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ニュースステーションの変なコメント

12月4日のテレビ朝日のニュースステーションの司会とコメンテーターはおかしなコメントを言った。

 まずは、司会の古館一郎氏が、戦後教育の根本的見直しを口にしたことである。確かに、最近のいじめ自殺の連鎖や高校未履修問題やタウンミーティングの「やらせ質問」の発覚などは、現在の教育制度全体が根本的に行き詰まっていることを示している。それは疑いない。現在の教育制度の基本設計が、戦後期につくられたのも確かだ。
 
 しかし、戦後教育は、1950年代後期以降、今日まで、その骨抜きや制度改変が繰り返し行われて、今の姿になったのであり、それを行ってきたのは、55年体制以後は、自民党政権であった。戦後教育は、数十年間にわたって、自民党政権によって、徐々に変質させられてきたのであり、その総仕上げにあたるのが、教育基本法改訂であり、その先にあるのが改憲なのである。例えば、教育委員会公選制の廃止・任命制があり、学習指導要領の文科省の作成権の簒奪があり、教科書検定権の独占がある。今頃になって問題になっているが、各市町村教委や学校長に教員任免権を持たせるとかいう話も、教育行政が事実上、文科省を頂点とする上意下達の官僚制になっていて、現場の権限は限られているのである。
 
 「新しい歴史教科書をつくる会」は、教科書採択権を各市町村教委が完全に握るように訴えたが、この権限は、イギリスでもアメリカでも北欧諸国でも、基本的に現場の教員や学校にある。使う者が使いやすいものを選ぶのがよいと考えられているからである。それを名誉職化しているような教育委員会に選ばせてどうするのだろう? ここでも、教育委員会制度そのものをどうするのかという基本的な観点が欠けている。
 
 いずれにしても、古館氏は、この問題についての見識や考えが未整理なまま戦後教育の見直しなどという自民党のスローガンを繰り返してしまったのだろう。戦後見直しの逆コースの教育体制が行き詰まったのであり、その見直しが必要なのである。
 
 次に、ベネズエラの大統領選挙で、チャベス氏が圧勝したことを報道したのに触れて、世界の反米独裁者として、フセイン元大統領、金正日、イランのアフマディネジャド大統領、オサマ・ビンラディンの写真を並べ、あたかも、チャベス大統領がその同類のように扱ったことは、露骨な世論誘導であり、完全に視聴者を馬鹿にした行為である。スンニ派に依拠して、クルド人とシーア派住民を弾圧・抑圧したフセイン元イラク大統領と先軍政治で、特権層を保護し、多くの民衆を貧困に追いやっている金政権とアフガニスタンのタリバン政権を支援して、イスラム原理主義体制を支え、他宗派・他民族を従属させ、抑圧に荷担したビンラディンと選挙で選ばれたイランのアフマディネジャド大統領と同じく選挙で勝利したチャベス大統領を、独裁者とひとくくりにすることは、視聴者の判断力を高めるのではなく、愚弄するものである。
 
 独裁者というからには、他の候補の発言の自由を奪うとか、強権的手法によって、政治的自由を奪うとか、場合によっては、選挙すら行わないとか、独裁敵手法が存在しなければならない。テレビ朝日は、選挙中になにか取材妨害とか言論弾圧とかを受けたのか? あるいは、チャベス側からの選挙の不正があったのか? チャベス氏の発言は、過激でエキセントリックである。しかし、実際に、独裁者としての行為があったのだろうか? それがあったのなら、それを報道すればいいだろう。

 こういう使い方だと、独裁者というのは、アメリカのブッシュ大統領が使っているような、善悪図式を指す記号の一種でしかない。こういうシンボルは、大まかな認識を得るには便利ではあるが、それはまったく不正確であり、限界をふまえて使わないとかえって、正しい認識を妨げることに注意して使わねばならない。それは比喩もそうである。気をつけなければならないし、図式的認識で物事をわかったつもりになってはいけないのである。
 
 90年代に、アメリカが中南米に押しつけた新自由主義が、貧富の格差を拡大し、貧困者たちの生存すら脅かし、基本的人権、生存権を危うくしたことなどがあって、中南米諸国で、その路線が否定されていったのだ。チャベス氏は、豊富な石油資源があり、石油産業を独占する一部企業や特権層がそれで潤っている一方で、貧困が拡大し、深刻化していく情況をなんとかしなければならないとして立ち上がったのである。それに対して、アメリカは、クーデターを裏で支援して、その動きを暴力的に押しつぶす手助けをしようとして、一時は、チャベス氏は、クーデター派に拉致・監禁されたのである。そのチャベス氏を救い出すために立ち上がったのは、貧困層などの民衆であり、チャベス氏は、民衆自身が作り上げた大統領なのである。
 
 これで、エクアドル・ボリビアでの親チャベス政権の誕生に続く、反米左派政権の誕生で、中南米の多くが、左派政権になった。
 
 古館氏とコメンテーター氏は、チャベス氏を独裁者と呼び、その貧困対策を独裁者の人気取りだと見なしている。つまり、かつて中南米に多かった左派系ポピュリスト政権と同一視しているらしい。キューバ人医師が多く働いている無料の医療施設の設置、安い日常品を供給する国営商店、等々は、石油収入で運営されているようだ。それを、チャベス氏は、「21世紀の社会主義」と呼んでいる。ソ連東欧体制が、自己崩壊した要因の一つは、生産手段生産部門に偏った経済体系にあった。消費手段生産部門を重視した「社会主義」キューバは、ソ連崩壊後も長く持ちこたえている。キューバでは、都市部の空き地などを農地に転換して、農業を拡大して、人々の食糧ニーズに応えている。しかも、強いられたとはいえ、農薬や化学肥料がないために、有機農業なのである。
 
 ニューヨークなどの大都市は、高層ビルなどのエネルギーを多消費する地球環境に優しくない環境になっていて、それを持続するにもエネルギーを多く使わねばならず、地球環境や人類の持続という観点からは、良い環境とは言えない。
 
 もっとよく中南米の置かれている状態を知るべきであるし、今では、ネットなどでいろいろと情報を得られるのだから、視聴者の方が古館氏やコメンテーター氏などより、情報を持っている人もいるだろうから、予断を与えるようなコメントは避けるべきだと思う。

 そして、チャベス大統領に、独裁者というレッテルを貼るだけで、中南米全体で、4割とも言われる貧困層の問題、貧困の問題をどう解決するかという点についての言及がないのは問題である。90年代の新自由主義がこうした広範で深刻な貧困問題を生みだした以上、そこに戻るわけにはいかないことは明らかである。左派の中でも穏健な左派、福祉国家路線が有効なのか? 日本のようなどっちつかずがいいのか? 南米共同体は、問題解決に役立たないのだろうか? 独裁批判を言うのは簡単だが、なにせ、アメリカの言うとおりに新自由主義路線で行って、こういう悲惨な状態になってしまったのだから、反米になるのも当然なのである。 

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