不安定なイスラエル政治
イスラエルの政治状況はじつに複雑である。
まず、今年3月の総選挙では、リクードを割ってシャロン首相が創設したカディマ28、労働党20、宗教政党シャス13、リクード11、右派のイスラエル ・ベイテイヌ12、宗教右派のNRP/NU9、年金党7、宗教政党UTJ6、左翼メレツ4、アラブ政党のバラード、ハダサ、UALが計10。投票率は、63・2%。
とにかく、小政党が乱立している。このうち、カディマと労働党・シャス・年金党などの連立政権が作られ、カディマのオルメルトが首相になった。なお、1月はじめに、シャロン党首は突然病に倒れ、選挙に出られなかったので、そのまま議員でなくなった。党首代行のオルメルトがカディマを引き継いだのである。カディマには、元労働党党首のペレスをはじめ労働党から合流したメンバーがいる。しかし、事前の予想では、カディマがもっと議席をとるとみられていた。
カディマと労働党は、一部入植地を残してその他の入植地からの一方的撤退で、条件付きとはいえ、一致するものの、ユダヤ教超正統派のシャスは、入植地撤退反対のはずであり、なぜ、こういう重要な問題で、意見の違う相手同士が連立を組めるのか理解しづらい。しかし、とにかく、どちらかといえば、中道左派的な連立政権が発足したのである。
しかし、発足して間もない6月には、パレスチナに対する軍事的挑発が強まる。そしてそれは、ハマス政府打倒にエスカレートしていく。ハマスは、政権発足後、イスラエルに対する軍事攻撃を基本的には停止していた。ハマスは、6月10日の北部海岸への砲撃による民間死傷者多数が出た事件を受けて、停戦を破棄し、反撃に出たのである。その時に、1名のイスラエル兵を拉致したのだが、今度は、それを好機とばかりに、ガザに軍事侵攻したのである。そして、ヒズボラのイスラエル兵2名の拉致に対して、レバノンに侵攻し、そして、国連決議を受け入れて、停戦する。
オルメルト政権は、ハマス政権の副首相を拉致するなど、パレスチナ自治政府の破壊を続けている。とはいえ、政権へのイスラエル国民の批判が強まっている。イスラエル国民の多数が、オルメルト政権の入植地からの一方的撤退策に反対している。
それから、宗教委員会や宗教裁判所などのユダヤ教正統派の拠点をめぐる争いが激化している。また、大きな政治的焦点として、繰り返し国会に出されている宗教宣伝禁止法案というのがあったり、帰還法での両親のどちらかがユダヤ教徒とする要件をめぐる問題とか、宗教をめぐる対立も争点になっている。イスラエルは、ユダヤ教の正統派しか国内でユダヤ教と認めていない。等々。イスラエルには、なかなかわかりづらい問題がいろいろあるようだ。
現場兵士などからの上層部や政府に対する批判が強まっているのだが、それは、次の戦争で勝つための改革の必要を訴えたもので、近いうちにまた戦争があることを想定してのものである。しかし、ヒズボラが、世界最強ともいわれるイスラエルの戦車を次々と撃破してしまうなど予想外に強かったことは、その武器を提供し軍事訓練を行ったとされるイランの軍事力の強さをも証明したことになり、そのことは、ブッシュ政権の対イラン政策にも影響を与えるものとなったことだろう。
避難民の帰還が進んでいるレバノンには、インフラを建て直し、生活を再建する復興のために、安全・平和が必要である。イスラエル国内政治の動きがどうなっていくかによっても、それは影響される。武装したヒズボラが存続し続けることははっきりした。イスラエル国内に、ヒズボラの脅威を取り除けなかったオルメルト政権に対する批判が強まっている。イスラエル政治は、不安定である。どうなるか。
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