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教育再生論議その他について

 10月25日、教育再生会議の第2回会合が行われた。そこで、3つの分科会が設けられることが決まった。その一つが、教員免許更新制度である。24日の『毎日新聞』にこの問題についての解説があった。それによれば、教員免許更新制度ができると、毎年10万人もの現職教師が講習を受けることになるという。
 
 一方では、学力向上のために授業時間を増やすと山谷えり子首相補佐官は述べている。あれもこれもと課題を詰め込むと、人間の消耗が激しくなって、かえって仕事に支障をきたすというのは、経験則で明らかである。すでに今も、教員の仕事は増え続けていて、それをまじめにこなそうとしてうつ病にかかって自殺した新任女性教師の家族が過労死認定を求めて提訴したという記事があったが、これではやる気があり、まじめに仕事に取り組もうとしている「優良な教師」をみすみす失っていくばかりではないか?
 
 官邸サイドでは、中教審答申が手ぬるいとして、免許更新期間の短縮などを求めているという。自民党の中川政調会長は、日教組の現場排除という狙いを露骨に示し、日教組を下品だと悪口を述べたが、不倫疑惑男がどの口で、他人を下品よばわりできるのか! 恥知らずもいいところだ。
 
 すでに、指導力不足教員の認定と研修の制度があり、それに加えて新制度を設けるのは、無駄というものである。中川政調会長は、教員間に給与面での格差を設けて競争を煽るということも述べている。そんなことは、主任制導入などですでに行ってきたことの拡充であるが、成果主義導入では、成果よりも問題の方が多く出て、その見直しが進められているのが実態だ。
 
 安倍教育再生策を民間で支えるという日本教育再生機構の渡辺拓殖大学学長は、ありふれた決まり文句である日本語の乱れを教育上の問題としているが、それは明治維新以降の近代化の過程で、共同体を壊し続けてきた結果であって、それを言うなら、明治維新以降の近代化を反省することが必要である。氏は、西田幾多郎の言語論を読んでみたらよい。
 
 日本語は、日常用法において、共同体を前提とした共同体的な言語である。それは、日本語だけではなく、英語だってそうである。会話相手との関係に応じて、日常では省略や慣用表現を使うのであり、文法規則通りに話しているわけではない。構造主義だの言語学というのは、そういう日常用法を無視して、抽象化した言語を取り扱っているのであり、それは理論構成物なのである。つまり、それは学の対象として構成された言語なのである。日常言語はそれとは違うのだ。言わなくてもお互いにわかっていることについては省略する。それから、「あれ」とか「それ」とかいう表現も、日常的なコミュニケーションでは、十分に意味をなすのである。

 教育再生会議のメンバーを見て、保守主義者の林道義氏は、ホームページで、14日に、「我が目を疑った」という。「いったい誰がこんな馬鹿げた人選を行なったのか」。というのは、まず教育の素人ばかりであり、つぎに左翼思想の持ち主が多く、最後にジェンダー・フリー派が多いからであるという。
 
 左翼思想の持ち主としては、「義家弘介氏。もとヤンキーで売り出しているが、思想は共産党と同じ。自衛隊のイラク派遣反対、国旗国歌強制反対、憲法9条を守れといった主張を、『世界』『新婦人の会』『しんぶん赤旗』など共産党系メディアに多く発表している。義家氏の他にも、共産党系エッセイストの海老名香葉子氏、日教組の元組合員の陰山英男立命館小副校長、ゆとり教育導入時の文部事務次官の小野元之日本学術振興会理事長など」。
 
 ジェンダー・フリー派としては、「フェミニストの白石真澄東洋大教授、会社あげて「ジェンダーフリー」を実践し「男性の育児休暇取得」を積極的に推進している資生堂の池田守男相談役」。
 
 氏は、保守派は一人もいないと言っていいという。これはどうしたことだろう。日本教育再生機構は、本格的な保守の安倍政権の教育再生策に強い期待を寄せ、山谷えり子首相補佐官の誕生を喜んでいる。ところが、この保守派が期待する二人が選んだ教育再生会議のメンバーが、左翼思想の持ち主やフェミニストばかりだとは! 教育再生会議はたんなる人気取りの手段にすぎないのか? これは、林氏がフェミニズムだの左翼思想だのと呼んでいるものは、実際には、共産主義思想の現れではなく、ブルジョア思想にすぎない証拠である。現に、トヨタ社長もJR東海社長も、この人選になんの文句も言わないで、「左翼」「フェミニスト」と仲良く同席しているではないか。 

 林氏は、「こんなにも疑問の多い人物で構成されている「会議」では、先が思いやられる。安倍新政権の教育改革は、スタート以前につまずいているのではないか」と批判する。林道義氏の保守主義と日本教育再生機構の保守主義は、これほどまでに違うのである。
 
 結局のところ、教育再生会議での教員免許更新制度新設は、産業界の教育への要望の実現が目的であり、かれらの希望通りの教育現場にしたいという願望の現れである。義務教育の公教育では、あらゆる階級階層が入るので、経済界の思うとおりにはなかなかいかなったのである。教員の抵抗を排して、教員をその目的の実現のための従順な道具に変えたえくても、義務教育・公教育においては、ブルジョアジーは少数派だし、非ブルジョア階級階層・非エリートの子どもが圧倒的に多いわけだから、この多数派の側にたつ教員はなくならない。その点で、高校で学習指導要領に違反して、受験に関係ない選択科目を受けさせなかったという事件が次々と進学校で発覚しているが、それは、少数派エリートを特別扱いし特権を認めた行為で、そうではない生徒に対して不平等な扱いをした行為である。それに対して、政府は、当然、規範意識の低い行為と非難しなければならないだろう。近年の校長権限強化の流れから言えば、政府は、校長の責任を強く問わなければならないだろう。権限の拡大に応じて、責任の重さも増すのが当然だから。そういえば、免許更新講習は、校長・教頭などの管理職や教育委員、あるいは文部科学省の役人も対象となるのだろうか?

 いずれにしても、この制度にはいろいろと問題がある。それ以前に、教育の国家管理を強化する狙いの教育基本法改悪に向けた国会審議が再開されており、それを阻止する必要がある。現場が息苦しくなっては、教育上の諸問題解決にとってよくない。

安倍教育改革ポイント解説
安倍首相「ダメ教師には辞めていただく」(著書「美しい国へ」から)

 安倍晋三首相は「教員の質の向上」を掲げて、終身有効の教員免許に期限を設けようと、教員免許の更新制度の導入を打ち出した。
 文部科学省の諮問機関である中央教育審議会(中教審)はすでに今年7月、同制度導入を答申している。中教審答申は、免許の有効期限を10年間とし、期限が切れる前の2年間に講習を受けて修了認定されれば更新されるというもの。導入には教員免許法の改正が必要となる。幼稚園から高校まで約100万人いる現職教員も対象で、毎年10万人ずつ10年間かけて講習を受けさせる構想だ。
 ただ、情報技術(IT)社会への対応など「教員の資質、能力の刷新」を目的に導入を目指す文科省に対し、「ダメ教員」排除に主眼のある安倍首相や首相官邸は「これ(中教審答申)では本当の改革はできない。だから教育再生会議がある」として、免許期限の短縮などさらなる厳格化を求めている。18日にスタートした政府の教育再生会議の議論を経て、中教審答申を抜本的に見直し、来年の通常国会に教員免許法改正案などを提出したい考えだ。
 実は官邸が目指す「ダメ教員」排除の仕組みは、地方公務員法などに基づき各都道府県で同様の制度がある。文科省は教員の不祥事を受け、00年度から指導力不足教員の認定と研修を指導。05年度は506人を認定し、116人が研修を受けて現場復帰した。一方、103人は依願退職し、6人は職務が遂行できないと認定される「分限免職」で教壇を去った。
 このため文科省からは、官邸の構想に「二重構造につながる」「屋上屋を架することになりかねない」と懸念も出ている。【竹島一登】(10月24日『毎日新聞』) 

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