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混乱する脱北者情報

 青森の沖合でつかまった4人の北朝鮮からの脱北者の問題で、情報が混乱している。
 
 当初は、貧しさからの脱北をうかがわせる脱北者の証言が伝えられたが、次に、かれらが、北朝鮮政府の人権抑圧を批判しているという話が出てきた。
 
 コメが主食の北朝鮮で、二日に一度しかパンを食べられないという脱北者の話は、どうも怪しいなという気がしていたが、4日にテレビ取材に応じた李英和関大教授は、かれらが貧困層ではなく、北朝鮮当局による逮捕を逃れて脱北した可能性があることを指摘した。
 
 5日になると、船に積んでいた物が、けっこう高価なもので、かれらが貧困層に属しているという見方に疑問が出てきた。かれらの言う貧しいタコ漁師の一家で、貧しさから脱北したという証言の信憑性が疑わしくなったのである。
 
 それから、次男が、覚せい剤を持っていたことが明らかになった。5日付『毎日新聞』は、日本に住む脱北者の「北朝鮮では、一般市民の覚せい剤所持は珍しくない」という証言を伝えている。
 
 北朝鮮の政府による覚せい剤製造疑惑は、アメリカ政府も言及しているところだが、その見方では、覚せい剤製造は、政府が秘密に行っていて、外貨獲得の重要な収入源になっていることになっている。それが、下の証言にあるように、製造工場から横流しするヤミのルートがあって、しかもそれが一般市民が普通に手に入れることができるようになっているとはどういうことだろうか。これだと、北朝鮮では、幻覚に襲われての麻薬中毒による犯罪や事件が多発しているはずである。それも、当局の情報統制によって完全に覆い隠されているのだろうか? 真偽のほどはわからないが、少なくとも、もし、北朝鮮政府が外貨獲得源として、麻薬製造密輸に関与してるとすれば、このような貴重な収入源の管理を厳密に行っていると思われる。

 下にある証言では、ヤミの覚せい剤価格は、2000年頃で、1キロ1万円ほどだったという。これは、北朝鮮市民にとってはかなり高価なものなのではないだろうか。
 
 いずれにせよ、北朝鮮問題というと、むちゃくちゃな空想ストーリーでもなんでもOKという感じで、いい加減な情報が垂れ流されるので、気をつけなければならない。
 
 6日の『産経』社説が、比較的冷静に、麻生外相の「偽装難民の可能性もある」との見方を伝え、「覚醒剤に限らず、脱北の動機やその準備、費用などについても、十分に時間をかけて事情聴取すべきである」と主張している。ところが、同じ『産経』系の「izaニュース」の方では、一般のタコ漁師一家が、生活苦から決死の脱北を行ったというストーリーを描いていて、新しい情報を加わて問題を考えていない。怠慢もいいところだ。

 4人は6日、茨城県牛久の入管センターに入った。覚せい剤所持にも関わらず、異例の早さである。早いところ厄介払いしたいという当局の姿勢の現れだろう。この牛久の入管「収容所」には、難民認定を認められず、不当に収監されている外国人もいる。そこに、とっとと韓国に転送して、厄介払いしたい「北朝鮮人権法」対象者とされた脱北者が入ったのである。
 
 この経過を見ていると「北朝鮮人権法」というのは、実際には、このように運営されて、脱北者を素早く厄介払いするシステム法なのではないかと思う。脱北者のうちで、日本行きを希望する者は、おそらく極少数だろうからである。これは、脱北者を国内法をスルーして素早く韓国に転送する仕組みなのではないだろうか?

 脱北家族 高波に揺られ吐き続け…決死の日本海1週間800キロ(「iza」ニュース、6月6日)

 1日おきにしか食べられないパン。裏腹に簡単に手に入る覚醒剤。「無力な支配者が社会を後退させている」と粗末な小船で日本海を渡り、青森県深浦町に漂着して警察に保護された北朝鮮人一家4人は6日、法律上の保護期限を迎えた。4人は韓国での生活を求めており、韓国側も受け入れる方向だが、移送には時間がかかる見通しで、政府は7日以降も合法的に日本に滞在させる「一時庇護(ひご)上陸許可」を出す方針だ。一家が日本海を漂流すること1週間、その距離800キロ。4人の供述で、脱北の動機や経緯が次第に明らかになり、北の一般住民の生活の一端が浮かび上がってきた。

 警察の調べでは、4人は50代後半の元漁師の男性と妻の60代前半の女性、30代の専門学校生の長男と、20代後半のタコ漁の二男。5月27日夜、北朝鮮北東部の清津(チョンジン)から木造船で脱出した。

 船の操縦資格を持つ二男が金を貯め船を購入。漁で家計を支えたが生活は苦しく、「1日おきぐらいにパンを食べるのがやっとだった」。

 警察に保護された二男は、微量の覚醒(かくせい)剤を所持していた。「長旅なので眠らないようにするためにもっていた。共和国で簡単に入手できる」。

 「オルム(氷)」。そう呼ばれる覚醒剤が近年、中朝国境地帯を中心に広がっている。韓国の北朝鮮人権団体によれば、「(清津のある)咸鏡北道では、働き盛りの青年層の約5%が覚醒剤を服用」と指摘。北の覚醒剤密輸への国際的な取り締まりが強化され、だぶついた覚醒剤が国内で安く流通している。

 パンを1日おきにしか食べられない生活にもかかわらず、覚醒剤が容易に入手できる異常な環境。「共和国には人権がない」「無力な支配者が社会を後退させていることに疑問と不満があった」。4人は日本の警察官に心情を吐露する。貧困が広がり、特権階級が住む平壌以外の地方都市では、金正日総書記の陰口が目立ち始めたと伝えられるが、その現状を裏付ける「供述」だ。

 木造船は長さ約7・3メートル、幅約1・8メートル。黒色で、エンジンは2機(1機は予備機)。屋根はない。コンパス、パンやソーセージなどの食料、飲料水、衣類がぎっしり詰まったリュックサック、雨がっぱや傘、タオル、大量の軽油、そして食への執着ともとれる箸(はし)が積まれるなど用意周到だった。「捕まったときには自害」を覚悟し、毒薬も持った。

 一家は当初「韓国を目指すつもりだった」。だが、国境警備が厳しいため、日本と北朝鮮を結ぶ「万景峰号」が出入りしていた新潟を目指す。昨年の日本海に向けたミサイル発射や核開発問題、日本人拉致問題で、北朝鮮船舶の入港を日本が禁じていることは知らなかった様子。北の情報統制は相変わらずだ。

 決行の夜、清津は濃い霧。当局の目を盗むにはもってこいだった。が、以降の4日間は悪天候。二男と長男が交代で操縦したが、船は大きく揺れ「食事はおろか、話もできなかった」。両親は船にしがみつき、吐いた。

 高波で浸水した。何隻かの船ともすれ違った。追跡の不安を抱えながらの航海。脱出から7日目の今月2日、新潟から約300キロ北の深浦町に漂着した。母は疲れ切った表情でしゃがみ込んだまま動けなかった。そこがどこか分からなかったのだろう、見かけた日本人に「ニイガタ? ニイガタ?」と繰り返した。

 住民は「よくこんな小さな船で…。海流が急で、深浦には流されてきたのではないか」と推測する。

 一家は覚醒剤や多少の中国人民元を所持していたことから“特別”との見方もあったが、警察幹部は「一般住民」とみている。県警五所川原署の会議室で寝泊まりしている4人は、提供される幕の内弁当を毎食たいらげているという。

【主張】脱北者と覚醒剤 法治国家の姿勢を示そう(2007/06/06『産経』)

 青森県に漂着した北朝鮮からの脱北者家族の所持品から少量の覚醒(かくせい)剤が見つかり、警察当局は覚せい剤取締法違反(所持)容疑で書類送検する方針だ。脱北のケースでない通常の入管難民法違反(不法入国)事件なら、強制捜査の対象になる重大事犯である。任意でも法治国家として厳正な捜査が必要である。

 覚醒剤所持を認めた家族の一人である20代後半の二男は「北朝鮮で覚醒剤は簡単に入手できる。長旅なので、眠らないようにするため持っていた」と話している。密売目的ではないにしても、捜査当局はどこでどのようにして入手したかを詳しく聞くべきだ。

 北朝鮮では、国家機関が外貨獲得のために覚醒剤を製造・密売している。北朝鮮ルートの覚醒剤密輸は平成9年ごろから急増し、海上で大量に取引されている現場などが摘発された。日本の警察当局は、今回の脱北者4人が出航した清津付近など3カ所に覚醒剤製造工場があるとみている。

 最近は、国際的な取り締まりが強化されたこともあって、大量に余った覚醒剤が北朝鮮の国内に出回っているといわれる。こうした北の内情も、今回の脱北者は知っているだろう。

 6年前の平成13年5月、金正日総書記の長男、金正男氏とその家族とみられる4人が偽造旅券で不法入国し、東京入国管理局に身柄を拘束された。しかし、当時の日本政府は4人を事情聴取しただけで、北京に強制退去させる処分にとどめた。

 日朝関係に悪影響を与えたくないとする当時の外務省などの判断が働いたといわれる。厄介払いするかのような対応は、「主権国家としての任務を放棄した」「北朝鮮との外交カードを失った」などと批判された。このような愚を繰り返してはいけない。

 今回の脱北者4人は、昨年成立した北朝鮮人権法に基づき、希望する韓国への亡命が実現するよう、外交努力が行われている。麻生太郎外相は5日の閣議後会見で、4人の韓国移送について「武装難民でなかったことははっきりしているが、偽装難民でないという保証はない。きちんと捜査当局が調べたうえでの話だ」と述べた。

 覚醒剤に限らず、脱北の動機やその準備、費用などについても、十分に時間をかけて事情聴取すべきである。

 <脱北者>一般市民の覚せい剤所持「北朝鮮では珍しくない」(6月5日毎日新聞)

 青森県深浦町で保護された脱北者家族4人の所持品から微量の覚せい剤が検出されたことについて、脱北に成功し日本に戻って来た人たちは「北朝鮮では珍しくない。(一般市民の所持は)あり得る」と口をそろえる。警察当局は、次男を覚せい剤取締法違反容疑で書類送検する方針だが、北朝鮮のこうした事情も考慮してのものと思われる。
 
 数年前に脱北・帰国した東京都内の40代の元在日朝鮮人男性は「ヤミで覚せい剤を扱う人がいる。彼らにお金さえ払えばいくらでも手に入る。普通の人でも手に入れて使っている」と指摘する。
 男性によると、北朝鮮の製造工場で作られた覚せい剤は品質によって価格は異なるが、00年ごろには1キロ1万円程度で取引されていたこともあった。「社会が不安定で日々の暮らしに希望が持てず、眠気覚ましに使ったり、興奮状態になろうとして覚せい剤を求める人もいる」と話す。
 
  また、04年に脱北した大阪府の女性は「国を挙げてアヘンの原料となるケシの栽培を奨励しており、覚せい剤にも怖いというイメージはなかった。アヘンは下痢の治療などに利用されている。自分も使ったことがある」と語った。【工藤哲】

 脱北4人全員が腕時計 相当な資金?中流家庭か(6月5日『東京新聞』)

 青森県深浦町で保護された脱北者家族4人が、北朝鮮では高価な軽油や予備用エンジンを木造船に積んでいたほか、地方の貧困層は持っていないとされる腕時計を全員が持っていたことが5日、分かった。

 4人は県警の調べに「1日おきぐらいにパンを食べるのがやっとだった」と生活苦を訴えているが、識者は「北朝鮮では中流層の生活を送っていたのではないか」と推測している。

 警察官職務執行法に基づく五所川原署での4人の保護は6日に期限を迎えるため、県警などは7日以降の扱いを関係省庁と協議している。

 北朝鮮の生活に詳しい山梨学院大の宮塚利雄教授(朝鮮近現代経済史)によると、軽油は1リットル当たりの値段が平均的な給与の1カ月分で、「予備エンジンも含め、かなりの資金が必要だったはずだ」という。

 4人は「タコ漁の収入で家計をほそぼそと支えてきた」と供述しているが、宮塚教授は「腕時計も北朝鮮では高価な物。普通の市民は食べるだけで精いっぱいで、貧しかったとは思えない」と懐疑的だ。

 脱北者か、青森で木造船の4人保護…「生活苦逃げてきた」(6月2日『読売新聞』) 

2日午前4時15分ごろ、青森県深浦町の深浦港沖合で、国籍不明の不審な船が航行しているのを、地元の釣り人が見つけ、110番通報した。

 青森県警と海上保安庁が誘導し、船は午前8時ごろ、深浦港に接岸した。船には男性3人と女性1人が乗っており、県警は4人を保護し、鰺ヶ沢署で事情を聞くとともに、船を実況見分している。

 警察当局によると、男性の1人が片言の日本語で、「生活が苦しくて北朝鮮を脱出してきた」という趣旨の話をしており、北朝鮮から密入国を図った可能性があるとみて調べている。また、毒薬とみられる薬品を持っており、警察当局で分析している。

 県警によると、4人は20~60歳代。男女2人は中高年で、男性2人は若者とみられる。武器などは持っておらず、違法行為も今のところ確認されていないという。北朝鮮にいたことを示す証書類を持っているとの情報もある。

 海上保安庁に入った情報によると、110番通報の前、4人が乗っていたとみられる船が、深浦港から9キロ北東の風合瀬(かそせ)海岸付近に近づき、釣りをしていた人に「新潟はどこか」と尋ね、釣り人が「南の方」と答えると、南方に向かっていったという。

 4人が保護され、深浦港に上陸したのを目撃した地元住民によると、3人は長袖シャツを着て革靴を履いており、男性1人は作業服のような服装だという。4人はいずれも日焼けしていた。女性は接岸後、疲れ切った様子で座り込んでしまったが、男性3人は比較的元気な様子だった。

 船は全長約6メートルの木造船。船内には、水のほか、燃料とみられる油のようなものが置いてあったという。旧式とみられるエンジンが付けられていたが、櫓(ろ)もあった。

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