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『読売』の「反対のための反対」に反対という欺瞞的レトリック批判 廃棄物処分場問題

 またしても、『読売』の反対のための反対に反対という欺瞞のレトリックの登場だ。正直うんざりする。今度は、原子力発電所から出る放射性廃棄物の処分場立地の話である。

 政府と電力業界が設立した「原子力発電環境整備機構」が候補地の調査地区を公募したところ、高知県の東洋町が名乗りを上げた。それに対して、高知県、徳島県などから反対の声が出ている。それを『読売』は、「原子力発電の問題について、建設的な議論のきっかけにすべきではないか」と呼びかけているのである。

 反対派は、「原発のごみを誘致するな」「自然を守れ」というのであるが、『読売』は、それに対して、「処分場の必要性と安全性について冷静な議論をすることが大事だ」と諭す。

 それからいろいろと理由を挙げて、多くの専門家が安全だと主張しているし、電気の3割を発電している原子力発電所が、廃棄物の処分場ができなければ、止まってしまうという。

 せっかく東洋町が、「小さな町が国家プロジェクトに貢献できる機会」と言って、「エネルギー政策や原子力燃料サイクルでの処分場の位置づけ、安全性などの勉強を重ね、最終段階に入る前に住民投票を行う、と表明している」という程度のことに、政府が東洋町と周辺町村に年10億円を交付しよというのを、橋本高知県知事のように、「金でほっぺたを張っているようなものだ」というのでは、「特定地域の負担を広く国民が分かち合う」ことを否定することになる。「それがいけないというのでは、日本のエネルギー政策は成り立たない。反対のための反対ではなく、大局的な視点で考えるべき問題である」というのだ。

 ここでの「反対のための反対」は、日本のエネルギー政策に反対することを指してる。つまり、『読売』は、これは安全と判断し、しかもエネルギー政策上欠かせないと見なしているのに、反対するのは、「反対のための反対」だというのである。

 他方で、『読売』は、日本の省エネ・環境技術は世界をリードする高い水準だと誇らしげに書いており、それなら、これから省電が進んでいって、電力需要が減っていくと予想すべきだろう。前に書いたことがあるが、中小規模の太陽光発電や風力発電などの発電施設を消費地に近いところに多数作って、送電線を短くすれば、送電ロスが減る。環境庁が先頭に立って、省エネを推進しているところである。それらを含めて、もっと総合的にエネルギー問題について検討すべき時である。ところが、『読売』は、あくまでも現状のエネルギー事情がそのまま続くと想定して、処分場がなければ、原子力発電所が止まるというのである。それが何十年後のことかわからないが、それまでには、日本のエネルギー問題はずいぶん変化しているだろう。

 次に、この記事は、政府と電力業界を信用すべきものとして、いわば「性善説」に立っているのだが、この間、東京電力の原子炉停止の隠蔽などのごまかしが次々と発覚していて、信用をなくしつつある。このような電力会社が、処分場の安全性その他について、正しい情報を出しているのかどうか疑ってかかる必要がある。調査だけで、年10億円もの金を出すというのも、怪しい話だ。社会の木鐸たるべきジャーナリズムの一端を担う新聞社として、政府と事実隠蔽が発覚したばかりの電力会社の広報よろしく振る舞っては、笑いものになるだけだ。

 政府のエネルギー政策に反対することを「反対のための反対」なるレトリックで非難するのは、それに基本的に賛成する『読売』の思想を正当化するための欺瞞である。それに引っかかる者はそれほどいないだろう。別に原子力発電がなくても、人間、幸せに生きていくことはいくらでも可能だ。

 3月3日付・読売社説(1)

 [放射性廃棄物]「大局的に考えたい処分場の立地」

 原子力発電の問題について、建設的な議論のきっかけにすべきではないか。

 原子力発電により生じる高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地の調査地区に、高知県の東洋町が名乗りを上げた。

 調査地区は、政府と、電力業界が設立した「原子力発電環境整備機構」が2002年末から公募している。応募したのは東洋町が初めてだ。

 町内をはじめ高知、徳島両県内などで「原発のごみを誘致するな」「自然を守れ」といった反対の声が出ている。

 だが、ここは何よりもまず、処分場の必要性と安全性について冷静な議論をすることが大事だ。

 この廃棄物は、適切に扱えば取り立てて危険なものではない、と多くの専門家が考えている。原子力発電所の使用済み核燃料を化学処理した際に出る放射性物質で、ガラスで固めてある。高温のため、貯蔵施設で30年~50年間冷やした後、深さ300メートル以上の地中に埋設して、処分する方針が決まっている。

 これが頓挫すると、使用済み核燃料が処理できなくなる。その結果、日本の電力の3割を担う原子力発電は、燃料が交換できなくなって止まる。処分場の立地は日本のエネルギーを支える上で極めて重要な事業だ。

 無論、国民の理解を得つつ、安全に進めねばならないだけに、3段階の厳格な手続きが定められている。

 まず2年間、地震などの記録を文献調査する。次に4年間で、ボーリングなどによる概要調査を行う。最後の詳細調査では試験施設を地下に造って、詳しいデータを集める。次の段階に進むごとに、政府の許可と地元の同意が要る。

 東洋町は「誘致」しようとしているのではなく、応募したにすぎない。当面、第1段階の文献調査が行われたとしても、工事は一切ないし、もちろん自然はそのままだ。

 田島裕起町長は、応募を「小さな町が国家プロジェクトに貢献できる機会」と言う。エネルギー政策や原子力燃料サイクルでの処分場の位置づけ、安全性などの勉強を重ね、最終段階に入る前に住民投票を行う、と表明している。

 調査が始まれば、東洋町や周辺市町村には、年に総額10億円が政府から交付される。橋本大二郎・高知県知事は「金でほっぺたを張っているようなものだ」と言うが、原子力施設は各地にあり、交付金も出ている。特定地域の負担を広く国民が分かち合うためだ。

 それがいけないというのでは、日本のエネルギー政策は成り立たない。反対のための反対ではなく、大局的な視点で考えるべき問題である。

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