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教育基本法改正を急ぐ必要などない

  26日の『読売新聞』『産経新聞』の社説は、そろって、教育基本法改正問題について書いている。どちらも、自民党と民主党が修正協議をした上で、妥協して、早く、法案を成立させろというものである。『読売』の方は、政争の具にしないで、早期成立を目指すよう促すというもので、基本法改正の意味や内容にはふれていない。

 『産経』の方は、現行の教育基本法が、GHQ(連合国軍総司令部)の圧力や干渉を受けたという押しつけ法であるという成立の経緯の問題、そして、「個人の尊厳」や「人格の完成」など世界共通の教育理念をうたっているが、肝心な日本人としてのありようがほとんど書かれていない」という教育理念に民族性がないという点を問題視している。

 その上、「学校でのいじめや家庭での幼児虐待など、荒廃する教育現場を根本から再生するには、今国会での成立が急がれる」と、まるで、これさえ成立すれば、これらの教育現場の諸問題が解決するように書いている。教育基本法は、魔法の杖と言わんばかりだ。愛国主義者の『読売新聞』『産経新聞』には、聖人君子ばかりがそろっているのか?!

 今、公立高校での必修科目不履修問題が発覚し、大問題になっている。どうやら2006年度からの新学習指導要領導入が契機になったらしい。大学入試センター試験でも、受験科目が減少しているが、もともと私立大学は、3科目受験が多いわけで、それに国公立大学が合わせていったということかもしれない。いずれにしても、これには、教育分野での競争の激化が影響していることは間違いない。下村官房副長官は、さらなる競争の導入を主張しているが。

 しかし、こうして、受験用の授業時間が倍になっているところとそうでないところでは、機会不平等が生じているわけで、競争条件が不等なわけだから、公正な競争試験にならない。問題は、深刻である。入試で、一方は有利になり、他方は不利になるからである。そればかりではない。そもそも教育が何のためにあるのかが、わからなくなってしまう。それは、「人格の完成」という教育基本法の理念にも反することである。ずるをしても勝てばよいということを、学校自らが実際行動で、教育してしまっているからである。こうして、不道徳を自ら教育してしまったわけだ。これでは、ホリエモンみたいな人間が次々と生まれてくることになって当然だ。しかも、こうして学校自体が、校長を先頭に、ずるく規範を破っても、結果を出して、勝ちさえすればよいのだという考えを広めていたのは、進学校のエリート候補生たちになのである。この人たちが、自分たちは、学校で、ルールに違反しても、結果さえ良ければいいということを実地で学んだとして、それをまねしたら、どうなるか? 第二第三のホリエモンになるだろう。目先の受験競争・学校間競争に目を奪われて、子どもたちの将来や教育のあり方や人格形成や社会のことなどについて、深く考えなかったこれらの学校と権限が強化されている校長をはじめとする学校管理職、それを見抜けなかった教育委員会、文部科学省の責任は重い。

 それに対して、「ダメ教師はやめていただく」と言って、教員統制強化や競争の導入、公立の「私学化」などというあり得ない夢話でお茶を濁し、何事か立派なことを言っているかのように錯覚している下村官房副長官のような人物は、足下をすくわれることになるだろう。何度も繰り返してきたように、成果主義に対する反省が始まっていて、サッカーも個人同士を競争させるジーコ型が日本チームには合わないので、チーム・プレイ重視のオシム・ジャパンに変わったのである。なんとも時代に遅れすぎている下村官房副長官であることよ!

 よっぽど良い改革でないかぎり、やるべきではないのだ。現行の教育基本法は、与党・民主党の改正案よりも、よっぽど良くできている。それを生かし切るのが先である。間違った改革は、すべきではない。与党案・民主党案どちらに変わっても、「学校でのいじめや家庭での幼児虐待など、荒廃する教育現場」が簡単に解決することはありえない。しかし、家庭での幼児虐待が、教育現場の荒廃とどう関連しているのか、この文章ではわからないよ『産経』さん!

 

【主張】教育基本法改正 民主は修正協議に応じよ 

衆院教育基本法特別委員会が再開され、政府の改正案と野党の民主党案について提案理由の説明が行われた。本格的な論戦は30日から始まるが、不可解なのは民主党までが政府案の成立に徹底抗戦の姿勢を示していることだ。

 政府案は自民党と公明党の与党合意に基づき、「我が国と郷土を愛する態度」などの育成をうたい、民主党案は「日本を愛する心」「宗教的感性」の涵養(かんよう)を盛り込んでいる。

  愛国心や宗教的情操教育では民主党案の方が踏み込んだ表現をしている半面、民主党の教育行政に関する規定には日教組などが介入する余地を与えかねないとの 批判もある。そうした違いはあるものの、両案は総じて共通点が多い。双方が知恵を出し合い、より良い案にすることは十分可能である。

 同じ野党でも、社民党と共産党は対案を持たず、教育基本法の改正そのものに絶対反対の立場だ。対案を出している民主党が、これらの少数野党と歩調を合わせるのは、建設的な野党として賢明な選択とはいえまい。

 過去に、与党と民主党の修正協議が実を結んだ例として、平成15年に成立した有事関連3法などがある。教育基本法は憲法と並ぶ重要な国の根本法規であるだけに、その改正案はできるだけ多くの国会議員の賛成を得て成立することが望ましい。

  野党4党は時間切れに追い込む作戦のようだ。しかし、先の通常国会で、すでに50時間の審議が行われている。与党は臨時国会であと30時間の審議を行い、 11月上旬には衆院を通過させたい意向だ。政府案は3年に及ぶ与党協議会での議論を踏まえ、民主党案も2年近い同党教育基本問題調査会で検討を重ねた。こ れ以上、いたずらに時間を費やすべきではない。

 現行の教育基本法は終戦後の昭和22年3月、GHQ(連合国軍総司令部)の圧力や干渉を受けながら成立した。「個人の尊厳」や「人格の完成」など世界共通の教育理念をうたっているが、肝心な日本人としてのありようがほとんど書かれていない。

 安倍内閣は、教育基本法改正を臨時国会の最重要課題としている。学校でのいじめや家庭での幼児虐待など、荒廃する教育現場を根本から再生するには、今国会での成立が急がれる。(10月26日『産経新聞』)

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コメント

9月に開かれた政府主催のタウンミーティングで、青森県教育委員会が
内閣府の指示を受け、教育基本法改正案に賛成の立場の質問を地元の
学校関係者に依頼した可能性があると、31日の衆院教育基本法特別
委員会で高橋千鶴子議員(共産)が指摘した。
いずれも青森県内の中学校校長にあてられた8月30日付と9月1日付の
もので、それぞれ地元の教育事務所と教育政策課の作成という。「タウン
ミーティングの質問のお願い」と題した8月30日付の文書は「当日に(2)
の質問をお願いします」などと書かれ、質問案として「時代に対応すべく、
教育の根本となる教育基本法は見直すべきだと思います」などが挙げられていたという。
 また、9月1日付の文書では「発言者を選んでいただき、誠にありがとう
ございます」としたうえで、内閣府から「お願いされてというのは言わないで
ください」などの注意がある、と書いてあったという。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 彡ミ    ___  __    教基法改正を巡り、政府が地元学校関係者を通じ
  |ヽ  /|  ,,,,,,,,l /  /  学校側に根回し工作という訳か。
  |ヽ   | | ミ ・д・ミ/_/旦~~ 
  ⊥   |  ̄| ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 
  凵    `TT | ̄l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l まったくよくやってくれますね。(・∀・ )

06.11.1 朝日「教育基本法の賛成質問依頼か タウンミーティングで」
http://www.asahi.com/politics/update/1101/003.html

投稿: ホッシュジエンの国内ニュース解説 | 2006年11月 1日 (水) 08時45分

こんにちは。
ご主張には同感です。
今日の毎日新聞の社説は,全く正反対の主張が展開されていますね。
これは,とても良い指摘だと思います。

投稿: つくい | 2006年11月12日 (日) 15時48分

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