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P・スウィージーを取り上げるにあたって

 これから、アメリカのマルクス経済学者ポール・スウィージーが、1979年10月に法政大学で行った「今日のマルクス主義」と題した講義をもとにしてつくられた『マルクス主義と現代』(岩波書店)を見ていこうと思う。

 スウィージーは、1910年にアメリカのニューヨークで生まれた。ハーヴァード大学を出て、ロンドン大学に学んだ、ハーヴァード大学では、シュンペーターの助手をしていた。この頃は、まだ彼は、近代経済学派の伝統の中にいた。その後、マルクス経済学者となり、1949年に、現在も発行され続けているマルクス主義的雑誌『マンスリー・レビュー』を創刊する。

 1982年3月9日付けのスウィージーが日本版につけた序文で、彼は、この頃の世界資本主義の危機の深化について書いている。まず、北アメリカとヨーロッパで拡大した失業者が、2500万人達したこと、アメリカの2年間に二度繰り返された景気後退、世界での負債の増大、ポーランドの「連帯」労働運動弾圧、西側への負債の危険性の増大、中央アメリカ、南アフリカ、中東、フィリピン等での革命運動の増大、等々、を指摘する。しかし、これらの世界的危機のぬかまりの中で、例外的に、日本だけが、60年代70年代の延長のような経済成長の道を歩んでいることを指摘している。しかし、その後、日本もまた、世界の仲間入りしたことが明らかになった。最後の繁栄であるバブルは弾けた。1990年代は「失われた10年」と呼ばれた。
 
 1988年に実質GDP6.0%を記録した後、92年には、0・3%、翌93年にはついに-0.2%と1970年以来初のマイナス成長を記録した。1990年代中頃には持ち直したように見えたが、97年から99年にかけて、アジア通貨危機などの影響を受けて、成長率は低下し、99年は、マイナスとなった、この年の後半から2000年には上昇したが、それも2001年には再び低下した。その後も、低空飛行が続き、マイナスからプラスの上下動を繰り返している。

 1980年代後期には、景気悪化に苦しむアメリカ・ヨーロッパをよそに、日本は、バブルの饗宴に酔いしれたのであった。
 
 この頃、アメリカではレーガンが、そしてイギリスでは、「特権」にあぐらをかく労働者の「怠惰」と既得権を守ろうとする労組と闘うという新自由主義・新保守主義「革命」の嵐が吹き荒れていた。もちろん、労働者の「怠惰」や労組の「特権」などはたんなる言いがかりにすぎなかった。だから、彼らの政策はまったくうまくいかなかった。レーガノミックスは、途中で、ケインズ主義政策に変更された。イギリスで、経済が回復したのは、サッチャリズムを修正したブレア労働党政権になってからである。
 
 今日本では、小泉政権以来、中途半端な新自由主義路線を取っているが、その中でも、労働組合の抵抗だの労働者の「怠惰」がやり玉に挙がることがある。しかし、この間、労資協調路線の「連合」は、企業のリストラに協力してきたし、大企業正社員労働者は、長時間サービス残業を行っており、「怠惰」どころか、働き過ぎによる「過労死」や精神病が増えて問題化するなど、企業のために身をすり減らして働いている。それなのに、イギリス病を直すとして登場した新自由主義・新保守主義のサッチャーイズムをどうして日本がまねしなければならないのか? 新自由主義を掲げる政権や学者や官僚の現実無視ぶりは、ひどいものだ。かれらは、アメリカがグローバリズムだというとそのまま世界がそうなっていくと信じ込んでいるのだろう。

 実際には、世界では、それに抵抗する多極化の動きが発展しているのであり、しかも、アメリカの景気後退が起きており、さらに、イラク戦争の失敗もあって、アメリカが押し進めてきたグローバル化の勢いも力も落ちてきている。既存の新古典派などの経済学が、こうした世界の現実、経済実態の解明に失敗していることは、明らかだ。どうしてそうなったのかを理解するためにも、スウィージーの経済学は、役に立つだろう。

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