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屋山太郎さん、それで年金は本当に安心なんですか?

 なんじゃこりゃという「正論」が出た。保守系論客の一人の屋山太郎の『産経』「正論」社保庁問題は国鉄問題にそっくり である。

 屋山太郎氏は、年金記録漏れ問題は、70年代以来の自治労国費評議会の組合運動に発した組織腐敗によるものだという。そこで、70年代の、スト権ストなどの国鉄闘争と自治労の労働運動が、社会党政権実現のための政治的狙いをもった労働運動であることを示唆している。

 そして、氏は、当時の国労の富塚書記長が、「国鉄が円滑に機能しないことは国の力を弱め、資本主義を崩壊させるのに役立つ」と語ったことを聞いて、倒錯していると思ったという。これのどこが倒錯しているのかわからない。当時、日本経済は、スタグフレーション(インフレと不況の同時進行)に見舞われていて、資本主義に対する疑問がわき起こっている時代だった。企業は、合理化と称して、首切りに走っていた。国鉄は、自民党の利権の元になっていて、政治路線が、次々と建設され、その後、赤字化していく。国鉄の赤字の最大の原因は、この無謀な鉄道建設にあり、それを止められなかったのは、財界が政府・自民党と癒着していたからである。

 屋山氏は、「傘下の社保庁自治労が同じ動機で仕事をサボっていたのは想像に難くない」と空想している。

 資本主義が人々の幸福を実現できないなら、それは人々が選択するなら、廃止されるのは当然である。

 国鉄の赤字の多くは、鉄道建設に伴う借金であって、人件費ではない。それに、80年代後期のバブルによって、赤字問題も解決しつつあったのである。そして、国鉄分割民営化後、政府が保有する土地の売却が、地価高騰への悪影響などを理由に先延ばしにされ、土地バブル崩壊後に安く売られたのである。そして、国鉄の借金は、たばこ税増税分に転嫁されたのである。

 なんとしても、国労を潰したいという臨調行革路線を優先させた政治的な措置であって、国民の借金を減らすという目的は二の次だったのある。国鉄は、80年代後期には、よくなっていたのである。それを再び、悪くさせたのは、政府であり自民党である。そのツケが、信楽高原鉄道事故・JR宝塚線脱線事故という悲劇の背景になったのである。

 屋山という人は、どうも言うことがおかしいのであるが、それは、頭がすでに古くなってしまっていて、過去のことばかりが鮮明に思い出されるという状態にあるからだろう。そこで、ついつい70年代の記憶を今起きていることに当てはめたり、比較したりして、「そっくり」に見えてしまうのである。

 「国労は機関車、客車の定期検修の時間まで労使協定で決めさせたが、これを真っ正直にやっても1日の実働は4時間かからなかった。新幹線の窓ガラス取り替えは8人×4時間で1枚と決められていたが、民間委託にしたら3人×1時間で済んだ」と外注化の成果だけを強調し、民間委託・外注化による安全性の低下・危険性の増大という点には触れていない。光の部分しかみず、影の部分を見ていないのである。

 「自治労国費評議会が79年当局と結んだ「覚書」は窓口装置を操作するのは「1日最高300分、キータッチ1万回」」というのを批判するのだが、79年だと、まだコンピューター操作に専門性が強く要請されていた時代で、90年代のウインドウズ発売以降のパソコン普及後のキータッチの仕方とはずいぶん違うものだ。今はどうか知らないが、当時、コンピューターのプログラマーの仕事は、30代までが限界で、それ以上は続けられず引退すると言われていた。そんな時代である。もちろん、窓口装置というのがどういうものだったかわからないので、単純比較はできないだろうが、それでも、珍しかったのは確かだろう。

 屋山氏は、コンピューターの仕事のことなどわからないで、適当に空想して言っているだけなのだろう。なにせ、想像で物を言う人だから。

 そして、屋山氏は、「国家公務員退職手当法では禁固以上の刑以外は退職金の返還を求めることができない。公務員が民間以上に保護されるいわれはない。即刻、手当法を改正して没収すべきだ。またずっこけ職員の給与も最低3割カットすべきだ。カットの理由付けが困難という意見があるが、民間会社が大損失した時、全職員が連帯して責任をとるのは当たり前だ。民間並みに責任をとらせる公務員法の改正を求める」という。臨調行革の夢よもう一度ということか。またも過去に逆戻りである。公務員の待遇を民間並みにするなら、スト権その他の労働三権も付与することを忘れずに。そうすれば、今度は、堂々と、合法ストを打てるようになるわけだ。そうすればいいじゃないか。

 今度は、「民主党がやるべきことはまず支持母体の自治労に世間一般の常識を教育してやることだ」と民主党への説教だ。「これだから~」と思わず口から出そうだが、世間一般の常識では、想像で、あれこれ決めつけるような人は、敬遠されますよ。

【正論】政治評論家・屋山太郎 社保庁問題は国鉄問題にそっくり(『産経』6月22日)

■全職員の賃金、3割カットせよ

 ≪組織腐敗の根源≫

 国会で毎日のように激しく論争されている年金5000万件記録洩れ問題は、完全に焦点がずれている。社保庁問題はかつての国鉄問題そっくりだと認識すべきだ。調べれば調べるほど2つの問題は同根同種であり、きのうきょう腐敗したというものではない。

 組織腐敗の根源は70年代にまで遡(さかのぼ)る。社保庁の自治労国費評議会(今年4月「全国社会保険職員労働組合」と改称=組合員1万1000人)は72年から79年まで合理化反対のための(1)オンライン化反対と(2)身分を国家公務員から地方公務員に移せという闘争を激しく行っている。75年、国鉄では国労・動労が「スト権奪回スト」を行い違法のストを8日間ぶち抜いた。自治労と国労・動労は共に総評の傘下で運動に参加した。73年、国労の富塚三夫書記長は順法ストやストをうつ覚悟を披瀝してこう述べたものだ。

 「国鉄が円滑に機能しないことは国の力を弱め、資本主義を崩壊させるのに役立つ」

 この倒錯した論理には耳を疑ったが、総評はこれで社会党をバックアップできると信じていた。傘下の社保庁自治労が同じ動機で仕事をサボっていたのは想像に難くない。

 違ったのは、違法闘争のあと、国鉄が毎年赤字を2兆円たれ流し、借金が37兆円も溜まっていることが顕在化し、改革に着手されたことだ。一方の社保庁の内臓疾患は外部に全く見えなかった。国鉄は87年に分割・民営化によって蘇生したが、社保庁は20年経ってようやく同様の手術を受けざるを得なくなった。

 国鉄が腐敗したのは国鉄官僚が国労・動労に迎合したからである。国労とさえうまく付き合えば出世は保証された。労働省の労政担当でさえ国労の機嫌をとった。内部の事情は高木文雄総裁(当時)にさえ報告されず、高木氏は国会や土光臨調の場で「国鉄は徐々に良くなっております」と答えていた。

 ≪社保庁の3層構造≫

 社保庁は(1)長官と厚労省キャリア(2)社保庁採用のプロパー(3)各地方事務所の現地採用-の3層構造になっている。長官は1年在任してハクをつけて天下る。キャリアはことなく済めば2年で本省に帰れる。プロパーもこれらの“お客さん”をうまくあしらう。この状況の中で(3)はますます過激な運動に走った。

 公企体労組の運動に共通しているのは、賃金は人事院や公労委で決まるから必ず労働密度をスカスカにする運動に走ることだ。

 国労は機関車、客車の定期検修の時間まで労使協定で決めさせたが、これを真っ正直にやっても1日の実働は4時間かからなかった。新幹線の窓ガラス取り替えは8人×4時間で1枚と決められていたが、民間委託にしたら3人×1時間で済んだ。

 自治労国費評議会が79年当局と結んだ「覚書」は窓口装置を操作するのは「1日最高300分、キータッチ1万回」というのだが、これは国鉄の労使協定を上回るずっこけ勤労体制だ。

 基礎年金番号は96年度菅直人厚生相の時にシステム化し、小泉純一郎厚相時代に導入した。菅氏に責任があるとか小泉氏だとかいっているが、国鉄の破産前、歴代運輸大臣の責任が問われたことがあったか。菅も小泉も関係ない。

 国鉄といい社保庁といい“外局”の責任は総裁や長官が負うべきもので、高木総裁は時々、国会に呼ばれていた。社保庁長官が呼ばれなかったのは、与野党の責任ではないのか。各長官はほぼ1年務めて天下っている。その無責任体制は国鉄を上回る。

 国家公務員退職手当法では禁固以上の刑以外は退職金の返還を求めることができない。公務員が民間以上に保護されるいわれはない。即刻、手当法を改正して没収すべきだ。またずっこけ職員の給与も最低3割カットすべきだ。カットの理由付けが困難という意見があるが、民間会社が大損失した時、全職員が連帯して責任をとるのは当たり前だ。民間並みに責任をとらせる公務員法の改正を求める。

 ≪民主党がやるべきこと≫

 社保庁改革法は非公務員型の「日本年金機構」を作って、6分割する主旨だ。国鉄の7分割・民営化をなぞった解決法だ。民主党の国税庁と一緒にして「歳入庁」を作れというのは米国式の発想だが、現実問題として大学に中学生を入学させるようなもので無理だ。民主党がやるべきことはまず支持母体の自治労に世間一般の常識を教育してやることだ。小沢一郎氏はこの自治労を選挙の手足にしているが、これではさながら「小沢自治労」だ。

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