしている。

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小泉政治の置きみやげの格差社会への抵抗・補足二題

 先日、小泉首相の靖国参拝について、5割程度の支持があると書いたが、どうやらこれは瞬間風速だったようだ。8月22日の『産経新聞』の世論調査結果では、小泉純一郎首相の8月15日の靖国神社参拝については「評価しない」が44・6%、「評価する」が41・4%で、評価しないが評価するを上回った。さらに、下付の『東京新聞』の世論調査では、支持31%、不支持57・8%で、不支持が支持を大きく上回った。瞬間風速は、やはり小泉首相への最後のはなむけだったようだ。

 経済財政諮問会議のメンバーで、小泉―竹中の構造改革路線を共に推進してきた奥田前経団連会長が、相変わらず無責任なことを語っている。いわく、「格差は社会の活性化につながる限り、むしろ望ましい」。現実には、格差は、全体的には社会の活力を奪っている。彼は、「金もうけこそ活力の源泉」とした上で、成功者を嫉妬せず称賛することが経済的繁栄に不可欠と指摘」したというが、社会の活力の源泉を「金もうけ」に一面化し、狭めることで、その他の様々な活力の源泉を失わせているのだ。成功についても、「金もうけ」が基準とされ、それ以外の基準を捨象している。社会的価値を貨幣のみに帰し、人間の社会的評価を「金もうけ」の成功・不成功に帰しているわけだ。なんて貧しい考えだろう。彼は、建築家の安藤忠雄氏とイタリアのルネッサンス芸術を鑑賞する旅のテレビ番組に出ていたはずだが、そこで何も深く学ばなかったようだ。
 そこには、「金もうけ」で成功しなかったが、芸術で成功した歴史的人物たちの作品がいろいろとあった。レオナルド・ダ・ヴィンチもその一人であった。そして彼らを支えていたのは、ギルドの職人技であった。
 奥田氏を支えているのは、無数の人々の日々の営為であり、氏はその上に乗っかっているにすぎない。金もうけの成功者を支えているのは、そのような人々の結合した社会的力である。そのくせに、それに感謝するでもなく、成功者だけが、称賛されなければならないとは、傲慢である。社会なくして、貨幣もないし、成功もない。そして、社会があれば、当然、倫理や道徳が存在するのである。奥田氏は、「倫理や道徳に背く金もうけは許されない」と語りながら、倫理や道徳を破壊し、法をぎりぎりですり抜けて、「金もうけ」を追求し、一時は成功者ともてはやされたライブドアを経団連に加盟させたことについてはなにも語らなかった。自らが掲げるこの基準は、自分には当てはまらないということなのだろうか?
 社会にせよ、人間にせよ、もっと多様なものであり、「金もうけ」に一面化されるのは窮屈で、耐えられない。金は手段であって、「金もうけ」が自己目的化したら、それは金の奴隷である。社会をよいものにすること、よい社会をつくることに基本目的を置いて、金はその手段として有効に使うのがよいのである。
 
 首相の8・15参拝サプライズなし

  『すると思った』85%

   東京新聞は二十三日、「政治ネットモニター」を対象にした意識調査結果をまとめた。八月十五日に行った小泉純一郎首相の靖国神社参拝については85・8%が「参拝すると思っていた」と回答。「しないと思っていた」は2・8%にとどまり、小泉首相が退任前の「最後のサプライズ」とされた終戦記念日の靖国参拝は、国民には何の驚きも与えなかったことが分かった。 

 参拝を「支持する」「どちらかというと支持する」は31・0%、「支持しない」「どちらかというと支持しない」は57・8%で、不支持派が上回った。また、八月十五日に参拝すると思っていた人でも不支持派が56・6%を占めた。ただ、自民党支持層に限ると、支持派が約六割近くの58・0%を占めた。

調査は、本紙が選んだ五百人のモニターを対象に十六日から二十一日まで実施。インターネットを使った調査に対し、85・8%の四百二十九人が回答した。調査は今回で三回目。

 自民党総裁になってほしい政治家については、安倍晋三官房長官が47・3%(前回51・5%)で微減となったが、トップを維持。首相の靖国参拝を批判して、自らは参拝しないことを明言する谷垣禎一財務相が大きく支持を広げて24・5%(同13・0%)で続いた。麻生太郎外相は10・3%(同8・8%)だった。(2006年8月24日『東京新聞』)

  「格差はむしろ望ましい」「奥田トヨタ相談役名古屋で持論展開」

 「日本経団連前会長の奥田碩トヨタ自動車相談役は23日、名古屋市で講演し、小泉政権下で進んだ経済格差拡大について「格差は社会の活性化につながる限り、むしろ望ましい」との持論を展開した。

  奥田氏は「金もうけこそ活力の源泉」とした上で、成功者を嫉妬せず称賛することが経済的繁栄に不可欠と指摘。「倫理や道徳に背く金もうけは許されない」と述べたが、経団連会長時代に、堀江貴文被告が率いているライブドアの入会を認めたことについては言及しなかった」(8月24日『毎日新聞』)

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小泉政治の置きみやげの格差社会への抵抗

 小泉政権がまもなく終わろうとしている。最後のパフォーマンスは8月15日の靖国神社参拝であった。これは、得意のサプライズのはずだったが、世論調査では、これを支持した人は5割程度にしか増えず、さらに次期総理には参拝しないでほしいという人が6割以上、さらに、NHK世論調査では小泉政権の支持率は前回と変わらずということで、サプライズなしに終わった。
 もはや人々は、ポスト・小泉に心を移してしまっていて、有終の美を飾る最後の公約実現として8月15日の靖国参拝ぐらいは好きにやらせてあげたいという善意を示したのではないだろうか。
 中国・韓国にしても、多少の抗議活動はあったものの、もはや、小泉相手にせずで、次の首相の方に関心が移行している。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が小泉政治の5年間を総括する記事を載せているように、すでに海外の日本政治への関心は、小泉後に向いている。
 小泉政治が生み出した大きな問題の一つである格差の拡大・固定化の格差社会は、構造的問題になっている。どんな社会でも格差はあるというのは、当たり前の話で、小泉語録にはこういうわかりきった一般論の類が多い。格差は、ある尺度・基準で現象を比較することで意味が出てくるので、格差一般について語っても仕方がない。
 昔は、生活水準の格差が開きすぎないように、政府が所得再分配を行ってきた。それは、社会の安定のためでもあり、社会福祉のためでもあった。
 古典派経済学の祖アダム・スミスの主著の題名は、『国富論』である。この本で、彼は、経済学の目的を、国民に豊かな収入・生活資料を提供することと国家・共同社会に公務の遂行に十分な収入を供することの2点に置いている。すなわち、主権者と国民の双方を富ますことである。柳田国男は、民俗学の目的が「経世済民」にあることを繰り返し強調した。
 小泉政権下で、日本版「先富起来」路線がとられ、豊かになれる者は先にどんどん金持ちになれと、人々の金銭欲をかき立て、競争心が煽られた。政府は借金づけになり、国民の貧困率が上昇した。アダム・スミスは、労働の豊かな報酬は、庶民の勤勉さを増進させるのであり、労働の賃金は勤勉への刺激剤であると述べている。官僚は、こうした物的刺激を税金のごまかしによる裏金を作ってでも、自らに与えるが、例えば、障害者の自立を促すためとする自立支援政策においては、それを取り上げ、できるだけ削ろうとする。そして、下層労働者や失業者、不安定雇用労働者たちに対しても、そうする。上にはアメが与えられ、下はムチ打たれる。うわべだけのプランがでっち上げられるが、表の目的と裏の目的は異なる。裏金づくりと同じノウハウである。
 東京都の「ホームレス地域生活移行支援事業」がまさしくそれである。それは、看板だけの生活移行支援、その実は、ホームレス排除であり、表と裏がある欺瞞にすぎなかったのである。古典派経済学が、国民=金持ち支援学になっていったように、行政の表看板と裏看板では言葉の意味が異なるのである。こういう表と裏の意味変換のテクニックは、行政上の秘儀なのである。それに対する闘いが、支援者などによって開始されつつある。大阪でも行政によるホームレス排除の動きは同じである。以下のお知らせが送られてきたので、掲載しておく。
 この国の「勝ち組」たちは、富裕税の類を支払うことには猛反対し、海外に資産を貯えようとする。かれらの多くは、人民全体が富み、豊かになるために、積極的に社会貢献するという社会的美徳を持とうとし発揮しようと努めようとしない。行政もまた、そんな社会的美徳を持とうとしない。ただ、立派なスローガンを看板に掲げているだけだ。驚くべきことに、東京都の石原は、人民の救済のために尽くした日蓮の教えを継承すると称する霊友会の信者なのである。
 今、日本の政治は、政治などといえるようなものではなく、商売になっている。人気が総理を選ぶ大きな基準になり、選挙で勝つことが至上命題になった。政策は、二の次である。安倍官房長官は、政策をはっきりさせていないのに、すでに最有力候補になっている。今のところ、彼が言っているのは、ベストセラーになった『国家の品格』を引き写したような感じのことである。しかし、彼の具体的な政策がはっきりしていないのに、派閥横断の支持議員が多いのは、選挙で勝ちたいからである。森派が一本化しそうなので、それだけでも安倍は有利である。勝ち組に乗りたい議員が安倍支持になだれをうった。政策重視の党改革はどこにいったのか? どこにもない。
 小泉はけんか上手だというような論評が見られる。勝ち負けの基準は何か? 選挙か? それなら、勝ったり負けたりだし、昨年の9・11総選挙の勝ちすぎは必ずしもいいことではないとも言える。現に、自民党の地方組織で分裂や対立が激化したために、来年の参議院選挙に向けた体制づくりが難しくなったといわれる。橋本派支配を壊した。それは、財政危機で、ばらまく金がなくなってきたということが大きかった。靖国問題で、8月15日に靖国神社を参拝したことで、中国・韓国とのけんかに勝ったと言えるのか? 小泉首相の独り相撲、自己満足、独りよがりにすぎなかったのではないか?
 人々が格差の下方から脱却できるという希望を持てなければ、勤労意欲が萎えてしまう。ワーキング・プア(アダム・スミスは、こういうのを労働貧民と呼んでいる)と呼ばれる層が400万世帯に達し、雇用労働者の約3分の1の1600万人が、フリーター・パートなどの不安定雇用者であるといわれる。かれらは、生活保護水準以下の生活レベルと言われるが、問題は、不安定雇用者の賃金が低く抑えられていることであり、生活保護費が高すぎるなどというのは、問題のすり替えである。400万世帯のワーキング・プア層全体の所得が上昇すれば、それにともなって税収が増えるし、相対的に生活保護費の水準が低下するのである。
 アダム・スミスなどの古典派経済学が目標とした全人民を豊かにするということが、新しい政治に求められていることは明らかだ。景気が回復傾向にあるといっても、麻生外務大臣がいうように、多くの人が豊かさを実感できない。そこに、小泉政治5年間の負の一面が現れている。 

  *以下転送・転載歓迎です*

 猛暑が続きますが、みなさんお元気でしょうか。

 今夏の大阪キタでは、パトロールのなかで毎週のように襲撃事件を耳にします。花火を打ち込まれたり、ダンボールを蹴られたりといったケースが相次いでおり、川沿いの仲間が小屋を2軒全焼、1軒半焼失させられ、あやうく難を逃れるという事態も起きています。

 扇町公園でも、何者かが打ち上げ花火を朝の9時に(!)テントの仲間に向かって発射して逃げていく事件が先々週に起きたばかりです。

 大阪市は、こうした状況に呼応するかのように、排除の圧力を強めています。靱・大阪城での強制排除に対し、いまだ謝罪も補償も対話もおこなわず開き直るかれらは、ホームレス特措法見直しの年である2007年度に向けて「野宿者がいかに減ったか」をアピールしたいかのごとく、各地でテントつぶしに邁進しています。
(靱・大阪城行政代執行については、当事者の仲間17人が市を相手取り、国賠訴訟を開始しました。こちらにもご注目を!)

 先日は北部方面公園事務所が扇町公園で共同所有されているテントなど3件に「撤去要請」の張り紙をしていきました。うち1軒は、約7年前に扇町公園の仲間たちとともに建設され、寝床のない仲間の泊まり場所や、物資の保管など、大阪キタの野宿の仲間のためにずっと利用・活用されてきた「本部テント」です。

 2000年12月19日には何者かにより放火を受け、全焼の憂き目にあったもののすぐさま再建され、それ以降は1年中を通して扇町の仲間(越冬期間中は越冬闘争に参加する仲間たち)によって夜警=寝ずの番が取り組まれてきました。本部テントだけではなく、扇町の他のテントや、園内で露宿する仲間に対する襲撃・放火を警戒するための取り組みです。

 長年保たれてきたこのような助け合いの場をつぶすことに躍起になる以外に、大阪市は、もっとほかにやるべき仕事があるのではないでしょうか。憤りを禁じ得ません。

 路上や公園のいたるところに「野宿禁止」の看板が立ち、フェンスやロープで覆いがなされ、あちこちのテントに「撤去しろ」「退去しろ」の張り紙を役人がこれみよがしにべたべたと張っていく風景を見て、地域の子どもたちは何を思うのでしょうか。

 野宿者襲撃は、行為を実行する子どもや大人にのみ全責任があるのではなく、野宿者を「自業自得」で「やられて当然」とみなすようなこの社会のあり方に根本の原因があると私たちは考えます。

 あらゆる人々が競争に駆り立てられ、命をすりへらしていくいっぽうで、人の生を「勝ち」やら「負け」やらに振り分けて「負け」とされた者には生きて存在する権利すら認めないような社会、戦争加担と戦争準備にとほうもないカネとエネルギーをつぎこむ一方、社会保障を際限なく切り捨てつづけるこの国に、私たちは今後もしぶとく、路上の現実からささやかな反撃をくわだてていきたいと思います。

そんなこんなで、前置きがながくなりました。
今週日曜日、扇町公園で夏まつりをします。
ぜひご参加ください。

★大阪キタ夏まつりへ!★

#みんなでつくろうキタ夏まつり
#失業・アブレ・猛暑にまけず、みなで楽しいひとときを持とう!
#追い出し・排除・襲撃に否! 
ともに助け合い、生きていける<なかま>の団結をつくろう!

<会場>
扇町公園南西角広場
(JR「天満」、地下鉄堺筋線「扇町」より徒歩5分。JR「大阪」
阪急「梅田」より徒歩15分)

<問い合わせ先>
090-9700-0296/06-6374-2233(FAX)
e-mail: kamapat@infoseek.jp
URL: http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9279/

★前夜祭
8/26(土)扇町公園にて
18:30よりそうめん食べながら映画を見ます。

(その1)
未定(先日の仲間の日で挙がった『寅さん』『釣りバカ日誌』
『任侠もの』のうちどれかにします)

(その2)
靱・大阪城公園行政代執行・現地闘争映像
今年1月30日、大阪市の非道に抗し、大阪の仲間・全国の仲間が結
集してたたかい抜いた<あの日>の記録をみなで見よう!

★大阪キタ夏まつり
8/27(日)扇町公園にて

9:00 準備開始 (手伝ってくれる方歓迎です)
16:00 まつり開始(~20時ごろまで)

<出店>
やきそば、ホルモン焼き、フランク、チヂミ、ドリンク(発泡酒、
チューハイ、ジュース)、フリーマーケットなど。

※余裕がある仲間も、ない仲間もみなで楽しめるよう、当日にアル
ミ缶20個と食券3枚を交換します(お金で買う場合は全品100円で
す)。

※アルミが約1キロ以上の場合、高齢者特別就労組合準備会が発行
する大阪キタ夏まつり・長居公園大輪まつり(9/17~18)共通出店
券との引き替えもできます。

<イベント>
スイカ割り、缶つぶし競争、カラオケ大会、盆踊りなどやります。
マイクアピール、うたいたい人踊りたい人など飛び入り歓迎。

※この間、無念にも路上で、テントで、病院などで命を落としていっ
た仲間たちを追悼する場も設けます。ご参加ください。

※釜パト・大阪キタ越冬実の取り組みについて展示をします。ぜひ
ごらんください。

■夏まつり支援カンパにご協力を!■
郵便口座:00930-6-139747(名義「大阪キタ越冬実」)

■カンパ物資送り先■
(毛布、寝袋、衣料、米、保存可能な食材、その他日用品など)
〒530-0025 大阪市北区扇町1-1 扇町公園内キタ越冬実現地本部

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釜ヶ崎パトロールの会

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金津 まさのり <nyaz@rd6.so-net.ne.jp>

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不安定なイスラエル政治

 イスラエルの政治状況はじつに複雑である。

 まず、今年3月の総選挙では、リクードを割ってシャロン首相が創設したカディマ28、労働党20、宗教政党シャス13、リクード11、右派のイスラエル ・ベイテイヌ12、宗教右派のNRP/NU9、年金党7、宗教政党UTJ6、左翼メレツ4、アラブ政党のバラード、ハダサ、UALが計10。投票率は、63・2%。

 とにかく、小政党が乱立している。このうち、カディマと労働党・シャス・年金党などの連立政権が作られ、カディマのオルメルトが首相になった。なお、1月はじめに、シャロン党首は突然病に倒れ、選挙に出られなかったので、そのまま議員でなくなった。党首代行のオルメルトがカディマを引き継いだのである。カディマには、元労働党党首のペレスをはじめ労働党から合流したメンバーがいる。しかし、事前の予想では、カディマがもっと議席をとるとみられていた。

 カディマと労働党は、一部入植地を残してその他の入植地からの一方的撤退で、条件付きとはいえ、一致するものの、ユダヤ教超正統派のシャスは、入植地撤退反対のはずであり、なぜ、こういう重要な問題で、意見の違う相手同士が連立を組めるのか理解しづらい。しかし、とにかく、どちらかといえば、中道左派的な連立政権が発足したのである。

 しかし、発足して間もない6月には、パレスチナに対する軍事的挑発が強まる。そしてそれは、ハマス政府打倒にエスカレートしていく。ハマスは、政権発足後、イスラエルに対する軍事攻撃を基本的には停止していた。ハマスは、6月10日の北部海岸への砲撃による民間死傷者多数が出た事件を受けて、停戦を破棄し、反撃に出たのである。その時に、1名のイスラエル兵を拉致したのだが、今度は、それを好機とばかりに、ガザに軍事侵攻したのである。そして、ヒズボラのイスラエル兵2名の拉致に対して、レバノンに侵攻し、そして、国連決議を受け入れて、停戦する。

 オルメルト政権は、ハマス政権の副首相を拉致するなど、パレスチナ自治政府の破壊を続けている。とはいえ、政権へのイスラエル国民の批判が強まっている。イスラエル国民の多数が、オルメルト政権の入植地からの一方的撤退策に反対している。

 それから、宗教委員会や宗教裁判所などのユダヤ教正統派の拠点をめぐる争いが激化している。また、大きな政治的焦点として、繰り返し国会に出されている宗教宣伝禁止法案というのがあったり、帰還法での両親のどちらかがユダヤ教徒とする要件をめぐる問題とか、宗教をめぐる対立も争点になっている。イスラエルは、ユダヤ教の正統派しか国内でユダヤ教と認めていない。等々。イスラエルには、なかなかわかりづらい問題がいろいろあるようだ。

 現場兵士などからの上層部や政府に対する批判が強まっているのだが、それは、次の戦争で勝つための改革の必要を訴えたもので、近いうちにまた戦争があることを想定してのものである。しかし、ヒズボラが、世界最強ともいわれるイスラエルの戦車を次々と撃破してしまうなど予想外に強かったことは、その武器を提供し軍事訓練を行ったとされるイランの軍事力の強さをも証明したことになり、そのことは、ブッシュ政権の対イラン政策にも影響を与えるものとなったことだろう。

 避難民の帰還が進んでいるレバノンには、インフラを建て直し、生活を再建する復興のために、安全・平和が必要である。イスラエル国内政治の動きがどうなっていくかによっても、それは影響される。武装したヒズボラが存続し続けることははっきりした。イスラエル国内に、ヒズボラの脅威を取り除けなかったオルメルト政権に対する批判が強まっている。イスラエル政治は、不安定である。どうなるか。

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イスラエル兵士の政権への不満の表面化

 イスラエル国内で、政府を批判する声が高まっている。北部の町で、避難を余儀なくされた人々は、ヒズボラの脅威が残されたままでの帰還に不安を抱いている。

 兵士と指揮官たちが国防大臣などにあてた公開書簡が、イスラエルの有力紙ハーレツに載っていた。下は、その意訳である。これによると、レバノン侵攻では、オルメルト政権の優柔不断さによって、現場での志気が低下して、前線の兵士たちの不満がつのっていたようである。 ヒズボラの武装解除は、事実上不可能なのである。

 国連決議に基づいてレバノン南部に展開するレバノン国軍は、装備も貧弱で、訓練も十分ではなく、警察に毛が生えた程度のレベルであり、増派される国際部隊も、停戦監視団にすぎない。

 イスラエルは、北部のヒズボラの脅威に引き続きさらされるのである。現場の兵士や指揮官からすれば、目的がはっきりしないし、ぶれ続けるとなると、なんのために命をかけて戦っているのかわからなくなるのも当然である。結局、ヒズボラの脅威は取り除けなかったのだから。

 そこで、次の戦いに備えて、政府の改革を訴えたわけである。戦前の大日本帝国軍の下級将校の改革運動を想起させないでもないこうした現場兵士の不満、下からのつきあげに対して、オルメルト政権は、どう対応するのか。

 注目せよ!今
 根本的で基礎的な変化が必要だ。

 参謀長と国防相にあてた98師団の551旅団の指揮官と兵士からの公開書簡。われわれ、ホド・ヘハニト旅団の指揮官と兵士は、2006年7月30日の緊急指令によって招集された。すべての仲間が出頭していっぱいだった。

 公告

 戦闘準備のためにサインした時、われわれは、もっと多くのことのためにサインしたことがわかった。われわれは、妻、子供たち、友人と家族と離れた。われわれは、仕事と暮らしをわきにおいて、暑さ・のどの渇き・飢えの困難な状態の下でさえ任務を遂行する準備ができていた。われわれは、イスラエル市民のためだけにわれわれの生命を危うくしたのだ。
. しかし、われわれが我慢できなかったし、これからもできないだろうただ一つのこと、優柔不断さがあった。戦争の目標が明確でなかったし、戦闘中にそれが変わったのである。優柔不断は、できる計画を実行しないとか、戦闘中に任務をキャンセルするとかの不活動につながった。これは、できる目標なしに、また非専門的な理由のために、交戦の企画なしで、敵のテリトリー内への滞在を長引かせた。まわりすべてに、意志決定のレベルでの「怖じ気」の兆候があった。
 優柔不断は、われわれの戦闘の意志に深い不快さを与え、われわれが国防軍で教育された価値や原則と対照的で、われわれの顔に誰かがつばをはいていたかのような感じを与えた。
 次の戦争の準備のために差し迫っていることが明らかなのは、根本的で基礎的な変化が必要だということである。戦闘員と上級指導者たちとの間の信頼の危機は、戦略上の国家安全保障と個人的なレベルの結論を導く徹底的で適切な国家的調査なしでは解決されないだろう。
 われわれは、戦うため、勝つために、大きな犠牲を払った。そして、われわれは、そうすることを妨げられたと感じた。われわれは、招集される次回の任務のためにすべてを報告したい。しかしわれわれは、明確な目標、交戦と勝利の目的を知りたいのである。
 兵士と市民として、われわれは、機敏な応答を期待する。
 ホド・ヘハニト旅団の指揮官及び兵士(2006年8月21日イスラエル紙ハーレツ)

 [イスラエル]帰還の予備役兵から批判噴出 レバノン戦闘で

 【エルサレム海保真人】レバノンの戦闘から帰還したイスラエルの予備役兵の間で、軍首脳部と政府に対する批判が噴き出し始めている。批判は「前線での補給物資の不足」「指揮命令の優柔不断さ」など広範にわたり、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラを壊滅できず、自陣に多くの犠牲をもたらした戦闘の責任問題に発展しそうだ。政府は本格的な調査委員会の設置を検討し始めた。

 イスラエル各紙によると、地上部隊の予備役兵の将校たちは20日、ハルツ軍参謀総長との会合で前線での問題や苦情を次々と報告した。空軍による水や食料の補給は不足し「兵士は脱水症状のまま負傷兵救出のため何キロも歩かねばならなかった」という。また配布された現地の空撮図が4年前のもので役に立たないなど、情報の不足を指摘する声もあった。

 落下傘部隊の予備役兵グループは新聞紙上で抗議文書を公開。この中で「臆病(おくびょう)な」指揮決定者の「優柔不断な態度」により「作戦が頻繁に変更され、明確な目的なしに敵の領土に長期間とどまるはめになった」と訴えた。

 こうした批判に対し、歩兵・落下傘兵隊のハイマン司令官は20日の退任あいさつで、「歩兵の準備をうまくできず、小隊の消耗を防げなかった。責任を重く感じる」と述べ、指揮面での失敗を認めた。

 レバノン戦闘では停戦発効までの1カ月余でイスラエル兵117人が死亡、約1000人が負傷し、軍は近年にない大きな痛手を受けた。一方でヒズボラを壊滅できず、ロケット弾攻撃を阻止できなかった。世論調査によるとイスラエル国民の大半は「勝者なし」と感じており、批判の矛先はオルメルト首相、ペレツ国防相、ハルツ軍参謀総長の3人に向いている。

 国防省には国防相直属の戦闘調査委があるが、「お手盛り」との批判を受けており、国会の外交・国防委員会は21日、これに代わる新調査委の規模や構成などについて協議した。 (8月21日『毎日新聞』)

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中東事態―8・19~20

 停戦後、小競り合い程度で守られてきた停戦状態が、イスラエルによって、うち破られようとしている。19日、イスラエル軍は、レバノン東部を攻撃した。イスラエルは、国連の停戦決議で、自衛のための攻撃が、国連レバノン暫定軍の増派部隊がレバノン南部に展開するまでは、認められていると主張している。レバノンのシニョーラ首相とアナン国連事務総長は、イスラエルの攻撃を停戦決議違反だと非難した。

 イスラエルは、19日、ハマス政権の副首相を拘束した。すでに、イスラエルは、ハマスの国会議員、閣僚や政府スタッフを大勢拘束しており、パレスチナ暫定自治政府が機能しないようになっている。これによって、ガザなどで深刻化している住民の人道危機に対して、自治政府が手をさしのべる力を大きくそがれた。国際機関を通した住民支援についての合意はできているが、旧中東和平ロードマップが定めたパレスチナ国家建設の道は、大きく後退し、無政府状態と国際機関による保護を要する状態になってしまった。パレスチナ全体が、難民キャンプと化しつつあるのである。

 最初から、英米・イスラエルが容認できる政府しか認める気がないのなら、自由で民主的な選挙などはたんなる儀式にすぎないことになる。そんな無駄な形式的儀式をやらせたあげくに、その結果を無効にしようとはどういうことだろうか? パレスチナをおもちゃのように扱い、馬鹿にしたということでしかない。下品なならず者のブッシュにこけにされたパレスチナ人が怒ったのも無理はない。英米・イスラエルが望むパレスチナ国家とパレスチナが望むパレスチナ国家は、別物なのだ。パレスチナ人には自決権が認められず、イスラエルには過剰な自衛権が認められている。このような不公平こそ、パレスチナ人が拒否するものなのである。こんな当たり前のことすら、容認できないシオニストの差別主義は根が深い。イスラエルとアメリカをシオニズムから解放しないといつまでも悲劇は終わらない。

 イスラエル、停戦後初のレバノン本格攻撃

 イスラエル軍は19日、レバノン東部バールベック近郊を18日夜から19日未明にかけて攻撃したと認めた。イスラエル国内の報道では、イスラム教シーア派武装勢力ヒズボラの戦闘員3人、イスラエル人将校1人が死亡した。国連安全保障理事会の停戦決議が14日に発効してからイスラエル軍による本格的なレバノン領内への攻撃は初めて。

 レバノンのシニョーラ首相は19日、「あからさまな停戦決議違反だ」と反発。ムル国防相は、国連から明確な説明がなければレバノン南部への国軍展開の中止もあり得ると警告した。

 停戦発効後も、小規模な衝突は散発していた。しかし今回、イスラエル軍がレバノンとの境界線から約100キロ北方への攻撃に踏み切ったことで、停戦決議の実効性が揺らぐ可能性がある。

 ロイター通信によると、奇襲部隊がヘリコプターで運んだ2台の軍用車に分乗して攻撃。ヒズボラ側の激しい反撃を受け、イスラエル軍による空爆の援護を受けながら撤退したという。

 19日のイスラエル軍放送は「イランとシリアからのヒズボラへの武器供給を絶つ目的だった」と述べ、ヒズボラへの武器供給を防ぐとの内容を盛り込んだ停戦決議には違反しないと強調した。( 2006年08月20日『朝日新聞』)

 アナン事務総長、イスラエル軍に深い憂慮

 国連のアナン事務総長は19日午後(日本時間20日午前)、イスラエル軍によるレバノン北東部への攻撃について、安全保障理事会が採択し14日に発効した停戦決議に違反するものだとして「深い憂慮」を示す声明を発表した。

 アナン事務総長は同日、イスラエルのオルメルト首相、レバノンのシニョーラ首相と電話協議。「交渉の末にようやく到達した脆弱(ぜいじゃく)な戦闘停止を危うくし、レバノン政府の権威をむしばむものだ」とイスラエル軍の攻撃を批判した。声明によると、「敵対行為の全面停止」などを定めた決議にイスラエル空軍が違反した事例が、現地で停戦監視に当たっている国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)から複数報告されている、としている。

 一方、レバノンのムル国防相は19日、ベイルートでラーセン国連特使と会い、イスラエル軍の今回の攻撃について「国連がイスラエルへの対抗措置を取らなければ、レバノン国軍のレバノン南部への展開を停止する」と強い調子で警告した。

 同国防相はこの日、南部を視察し、レバノン側からイスラエルへのミサイル発射を国軍が厳しく取り締まる考えを示した。また、武器の流入ルートと指摘されているシリア国境沿いにも国軍を展開し、武器の密輸を容認しない考えを示した。(2006年08月20日『朝日新聞』)

 イスラエル軍が自治政府副首相を拘束 ハマス穏健派

 イスラエル軍は19日未明、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の中心都市ラマラで、自治政府のシャエル副首相を拘束した。副首相はイスラム過激派ハマスの幹部だが、穏健派といわれる。

 副首相は当初、6月末のイスラエル軍によるガザ侵攻直後に拘束されたと伝えられたが、拘束を逃れていた。 (2006年08月19日『朝日新聞』)

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中東事態―8・13~14

 日本時間14日午後2時を持って、イスラエル・レバノンの戦闘停止が実行された。しかし、さっそく、自衛のための攻撃権を主張するイスラエルが、ヒズボラに発砲した。ヒズボラ側も、イスラエルが国境内に居る限り、抵抗する権利があるとして、戦闘態勢を維持することを表明しており、戦闘再開の火種が残ったままである。

 国連レバノン暫定軍の増派部隊がレバノン南部に展開するまでは、まだ時間がかかりそうで、それまで予断を許さない情況が続きそうだ。

 すでに、避難民の帰還が始まっているようだが、いつ戦闘が再発するかわからないし、インフラ破壊によって、生活条件が厳しい中での帰還となる。

 ガザの状態については、報道がないので、どうなっているのかわからない。

 イスラエル兵拉致問題や一部占領地の返還問題、イスラエルに拉致されたハマス政府の閣僚や高官たちの問題、等々、交渉による解決が求められる難題が残されている。

 停戦発効後に初の戦闘、イスラエルがヒズボラに発砲

 レバノン南部ティール(CNN) 国連の安全保障理事会の決議を受け、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは14日午前8時(日本時間同日午後2時)から停戦に入った。ヒズボラによるイスラエル領内へのロケット弾攻撃は報告されていないが、イスラエル軍は同日、停戦発効から約3時間後、ヒズボラの複数の戦闘員がレバノン南部で「威嚇的な方法」で接近してきたため、発砲した、と述べた。

 停戦後、戦闘が伝えられたのは初めて。発砲はハダーサ村近くで起き、イスラエル軍は自衛手段と強調した。イスラエルのメディアは、ヒズボラ戦闘員の1人がこの発砲で死亡した、と報じた。

 停戦が発効する前、双方の攻撃は激化。ヒズボラはイスラエル北部の港湾都市ハイファを中心に250発のロケット弾で攻撃。この攻撃で、少なくとも1人が死亡した、としている。

 一方、イスラエル軍によるベイルート南部郊外への爆撃は、7月12日の交戦開始からの33日間で、最も激しいものになっている。イスラエル軍は13日、ヒズボラの武装勢力の拠点など100カ所以上を空爆。ヒズボラ戦闘員ら5人が死亡した。

 レバノン側は、東部ベカー高原の町が空襲を受けて9人が死亡し、35人が負傷し、他の町でも一般市民3人が死亡した、と主張している。

 イスラエルのエフード・バラク元首相はCNNに対し、「今我々に出来ることは、今後12─13時間で、出来る限りインフラを破壊することだ」と言明、停戦発効前の交戦の激化は当然との考えを示した。 (2006.08.14- CNN)

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中東事態―8・12~13

 国連停戦決議が採択され、レバノン政府・イスラエル政府は、受け入れを表明し、オルメルト首相は、わざわざブッシュ大統領に電話して感謝した。ヒズボラも、自衛権を担保しつつ、決議による停戦を受け入れる考えを示した。国連のアナン事務総長は、イスラエルとヒズボラが、14日午後2時(日本時間)をもって、停戦することを受け入れたと語った。

 イスラエル軍は、停戦前に、ヒズボラをたたけるだけ叩こうと、攻撃を拡大している。しかし、13日のイスラエル政府の閣議で、国連決議の受け入れを決定した。ヒズボラは、最高指導者のナスララ師が決議受け入れを表明した以上、そのとおりになるだろう。

 ワシントンでは、イスラム団体、反戦平和団体などが、イスラエルを非難し、停戦を求める5000人以上の集会デモを行った。NHKニュースでは数万人と伝えている。

 この国連決議を受けて、『産経新聞』『読売新聞』が社説で取り上げた。

 『産経新聞』「レバノン決議 確かな停戦実現の確立を」は、「この決議が確かな停戦の実現と維持につながることを期待したい」と評価した上で、「根本的な問題解決のため、包括的かつ本格的な中東和平プロセス再開への努力を当事国や機構、国際社会に望みたい」と述べている。

 そして、「決議はヒズボラの武装解除を求めた2004年の安保理決議1559の履行を条件とする一方、イスラエル側の防衛的軍事作戦は否定していないため、些細(ささい)な戦闘でも停戦が崩れてしまう危うさを秘めている」ことと「今回の戦闘ではまた、最新の武器で予想外の抵抗を続けたヒズボラの背後に、イランやシリアの国家的支援があることが改めて確認され、問題の深刻さが指摘された。両国の自制と問題解決への参加、協力も求めたい」という二点を懸念する点としてあげている。

 最後に、「中東紛争はテロの温床となる。国際社会は、レバノンの復興支援を急ぐとともに、まずは確かな停戦の実現と維持から始めなければなるまい」と主張する。中東紛争とテロの関係について、当初、報道が触れていなかった。それが、この問題を中東の遠い世界の出来事として傍観的に見る姿勢につながったのではないだろうか。イスラエルは、徹底してインフラを破壊したので、停戦後の100万人ともいわれる大量の難民の帰還と生活再建のために、まずは、基本的なインフラの再建が急務である。当面、人道支援も必要である。

 『読売新聞』[レバノン決議]「採択を危機打開の突破口に」は、イスラエル・ヒズボラの双方がただちに停戦することが必要だと主張している。そして、この戦闘から「1か月の軍事作戦が示しているのは、相手を大きく上回る軍事力をもってしても、ゲリラ的攻撃から自国の安全を守るのは難しい、ということだ」という教訓を引き出している。したがって、「UNIFILなどによる停戦監視活動を信頼し、外交を通じて、恒久的な停戦の方向を探るのが、結局は現実的な方策ではないか」と軍事的解決よりも国連活動と外交で問題解決を図る方が現実的だと主張している。

 最後に、「ようやく決議を採択したものの、ここに至るまでの国連安保理の動きは鈍かった。関係各国の利害が一致しなかったためだが、国連に対する信頼感は相当損なわれたのではないか。信頼回復が、今後の国連の大きな課題となる」と国連の課題を一般的に示している。この問題では、安保理で、唯一アメリカだけが、拒否権を盾にイスラエルに偏った主張をして、フランスの決議案に反対したことが、国連の動きを鈍くしたのである。イスラエルのガザへの軍事侵攻の時点で、イスラエル非難決議が安保理で採択されていたら、イスラエルのレバノン侵攻に多少の歯止めがかかったかもしれなかったが、アメリカが拒否権を行使して、決議を葬ったのである。その頃、日本のマスコミは、北朝鮮のミサイル発射問題ばかりに注意がいっていて、国連安保理の北朝鮮非難決議の方ばかりを追っていた。何を今さらという気もするが、『産経』が、国連軽視、アメリカ重視で、軍事力学に偏った見方をしているのに対して、『読売』は、外交、国連、をより重視する姿勢を示しているのはよい。

 レバノン情勢はなんとかなりそうな感じになりつつある。もちろん、今後、何が起きるかはわからないのだが。ガザがどうなるのかが、気がかりである。 

 ヒズボラ、条件付きで停戦を表明

 レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師は12日、自派系テレビ局で声明を出し、国連安保理のレバノン停戦決議について、停戦合意が成立すれば順守する考えを示した。一方、改めてイスラエル軍の全面撤退を求めた。

 ナスララ師は「我々には自衛権がある」と述べて軍事作戦を続けるイスラエルを牽制(けんせい)したうえで、決議でレバノン南部に展開する予定のレバノン国軍や国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)に協力する考えを示した。(2006年08月13日『朝日新聞』)

 イスラエルが停戦決議受け入れ 閣議で決定

 イスラエル政府は13日の閣議で、国連安保理のレバノン停戦決議を受け入れることを決定した。AP通信などが伝えた。(2006年08月13日『朝日新聞』)

 中東政策に抗議のデモ ホワイトハウス前に5000人

  ワシントン(AP) アラブ、イスラム系団体が中心となり、米ブッシュ政権の中東政策に抗議するデモが12日、ホワイトハウス前のラファイエット公園で実施された。現場の警察当局者らによると、参加者は約5000人。レバノン、パレスチナに対するイスラエルの軍事行動も批判の的となった。

   デモを主催したのは、イスラム教徒米国人協会(MAS)、アラブ系米国人反差別委員会(AAADC)など。MASの代表者が「われわれは一致団結して、聖なる地での暴力と殺りくに反対する」と呼び掛け、参加者らも「占領は犯罪だ」などと声をそろえた。

  会場には、イラク高等法廷でフセイン元大統領の弁護団に加わったラムジー・クラーク元司法長官も駆けつけ、「ブッシュ政権がつくった敵の数は、米国史上類をみない多さだ」と演説。「ブッシュ大統領の弾劾を求める」との発言に、歓声が上がった。

  参加者らは集会の後、ワシントン市内を行進。イスラム教徒の家族連れや若者が多数を占めるなか、ニューヨーク州から参加したというユダヤ教徒の女性(23)は「レバノンとパレスチナの人々を応援している。アラブ人とユダヤ人が敵同士ではないことを示したい」と語った。 (2006.08.13- AP『CNN』)

 レバノン安保理決議 要旨

 【ニューヨーク支局】イスラエルとヒズボラの停戦実現に向け11日採択された国連安保理決議の要旨は次の通り、

 一、ヒズボラのすべての攻撃の即時停止とイスラエルのすべての攻撃的な作戦の即時停止に基づく戦闘の完全な停止を求める

 一、完全な戦闘停止の上、レバノン政府と国連レバノン暫定軍(UNIFIL)にレバノン南部全体への兵力配置を求める。それと並行してレバノン南部から軍を撤退させるようイスラエル政府に求める。

 一、49年3月のイスラエル―レバノン休戦協定で想定され、国際的に認められた国境内におけるレバノンの領土保全、主権、政治的独立への強い支持を改めて表明する。

 一、イスラエルとレバノンに以下の原則、原理に基づき、永続的な停戦と長期的な問題解決を呼びかける。

 ・双方のブルーライン(国境)の完全な尊重

 ・ブルーラインとリタニ川の間にレバノン軍とUNIFIL以外の兵員の存在を認めない地帯の確立

 ・タイフ合意の関連条項と、レバノン内の武装グループの武装解除を求めた安保理決議1559、1680の完全な履行によりレバノン内から外国の武器や権力をなくす

  一、UNIFILの規模を最大1万5000人に増加、UNIFILに以下を認める

 ・安保理が定めた権限に基づく任務に対する武力妨害への対抗

 ・国連要員、人道支援要員の安全と移動の自由の確保

 ・レバノン政府の権限を侵害しない範囲での、物理的暴力の差し迫った脅威の下にある民間人の保護

 一、UNIFILの任期を07年8月31日まで延長し、同軍の権限の追加的強化やその間の手段を含む追加措置を検討する意志を表明する

 一、本決議の実施状況について1週間後に安保理に報告するよう国連事務総長に要請。報告はその後も定期的に行う

 一、安保理決議242、338を含む全関連決議に基づく中東の包括的、公正かつ永続的和平実現の重要性を強調する(8月13日『毎日新聞』)

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中東事態―8・11~12

 イスラエルのレバノン軍事侵攻が始まってから1ヶ月たって、ようやく、国連安保理停戦決議が全会一致で採択された。

 決議は、ヒズボラ・イスラエル双方に「敵対行為の全面停止」を求め、レバノン軍1万5千人の南部駐留と国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を現在の2000人から最大2万五千人に拡大して、停戦監視にあたり、停戦後、レバノン軍とUNIFILが進駐し、それと同時にイスラエル軍が撤退を開始するというものである。

 イスラエルが望んだ重武装した強力な多国籍軍の進駐にレバノンが反対し、国連レバノン暫定軍の拡大で、妥協がなった。

 イスラエル政府とレバノン政府は、この決議を受け入れる意向を示しているが、ヒズボラの態度がまだ明らかでない。

 とりあえず、国際社会としての停戦プランができたわけで、今後は、決議を実行するための外交交渉の段階に入ることになる。

 ただ、イスラエルとしては短期にヒズボラを壊滅に追い込むというシナリオが崩れたわけで、後は、軍事的に難しいとされている安全な撤退を追求するほかはない。

 しかし、同時に、国連人権理事会で、イスラエルのレバノン攻撃を人権侵害と非難する決議が賛成多数で採択された。

 レバノン情勢は、これでいったんは落ち着く可能性が出てきたが、ガザでのパレスチナへの軍事攻撃の方が、イスラエル非難の国連決議が、アメリカが拒否権を行使して、葬り去れてから、進んでいない。すでに、百数十名の死者が出ており、インフラ破壊によって、医療・衛生・食料などの面で、深刻な状態が続いている。こちらの停戦と人権侵害の停止は、国際社会としてなんとかしなければならない緊急の課題である。

 安保理がレバノン停戦決議採択、イスラエル軍撤退要求

 【ニューヨーク=白川義和】国連安全保障理事会は11日、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに「敵対行為の全面停止」を求め、レバノン軍と共に停戦監視にあたる国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を最大1万5000人に増強する決議を全会一致で採択した。  イスラエル、レバノンとも決議受諾の意向を示しているが、ヒズボラの決議への対応やイスラエル軍撤退の見通しなど流動的な要素も残されており、7月12日以来続く戦闘の停止が実現するかどうかはなお不透明だ。

 決議は米仏両国が草案を作成、イスラエル軍の撤退明記などレバノンの要求に応じて修正し、最終案が11日、まとまった。

 決議は戦闘停止に関して「ヒズボラによるすべての攻撃の即時停止とイスラエルの攻撃的軍事作戦の即時停止に基づく、敵対行為の全面停止」を要求。停止後ただちに、レバノン政府とUNIFILがレバノン南部に部隊を展開、これと並行してイスラエルはレバノン南部から全面撤退することを求めている。レバノンはすでに1万5000人の部隊展開を表明している。

 UNIFILについては現在の2000人規模から最大1万5000人への増強を決定。敵対行為や武力による妨害行為の阻止、国連要員や人道支援活動家、市民の保護などのため、「あらゆる必要な行動」を取ることを認め、権限を大幅に強めた。さらに、新たな決議で権限を一層強化することも検討すると明記した。

 UNIFIL増強に伴う要員確保では、フランス、イタリアなどが派遣の準備を進めている。

 恒久的停戦と長期的解決に向けては、イスラエルとレバノンに対し、〈1〉国連が定めた国境線の尊重〈2〉リタニ川と国境間にレバノン軍とUNIFILが管理する緩衝地帯を設置〈3〉ヒズボラの武装解除を定めた安保理決議1559の履行〈4〉レバノン政府が認めたもの以外の同国への武器売却、供給禁止――などを求めた。

 レバノン政府がイスラエル軍撤退を求めていた係争地、シェバア農場などの国境画定については、アナン国連事務総長に30日以内に解決に向けた提案を行うよう求めている。

 採決には、ライス米国務長官、ドストブラジ仏外相、ベケット英外相らも参加し、決議履行を呼びかけた。アナン国連事務総長は米仏を中心とする外交努力を評価する一方、関係国の利害対立で採択が遅れたことへの「深い失望」を表明した。(2006年8月12日『読売新聞』)

  国連人権理事会、イスラエル非難決議を採択

 国連人権理事会は11日、レバノン情勢に関する特別会合を開き、イスラエルのレバノン攻撃を重大な人権侵害だと非難する決議を採択した。イスラム諸国が提案。欧州や日本などの理事国からは「イスラエルだけを非難対象にしており、偏っている」との批判が出たが、賛成票が上回った。

 決議はイスラエルに対し、市民への軍事行動の即時停止を求め、人権理として人権、人道分野の国際法専門家による調査委員会を設けて現地調査を行うとしている。理事国47カ国中、27カ国が賛成票を投じた。 (2006年08月12日『朝日新聞』)

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中東事態―8・10~11

 戦闘の長期化にともなって、イスラエル世論は、悲観的になり、厭戦気分が広まってきているようだ。2000年のレバノン撤退を思い出したのかもしれない。敗戦を予感しながら、地上戦の拡大を支持する。これは日米戦争に突入した時の日本人の心情に似たものがあるのかもしれない。海軍連合艦隊司令長官山本五十六は、日米開戦について聞かれ、「しばらくの間なら暴れてみせます」といったことを答えたという。

 短期間でヒズボラを弱体化するというオルメルト政権の開戦時の言葉は、今や空約束となり、イスラエル人は、戦争が泥沼化していくのではないかという不吉な予感に襲われているところなのだろう。政権内で、閣内不統一が現れているという報道もあり、司令官が交代させられたという報道もある。エルサレムでは、300人の平和団体によるデモがあった。

 国連安保理では、停戦決議案の修正協議が続いている。ロシアから、72時間の人道停戦決議案が出された。イスラエル軍の段階的撤退を盛り込むことで、早期採択が可能だとする見方もでている。あれほど、即時停戦に反対してきたアメリカが、停戦決議採択を急いでいるのが、アメリカの政策の転換を表している。

 平和と人権の社民党が、ようやくこの問題についての見解を公表した。アメリカとイスラエルが、 「コラテラル・ダメージ(付随的損害)。ハリウッド映画のことではない。米軍は、あらかじめ織り込み済みの攻撃に伴う非戦闘員の被害をこう呼ぶ。これは必然的なものであり「意図的」でないのはもちろん、「誤爆」でさえないと言う」こと、暴力の独占、単独行動主義、の点で似ていると指摘した上で、「即時停戦を迫り、真の継続的な暴力停止を実現するには、やはり国際的圧力を待つしかない」と書いている。

 すでにイスラエル大使館に対する緊急行動が何度も行われた後に、「国際的圧力を待つしかない」と他人事みたいに言うのはどうかと思う。日本政府が積極的に国際的圧力をかけるように政府に求めるぐらいはやってもいいだろう。イスラエル大使館に、即時停戦を求めることはできるだろう。

 戦闘勝利に悲観的な見方 イスラエル世論調査

 イスラエルの有力紙ハアレツが11日付で報じた世論調査によると、レバノンで続くイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとの戦闘でイスラエル軍が勝利するとの回答が約20%しかなく、悲観的な見方が広がっていることがわかった。10日には、テルアビブで停戦を求めるデモも行われた。戦闘の長期化と120人を超すイスラエル側の死者の増加により、イスラエル国民の間に厭戦(えんせん)機運が芽生え始めているようだ。

 調査は570人を対象に、政府がレバノンでの地上戦拡大を決めた9日と翌10日に行われた。

 「戦争が今日終わったとしたら、イスラエルが勝利宣言できるか」との質問に対し、肯定したのは約20%で、「イスラエルが負けている」と答えたのは約30%、「どちらも勝っていない」が44%だった。

 オルメルト首相の支持率は48%、ペレツ国防相は37%だった。ハアレツ紙は戦闘初期に同様の調査をしていないため、単純な比較はできないが、他の大手紙の戦闘初期の調査では首相が75%、国防相が65%という高い支持率だった。

 地上戦拡大の決定については、39%が支持し、26%が「現状の戦闘を維持する一方、外交努力を強化する」と回答。「即時停戦と外交的解決」を求めたのは28%だった。(2006年08月11日『朝日新聞』)

 イスラエル軍撤退めぐり米仏が基本合意 11日にも採択か

  【ニューヨーク=長戸雅子】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘停止を求める国連安全保障理事会の決議案交渉は10日、焦点のひとつだったイスラエル軍の撤退時期と条件について、米仏が(1)現地に駐留している国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を2000人から2万人規模に拡大・強化する(2)イスラエル軍は「段階的に」撤退する-との方向で基本合意した。ボルトン米国連大使は「まだ合意には達していないが、11日の採決も可能だ」との見通しを明らかにした。 

 しかし、停戦後に派遣される国際部隊の権限について米仏とレバノンの間に対立点が浮上。レバノン側は国連主導のより穏健な部隊を求めており、強制措置について定めた「国連憲章7章に基づく国際部隊」を明記した米仏案を拒否した。

 一方、ロシアは人道支援活動実施のため、72時間の戦闘停止を求める決議案を安保理に提出。

 11日には大使級の協議に加え、ライス米国務長官、ベケット英外相らが参加する閣僚級の会合が予定されており、難局の打開が期待されている。(8月11日『産経新聞』)

主張「レバノン侵略」
再占領阻止へ国際的圧力の強化を
―社会新報2006年8月16日号より

 コラテラル・ダメージ(付随的損害)。ハリウッド映画のことではない。米軍は、あらかじめ織り込み済みの攻撃に伴う非戦闘員の被害をこう呼ぶ。これは必然的なものであり「意図的」でないのはもちろん、「誤爆」でさえないと言う。

 同じ自己正当化をイスラエルもする。両国の共通性はこれだけではない。今回のイスラエルのレバノン侵攻は、82年に内戦下のレバノン南部を「安全保障地帯」という名の軍事占領下に置き(00年撤退)、PLOを放逐したことの再現と言える。シーア派武装組織ヒズボラによる兵士拉致とロケット弾攻撃への自衛のためだと言うが、その目的はヒズボラ排除と南部再占領にあり、本質的にイラク戦争と同様、先制的自衛と称して行なわれる自衛の範囲を逸脱した他国侵略である。

 そして「単独行動主義」。国連安保理によるパレスチナ自治区ガザ侵攻非難決議に拒否権を行使し、レバノン侵攻を非難する議長声明にも反対した米国は、「長期的解決のための国際部隊を」と主張する。当事者間合意なきヒズボラ武装解除が任務だとハードルを高くすることで、それができなければ占領継続もやむなし、との仕掛けだ。また、イスラエルのシャロン前首相は首相就任前、まだ9・11テロより前にエルサレムのイスラム教聖地入りし、和平プロセスを頓挫させた。その後の「分離壁」建設や自治区撤退はすべて「一方的」に行なわれたものだ。

 「力は正義である」という言葉の含意は、日常的な印象より深いようだ。米国(中東ではイスラエル)が、自らの暴力(武力)行使は合法的かつ正当であり、他の暴力行使は違法かつ不当であり、自らだけが暴力を独占的に行使する権利があることを「証明」するためには、実際に他の暴力を圧倒し続けなければならないという構造が、確かに存在していると考えねばなるまい。この構造自体には、暴力の優位保持と暴力の連鎖に対する歯止めは組み込まれていない。即時停戦を迫り、真の継続的な暴力停止を実現するには、やはり国際的圧力を待つしかない。

 南部占領下の80年代、イスラエル軍包囲下の難民キャンプで右派民兵による虐殺事件が起きた。後にイスラエル首相となったネタニヤフ、シャロン両氏は、この事件に直接的責任を負っている。派兵された米海兵隊は自爆テロに遭い、多数の犠牲者を出し撤退を余儀なくされた。こんなことを繰り返させてはならない。

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中東事態―8・9~10

 イスラエルのレバノン軍事侵攻を自衛のために当然の行動だとして、即時停戦を求めないとしてきたブッシュ政権の主張が変わってきた。スノー報道官が、「われわれは暴力の停止を望み、事態の拡大を望んでいない」と語ったのである。事態の長期化が、アメリカにとって不利になりつつあることを悟ったのだろう。

 イスラエル軍が、民間人1000人近くを殺害し、連日の空爆と地上戦で、4週間、必死でヒズボラを弱体化させようとしたのに、未だに、ヒズボラは一日百発以上のロケット弾を飛ばし続け、地上戦でも、イスラエル兵士の犠牲者が増えつつけており、さらに外交上の孤立が日々深化している。こういう状態では、イスラエルを支持し続けてきたアメリカも苦しくなってくる。

 ヒズボラ最高指導者のナスララ師は、レバノン軍の南部への展開を容認する考えを示した。ヒズボラとレバノン政府の一体性を示すことによって、国連などの介入を防ぎ、レバノン内での地位を固いものにする意図があると思われる。レバノンの他の勢力から厄介者扱いだったヒズボラも、この間、レバノン全体に支持を拡大しており、レバノンを構成する正当な組織としての地位を確保する展望を持てるようになったのだろう。

 ヒズボラをイラン・シリアの「テロ支援国家」に操られたレバノン外から送り込まれた「テロリスト」として、他のレバノン人から孤立させようとしたプロパガンダが失敗したことを、アメリカが事実上認めざるをえなくなったのである。

 事態の一つの大きな転機が訪れたと言えよう。

 米高官、双方に事態抑制求める レバノン危機

 【ワシントン=山本秀也】レバノン南部での紛争について、米ホワイトハウスのスノー報道官は9日、事態を引き起こしたイスラム教シーア派民兵組織「ヒズボラ」と地上兵力の増派を決めたイスラエルの双方に対して、紛争の拡大を避けるよう求める考えを明らかにした。

 テキサス州クロフォードでの記者会見で、スノー報道官は「すべての当事者へのメッセージ」として、「われわれは暴力の停止を望み、事態の拡大を望んでいない」と語った。これより先、国務省のマコーマック報道官は、イスラエルに対して、民間被害の回避に向けた「最大限の配慮」を求めるとしていた。 (08/10 『産経新聞』)

 レバノン軍の南部展開、ヒズボラ指導者が容認

 【ベイルート=柳沢亨之】ヒズボラ指導者のナスララ師は9日夜、自派のテレビ局「アル・マナール」でビデオ声明を発表し、レバノン政府が7日に閣議決定した「国軍兵士1万5000人の南部展開」方針について、イスラエルの「侵略を食い止める政治交渉に道を開く」として容認する考えを示した。師本人が容認を明言したのは初めて。ナスララ師はただ、イスラエル軍の当面の南部占領を事実上認めた米仏両国の停戦案については、「イスラエルに望み以上のものを与えている」と拒絶した。

 ヒズボラは2000年のイスラエル軍撤退後、南部を実効支配し、レバノン国軍の本格的な南部展開を拒否し続けてきた。ナスララ師の演説は、政府との共闘姿勢を強調することにより、政府が今後、国連安保理での交渉で米仏に譲歩しないよう警告する狙いがあるとみられる。

 1万5000人の派兵計画は、南部に侵攻したイスラエル軍の完全撤退を条件にしたもので、シニオラ首相の停戦案の柱となっている。(2006年8月10日『読売新聞』)

 イスラエル軍撤退はレバノン軍展開と同時…仏文案提示

 【ニューヨーク=白川義和】イスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘停止を求める国連安全保障理事会の米仏決議案の修正に関し、フランスは9日、安保理5常任理事国の大使級協議で「レバノン軍の南部展開開始と同時に、イスラエル軍も撤退を開始する」との文案を提示した。

 AP通信が安保理外交筋の話として伝えた。

 レバノン政府が同国南部に1万5000人規模の部隊派遣を決定したことを受けた修正で、イスラエル軍の早期撤退に反対する米国が受け入れるかどうかが焦点となる。

 仏案は、イスラエルとヒズボラが敵対行為を全面停止した後、ただちにレバノン軍が国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の支援を受け、南部一帯への展開を開始。イスラエル軍も同時にレバノンからの撤退を開始する、としている。

 撤退完了の時期を明示せず、「撤退を開始する」との表現で、戦闘停止後も一定期間、イスラエル軍がレバノン内に駐留する余地を残すことで、米国とイスラエルの同意を引き出そうとする妥協案だ。(2006年8月10日『読売新聞』)

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中東事態―8・8~9

 イスラエルによるレバノン軍事侵攻は、4週目に入った。依然として双方の戦闘は激しく続いている。したがって、犠牲者も増え続けている。イスラエル軍は、パレスチナ人難民キャンプを砲撃し、1人が死亡、数名が負傷した。さらに、イスラエル軍は、葬儀の列を攻撃し、死傷者多数を出した。

 国連安保理では、アラブ連盟が国連安保理停戦決議案に、イスラエル軍の撤退を明記するよう要求して、イスラエルと対立している。アメリカは、レバノン国軍1万5千人をレバノン南部に展開するという提案で、イスラエルの説得を試みている。アメリカは、戦闘停止を強調し、かつてのイスラエルに停戦を求めないという立場を放棄している。

 そのアメリカでは、最新の世論調査で、イラク戦争に60%が反対し、48%が勝てないだろうと答えた。レバノン侵攻でも、イスラエルに多くが同情しつつも、停戦を求める人が多かったのには、イラク戦争の泥沼化が、厭戦気分を広めていることがあるのだろう。こうしたアメリカ人に広まる厭戦気分は、日本にもある程度その感染が広まるかも知れない。

 アラブ連盟、安保理公開協議でイスラエル軍撤退を要求

 【ニューヨーク=白川義和】国連安全保障理事会は8日、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘について、カタールのハマド外相らアラブ連盟(22か国・機構加盟)の代表団を交えて公開協議を行った。

 ハマド外相はレバノン政府の主張を支持する立場から、敵対行為の全面停止を求める米仏の安保理決議案に、イスラエル軍のレバノンからの撤退を盛り込むことを要求した。

 米仏は修正案の検討を進めているが、イスラエルは「ヒズボラを撃退する強力な国際部隊が展開するまでは撤退できない」との立場で、修正は限定的なものとならざるをえない。アラブ連盟側も早期停戦の必要性を強調し、9日に米仏との協議に臨むとしているが、当事者双方が納得する修正案が同日中に完成するかどうかは微妙な情勢だ。

 ハマド外相は公開協議で、現在の米仏決議案は「実行できない」もので、「現地の状況をさらに複雑にし、レバノンや地域の国々に悪影響を与える」と批判した。(2006年8月9日『読売新聞』)

 イスラエル軍、難民キャンプへも砲撃

 イスラエル軍は8日、レバノンに対する空爆と南部での地上戦を続け、ロイター通信などによると南部のガジエ村で住民14人が空爆で死亡した。南部の地中海沿いの都市シドン近郊ではパレスチナ人難民キャンプが攻撃され、少なくとも1人が死亡。地上戦では、イスラエル兵2人が死亡し、イスラエル軍はイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの30人以上を殺害したと発表した。一方、イスラエル北部には同日、160発を超すロケット弾攻撃があり、数人が負傷した。

 先月12日の戦闘開始以来、イスラエル側の死者は計101人で、うち市民は36人。レバノン側は990人を超すと見られ、大半が市民だ。

 戦闘を指揮するイスラエルの北部方面軍は8日、同軍部隊が国境から5~15キロまで侵入し、ヒズボラの戦闘員が潜んでいるとする村を攻撃したことを明らかにした。

 ロイター通信によると、ガジエ村では前日に空爆の犠牲になった15人の遺体を埋めていた時に、新たな空爆があった。イスラエル軍は空爆した建物がヒズボラ幹部のもので、埋葬は別の場所で行われ、住民は事前に退去を勧告されていた、と責任を否定している。(2006年8月9日『朝日新聞』)

 「戦闘収拾が必要」と米大統領 レバノン情勢で

 米テキサス州クロフォード──10日間の休暇を過ごしているブッシュ米大統領は7日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘停止に向けた国連安保理決議に双方が全面同意することは期待していないと述べたうえで、戦闘収拾の必要性を認識していることを強調した。大統領はまた、米国が同盟国とともに、レバノンの主権回復と恒久和平に向けた包括的解決を強く求めていく方針を示した。

 大統領はライス国務長官とともに、休暇先の私邸がある米テキサス州クロフォードで記者会見を行った。2段階の安保理決議採択を目指すライス長官は、詳細が一度決まれば、イスラエルとヒズボラの双方が決議案を受け入れるだろうとの認識を示した。

 大統領は、戦闘の即時停止に向けた早期合意が目標だと述べ、「双方が決議案の全ての側面で合意することはないと理解している。ただ、決議案の意図は、イスラエルが和平に向けた連携先を獲得できるよう、レバノン政府を強化することだ」と語った。

 大統領はまた、自身が戦闘の根本的原因としているヒズボラに、安保理決議で対応するべきだとの考えを表明。「国連で何が起きようと、ヒズボラとその支援国が武器をさらに投入する空白を作ってはならない」と述べ、レバノン政府による同国南部の統治回復や国際部隊の展開を実現したい意向を示した。(2006.08.08- CNN/AP)

 米国民6割が反対、史上最高の数字 イラク戦争で

 ワシントン(CNN) 2003年3月に開始したイラク軍事作戦で、史上最高となる米国民の60%が反対意見を抱いていることが最新の世論調査結果で9日判明した。同戦争の支持率は36%で、開始直後に実施した調査での72%から半減したことになる。

 61%が、イラク駐留米軍の少なくとも一部は年末まで撤収すべきと回答。このうちの26%は全面撤退を要求。現在の兵力規模の駐留を維持すべきは34%だった。

 また、部隊撤収の期限設定については、57%が支持、反対は40%だった。ブッシュ米政権は、期限を明示することはテロリストに利するとの理由で、発表していない。

 イラク戦争の「結果」については、47%が、米国は「絶対に」、もしくは「多分」、勝利するだろう、と回答。48%が、勝たないだろう、などと応じていた。

 調査は、成人1047人を対象に、8月2、3両日実施した。(2006.08.09- CNN)

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中東事態―8・7~8

 イスラエルは、国連の停戦協議が進まない場合には、部隊を増強し、ヒズボラの軍事拠点を徹底的に破壊する方針を明らかにした。しかし、国連停戦決議では、イスラエル軍の撤退を明記する修正案を採用するよう、昨日の緊急のアラブ外相会議が国連に代表を派遣して、安保理に働きかけることが決まった。

 7月30日のカナの虐殺事件について、アナン事務総長は、安保理に対して、「空爆は民間人の居住するビルへの攻撃で国際法違反だったと指摘する報告書を提出した」。これに対して、ボルトン米国連大使が、反発し、イスラエルの言うとおりたんなる「誤爆」と主張することが予想される。戦争犯罪については、オランダのハーグの国際司法裁判所が裁くことになっている。ここで裁かれない特権を持っているのはアメリカだけである。

 イラクのサマワに派遣された陸上自衛隊の安全については、注目を集めていたが、ゴラン高原で活動していた自衛隊のPKO部隊が、この戦闘で、危険にさらされていることが明らかになった。

 ゴラン高原は、イスラエルが軍事占領したまま居座っているシリアの土地で、この土地を含めて、イスラエルは、過去の中東戦争で侵略した土地を不法占領し続けている。イスラエルの占領地返還問題は、こうした戦闘の背景にある問題である。パレスチナの場合は、侵略占領したばかりではなく、そこにイスラエルから入植者を送り込んで、勝手に使用したのである。国連が1947年の国連決議で、イスラエル・パレスチナ双方の領土と定めた国境線があるが、イスラエルはそれを破ってきたのである。

 ようやく、右派リクードのシャロン首相が、戦争の英雄としての強い権威によって、不満分子や軍部を抑えて、ガザからの撤退、入植地の放棄を進めたのである。ところが、シャロンは、突然病に倒れ、軍を抑えるどころか、軍に引きずられるオルメルト政権が誕生してしまったのである。オルメルト政権は、軍部をコントロールできず、軍部の意向に逆らえなくなっているのではないだろうか。

 PKO派遣自衛隊、危険避け一時退避 中東ゴラン高原

 中東ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に派遣されている自衛隊員が今月に入って、イスラエル側のジウアニ駐屯地内で、司令官の指示を受けて退避壕(ごう)に一時避難していたことが分かった。レバノン南部での交戦にからんで近くに砲弾が着弾したと見られる。防衛庁によると、隊員にけがはないが、着弾の状況などはUNDOFが明らかにしないため分からないという。

 UNDOFはシリア南部のゴラン高原で、イスラエルとシリアの停戦維持などのため国連が創設した部隊。自衛隊員はイスラエル側のジウアニ駐屯地に約30人、シリア側のファウアール駐屯地に十数人がおり、物資輸送などを担当している。イスラエル側駐屯地では先月から、近傍の町に砲弾が着弾したり、砲撃音が聞こえたりしているという。 (2006年08月08日『朝日新聞』)

 イスラエル首相、レバノンでの地上部隊侵攻拡大を容認

 イスラエルのオルメルト首相は7日、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの砲撃拠点を制圧するため、地上部隊によるレバノン領内への侵攻範囲を拡大する考えを示した。イスラエル軍は同日、レバノン南部の住民に夜間は外出をしないよう警告し、攻撃を強化する構えを見せている。

 イスラエル紙ハアレツ(電子版)などによると、オルメルト首相はレバノン国境地帯で展開する部隊の司令官らと面会。「(ヒズボラの)砲撃をやめさせるため、陸軍にはいかなる制約も与えない」と述べ、国連安保理による協議に成果が見られない場合、レバノン領内に1万人規模の部隊を複数展開させ、ヒズボラの砲撃拠点を制圧する意向を示した。

 イスラエル軍のレバノン攻撃は7日夜も続き、ロイター通信によると、各地でこの日だけで計55人が死亡した。ベイルート南部では7日夜、住宅密集地のビルが爆撃され、15人の死亡が確認された。なおもがれきの下敷きになっている人たちがおり、救出活動が続いた。

 イスラエル軍は、サイダなど南部の都市で午後10時以降の外出をしないよう市民に求めるビラをまいた。ヒズボラの夜間活動を封じるためだという。(2006年08月08日『朝日新聞』)

 国連事務総長:イスラエルの空爆は国際法違反の報告書

 【ニューヨーク坂東賢治】レバノン南部カナで7月30日、イスラエル軍の空爆で子どもを含めた民間人多数が死傷した事件で、国連のアナン事務総長は7日夜(日本時間8日午前)、安全保障理事会に、空爆は民間人の居住するビルへの攻撃で国際法違反だったと指摘する報告書を提出した。7月30日に採択された、事件に「強い遺憾」を表明する議長声明は事務総長への1週間以内の報告を求めていた。

 報告書は一方で、現場周辺ではなお戦闘が続いている上、日数が限られていたため、関係する事実をすべて収集し、包括的な報告としてまとめることはできなかったと指摘。カナ周辺でイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの活動があったかについても、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)はそれを判断できる立場にないとして結論を下すことを避けた。(『毎日新聞』2006年8月8日)

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中東事態―8・6~7

 イスラエルが、レバノンに軍事侵攻してから、一ヶ月になろうとしている。戦闘は続いており、多くの民間人死傷者が出続けている。レバノンの約100万の避難民には、食料・医療などの不足が深刻化している。ヒズボラは、避難民に避難所を提供すると共に食料や生活必需品の配給を行っており、それによって避難民たちの間に信頼と支持を拡大している。

 日本政府は、この事態に、懸念を示し、緊急人道支援を決定しているが、これまで、イスラエルの自制を求めるだけで、即時停戦を積極的に主張していなかったが、7月31日、カナの虐殺事件を受けて、外務省が初めて即時停戦を求める主張を公表した。遅きに失した感はあるが、それでも、これは英米に先駆けての即時停戦の日本政府の公式のアピールであるから、イスラエルに対する一定の外交圧力にはなる。もちろん、イスラエルが、アメリカ以外のところからの言葉による停戦要求に応えるとは思われない。

 イスラエル内部での民衆の反戦運動が大きくなれば、強い停戦圧力となる。それと英米内の反戦運動で、英米政府に強い圧力がかかれば、イギリスのように内閣の意見の不一致を誘い出すなどして、政策転換を生み出す可能性もある。

 イラクのマフド軍などのシーア派のサドル師派十万人が、イラク各地で、イスラエルを非難し、ヒズボラを支持するデモを行った。デモ参加者は、義勇軍として戦いに参加する用意があることを示したという。現在、レバノンの首都ベイルートでアラブ外相会議が行われており、ここでもイスラエルを非難で一致することは目に見えている。

 レバノンとカタール、決議案に修正要求 国連安保理

 国連安全保障理事会は6日、レバノン情勢をめぐり、イスラエル軍とイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの双方に「敵対行為の全面的中止」を求める決議案について、実務者による非公式の協議を実施した。非常任理事国のカタールと当事国のレバノンが「イスラエルの即時撤退」などを求める修正を要求。共同提案国のフランスと米国が扱いを検討することとなり、同日中の決議案の正式提出は見送られた。5常任理事国とアナン事務総長は同日、フランスの国連代表部に集まり早期の採択に向けて協議した。

 フランスと米国はレバノンからの合意を取りつけるため、主張の一部を取り入れる形で決議案の文言を修正して7日か8日にも採択を目指す意向だ。

 レバノンのマフムード特使は6日、国連内で朝日新聞に対して「今日、レバノンとして安保理メンバーに修正案を示した」として、敵対行為の中止後、直ちにイスラエルが撤退し、武器などを国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)が接収。72時間以内に、国連がイスラエル・レバノンの境界線として定めたブルーラインと、リタニ川の間の一帯をレバノン軍に引き渡すことなどを求めたことを明らかにした。(2006年08月07日『朝日新聞』)

 ヒズボラ攻撃で15人死亡 イスラエル

 イスラエル北部に6日、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラのロケット弾が約200発撃ち込まれ、西の地中海沿いの港湾都市ハイファでは同夜、市民3人が死亡、数十人がけがをした。これに先立ち、東の国境沿いにあるキリヤトシェモナ付近の村では、イスラエル軍の予備役兵の集合場所に着弾、予備役兵12人が死亡した。ロケット弾攻撃による1日の死者数が計15人にのぼるのは、先月12日の戦闘開始以来、最多。

 これまでのイスラエル側の死者は兵士58人、市民36人の計94人になった。

 ハイファでは住宅地に数発撃ち込まれたほか、これまであまり被害のなかった丘の上のホテル周辺にも着弾した。イスラエル軍は6日夜、レバノン南部のカナやティールを空爆し、ハイファへのロケット弾の発射基地を破壊したとしている。(2006年08月07日『朝日新聞』)

 レバノンの死者・不明者千人超す 大半が一般市民

 レバノンのハリファ保健相は7日、イスラエル軍の攻撃によるレバノン側の死者と行方不明者が計1000人に達したことを明らかにした。このうち死者は925人で、大半が一般の市民という。ロイター通信が伝えた。

 イスラエル軍は7日もレバノン各地への空爆を継続、民間人や社会基盤への被害が広がっている。イスラエル紙ハアレツ(電子版)によると、レバノン南部フラ村では同日朝、イスラエル歩兵部隊とヒズボラ部隊が遭遇、激しい銃撃戦となり、イスラエル兵1人、ヒズボラ兵が少なくとも14人死亡した。

 一方、レバノンのテレビ局は、フラ村で40人以上がイスラエル軍の空爆で破壊された建物の下敷きになったと伝えた。シニョーラ首相は「意図的な爆撃で、虐殺だ」と批判した。

 また、レバノン南部ガザニヤでは、イスラエル軍の空爆によりレバノン人一家7人が死亡。南部リタニ川にかかる海沿いの橋が空爆で破壊され、南部ティールに入った「国境なき医師団」の現地担当者はロイター通信に「最後の補給路が絶たれた」と語った。 (2006年08月07日『朝日新聞』)

 イスラエル・レバノン情勢について

 我が国としては、国際社会がイスラエルに対して繰り返し自制を求めているにも拘わらず、7月30日(日曜日)、イスラエル軍の空爆により子供を含む多数の民間のレバノン人が死亡する事件が発生したことは極めて遺憾と考える。

 我が国としては、これ以上の民間人の被害を防ぎ、事態の更なる悪化をもたらさないよう即時停戦を求めるとともに、当事者に対し問題解決に向けた最大限の努力と自制を求める。( 7月31日外務省HP)

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中東事態―8・5~6

 米仏がレバノン停戦決議案で合意した。さっそく、イスラエルからは閣僚らが、この決議案に賛成する声があがった。しかし、レバノン政府は、イスラエルの領土からの撤退に言及していないなどの不備があるとして、国連安保理に、修正を求めるという。

   確かに、この停戦決議案は、イスラエルの自衛のための攻撃を容認しているし、国際平和部隊の派遣も、完全な停戦後となっており、イスラエルもヒズボラも相手が攻撃を止めない限り、戦闘を続けると言明していて、停戦がいつになるかはわからない。双方への外交交渉にまかされた形である。イスラエルに対しては、アメリカの説得は効くだろうが、ヒズボラ側に、一体誰がどのように働きかけるのかが問題だ。シリアやイランとの交渉である。

 本来なら国連事務総長の交渉力がもっとあっていいはずだが、この間、アメリカはネオコンのボルトンをアメリカ議会の承認なしに指名して、国連に送り込み、国連事務総長の権威をおとしこめてきたし、サンクペテルブルク・サミットで、ブッシュ大統領が思わず漏らした声がマイクに入ってしまったことで明らかになったように、アナン事務総長を軽んじている。アメリカは、シリア・イランとの外交関係を断っていて、交渉できない状態にある。この問題で外交的に解決するための手段を壊してきたのである。

 とはいえ、停戦交渉は急がなければならず、アメリカがシリア・イランと交渉することも追求されねばならない。国連も当事者に対する働きかけを行わねばならない。反戦の声は世界に拡がっている。それも、解決力の一つである。

 米仏が国連安保理に提出したレバノン停戦決議案要旨
 
 米国とフランスが5日、国連安全保障理事会に提出したレバノン停戦決議案要旨は次の通り。

【前文】(略)

【本文】

 一、安保理はレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの攻撃と、イスラエル軍の攻撃的軍事作戦の即時中止に基づく「戦闘の全面中止」を要求(イスラエルの自衛的作戦による反撃は容認)。国連レバノン暫定軍に戦闘中止の履行監視を要求。

  1. イスラエルとレバノンに対し、以下の原則や事項に基づく恒久停戦や長期的解決に同意するよう要求。
  • 国連が設定した両国の境界線「ブルーライン」の尊重
  • 係争地「シェバ農場」一帯を含む国境画定
  • ブルーラインとリタニ川の間のレバノン南部にレバノン軍と国際部隊だけが活動す  る緩衝地帯を設置
  • ヒズボラの武装解除などを求めた2004年の安保理決議1559の完全履行―など。
  1. イスラエルとレバノンがこれらに原則合意した後、別の決議案で国連憲章7章に基づく国際部隊の展開を承認。
  1. 採択から1週間以内に決議の履行状況を安保理に報告するようアナン事務総長に要求。

 ロンドンでイスラエルのレバノン攻撃停止を求めるデモ
 
 [ロンドン 5日 ロイター] ロンドンで5日、イスラエルのレバノン攻撃停止を求めるデモ行進が行われ、参加者らが、即時停戦を支持しない英政府に対して抗議した。

 デモの主催者によると、3万人の署名を集めた、無条件の即時停戦を求める請願書が参加者によって英政府に提出された。

 主催者はデモの参加者数を6万人としているが、警察によると2万人で、18人が逮捕された。(ロイター) - 8月6日

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中東事態―8・4~5

 英紙『インディペンデント』は、4日、ダウニングストリートで行われた反戦デモのリポートを掲載している。「ストップ・ザ・ウォー連合」などが呼びかけた緊急行動のイラク反戦以来最大の約10万人のデモ隊は、ブレア首相が即時無条件停戦を求めるよう要求した。

 『インディペンデント』は、「セイブ・ザ・チルドレン」と提携して、「Help save Lebanon's children(レバノンの子供たちを救え」とするキャンペーンを開始し、アピールを発した。アピールは、軍事攻撃がエスカレートする中で、危難の中にあるレバノンの子供たちを救うために、緊急の食料・衣料品・衣服などの支援を呼びかけている。

 アメリカのキリスト教福音派原理主義カルトの説教師たちは、『聖書』の預言が実現するためにはイスラエルが勝利することが必要だという邪悪な説教を続けている。その説教の下に隠れているのは、アメリカの世界支配の汚らしい野望である。イスラエルの神は、イスラエルを滅ぼすことも自由に決定できる全能の神である。イスラエルだけを滅ぼさないということがありうるか? ありえない。それは、『旧約聖書』の物語では、全能の神次第である。『新約聖書』でイエスは、ラビを「まむしの末」と呼ぶなど手厳しく批判した。イギリスの国教会は、ブレア首相に再三、即時停戦を提言してきたし、ローマ法王も日本のキリスト教団体の多くも、即時停戦を呼びかけている。ただ、アメリカにはびこるキリスト教原理主義カルトだけが、イスラエルの軍事攻撃を預言の成就として歓迎しているのだ。

 国連の協議は、米仏間の協議が難航しているが、英ブレア首相、米ライス国務長官は、それぞれ数日内に国連決議案の合意ができるという見通しを述べている。すでに、フランス・イタリア・スペインなどの欧州の国際平和部隊の準備が整いつつあるという報道もある。アメリカは、軍事衝突が沈静化してから、レバノン国軍に装備と軍事訓練を施すことを表明している。

 イスラエル軍の空爆と地上攻撃は激しくなっているが、ヒズボラ側の反撃に苦しめられている。すでに、3週間を超えながら、なお、ヒズボラの戦闘能力は高く、イスラエルが描いた短期でのヒズボラの弱体化のシナリオは崩れている。イスラエルの軍事的敗北を予想する識者の声も聞こえている。最新ハイテク兵器で武装したイスラエル軍が、これほどの苦戦をするとは、イスラエルを支持してきたアメリカにとっても大誤算であったろう。

 アメリカでは、軍幹部が国会で、イラクは内戦に入りつつあるという見方を示したことで、ブッシュ政権の対イラク政策の誤りを指摘するヒラリー民主党上院議員とラムズフェルド国防長官との間に激しいやりとりが行われた。イラクのベトナム化を指摘する識者もあり、反省なきブッシュ外交では、誤りが繰り返されるばかりである。

 米国民の多くは親イスラエル感情を持っているが、イスラエルの軍事行動の戦闘継続か即時停戦かでまっぷたつに意見が分かれていることが、世論調査結果に出た。イスラエル・ロビーが、政治・教育・マスコミなどに深く浸透して、親イスラエル世論が強力に作られているアメリカで、32%がイスラエルの軍事行動を行きすぎとし、44%が即時停戦を求めているというのは、大きい数字だと思われる。

 62%がキューバとの国交樹立を求めているのも、共和党を中心に、フロリダなどの亡命キューバ人のロビーと結んだ反カストロ宣伝がそれほど浸透せず、多くの米国民が比較的冷静に公平な判断を下しているように見える。

 このことは、金とスタッフの力で、政界・マスコミなどを自分たちに都合良く利用しようとしているイスラエル・ロビーだが、それが成功するとは限らないし、結局は、真実の力の方が強いということを意味している。

 イスラエル軍は、5日、シリア国境地帯の農場を空爆し、作業員ら22人を殺害した。カナでの市民虐殺を誤爆と言いくるめたイスラエル軍だが、誤爆も繰り返されると、無差別攻撃という性格が浮かび上がってくる。イスラエル軍内で、国際人道法を遵守する教育や指導は行われてないのではないか? 軍指導部が、無差別攻撃を奨励し、あるいは暗黙の承認を与えているのではないか? 等々の疑惑が強まってくる。この間の、レバノン・ガザの犠牲者の多くが子供を多数含む民間人であり、戦闘員の死者数を大きく上回っていることから、大量無差別攻撃の疑いが濃厚で、戦争犯罪にあたる可能性が極めて高い。それに対して、ヒズボラの攻撃によるイスラエル人の犠牲者は、戦闘員が多く、民間人犠牲者は少ない。

 ガザの惨状にも目を向けなければならない。ボルトン米国連大使がこの間、イスラエルの非人道行為を擁護し、即時停戦を引き延ばしにして、さらに無実の犠牲者を増やしたことは、必ずや真実に基づいて、大きな問題ある行為として断罪されるだろうし、世界の心ある人々はそうするだろう。歴史を甘く見、歴史的真実の力を甘く見ていると、これまでの歴史が明らかにしているように、清算される時が必ず来るのだ。ネオコン、キリスト教原理主義カルト、戦争で一儲けしている軍需産業、等々、には、この戦争について、真実による裁きの時が必ず来る。

  米国民68%がイスラエルに同情、ヒズボラ6%

  アトランタ(CNN) イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの交戦で、米国民の68%がイスラエルに同情、ヒズボラは6%だったことが最新世論調査で4日分かった。どちらにも同情しないが11%、分からないが11%だった。

  今回の交戦は、ヒズボラによるイスラエル兵拉致がきっかけとなったが、米国民の51%がイスラエル軍の軍事的報復は概ね正しいと回答。32%は行き過ぎと考えていた。

  イスラエルが今後、取るべき対応については、46%がヒズボラの攻撃能力を削ぐまで軍事行動を継続すべきとし、44%が即時停戦に応じるべきだと答えていた。

  イスラエル・レバノン国境に展開する国際和平維持軍への米軍参加問題では、51%が賛成していた。

  また、カストロ国家評議会議長(79)の急病問題で、今後の政治動向が一気に注目されてきたキューバ情勢では、62%が再度の国交樹立を支持、反対は29%だった。カストロ議長が死去し、弟のラウル第1副議長が後継者となった場合、69%が国交樹立に同意していた。

  世論調査は成人1047人を対象に、8月2日─3日に電話で実施した。( 2006.08.05- CNN)

 イスラエル軍、特殊部隊を投入 ヒズボラもロケット弾

 イスラエル軍は4日から5日朝にかけて、ベイルート南郊などレバノン各地で空爆を続けた。AP通信などによると、5日には南部ティールにヘリコプターで特殊部隊を送り込んだが、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラ側の激しい抵抗に遭って撤退した。ティール付近では空爆も相次ぎ、ロイター通信によると、レバノン軍の輸送車が爆破されたほか、市民1人が負傷した。

 南部のタイベ村では4日、住民が避難していた家屋が爆撃され、7人が死亡、10人が負傷した。また、AFP通信が地元赤十字の話として伝えたところでは、ベイルート北方の橋が空爆された際に市民5人が死亡、15人が負傷、さらにがれきの下に埋まっている人がいる可能性があるという。

 AFP通信によると、7月12日に戦闘が始まってからの死者について、レバノン政府は「市民900人以上」としている。イスラエルの死者は兵士44人、市民30人の合計74人に上る。

 ヒズボラのロケット弾による攻撃も続き、4日夜には、イスラエル側の地中海沿いにあるハデラに着弾した。けが人はなかったが、ハデラはレバノン国境から約80キロ離れており、戦闘が始まって以来、最長のロケット弾攻撃となった。

 イスラエルの民間テレビ「チャンネル2」の報道によると、ヒズボラはイラン製の「ハイバル1」ロケットを発射したとの声明を出した。ヒズボラの指導者ナスララ師は3日、国境から約130キロの商業の中心都市テルアビブへのロケット弾攻撃を警告していた。(2006年08月05日『朝日新聞』)

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中東事態―8・3~4

  8月3日の『フィナンシャルタイム』は、「イスラム諸国は、停戦のための国連の行動を要求している」という記事で、木曜日、マレーシアのクアラルンプールで開かれた「イスラム諸国会議機構」(ICO)の緊急会議について書いている。会議では、マレーシアのバラディ首相、インドネシアのユドヨノ大統領、イランのアフマディネジャド大統領、ビデオ参加のレバノンのシニョーラ首相、バングラディシュのジア首相が、それぞれ、イスラエルの軍事行動を侵略行為と非難し、国連が即時停戦のために行動するように要求した。

 その国連では、フランスが提案した決議案をめぐって、またしてもアメリカがいろいろと文句をつけて、協議を難航させている。しかし、4日のAP通信の記事によると、ライス国務長官は、即時停戦と段階的和平推進で、フランスとの合意が数日中にまとまるだろうと述べたという。イスラエルのオルメルト首相とヒズボラ最高指導者のナスララ師はすでに停戦の用意があることを表明している。

 その間にも、イスラエル軍の空爆や地上作戦が続き、さらにレバノン人の民間犠牲者は増え続けている。もちろん、ガザでも。

 イスラエル軍は、国境から6キロ以内の20の村を制圧したとして、さらに、国境から約20キロにあるリタニ川までの地域を占領するために作戦を拡大することを公表した。イスラエル軍は、ベイルートへの空爆を続けている。それに対して、ヒズボラは、120発のロケット弾をイスラエル北部に撃ち込み、8人が死亡したとイスラエル当局は発表した。ヒズボラのナスララ師は、ベイルート空爆を続けるなら、イスラエルの商業・軍事都市テルアビブをロケット攻撃すると警告した。同時に、師は、イスラエル軍が民間人への攻撃を止めるなら、ヒズボラの攻撃も停止すると、停戦の用意があることを明らかにした。

 それにしても、社会民主党や「フォーラム平和・人権・環境」などの平和運動体が、誰一人負傷者も死亡者も出ていない北朝鮮のミサイル発射実験に対しては、即座に抗議のアピールを公表したのに、これだけの民間人犠牲者を出し、今現在続いているイスラエルの軍事侵攻に対して、未だにホームページで、態度を明らかにしていないのは、かれらの掲げる平和や人権の看板が泣くというものである。人権は、人種・宗教・民族に関係ない人類の普遍的価値ではなかったのだろうか。

 福島社民党党首のホームページの日記には、戦争問題関係の本をずいぶん読んでいることが書かれているが、今現実に起きている戦争についての言及が一つもないのはどうしたことか。社民党衆議院議員の保坂展人氏のホームページでは、カナの虐殺事件に触れて、即時停戦を訴えているのだが。しかし、あまり報道されないのだが、世界でも日本でも、反戦運動が、イスラエル大使館などに緊急抗議行動を行っている。ブログでも、イスラエルの軍事攻撃を非難し、即時停戦を求める声が増えている。

 ライス米国務長官、欧州のレバノン即時停戦決議案を支持=和平に向け歩み寄りへ

 【ライブドア・ニュース 08月04日】- AP通信によると、米国のライス国務長官は3日、米CNNテレビのトーク番組「ラリー・キング・ライブ」の中で、イスラエルとイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとの戦闘の即時停戦を求めているフランスや他の欧州諸国の和平決議案について、「フランスと密接に協議しており、我々は意見の一致に近づいている」と述べ、即時停戦を支持する考えを示した。米国はこれまでレバノン攻撃をイスラエルの自衛権の行使として容認してきたが、同長官のこの日の発言は、米国が和平に向けて妥協する姿勢を示したものと見られている。

 これに対し、国務省のマコーマック報道官はコメントを控えた。ただし、戦闘が収まったのちに、領内での治安維持に向けてレバノン軍を訓練や装備の面で支援する計画が、ライス長官とラムズフェルド国防長官の間でまとまったことを明らかにした。詳細は明らかにされていないが、国務省は先週、レバノン軍への年間供与額150万ドル(約1億7000万円)に1000万ドル(約11億5000万円)を追加支出したい意向を議会に伝えている。 

  また、ライス長官は、同番組の中で、即時停戦と停戦を恒久的なものにするための諸原則を盛り込んだ国連安保理決議が数日中に採択される見通しを明らかにした。米国はイスラエルとヒズボラの戦闘開始以来、停戦と同時に、段階的に和平が持続するような措置を講じるよう主張し、具体的には国連平和維持軍の展開とヒズボラの武装解除を求めている。今回、米国とフランスが協議しているのは、即時停戦と停戦の恒久化に関する国連安保理決議と長期的な紛争解決を求める国連安保理決議のうち、前者の即時停戦決議となっている。【了】(8月4日ライブドア・ニュース 中西庸記者)

  レバノン即時戦闘停止の仏決議案、米との協議難航

 【ニューヨーク=白川義和】ドラサブリエール仏国連大使は3日、イスラエルとレバノンのシーア派組織ヒズボラの即時戦闘停止を求める国連安全保障理事会の決議案について、米国との協議が難航していることを明らかにした。

 フランスは2日夜、仏決議案の修正案を各理事国に提示したが、細かな表現を変更しただけにとどまっている。

 仏決議案が「即時戦闘停止後、持続的停戦の条件を整えた上で国際部隊派遣」と段階的解決を追求するのに対し、米国は「持続的停戦と国際部隊派遣」の実現を求めている。ドラサブリエール大使は記者団に、米国が「即時戦闘停止」について難色を示し、争点になっているとした。(読売新聞) - 8月4日

 ヒズボラがテルアビブ攻撃を警告、イスラエル軍は空爆続行

 ベイルート(CNN) イスラエル軍との交戦を続けるイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは3日、同軍への報復として、イスラエル最大の都市テルアビブを爆撃するとの警告を発した。イスラエル側は、同日未明に再開したベイルート南郊への空爆を続行している。

 ヒズボラの指導者ナスララ師は、テレビ演説の中で「(イスラエル側が)ベイルートを攻撃するなら、われわれは神の助けを得てテルアビブを攻撃する」と述べた。同師はその上で、「そちらがわれわれの村や町、民間人への攻撃を停止すれば、われわれもイスラエルの町を攻撃することはない」と語り、停戦への関心を示している。

 イスラエル軍は同日、ヒズボラ拠点を狙った空爆を続ける一方、住民らに避難を呼び掛けるビラを投下。ヒズボラからのロケット弾攻撃が続いているため、「ベイルートでの作戦を拡大する可能性がある」と警告した。

 イスラエル警察によると、同国北部には同日、200発以上のロケット弾が撃ち込まれ、8人が死亡した。またイスラエル軍によれば、ヒズボラとの戦闘で兵士3人が死亡したという。一方レバノンの当局者らは、イスラエル軍のミサイル攻撃で民間人4人が死亡したと述べている。(2006.08.04- CNN)

 <レバノン>ヒズボラ指導者、条件付で停戦を示唆

 イスラエル軍の攻撃を受けるヒズボラの指導者ナスララ師は3日夜、ヒズボラ系テレビのアルマナルが放映したビデオ声明で、イスラエル軍の「民間人攻撃」停止を前提条件にイスラエルに対する攻撃を停止する用意を示した。7月12日の戦闘開始以来、条件付きながらもヒズボラが停戦に応じる可能性を示唆したのは初めて。(8月4日『毎日新聞』)

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中東事態―8・2~3

  8月3日の米紙『ロサンゼルス・タイムズ』「イスラエル支持多数、アメリカの役割については分裂」は、同紙とブルームバーグが共同で実施した世論調査について書いている。

 この世論調査の結果で、アメリカ人の多くがイスラエルを支持しているが、アメリカがこの問題でどのような役割を果たすべきか、そしてユダヤ国家との親密な関係をどうするかということについては、意見が分かれていることが明らかになったという。

 今回のイスラエルの軍事行動を支持するのは、59%。13%が即時停戦を求め、45%の人が、アメリカは、平和維持部隊を派遣するために双方に働きかけるべきだと答えた。

 43%の人が、イスラエルの軍事攻撃は正当で、イスラエルはやりすぎではないと答えた。16%の人は、イスラエルの軍事攻撃は正当だが、やりすぎだと答えた。

 同記事は、こうした世論は、情況によって変わるものだとわざわざ注意している。

 イスラエル軍は、8月3日、7月30日のカナのアパート攻撃で、市民54人以上を殺害した事件を誤爆とする調査報告を発表した。公式には、これ以外の回答はありえない。意図的なら、戦争犯罪となる可能性が高い事件だからである。

 イスラエル軍は、1万人規模の軍隊をレバノン南部に投入し、同地域を国際平和部隊が展開するまで占領する作戦に打って出た。これが、軍事作戦の当初からの目的であったのかもしれないが、時間がかかりすぎた。オルメルト政権は、軍部に突き動かされる軍政の傀儡政権化しつつある。したがって、この軍事的賭けに負ければ、軍部と運命を共にすることになる。

 軍事作戦が長引いたことはイスラエルに不利な様々な結果をもたらした。

 レバノン内部がヒズボラ支持でまとまってしまった。イランのイスラム世界での政治的力が増大した。ブレア首相の政治力は弱まった。アメリカで、ブレジンスキーばかりではなく、キッシンジャー、スコウクロフト、アーミテージという元高官たちが、イスラエル支持のブッシュ政権の中東政策を公然と批判し始めたり、約3分の2の人々がイスラエルの軍事攻撃を支持しつつも、即時停戦やヒズボラ側とも交渉すべきだとする人が45%に達するなどの世論のブッシュ政権の中東政策批判もけっこう多くなっている。現在、イスラム諸国の首脳級会議が開かれており、そこでも、イスラエル非難の声が強く出ることは明らかである。

 下記の緊急行動をはじめ、大阪米領事館や神戸米領事館に対する緊急行動など、日本の各地で、イスラエルの軍事行動を止めるための緊急行動が、連続して取り組まれている。

 イスラエル軍が誤爆認める、カナの民間アパート空爆

  エルサレム――イスラエル軍が7月30日、レバノン南部カナのアパートを空爆、民間人56人が死亡したとされる事件で、イスラエル軍は3日、調査結果を発表し、謝った情報に基づく爆撃だったことを認め、「一般人が中にいたことが分かれば、攻撃はしなかった」と述べた。

  同時に、交戦するレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが、攻撃を避けるため、民間人を「盾」として利用していると非難した。

  爆撃でアパートは倒壊、女性や子供が大半の遺体が収容された。この空爆は国際社会の非難を浴び、イスラエルは48時間の空爆停止に同意もしていた。

  調査結果によると、カナの空爆は、住人に退避警告が出された村落で「不審」な建物を爆撃するとの軍規定に従って実行されたと指摘。ヒズボラは民間の建物を武器保管に使っており、カナからは150発以上のロケット弾が発射されていたとも述べている。爆撃したアパートを、ヒズボラの拠点と誤認していたとみられる。

  イスラエル軍のハルーツ軍参謀総長(中将)は民間人の犠牲者が出たことを謝罪したが、ヒズボラは意図的に民家や民間人の居住区域を使い、攻撃しているとも非難している。

  一方、この空爆の犠牲者数について、国際人権擁護組織は2日、死亡が確認された28人の名前を発表、13人が依然不明になっている、と述べた。がれきの下に閉じ込められている可能性がある。

  アパート地下の避難壕(ごう)から逃げ出した住民数が当初判明した9人から、少なくとも22人に増えていたことが確認されたともしている。 (2006.08.03- CNN/AP)

 イスラエル軍、国境沿いの「安全保障地帯」制圧へ

 イスラエル軍は3日未明、レバノンの首都ベイルートの南郊、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの本拠地への空爆をほぼ1週間ぶりに再開した。同軍はレバノン南東部のラシャヤ、東部ベカー高原への空爆も続行。攻撃の範囲、規模を拡大している。南部では地上部隊が各地でヒズボラ掃討を進め、イスラエル放送によると、3日中にもヒズボラを排除した国境沿いの「安全保障地帯」の制圧が完了する、との見通しを軍が示した。

 「安全保障地帯」については、イスラエルのオルメルト首相がこれまでに「幅2キロの緩衝地帯」との構想を明らかにしているが、イスラエル国内報道によると、軍は幅6~8キロの地帯でヒズボラを掃討して占領し、国際部隊の派遣を待つ方針とされる。

 一方、レバノンのシニョーラ首相は3日、同国の被害について「死者900人、負傷者3000人、避難民100万人」と語った。ロイター通信などが伝えた。

 激しい戦闘や空爆のため未回収の遺体がある可能性が高く、被害の全体像の把握は難しい状況が続いている。

 一方、死者57人と伝えられ、イスラエルへの国際的な非難を呼んだ南部カナでの民家空爆事件について、AFP通信は同日、遺体を収容した南部ティールの病院関係者の話として「死者28人、うち16人が子どもたちだった」と伝えた。(2006年08月03日 『朝日新聞』)

 2006/08/04 駐日イスラエル大使館への緊急申し入れ行動

 駐日イスラエル大使館への緊急申し入れ行動に再び参加を!

8月4日(金)18:00
地下鉄有楽町線「麹町」駅/日本テレビ方面改札口(6番出口に通じる 改札)に集合
http://www.tokyometro.jp/rosen/eki/kojimachi/map_rittai_1.html

申し入れ書やパネル、チラシなどを呼びかけ人が用意しますが、個々人でも創意工夫をこらして持ち寄ってください。

戦争と占領をやめろ! 駐日イスラエル大使館・緊急申し入れ行動
palestine_ppc@excite.co.jp

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中東事態―8・1~2

 8月2日の英紙『タイムズ』は、「われわれは、対テロ戦争を再考しなければならない―ブレア」で、1日にロサンゼルスで、ブレア英首相が、イスラム武装勢力を倒すためには、5年間の「対テロ戦争」の戦略を「完全再生」しなければならないと語ったと伝えている。

 ブレア首相は、軍事だけで闘うことは、イスラムの世論を敵に回し、イスラム世界に「イスラム過激主義の赤十字」を拡張するだけで、逆効果であると述べたというのだ。必要なのは、「イスラム過激主義の赤十字」に対して、「穏健主義の同盟」を構築することだという。今頃気づいたか、という感じである。ハマスを兵糧攻めにしたのは大きな間違いだったし、少なくとも、イスラエル軍が、海水浴場を攻撃して民間人多数を死傷させた時に、イスラエルを非難すべきだったのだ。

 9・11以前の、英米などの中東・イスラム政策には、こういう面があった。日本では、イスラム研究者の山内昌之教授は、ずっとイスラム穏健派の育成を主張してきた。アメリカの歴代大統領は、中東和平構想に繰り返し取り組み、現大統領の父親のパパ・ブッシュ時代にも、シリアを含む中東和平構想を推し進めた。しかし、ブッシュ現大統領は、軍事的解決策のみにのめり込んできた。8月2日の『ニューヨーク・タイムズ』は、パパ・ブッシュのねばり強い中東和平づくりの姿勢を懐かしんで、「不肖の息子」に、パパを見習うよう諭している。

 イスラエルは、レバノン南部から撤退を余儀なくされて以来、軍備増強をアメリカの支援によって着々と進め、昨年には、バンカーバスターなどの最新ハイテク兵器をアメリカから買い付けた。ハマスが民主選挙で誕生すると、代理徴収していた税の引き渡しを拒否し、ガザを封鎖した。アメリカは、ハマスを「テロリスト」と決めつけて、人道援助以外の支援をうち切り、日本など多くの国がそれに追随した。しかし、日本は、先の小泉首相の中東訪問で、人道支援の再開をパレスチナに伝えた。もっとも、小泉首相滞在中に、イスラエルのレバノン侵攻が起きていたのだが。それでも、それは、アメリカがイスラエル支持一辺倒であるのに対して、日本が独自外交を行ったものである。

 イスラエル軍は、1日、停戦期限が切れる前に、東部のベカー平原で、空爆を再開した。イスラエルは、6000人以上の兵を投入して、リタニ川以北にヒズボラを追い出す作戦を展開している。イスラエルのオルメルト首相は、ヒズボラを弱体化するまでは作戦を継続すると述べる一方で、停戦の政治過程が始まっているとも述べ、停戦を視野に入れつつあることを明らかにした。

 1日、訪米中のイスラエルのペレス副首相は、ライス国務長官との会談で、停戦は数週間後になるという見通しを明らかにしたのに対して、ライス長官は、停戦合意は週内にも可能だと述べた。

 イスラエル当局は、ヒズボラ戦闘員2000人のうち、300人が死亡し、長距離ミサイルの70~80%を破壊したと述べた。仮にこれが事実だとしても、ヒズボラの戦闘員は、イスラム世界の民衆から次々と送り出されてくる。ミサイルがなければ、石を投げてでも闘うだけのことである。もちろん、こうした戦況報告は、誇大に見積もられている「大本営発表」である可能性が高い。それにしても、こういう戦果を副首相が、ホワイトハウスに報告に行くというのが、イスラエルの位置をよく表している。しかし下記のCNNの記事によると、イスラエル軍のレバノン侵攻から3週間後の8月2日段階でも百数十発のロケット弾を発射できる能力をまだ持ち続けている。やはりイスラエル当局の発表は「大本営発表」だろう。

 重要なのは、こうしたイスラエルの公式の見方をライス長官が信用しなくなってきたことである。アメリカが独自の調査と分析をもとに、事態を判断し始めているのではないかということだ。イラク戦争の時に、CIAが、イランのエージェントの亡命シーア派イラク人のでたらめな証言をそのまま政権に報告して、それをもとに国連安保理で国務大臣がフセイン政権非難の大演説をぶって、後で大恥をかいたことがあった。そんな大恥をかくことは、鋭利な頭と高いプライドを持つライス氏がもっとも嫌うところであろう。

 すでに、彼女は、イスラエルで停戦交渉している最中に、イスラエル軍が、カナで、民間人50人以上を虐殺する事件を起こしたことで、一度メンツを潰されている。さらに彼女を怒らせることは、イスラエルにとって得策とは思われない。ライス氏は、すでに、かなり怒っていると思う。

 イスラエルは、とにかく、一気に部隊を増派して、停戦前に、ヒズボラをたたけるだけ叩くという賭けに出たわけである。この場合の軍事的な一時的成功などは、中長期的に見れば、むなしいものにすぎない。政治的には、ほぼ世界対アメリカ・イスラエルというのに近い情況になってしまった。アメリカの世界政治での力はこの問題ばかりではなく、他のところでも低下していくだろう。

 政治的利害打算の想像上の計算をしてみよう。イスラム世界での民衆の支持を拡大できたイランの政治的立場は強まった。フランスは、EUをリードする立場として独自性を強発揮できている。イギリスは、政権内で対立が起き、さらに国内世論の支持を失って、ブレア政権は弱体化した。ドイツは、あいまいな態度を取って、存在感がなくなった。日本は、うまく立ち回って、漁夫の利を得た(アメリカにストップをかけられていたイランのアザデガン油田開発が動きそうになった等)・・・。これはあくまでも頭の体操の類であるが。

 アメリカのイスラエル・ロビーは、親イスラエル議員以外は落選するという神話を生み出すまでに強まっているが、それでも、ブレジンスキーをはじめ識者の間で、イスラエル批判の動きも出ているという。こうした点については、村上龍事務所発行のJMM[Japan Mail Media]最新号の村上博美氏の「米国議会とイスラエル・ロビー」に詳しい。

 それによれば、「イスラエルロビーとはユダヤ系アメリカ人団体や選挙資金提供者、シンクタンクなどを含む一大勢力であり、イスラエルの国益を推進及び支持する目的の下に20世紀の後半50年間に急激に勢力を伸ばした。ロビイングが成功したためか、米国の直接対外援助の最大の受益国家はイスラエルであり、年間30億ドルあまりを受け取る。また米国はイスラエルをあらゆる面で特別待遇にする。例えば軍事問題であればNATO加盟国と同等に扱い、自由貿易であればカナダやメキシコと同じように待遇する。年間を通して米・イスラエルの共同戦略タスクフォースや会合などが頻繁に行われており、ホワイトハウスにはイスラエルが攻撃されれば米国が駆けつけて助けるという大統領の公約束が飾られているという。ロビイングが効を奏し世論も総じてイスラエルに同情的だ。今年2月のギャロップ調査によれば、イスラエルへの共感度が1991年湾岸戦争以来最高の59%を示し、一方パレスチナに対しての共感度は15%にとどまった」という具合である。

 今、「秋の中間選挙を視野に入れ、強力なイスラエルロビーを味方にしたい共和党及び民主党の議員達は、先を争ってイスラエルへの忠誠心を証明すべく反テロ(=反ヒズボラ、反ハマス)を唱えている。「議員らのイスラエル支持はこれまでになく高い」というのは、主要イスラエルロビー団体のAIPAC(American Israel Public Affairs Committee)であり、上院・下院でロビイングを行っているAIPACの報道官は「最近の議会での活動は、開いているドアを押すくらい簡単だ」という」状態になっている。つまり、アメリカでは、反イスラエルはタブーであり、政治家などの間では、事実上、この問題では、言論の自由がないのである。「自由の国」アメリカが、そんな有り様なのである。アメリカは、かつて日本でGHQがしたように、イラクで、反米をタブーにした検閲を行っている。

 イスラエル・ロビー団体のAIPACは、「200人のロビイスト・研究者等のスタッフを抱え、年間の予算は4700万ドル、草の根活動員は5年前の2倍の10万人となり、毎年リクルート活動は全米300の大学で行われているという」。移民の歴史の浅いイスラム系移民は、こんな大きな資金力とスタッフを持てるだけの力はない。ただ、最近は、一部議員や識者の間で、イスラエル一辺倒の中東政策は誤りだとする意見を表明する者が増えてきたという。それに、アメリカの新聞やテレビニュースは、イスラエルの攻撃の犠牲者達の映像を連日流しており、イスラエルの軍事的失敗を指摘するキャスターもいるなど、議会や政権ほどはイスラエル寄りには見えないのだが。

 アメリカ・イスラエルの自意識過剰・エゴイズム=愛国主義が、いかに人の目を曇らせて、重要な局面で、判断力を駄目にするかを、この問題は、見せつけている。レバノン人やパレスチナ人の犠牲は、無償ではすまない。それは、政治戦での勝敗を分ける重要な要素である。「人は石垣、人は城」なのだ。軍事は政治の延長であり、軍部との疎遠な関係や戦争以外に人心掌握するすべがないというイスラエルの国内政治の矛盾が、外への戦争へと向かわせた要因の一つにあるのだ。短期のヒズボラ掃討作戦の成功が政治的に必要であったが、それが不可能となった以上、オルメルト政権は政治的に敗北したといってよい。アメリカのライス長官を怒らせて、アメリカとの関係を悪化させることは、さらなる政治的敗北となる。

 世界では、イスラエルを非難する反戦運動が活発化しており、レバノンやパレスチナとの連帯を表明する国際的な人々の力が増している。その声が、レバノンやパレスチナに届けば、少しでも力となるだろう。なお、8月1日のイスラエル大使館での緊急行動は、参加者の報告などから、200~250人ほどだったようである。

 ヒズボラがロケット弾攻勢、空爆本格化に報復か

 エルサレム――イスラエル軍と交戦するレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは2日、イスラエル北部に約110発のロケット弾攻撃を実施、うち1発がナハリヤの集団農場内に着弾、同国人1人が死亡した。110発の数字は、地元警察がまとめたもので、これが正しければ、7月12日の武装衝突の発生以降、ヒズボラのロケット弾攻撃では最多数となる。

 イスラエル軍が1日に実施した、シリアとの国境に近いレバノン東部ベカー平原にあるヒズボラ拠点への攻撃、48時間の停止期間を終えた後の空爆の本格再開に対する報復の意味合いもある。イスラエルは、ベカー平原の拠点を武器搬入の主要ルートとみている。

 110発のうち、29発がナハリヤ、ティベリアス、カルミエリなどの市に着弾。家屋への直撃弾もあった。警察によると、住民15人が負傷した。ロケット弾の波状攻撃を受け、ナザレス、アフラなどでは「空襲警報」が鳴り響いた。

 AP通信によると、ヒズボラは長距離の新型ロケット「ハイバル1」をレバノン国境から約67キロにあるイスラエルのベイトシェアンに撃ち込んだと主張。イスエラル側はこれを確認し、少なくとも7人が負傷したと述べた。同ロケットはイラン製とみている。

 このミサイルは先月28日、レバノン南部からイスラエル北部に向け初めて発射されていた。射程90~100キロとみられる。ヒズボラの最高指導者、ナスララ師は先に、イスラエルの「奥深く」を攻撃出来る能力があると述べていた。

 イスラエルの住民はまた、ヒズボラのロケット弾が初めて、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸内に着弾した、と証言した。ベイトシェアン近くとなっている。負傷者はいない模様。

 レバノン治安当局筋は、ヒズボラが2日にイスラエルへ加えたロケット弾攻撃は300発以上に上ると述べた。この数字の真偽は不明。イスラエル軍は、ヒズボラは1万発以上のロケット弾を保持、イラン、シリアからさらに搬入を続けている、とみている。(8月2日CNN)

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中東事態―7・31~8・1

 8月1日、『産経新聞』『朝日新聞』『東京新聞』『毎日新聞』は、社説で、レバノン南部カナでのイスラエルの空からの攻撃で50人以上の市民犠牲者が出た事件を受けて、レバノン情勢を取り上げている。

 『毎日新聞』「イスラエル 世界の非難に耳を傾けよ」は、厳しい調子で、イスラエルの攻撃を非難し、この間、イスラエルを非難する国連安保理の声明や決議が、アメリカの反対で、実現不可能になっていることを「異常」と表現し、「米国が支援すればするほどイスラエルが孤立を深める傾向についても、ブッシュ政権は真剣に考えなければならない」とアメリカの政策見直しを求めている。

 『東京新聞』「レバノン惨劇 国連軸に停戦急げ」は、「強い遺憾の意」という国連安保理議長声明を、「生ぬるい」と批判し、「即時停戦が遅れれば惨劇が繰り返されるだけだ」と強い警告を発している。カナの事件について、イスラエルが「誤爆」を主張しているが、それを詭弁だと非難している。ここまでこれを国際人道法違反だと主張しているのは、この社説だけだ。アメリカとイスラエルが、国連などが求める即時停戦を受け入れるべきだと主張している。

 『朝日新聞』「レバノン危機 空爆停止では不十分だ」は、イスラエルの自衛の範囲を超える攻撃が続けば、穏健なアラブ諸国や欧州の反米が拡大し、その結果、反テロの国際社会の結束が崩れ、「中東の民主化」どころではなくなる。さらに、中東地域でのアメリカの指導力低下は、イランの核問題解決のための国際的努力や北朝鮮の核問題解決にも水を差しかねない。だから、アメリカは、国連安保理決議採択を急ぐべきだというのである。どうも、アメリカが中東問題からイラン・北朝鮮からあらゆる世界の問題を解決する力を持つために、停戦を急げと言っている感じである。

 『産経新聞』「レバノン情勢 双方が強い自制と忍耐を」は、「いま、双方、とりわけ強者であるイスラエルの側に求めたいのは、強い自制と忍耐である」と書いている。強者=イスラエルという認識を示しているのは、よい。親米の『産経』は、市民の犠牲は双方に責任があるとイスラエル側の主張にも理解を示している。「今回の戦闘でヒズボラの軍事力が想像以上に高いことが判明した」という軍事的評価は正しい。この点を見誤ったのが、イスラエルとアメリカのミスの一つである。日にちがたつにつれて、ライス長官の顔色が厳しくなっていくのがそれを示している。ただ、この社説は、軍事と政治の両方から評価していない。『朝日新聞』が心配しているように、親米的なアラブ諸国が、ヒズボラに同情する民衆の下からの突き上げて反米化していくという政治戦の結果、イスラエルが大きく敗北に傾きつつあることを見ていないのである。最後に、この社説は、事態の早期収拾のために、恒久停戦につながる安保理決議を求めている。

 『読売新聞』[レバノン情勢]「空爆停止を事態打開の糸口に」は、「事態打開を急ぐべき、より重要な理由は、このままでは、武力衝突と緊張が中東全体へ及ぶ恐れがあることだ」と述べる。そして、「イスラエルへの一方的な肩入れをいつまでも続ければ、米国は、中東における信頼をさらに失うことになる。現在のレバノン情勢から判断する限り、イスラエルに停戦を促す潮時ではないのか」と主張する。

 『産経』は、イスラエルよりの姿勢が目立つし、視点が軍事に偏っている。『東京新聞』『毎日』が、国連重視の姿勢に立っているのに対して、『朝日』『読売』が、反米感情の拡大に懸念を示す点で一致している。

 アメリカは、イラク・バグダッドの治安回復のために、増派を決定し、ますますイラクで泥沼に足を取られて身動きが取れなくなっている。世論調査によると、アメリカ人の多くが、アメリカが悪い方向に向かっていると考えている。中東でのハルマゲドンを期待するキリスト教原理主義カルトとイラン・シリアとの戦争を求めるネオコンなどがそれを強めているのである。アメリカ人の多くは、ブッシュ政権を支持していないのだが、政権を引きずり降ろす機会も当面ないのである。

 それとは対照的に、イスラエルの軍事攻撃を非難し、即時停戦を求める国際反戦運動が、この戦争からの出口を指し示す希望の光として輝きを増している。

 空爆に抗議のキャンドル 市民団体が大使館前集会

 一般市民に多数の死傷者を出したイスラエルによるレバノン南部カナ空爆を受け、市民団体が1日、東京のイスラエル大使館前で抗議集会を開催、約100人がキャンドルをともして犠牲者を追悼するとともに即時停戦を訴えた。

 集会では花やキャンドルを手にした参加者が、カナ空爆で死亡した子どもたちをはじめとする犠牲者の冥福を祈り、1分間黙とう。

 アムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠(てらなか・まこと)事務局長は「毎日多くの子どもたちが命を失っている。1人1人の声が国際社会を動かしていけるように抗議を続けよう」と呼び掛けた。(共同) (2006年08月01日『東京新聞』)

 イスラエルが地上戦拡大、ヒズボラが激しく抵抗

 エルサレム/ベイルート──イスラエル治安閣議は8月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの掃討を目的とした地上戦の拡大を全会一致で承認した、と述べた。イスラエルのメディアは、戦線はレバノン南部でさらに数キロ、北側へ伸びる、と伝えた。

 ロイター通信は、イスラエル政府当局者の情報として、ヒズボラを国境から約20キロ北のリタニ川まで撤退させることが地上戦拡大の目的だと述べた。

 先月12月から表面化したイスラエル軍とヒズボラの戦闘は1日未明、南レバノンで続き、イスラエル軍はアイタアシャブなどの町、村落の2方面で戦線を開き、侵攻、ヒズボラ戦闘員が激しく抵抗している。

 中東の衛星テレビ、アルアラビーヤはこの戦闘でイスラエル兵3人が死亡したと伝えた。イスラエル側は論評していない。

 イスラエルのオルメルト首相は同国の北部行政当局者らとの会合で、一連の攻撃でヒズボラに大きな打撃を与えていると述べ、レバノンとの国境地帯からヒズボラが撤退するまで攻撃を継続する意向を明言。あと数日は戦闘が必要であるとの認識を示し、国際社会が求める停戦を拒否した。

 イスラエル治安閣議は先週、軍幹部から出されていた対レバノン攻撃の拡大要請を退けていたものの、1万5000人の予備役招集を承認し、これまでの方針を突然転換した。これについて今のところ理由などの説明はない。

 ヒズボラ系アルマナル・テレビは1日、発射したミサイルがイスラエル軍艦船に着弾したと伝えたが、イスラエル治安筋はこの報道内容を否定した。

 ヒズボラの後ろ盾とされるシリアのアサド大統領は、レバノン支援に向けて準備を強化するよう同国軍に指示した。ロイター通信が治安筋の発言として伝えたところによると、シリアからレバノンに入る国境検問所でイスラエル軍が無人航空機でトラック2台を爆撃したうえ、軍用機が3台目のトラックを破壊。レバノンの税関職員4人と運転手3人が負傷したという。(2006.08.01- CNN/REUTERS)

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中東事態―7・30~31

 レバノン南部カナでイスラエルの空爆によって民間人60人以上が死亡した事件について、国連安保理は、強い遺憾の意を表明する議長声明を全会一致で採択した。アメリカのボルトン国連大使は、イスラエルを非難する文言を入れることに反対し、盛り込まれなかった。

 イスラエル高官は、これをあくまで誤爆と弁解した。また、ABCニュースで、駐米イスラエル大使は、これは、戦時の文民の保護に関するジュネーヴ条約第4条約(1949年8月12日)で、非戦闘員に対する攻撃が禁止されているのに違反しない。この建物内の人々は、ヒズボラの攻撃を手助けしていたのだと主張した。イスラエル政府は、調査を約束したが、この主張が裏付けられなければ、誤爆か、ジュネーヴ条約に違反する戦争犯罪である。後者の場合、責任者は、ハーグ国際司法裁判所で裁かれることになるかもしれない。ハーグで訴追されない特権は、アメリカに認められているだけである。

 カナの虐殺事件を受けて、ライス国務長官は、オルメルト首相との会談で、48時間の空爆停止と24時間の住民避難の時間を確保するよう迫り、認めさせた。しかし、空爆停止には、2項目の例外が盛り込まれ、そのうちの一つである地上軍の支援のための空爆をシリア国境近くで開始した。イスラエルは、こうした抜け道を使って、空爆停止をすり抜けるつもりなのだ。

 しかし、シリア、パリ、ロンドン、アルゼンチン、等々へと反戦運動が拡大し、アメリカとイスラエルは世界からの孤立を深めている。フランスの国連代表は、アメリカの即時停戦への抵抗を強く非難した。

 ライス国務長官の停戦条件には、シリア・レバノン・イスラエル国境地帯で、イスラエルが占領する農場を返還することが含まれているようである。ヒズボラは、レバノン市民の8割以上の支持を受けているし、アラブ・イスラム世界でも支持を拡大しているようである。イスラエルの軍事作戦がうまくいっていないことは、アメリカの識者の間の共通認識になっているようである。ラムズフェルド国防長官をはじめブッシュ政権の高官たちは、別世界にいるように、こうした一般の考えとは異なる考えを持っているようだ。

 レバノン政府が、カナの虐殺事件に抗議して、ライス氏との会談を拒否し、彼女が、イスラエルからワシントンに戻ったのと入れ替わりに、フランスの外相が、レバノンを訪問した。レバノンに強い利害関係を持っているフランスは、レバノンの国土を無惨に破壊したイスラエルに憤っている。怒りの矛先は、イスラエルを擁護し続けるアメリカにも向けられた。

 レバノンでの戦闘、米国務長官が週内にも停戦の見通し

 【エルサレム=林路郎】エルサレムを訪問中のライス米国務長官は31日、記者団に対し、イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる戦闘について「早期停戦と持続可能な解決策には何が必要かについて総意が生まれつつある。どちらも今週中に達成できると確信する」と述べ、週内にも停戦が実現するとの見通しを示した。

 長官は同日、エルサレムから帰米の途に着いた。

 米国はこれまで、イスラエルの「自衛権」と「持続可能な停戦」を強調し、停戦を急がない立場だった。

 だが、30日にレバノン南部カナでイスラエル空軍が民間人が避難していた建物を爆撃し、54人を死なせたことで、国際社会の批判が強まり、米国としても停戦外交を急がざるを得なくなった。ブッシュ大統領は先週、ブレア英首相とともに、レバノン南部に国際部隊を送るため国連安全保障理事会で決議の採択を目指す方針を打ち出しており、今後はライス長官のイスラエル政府首脳との協議の結果を受けて対応を決める。(読売新聞) - 7月31日

  イスラエルが48時間空爆停止 民間人死亡への批判で

  レバノン・カナ──イスラエルは30日、レバノン南部で実施してきた空爆を48時間中断し、レバノン南部カナで民間人60人以上が死亡した空爆について調査を行うことで合意した。国連安保理は、イスラエル軍の空爆に強い遺憾の意を表明する議長声明を、全会一致で採択した。

  米国務省のエレリ副報道官は、空爆中断で現地での人道支援活動が加速するとの見通しを明らかにした。また、イスラエル当局は、避難を望む現地住民の安全な通過を保証することでも合意した。

  カナ市内ではこの日午前、民間人の避難所として使われていた4階建ての建物にイスラエル軍のミサイルが着弾した。イスラエル軍報道官はCNNに対し、攻撃の標的がこの建物ではなく、隣にあるイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラのロケット弾発射拠点であったことを明らかにした。レバノン治安当局は、死者のうち37人が子どもだったとしている。

  アナン国連事務総長は安全保障理事会の緊急会合で、あらためて停戦を強く求め、「われわれは最大限の表現でこの行動を非難しなければならない。即時停戦を求めた先日の呼びかけが受け入れられなかったことに、わたしは深く失望している」と述べた。

  ブッシュ米大統領は、無実の民間人の死に哀悼を表明するとしたうえで、紛争の当事者が「持続可能な和平」の達成に努めるべきだと強調。また、訪米中のブレア英首相は、レバノンのシニオラ首相など各国指導者と意見を交換した後、危機的事態の解決を急ぐ必要性を指摘した。

  エルサレム滞在中のライス米国務長官は、カナで民間人が死亡したことに深い悲しみを表明したうえで、引き続き紛争調停にあたる意向を明らかにした。米国務省によると、ライス長官は31日帰国し、紛争解決に向けた国連安保理決議案について検討する。

  こうしたなか、イスラエル首相府はライス長官に対し、ヒズボラ攻撃があと10─14日間必要との見解を伝えたという。(2006.07.31- CNN/AP/REUTERS)

 緊急!イスラエル大使館前ビジル

8月1日(火) 午後7時開始
STOP!レバノン空爆
キャンドル・ライトを灯して、犠牲者への追悼とイスラエル政府への抗議を!

<呼びかけ団体>
アムネスティ・インターナショナル日本(http://www.amnesty.or.jp/)/(特活)アーユス仏教国際協力ネットワーク/(特活)パレスチナ子どものキャンペーン/日本キリスト教協議会(NCC)/ピースボート(http://www.peaceboat.org/index_j.html

■ 市民の犠牲に、私たちは沈黙しない。
イスラエルによる空爆の犠牲は増え続け、すでに死者は700人を超え、そのほとんどが民間人です。30日にはレバノン南部カナで、市民が避難していた建物をイスラエ
ル軍が空爆し、報道によると37人の子どもを含む少なくとも57人が死亡しました。
私たちは、武器を持たない市民を標的とした攻撃を強く非難します。
緊急の呼びかけではありますが、ぜひ8日1日(火)、イスラエル大使館前に集まってください。

■日時:8月1日 午後7時~8時
■場所:イスラエル大使館前
千代田区二番町3(最寄り駅:地下鉄麹町駅)
■内容:空爆による市民の犠牲者のためのビジル
*キャンドル・ライトなどによるサイレント抗議
呼びかけ団体からのアピールなど

<主催者からのお願い>
■ 直接、イスラエル大使館に午後7時までにお集まりください。
イスラエル大使館:千代田区二番町3
(最寄り駅:地下鉄・麹町駅)
■ペンライト、キャンドルなどをご用意ください。(主催者側でも少し用意します)
■平和的な抗議アクションです。
■デモ申請をしていない緊急行動です。ノボリ・ゼッケンなど掲示して歩行すると「示威行為」と警察から見なされ止められる可能性がありますので、避けてくださいますようお願いします。 

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