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うつ病対策しない会社は未来が暗い

 天木直人氏が建設会社の30代の社員が過労と業績不振での自信喪失から、うつ病にかかったことについて書いている。
 
 このAさんは、会社を休職中で、カウンセリングを受けている。彼の仕事上の悩みは、超大口の取引先である大手企業B社の過酷な要求に対して「理不尽な要求も黙って聞くしかなかった」ために、部下がやる気をなくしてしまい、Aさんの指示を聞かなくなったという。カウンセリングを受けるうちにAさんは、「リーダーとしての自分の役目は、取引先の言いなりになることではなく、交渉して部下が働きやすい環境をつくることだった」「自分という人間が悪かったのではない。取引先と交渉しない自分の仕事の進め方が悪かった」と気がついたという。
 
 天木氏は、アメリカの言いなりになって唯々諾々とアメリカの要求をのむことを外交の仕事としている外務官僚の話になっていく。

 私は、過労などによる企業で多発するうつ病のことが気になる。一方では、生きることに精一杯のフリーターなどの不安定雇用労働者が再生産されていると同時に正社員が、過労・サービス残業・長時間労働などによるストレスによるうつ病などの精神的病にかかるケースが増えている。ちょうど、オーマイニュースで、携帯のメールにすぐに返信がないとイライラするなど余裕を失った人々が増えているという記事を読んだところだ。先日見たテレビ番組では、企業にすぐにクレームをつける消費者が増えている様子を取材したものが放送された。これは、学校に理不尽な要求やクレームをつけるいわゆるモンスター・ペアレンツなど、消費者主権などという竹中などの進めた新自由主義的な価値観が浸透していることをも意味するものでもある。
 
 それは、正社員の長時間労働や労働強化などによるストレスの強まりと軌を一にしているところがあるような気がする。ゆとりなき労働社会とモンスター化し余裕を失っている消費者の姿がどこか重なって見えるのである。やはり先日見たテレビ番組では、いわゆるサービス残業で摘発される企業数がここ数年増加し続けているというデータを示していた。労働基準監督局が、今月をとくに強化月間として摘発を強化している。番組のコメンテーターは、サービス残業は罰則を伴う犯罪であることを指摘していた。
 
 この国の法体系は、経済的必要によって、穴があけられてきており、競争優先によって、法をかいくぐった方が勝ちというような不法が蔓延してきているようだ。倫理は、極めて弱体化しており、それもすべては市場に聞くということで、なおざりにされている。結果的に「最後に笑う者がよく笑う」ということわざのように、あるいは「勝てば官軍」といわんばかりである。そこで、倫理は崩壊しつつあるが、それは、言うまでもなく、社会的な過程でそうなっているのである。先の例では、大口得意先の大手会社B社は、自らの独占的な地位を利用して、取引先に理不尽で不当な要求を突きつけているわけであり、まさに、相手をおもんばかりつつ、双方が立つような社会性を形成するという倫理を投げ捨てているのである。「お互い様」とか「共存共栄」とかいう社会倫理性を否定しているのである。こうした会社では、おそらく、社員の扱いも非倫理的なのだろう。うつ病に懸かる社員もいそうな気がする。こうした会社では、長期的には、人材が枯渇していくだろう。少子高齢化社会で、これは致命的となるだろう。まさに、教師たたきが盛んだった時代に、公立学校は人材不足に陥っていった。そして今、政府は、民間に流れていく人材を取り戻すために、教育予算の増額とか教員定数の大幅増を大慌てで進めようとしているのである。
 
 すでに新卒者の就職戦線はバブル期を超えて加熱しており、それは、やがて、他の世代にも波及せざるを得ない。看護師の取り合いも加熱しており、中には、いろいろな名目をつけて、現金を前渡ししてまで、看護学校の卒業生の確保に努めている病院もあるという。こんな時代に、仕事を覚えた社員をうつ病で失うことのダメージは相対的に大きくなっているということを肝に銘じなければ、企業も先がないと思わねばならないだろう。そんな時代になってきたわけである。

 臨床心理士の次の言葉は、なかなか役に立ちそうなアドバイスである。

  「・・・相手の言いなりになる事を続けていると、自分を卑下するような発想になりがちだ。相手に気を使い・・・相手に合わせてばかりいると、潜在的な能力や可能性が発揮できず、何をしてもやりがいや充実感が得られなくなってしまう。
  これは仕事だけではなく、夫婦関係や人間関係でもあてはまる。他者との関係にストレスを感じる時は、相手の言いなりになるばかりで、交渉を避けていないか。もう一度振り返ってみよう・・・」

 鬱病や過労死になる前に目覚めて欲しい(天木直人ブログ11月14日)

 11月14日の日経新聞「こころのサプリメント」という心理カウンセルの欄に、臨床心理士が興味ある臨床患者の話を書いている。
 建設関連の企業につとめる30歳代のAさんは、過重労働による疲労と仕事の業績が上がらないことへの自信喪失からうつ病を発症し、会社を休職中である。病院での治療に加え、カウンセリングに訪れている。その時の状況を書いているのだ。
 「部下をまとめられない」と落ちこむAさんは、大手企業B社からの過酷な要求に押しつぶされる毎日であった。とはいえ、B社は超大口の取引先。「理不尽な要求も黙って聞くしかなかった」と話すAさん。部下たちはそんな彼を見て次第にやる気をなくし、Aさんの指示を無視するようになってしまったという。
 カウンセラーの求めに応じ、Aさんは取引先や部下に対する鬱積した感情をポツリポツリと話し始める。やがて「リーダーとしての自分の役目は、取引先の言いなりになることではなく、交渉して部下が働きやすい環境をつくることだった」、「自分と言う人間が悪かったのではない。取引先と交渉しない自分の仕事の進め方が悪かった」と気付いたAさん。すべて話し終える頃には、それまでの落ち込んだ表情は消え、晴れやかな顔になっていたという。
 このエピソードを引用した後、その臨床心理士は次のように締めくくっている。

 「・・・相手の言いなりになる事を続けていると、自分を卑下するような発想になりがちだ。相手に気を使い・・・相手に合わせてばかりいると、潜在的な能力や可能性が発揮できず、何をしてもやりがいや充実感が得られなくなってしまう。
  これは仕事だけではなく、夫婦関係や人間関係でもあてはまる。他者との関係にストレスを感じる時は、相手の言いなりになるばかりで、交渉を避けていないか。もう一度振り返ってみよう・・・」

  私がこの記事を引用したのは他でもない。米国の不当な要求を呑まされ続けている外務官僚たちとこの患者がダブって見えたからだ。
  もっとも官僚はこの患者のように簡単には鬱病にはならない。自分を偽って平然としていられる図太さがあり、出世のためにはあらゆる事を耐え忍ぶ強烈な出世欲を持っているからだ。
  しかしその彼らも、矛盾に悩んでいる。知らないところで徐々に自己崩壊している。その姿を私はまじかに見てきた。仕事の質がどんどんと低下していき、国民の幸せのために正しい外交をしているという充実感はなく、国民に嘘をついてまで日米外交の重要性を唱えるという後ろ向きの仕事に奔走することになってしまっている。アリバイづくり、言い訳づくりの外交に追い込まれてしまっている。
  相手の要求をはねつける事は容易なことではない。その相手が強大であればあるほど断る事は難しい。しかし人生において一番大切な事は自立した自分を取り戻す事だ。勇気を持って正論を口に出すことだ。それは一時的には大変な勇気がいる事かもしれない。しかし勇気を振り絞って口に出してみれば、その後には無限の自由と心の開放が広がっているのだ。
 外務官僚たちよ。自らを解き放て。自己に忠実な外交を目指せ。さもなければ日本外交は本当に行き詰まる事になる。自らを鬱病に追い込む事になる。

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