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『読売』『産経』原発関係社説

 21日付『読売』『産経』の社説では、共に、原子力発電問題が取り上げられている。しかも、似たような内容である。

 要するに、『原子力白書』が、「原子力発電を、エネルギー問題解決の中核と位置づけている」こと、そこに、今後の世界のエネルギー需要が20年で、1・5倍になると予測し、エネルギーをめぐる国際競争が激化すると書かれていることが基になっている。

 さらに、原子力は環境問題解決にもなると言うのである。『読売』は、「原発の強みは、まず、発電コストに占める燃料費の割合が小さいことだ。このところ燃料のウラン価格が急騰しているが、実際には、発電コストへの影響は少ない。供給も安定している」と低コスト、燃料供給の安定性というメリットを上げている。

 世界のエネルギー需要が伸びれば、当然、原子力燃料需要も伸びるはずで、ウラン価格高騰が続くことになろう。それがどこまで行くかは、わからないが、いずれにしても、今よりも高騰していくことは明らかだ。日本やアメリカなどで、原発を増設していけば、なお、高騰するだろう。中国・インドなど、今後、原発増設しそうな大国もあり、現在のような安定供給体制もいつまで安定しているかは、わからない。日本の電力需要は、省エネ化や人口減少などもあって、減っていくのではないだろうか? 世界のエネルギー需要が増大するから、日本の原子力発電を強化するというのは、短絡すぎる。

 CO2を排出しない原発は、地球温暖化対策になるとも言われるが、それは地球温暖化対策は、環境問題の一部にすぎず、原発のゴミの環境問題があり、また、原発設備は巨大で、それ自体が環境付加が大きいという環境問題もある。

 さらに、原発には、核拡散問題があり、『産経』は、「原子炉を運転するとプルトニウムが生じる。北朝鮮などのように、それを悪用して核兵器を製造する道は断たねばならない。しかし、途上国が核燃料の製造や処理を個別に行うようになると、核兵器の密造や核テロの温床化を防ぐのが難しい」と述べている。『産経』は、「核兵器を保有せず、唯一、再処理を行っている日本の経験を生かしたい」というのだが、日本の場合は、アメリカの核の傘、日米同盟があって、核保有をしない、させないということで、原子力の平和利用のみで来られただけであって、事情の違う他国では、そうはいかない。かつて、台湾・韓国は、各開発を秘密裏に進めていたことがあるし、イスラエルは秘密裏に核保有国になっている。イランも原発開発から、核開発へと進んでいる。

 このところ、「北陸電力志賀原発の臨界事故隠しに見られるように、このところ過去のトラブル隠しが相次いで発覚していることも見逃せない。電力関係者は、原発が担う重責を自覚しているのか」’(『読売』)。「国内の電力会社はデータの不正や事故の隠蔽(いんぺい)を行っていた。原子炉の異常や操作の過誤は隠さず報告し、その事例を共有することで、安全性を進化させていかねばならない。その過程が国民に透明であることが必要だ。足元を固めたい」(『産経』)。と指摘されているように、電力会社の不祥事が発覚し、隠蔽体質、秘密主義、等々の体質が根強いことが明らかになっている。電力会社への人々の不信感は強まっている。

 『読売』は、「原子力委員会も、透明性の高い情報公開と法令順守の徹底などを電力会社に求める見解をまとめ、白書に添付した。いずれも社内調査で隠蔽(いんぺい)が判明し、自主的に公表したとはいえ、再発防止に向けた意識改革を急ぐ必要がある」と指摘しているが、意識改革を急ぐべしというに止まっている。

 たぶん、東海村臨界事故の時も、電力会社の体質問題を両紙も指摘し、批判していると思うが、それから何年たっても、こんな有様では、解体しかないのではないかと思われても当然ではないだろうか? それなのに、『産経』は、「今の時点で大事なのは、原子力をめぐる国際情勢を冷静に認識することである。プルサーマルの実施や最終処分施設の立地についても後ろ向きの議論を続けているときではない。世界のエネルギー潮流は、原子力を軸に動きだしている」として、世界に追いつくことが大事だという結論である。結論部は、やはり原子力の安全をしっかりしろということにすべきだ。つまり、人命第一という観点を打ち出すべきである。そうしないと文章全体を通して、人命よりも電気が大事というふうに見えるからである。

 『読売』はさすがに、「安全で着実な原発運転を目指さねばならない」と安全運転を求めて最後をしめている。好印象がもたれる最後である。

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