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「御手洗ビジョン」はだめだ

 やっとこんな記事が大新聞のコラムに載った。1月10日の『毎日新聞』の経済コラム「経済観測」である。
 
 日本経団連は、政治献金を再開して以来、政権党の自民党に偏った政治資金を出し続けている。去年は、自民党2億数千万対民主党6千万であった。小泉政権では、政治と金の問題はあまり表面化しなかったが、安倍政権になると、閣僚をはじめ次々と金銭スキャンダルが出てきている。財界からの政治資金にまつわるスキャンダルも出てきそうな感じである。リクルート事件並みのスキャンダルが出れば、安倍政権は吹っ飛ぶ可能性がある。戦後自民党政権の歴史は、疑獄やスキャンダル、金銭汚職、腐敗にまみれたものであった。
 
 小泉政権は、利権を通じて企業と癒着してきた族議員を一掃し、古い自民党をぶっ壊すと叫び、昔の自民党ではない、新しい自民党になったと強調したが、実態はそうでもなかったのではないだろうか? やはり日本経団連が、企業献金を再開し、巨額の献金を自民党に注ぐようになって、企業と自民党の癒着は再び深まってきたのではないだろうか? トヨタ奥田会長が、経済財政諮問会議の委員だった小泉政権時代に出なかったトヨタの企業不祥事が、奥田会長が、経済財政諮問会議を辞め、日本慶田連会長を辞任し、小泉政権が終わり、安倍政権に変わってから、次々と表面化したのは、偶然だろうか? あるいは、企業献金をテコに、政府機関にトヨタ会長が入り込んでいたことが、トヨタへの甘い見方を支えていたのではないだろうか? 企業不祥事を起こしたキャノンの御手洗会長が、日本経団連会長につけたのは、企業倫理という観点からは甘すぎる人事といえよう。
 
 その「御手洗ビジョン」は、自分たち企業には甘く、労働者には厳しいという最低のエゴイズムの精神で書かれている。労働者に消費税増税や残業代不払い制度を押しつけるというなら、企業は、減税ではなく、増税を自らに課さねばなるまい。ところがその反対である。格差のことを問題としてあげながら、所得再配分の是正、所得税の最高税率の引き上げ、などにはまったく触れずに、企業減税10%引き下げを目指すという。労働分配率(剰余価値率)をどうするのか? それにも触れていない。邦氏ならずとも、労働者などが怒るしかないものだ。

 頭に来るのは、そればかりではない。この「御手洗ビジョン」は、まるで、この間の景気回復が、自分たち経営者のおかげで出来たと言わんばかりで、90年代後期以来、文句も言えずに、長時間労働や非正規雇用化やリストラに耐え続けてきて、努力しながら報われなかった多くの労働者・失業者の搾取の結果であることを一切無視している。こうして日本経団連は、自分たちを神のごとく思念して思い上がりながら、他方で多くの人々が払った大きな犠牲の方はすっかり無視しているのである。全てお見通しの全能の神と違って、このへっぽこな神には、見えないものがたくさんあるのだ。
 
 この無能な神が下した「約束の地」への地図は、これまた自分たちだけが繁栄するために、その他大勢をわけのわからない言葉や修飾で誤魔化す金ぴかの意匠にすぎないのである。冒頭で、清貧な生き方は否定され、みんな経済成長を望んでいるなどという池田勇人の高度成長路線みたいなものがでてくる。しかし、清貧の生き様を肯定的に描いた藤沢周平はとてもポピュラーな人気があるのだ。かなり脚色があったが、かつて土光臨調会長の個人生活は、清貧なように描かれた。それがなかったら、国鉄改革は一定の大衆的支持を得られなかっただろう。小泉前首相も、その点は非常に注意していた。ところが、「美しい国」を目指している安倍政権からは、「汚い」スキャンダルが次々と出てくる。日本経団連会員企業からも次々と不祥事が出てくる。なにが「美しい国」だ、「希望の国」だ、という声が強まって当然である。こんな安倍政権を追いつめられないようなら、野党はへっぽこ野党である。邦氏のような人がもっと出て、がんばってものを言ってもらいたいものだ。

 誰の希望か=邦
 
 せめて年初ぐらい心穏やかに過ごしたい。そんな思いで正月を迎えたが、元日の新聞を読んで打ち砕かれた。日本経団連(御手洗冨士夫会長)が同日付で発表した「御手洗ビジョン」があまりにも身勝手で怒りを抑えることができなかったからである。

 同ビジョンは「希望の国、日本」という副題が付けられている。明らかに安倍晋三首相の「美しい国へ」を意識しおもねった題名と思われる。内容も今後10年間、年平均で実質2・2%の経済成長を達成できると試算、安倍内閣の「上げ潮」路線に歩調を合わせている。いろいろ美辞麗句を並べ、愛国心教育も提唱している。しかし、具体的な政策提言になると財界にとって都合のいいことばかりで従業員や消費者にとっては希望どころか負担を押しつけられるものとなっている。

 まず、消費税については税率の2%引き上げ(つまり消費税を7%にする)を遅くとも11年度までに実施すべきだとしている。これは基礎年金国庫負担割合の引き上げのための財源確保策で、まったなしの状況という認識だ。これには異存はない。果たして2%で納まるかどうか分からないが、負担増しか残されていない。問題はそんな状況下で法人税の実効税率(国と地方の合計)の10%引き下げを強調していることだ。なんのことはない、負担は消費者に押しつけ企業だけは楽になりたいという話なのだ。さらに労働市場の改革に言及、「労働関係諸制度の総点検」との表現でより弾力的な雇用形態を提案している。リストラをやりやすくし、コストの安い非正規雇用を進める意図がミエミエだ。

 もしこの通りになれば、一段と貧困層が増え消費が衰退し、しっぺ返しを食らうことが分からないのだろうか。志もなにもないペーパーだ。(邦)(『毎日新聞』2007年1月10日)

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