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沖縄知事選挙は安倍政権をあまり助けない

 11月19日に投開票された沖縄県知事選挙で、自民・公明が推す仲井真候補が、野党統一候補の糸数候補を約3万7千票差で破った。この選挙結果について新聞各紙が社説などで、取り上げている。そのタイトルを見ると、『朝日』「沖縄知事選挙 県民の苦渋がにじみ出た」、『日経』「沖縄新知事は米軍再編の解決策探れ」、『産経』「沖縄・与党勝利 現実的対応を期待したい」、『読売』「普天間飛行場移設へ前進をはかれ」、『東京』「沖縄は自公 県民の悩ましい選択」である。

 『産経』『読売』は、仲井真候補支持がにじみ出ているのだが、それでも、それほどこの結果を評価しているわけではない。それは、日本の国家的最重要事の一つである米軍再編にともなう普天間基地移設問題について、仲井真候補が、争点はずしをした上に、名護市辺野古沿岸移設に反対した稲嶺県政を基本的に継承することを表明しているからである。この選挙結果で、普天間基地移設問題が早期解決する見通しがついたわけではないのである。稲嶺前県知事は、国との話し合いには応じるとしていたが、沿岸移設案にはあくまで反対だと述べてきた。それを基本的に継承するというのだから、仲井真県知事になっても、普天間移設問題がすぐに前進することは考えにくい。

 おまけに、前回の知事選挙では、与党稲嶺前知事は、野党候補に大差で圧勝しているのに対して、今回の野党統一候補が、基地問題を最大の争点にして、3万7千票差にまで迫ったことは大きい。仲井真候補は、経済振興を中心に支持を訴え、基地問題を背後に追いやったことで、全国一高い失業率に悩む沖縄県民とりわけ那覇などの都市部で多く支持されたわけで、基地問題では、稲嶺路線を引き継ぐということだ。もともと、革新系の太田知事が誕生した時もそうだったように、沖縄経済は、中央政府の沖縄振興策による公共事業などに強く依存しており、中央とのパイプが、経済的に重要なので、中央の与党よりの人脈によって、県政が占められる傾向が強くあった。太田知事誕生の時は、中央政府与党は、自民・社会・「さきがけ」の連立政権で、知事選挙でも、与党候補太田氏の圧勝であった。そして、稲嶺前知事がその副知事だったのである。仲井真氏も、元副知事である。

 『産経』『読売』は、国政レベルの重要政策については、地方自治体選挙では問われない、関係ないのだと強調してきたために、仲井真氏の勝利を公然と手放しで評価することができず、自縄自縛に陥ったのである。『産経』は、現実的対応をして欲しいと、仲井真氏にお願いするしかなく、『読売』は、普天間基地問題解決を前進させろ、稲嶺県政の轍を踏んではならないと述べ、稲嶺県政の継承を掲げる仲井真新知事に対して注文をつけている。結局、『読売』の基本にあるのは、「日米同盟関係に傷をつけないこと」であり、日米同盟強化最優先ということである。それにつながるかどうかがはっきりしない仲井真候補の勝利は、『読売』としては、素直に喜べないのである。

 他方で、『朝日』、『東京』、そして『沖縄タイムズ』は、今回の選挙結果を、苦渋の選択、苦悩の現れとする社説を掲げた。基地か経済かという二者択一の構図が、沖縄県民を縛っていることが、この県知事選でも繰り返されたからである。糸数氏は、基地なき経済自立、観光による経済振興を対置したが、中央からの投資を呼び込んで経済振興をはかり、それによって雇用を拡大するとする仲井真候補の経済優先路線に負けてしまった。しかし、糸数氏支持者は、普天間基地の国外移設を求めたが、その数が、投票者の半分に迫ったことは大きい。『朝日』によると、「米軍再編の合意内容については、「反対」が50%にのぼり、「賛成」の20%を大きく上回った」ということで、結局、基地問題を選挙争点から外し、経済問題に絞った仲井真新知事は、このような県民世論も考慮せざるをえない。問題が先送りになったというにすぎない。

 したがって、これは、連敗を免れたという点では、安倍政権にとって、一息つけた結果ではあるが、それほどでもない。同時に政令指定都市の福岡市・尼崎市長選挙で、敗北していることを合わせて考えれば、なおさらある。これで、安倍政権が、国会運営で、強気に出てくるだろうという見方を示す新聞もあるが、そうはいかないだろう。そうなるためには、仲井真候補が、もっと大差をつけて、勝つ必要があった。それは、福岡・尼崎市長選挙の与党候補の敗北と相殺されてしまっているし、安倍政権の支持率は急落中だし、各種世論調査で、半数近くが反対している「郵政造反組」復党問題があり、談合問題で知事が辞職した和歌山県知事選挙などの与党に不利な大きな選挙が次にひかえている、等々のことがあるからである。もちろん、アメリカのブッシュ与党の共和党の中間選挙での惨敗によるブッシュ政権の力の低下も、安倍政権にイナスの影響を与えるだろう。

 それに、参議院で教育基本法問題で、強硬姿勢を続ければ、さらに安倍政権を弱めることになろう。それなのに、民主党は、早くも、審議再開に向けて動いているという。もちろん、仮に与党が修正に賛成したとすれば、法案を再度衆議院に送らねばならず、そうなれば、今国会中の成立は不可能となる。しかし、次期国会では、確実に、早期成立することになる。安倍政権が、確実な成立をはかるために、そのような妥協をすることもあり得る。しかし、てきとうな妥協は、民主党のイメージを損なう。なによりも、国会を取り囲んだ反対派5000人をはじめとする教育基本法改悪反対世論に逆らうことになる。そうした人々の意志に逆らって、安易に妥協をすると、こうした人々を、社民党や共産党に近づけることになろう。

 糸数候補が、3万7千票差にまで迫った沖縄県知事選挙結果は、運動側にはそれほどのダメージは与えず、安倍政権には小さな浮揚力しか与えなかったと思う。なお、基地全面撤去を訴えた琉球独立党候補の屋良候補の約6千2百票が、普天間基地県外移設派に加わる。

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