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今度は、党首討論問題で、イデオロギーを露わにした『読売』

 またしても、『読売新聞』が、その国家観・イデオロギーを露わにした。今度は、先日の党首討論に絡めてのことである。それは、以下の31日付『読売新聞』社説を読めば、誰の目にも明らかである。

 30日の党首討論は、事前の報道では、安部総理が、松岡農相の葬儀に出席するために、キャンセルされたということになっていたが、いつの間にか、開かれることになったようだ。

 今回の党首討論は、「年金記録漏れ」問題一点に絞られた。安部首相は、この問題を参院選の焦点にしたくないし、小沢民主党代表は、これを争点化して、参院選を自党に有利にしたい、「そんな政治的思惑が先行した攻防戦」だったという。

 したがって、「討論が年金不安の解消につながったとは言い難い」ものに終わったという。  安部首相は、「年金時効撤廃特例法案」の早期成立で、問題解決が図れると強弁し、小沢代表は、政府の責任を追及した。

 安部首相は、労使慣行に問題があると労組を批判したが、具体的にどこがどう問題で、どう責任があるのかを示さなかった。

 小沢代表が、社会保険庁の「日本年金機構」への改組は、「化粧直し」にすぎないと批判したが、それに対して、この社説は、「非公務員化は、公務員の身分に安住して国民の視点を欠き、数々の不祥事を生んだ社保庁の体質を根絶する切り札のはずだ」と与党を擁護する。この主張を、数年間は、記憶しておいた方がいい。『読売』は、国鉄分割民営化がJR福知山線脱線事故の背景になったとは思っていないのだろうが、各種独立行政法人が、天下り隠しに使われたことを見ても、社保庁職員の非公務員化が、その体質の根絶の切り札になるとは言い難い。

 この社説は、質問に終始した小沢代表に対して、対案を示すべきだったのではないかと主張する。与党には、官僚が持つデータを利用しやすいということもあって、政策立案が早く出来やすい特権があるが、野党は、官僚の持つデータを簡単に利用できないという不利がある。与野党共に、この問題の解決策を作れというなら、野党がそれを作りやすいような環境を整えてやらねばならない。それを主張しないで、ただ野党に対案をすぐに作ることを求めても無理がある。

 そして、こう言う。「年金記録漏れは、国民にとって切実な問題だ。だが、選挙の争点になじむだろうか。国民が抱いている年金不安を和らげていくため、自民、民主の両党が一致して問題解決に取り組むことが、政治の責任であろう」。

 安部首相を擁護し、与党を支持して、年金記録漏れは、国民にとって切実な問題であるにも関わらず、選挙の争点になじまないのではないかというのである。さすがに、断言はしていないものの、あまりにも露骨な与党への援護射撃であることは、隠しようがない。  

  民主党は、参議院選挙の勝利、参院与党過半数割れ、政局化、総選挙、民主党を中心とする政権樹立、各種政策の実現、という過程の実現を目指して、今、参議院選挙に取り組んでいるはずである。

 年金記録漏れが、選挙の争点になじみにくいというのは、それが与野党一致して、取り組むべき課題だからというのである。それを言うなら、どんな問題だって、そう言えるわけで、それなら事実上、政党は、一つでよいことになり、選挙も別に必要ないことになる。  

  小選挙区制による二大政党化とは、実は、自民党とちょっとだけ違う独立派閥の第2自民党が、仲良く、政権を交代で運営するという政治制度である。だが、そのモデルとされるイギリスは、実際には、三大政党制であり、さらに地方政府では、もっと多党化が進んでいる。アメリカも、制度的に二大政党以外を排除する仕組みになっているが、それでも、環境活動家ラルフ・ネーダーはじめ、第三勢力が、繰り返し台頭しており、さらに、1996年には、全米最大労組連合のAFL-CIO幹部も含む労組を中心とするアメリカ労働党が誕生していて、民主党から完全独立はしていないが、一時は、百万人の支持者がいると言われるほど大きな存在になっている。ドイツは、二大政党どころか、与野党大連立だが、その巨大連立与党への批判は、緑の党や左派党(旧東独共産党)に行って、それぞれ支持をのばしている。

 「党首討論は本来、国家の基本問題を論じる場だ」とこの社説は言う。そして、参院選の争点は、「与野党とも政治決戦と位置づける参院選が迫っている。両党首は、年金問題だけでなく、憲法や安全保障政策などをめぐって堂々と所信を述べ、政策の違いを明確にしていくべきだ」と、ここではさすがに年金問題を争点に入れているのだが、その他では憲法や安全保障政策だけを具体的に挙げている。『読売』にとって、国政問題とは、なによりも、憲法や安保問題だとわかる。

 先日の社説では、年金問題など安保問題に比べたら大した問題じゃないといわんばかりの書き方だったが、さすがに、この社説では、参院の争点の一つに入れていて、修正してきたかなという感じである。

党首討論「年金記録漏れ」は大事な問題だが(5月31日付・読売社説)

 参院選を間近に控えた党首討論は、年金記録漏れ問題一点に絞られた。

 この問題が広がりをみせてから内閣支持率は急落している。安倍首相としては、なんとしても参院選での争点化を避けたい。小沢民主党代表は、争点にあぶり出したい。

 そんな政治的思惑が先行した攻防戦だった。討論が年金不安の解消につながったとは言い難い。

 安倍首相は、党首討論を、政府・与党の救済策説明の場として活用した。  「まじめに払ってきた年金が給付されないという理不尽なことはしないということをはっきりと申し上げておく」。首相はこう強調し、5年の時効をなくして全額を補償する「年金時効撤廃特例法案」の早期成立を図る考えを示した。

 政府の対応策をいち早く打ち出すことで、問題の沈静化をはかりたいということだろう。  小沢代表は、年金記録漏れの責任問題を持ち出し、政府に「責任」があるとの言質をとることにこだわった。

 首相は、行政の最高責任者として「責任を負う」としつつも、「社会保険庁の現場において、どういう労働慣行が蔓延(まんえん)していたか」と切り返した。

 小沢代表は、政府の“失政”を印象づけようと狙い、首相は、社保庁労組の問題を指摘し、労組を支持基盤とする民主党への揺さぶりに出たのだろう。

 小沢代表は、社保庁改革関連法案で、社保庁の業務を継承する「日本年金機構」の非公務員化についても、「化粧直しにすぎない」と異を唱えた。

 だが、非公務員化は、公務員の身分に安住して国民の視点を欠き、数々の不祥事を生んだ社保庁の体質を根絶する切り札のはずだ。

 党首討論は、「一方通行型」の質疑・答弁とならないよう、首相に反論権を認めている。首相の反論に対し、小沢代表が「ここは首相に質問する場」と述べたのは解せない。小沢代表も具体的な解決策を示すべきだったのではないか。

 年金記録漏れは、国民にとって切実な問題だ。だが、選挙の争点になじむだろうか。国民が抱いている年金不安を和らげていくため、自民、民主の両党が一致して問題解決に取り組むことが、政治の責任であろう。

 党首討論は本来、国家の基本問題を論じる場だ。

 与野党とも政治決戦と位置づける参院選が迫っている。両党首は、年金問題だけでなく、憲法や安全保障政策などをめぐって堂々と所信を述べ、政策の違いを明確にしていくべきだ。

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