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「自由と生存のメーデー」デモに420名

 5月1日は、労働者の祭典メーデーである。連合系はすでに集会を済ませているが、全労連系と全労協系は、伝統どおり5月1日にメーデー集会を各地で開催している。

 その中でも、ユニークなのが、東京都新宿区で行われた「自由と生存のメーデー07」(同実行委)http://mayday2007.nobody.jp/である。ムキンポ氏のHPに写真がある。http://www.mkimpo.com/diary/2007/mayday_07-04-30_bis.html

 近年、フリーターなどの不安定雇用の若者たちの労組結成が相次いでいるが、このメーデーの核になっているのも、フリーター全般労組という若者中心の不安定雇用労働者の労組である。このような労働組合は、イラク反戦でのサウンド・デモなどの新しい街頭行動スタイル、表現、文化を生みだし、既存の労働運動が組織できなかった若者層の間に、共感と参加を拡大してきた流れを含んでいる。

 終身雇用を前提に、企業と一体になり、企業あっての労働組合と長期的に労働運動を展望する企業別組合や官公労と違って、派遣などは、企業を渡り歩くことも多く、最近では、複数の派遣会社に登録して、日雇い派遣労働者が増えているという。派遣業者は、日雇い労働者からピンハネする手配師と変わらなくなっているのである。

 それに対して、手配師の親分の1人で、厚生労働省の労働政策審議会臨時委員をつとめる派遣会社ザ・アールの奥谷禮子社長は、とっくの昔にへりくつにすぎないことが明らかになっている自己責任論を繰り返して、対策の必要はないと述べている。彼女には、高い見識もなく、品位もない。もちろん、思慮もない。ただ、儲けることを基本基準にして、現実を裁断しているだけのカネの亡者であり、カネの奴隷であり、金儲け機械である。

 こうした連中の頭を支配している「できる者」をよりできるようにし、「だめな者」は排除するという小泉・安部政権に共通する能力主義という「持てる者」の物差しは、それに反対する「持たざる者」たちの広く深い団結で打ち壊すことができる。

 「自由と生存のメーデー」はこの数年の間に数倍の人を集めるようになった。サウンド・デモの威力は、出発時約300人が、終わりには約420人まで、デモ隊の人数がふくれあがるという沿道からの飛び入り参加が多いという沿道の人々との間の垣根が低いことにも現れている。ビデオ・プレスの映像を見ると、警備の警官が、デモに参加するのは危険だからやめてくださいと飛び入り参加を阻止すべく、アピールをしている様子がある。しかし、沿道を歩くフリーターなどの不安定雇用労働者たちとデモ隊の間には、共通の労働体験があり、それが奥深いところでの共感を生み出す。警官の制止を振り切って、多くの若者たちが、飛び入り参加する。

 社民党は今や国会では極少数派となってしまったが、欧米など世界では、政権を握る党も多いなど、社会主義インターナショナルの社民主義潮流という国際的な政治潮流の一翼を占める党である。社会主義インターナショナル系社会民主主義党派は、だいたい労働組合に依拠している労組政党が多い。日本の社民党は、支持労組が少なく、市民運動との連携を強めている。「自由と生存のメーデー」は、そうした潮流とは違ったものであり、そこに、社民党福島瑞穂党首が、最後まで参加するというのは、少々驚きであるが、けっこうなことだと思う。

 不安定雇用層そしてワーキングプアが増大しているのは、1999年の派遣業法改正から、小泉構造改革それを受け継ぐ安部政権の下での、構造的要因によるものである。奥谷はじめ自民党議員などの口からは、やる気のある者はのばすが、やる気のないものは自己責任だという考えが、露骨に繰り返される。やる気という心理的基準を立てているのであるが、その判定基準も示さなければ、評価法もわからない。心理テストでもして「やる気」を測ろうとでもいうのか? 

 先日放送された「ビートたけしのTVタックル」では、「ネット・カフェ難民」を取り上げていたが、その中で、ネット・カフェで寝泊まりしながら、ネットで日雇い派遣の仕事を探しているの29歳の女性の姿を見ながら、桝添自民党参院政審会長は、やる気のない人にやる気のある人から取った税金を使っていいのかという発言があった。彼が言うやる気のある人とは、心の中に「やる気」を持っている人のことではなく、すでに成果・結果を出している人つまりは税金を納めている人という意味である。29歳のこの女性は、「これからはもっと計画的に生きなければ」と語り、「やる気」があることを表明している。しかし、桝添の基準では、この人はやる気のない人に分類されてしまうのである。それから、この場合は、納税者から、消費税納税者が除かれている。消費する人すべて納税者であることが無視されている。

 ビートたけしは最後にかつてならすぐにデモが起きているところだと言った。しかし、実際には、420名のフリーターらのデモが東京で、そして大阪でも同様のデモがあった。若者中心の420名のデモは、近年にない大規模デモであり、数年で数倍に拡大してきていることには、希望が見える。

 格差社会に「使い捨てやめろ」 フリーターら、メーデー集会(『東京新聞』2007年5月1日)

派遣労働者やフリーターの若者らによる「自由と生存のメーデー」が30日、東京・新宿で開かれた。「非正社員を使い捨てにするな」「残業代を支払え」。1日のメーデーを前に、いつもは集まることのない若い参加者が集まり、切実な声を休日の繁華街に響きわたらせた。

 音楽を流したトラックが怒りのシュプレヒコールを先導する。「職場に労組があっても入ることのない、フリーターのためのメーデーをやろう」。デモは非正社員をつなぐ地域労組「フリーター全般労組」(東京)が企画。4回目の今年は昨年の4倍の約420人が参加。上野や山谷地区でホームレスを支援するグループや平和団体も加わった。

 「まともに暮らせる賃金を」「派遣会社はピンハネするな」。派遣労働などで働く人たちならではの訴えが続き、大久保地区から歌舞伎町へ約2時間、練り歩いた。

 昨年のデモでは逮捕者も出ており、大勢の警官に物々しく取り囲まれた「サウンドデモ」は人波あふれる沿道の目を引いた。

 「最初は何だろうかとびっくりしたけど、(デモの主張には)共感できる部分もあった」と、都内在住のアルバイト男性(32)はうなずいた。「格差がこんなに広がっても自分が何も言えないのも悔しかった。デモは何もしないよりずっといいと思う」と女性(23)は友人と一緒に見守った。

 この日は福島瑞穂社民党党首も駆けつけ一緒に歩いた。「厳しい状況に置かれた若い人の生の声を聞くことができた」

 京都から参加した介護ヘルパーの男性(32)は「仕事はハードなのに給料は全然見合わない。生活できずに離職する人が増えており、国の無策を訴えたい」と話した。

 集会に先立ち、日雇い労働の現場で派遣で働く男性が日給6千-7千円、月収13万円程度にしかならず、家賃や食費を払うと手元にほとんど残らない生活を紹介。主催者側には労働基準法が無視され、遅刻して罰金を取られたケースなど、悪質な雇用をめぐる相談が絶えないという。

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