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資本家は不要だ

 今日の新聞を見ると、この国の経済界が、一方では、労働者には、賃上げ抑制、高い労働生産性向上、長時間労働、非正規雇用による人件費抑制、消費税などの大衆課税の強化などを主張しつつ、自らは、仲間内での利益の分け合い、共同詐欺行為を働いているという脱税事件の摘発のニュースが報道されていた。
 
 それは大分のコンサルト会社「大光」(大賀規久社長)が、30億円の所得を税務申告しなかったことが税務署によって摘発された事件である。事件の概要は、下の『毎日新聞』の記事で見ていただきたい。
 
 記事によると、大賀社長の実兄が、日本経団連会長でキャノン会長の御手洗氏と同級生で、本人は同窓で、親しい間柄であるという。大賀社長の会社は、キャノンの大分の2工場の警備を請け負うなど、関連会社を含めて、下請けの決定にも強い影響力を持っているという。
 
 大分のキャノン工場建設を受注した鹿島建設から、大賀社長側に、受注額600億円の3%の仲介手数料の他、架空の下請け工事代金や、鹿島が別の下請け業者に水増し発注して作った裏金を受け取っていたという疑いがあるという。大賀社長が受け取った金額は数十億円にのぼり、家族名義の30億円分の株が見つかっているという。鹿島は、追徴課税されている。
 
 言うまでもなく、これだけの裏金が大賀社長に渡ったのは、彼が、御手洗キャノン会長と特別に親密な関係にあって、業者選定に影響力があったからである。このような「民」の中での民ー民取引の場合、公共事業のように、公正な競争とか透明性とかがうるさく言われないわけで、いわば、民間内での自由な取引慣行に任されており、他にも似たような事例は腐るほどあることは間違いない。それに対して、会社の私物化という批判がありうるが、それには、会社が、社会性、共同性、公的性質を持つものという社会的基準が必要である。そうした基準に則って、経営を判断しなければ、こうした行為は、なくなることはないだろう。
 
 一方では、企業のコンプライアンスが言われていて、それは御手洗経団連でも、掲げられてはいるが、実態は、この有様だ。かつて、経営と所有が分離している株式会社における経営者というのは、高級労働者・熟練労働者であるということから、労働者階級の上層と考えられていた時代があった。だが、構造改革路線の中で、経営者の中にも、株式を多く所有する者が増え、所有と経営の分離という形は崩れてきているように見える。
 
 この場合、裏金だから、表に出すわけにいかず、脱税ということになったから、税務当局によって、摘発されるにいたったわけだが、自由な商慣行の中で、こうした腐敗が生じていることが明らかになったのである。
 
 官の腐敗や特権には一斉に飛びつき、叩きまくるマスコミも、民の世界の腐敗に対しては甘い。船場吉兆といい赤福といい、ミートホープといい、民の腐敗やモラルハザードは相当蔓延しているようだ。柄谷行人氏は、かつて、腐敗しつつ持続していくのが資本の本性だというようなことを書いていた。しかし、こうした民の腐敗に対して、人々や社会は耐えられない。事実、人々は、政官財の癒着による腐敗に陥った自民党に対して、何度もノーを突きつけた。与党は、そのたびに、反省したとして、一時的に譲歩し、低姿勢で、政権にしがみついてきた。今も、疑いの目で、与党を見ていることは、先の参議院選の結果で明らかになった。
 
 アメリカでは、イランが4年前から核開発を停止していたという報告書が発表され、イランに対して、核開発を続けるなら、世界戦争もあり得るなどと脅したブッシュ大統領の信用が失墜している。イラク戦争について、フセイン政権が、大量破壊兵器を開発・保有しているだの、アルカイダを支援しているだの、さんざん、でたらめを並べたブッシュ政権が、イランの核開発疑惑問題でも、でたらめを言っていたことが、暴露されてしまったのである。それにつき合わされ、振り回された人々の怒りは、どれほどかと空恐ろしいことである。どうおとしまえをつけてくれるのかということだ。
 
 こんな世界である。すでに、現代社会には、資本家などなくても、やっていける条件がある。いつなくなっても大丈夫である。今の資本家に社会をきちんと運営していく能力など別にないのであり、でたらめもすぐにばれてしまう。そんな程度である。全部実際にやっているのは労働者大衆である。それを粗末に扱う企業に、未来はない。それは短期利益に目がくらんであぶく銭稼ぎをする儲け悪どい企業に過ぎず、消えてしまっても、ひとつも社会的損失にならない。とにかく、資本家は、企業経営にも社会運営にも無用の存在になってしまったという歴史進歩がある。
 
 大分の事件とブッシュのイラン政策のでたらめの暴露は、それをよく表わしている事件である。
 
 脱税疑惑:大分のコンサル会社、所得30億円申告せず(12月9日『毎日新聞』)

 キヤノン工場建設を巡る構図 「キヤノン」の大規模プロジェクトを巡り、大分市のコンサルタント会社「大光」(大賀規久社長)が法人税法違反(脱税)などの疑いで東京国税局査察部の強制調査(査察)を受け、大手ゼネコン「鹿島」からの裏金や仲介手数料約30億円を申告していないことが分かった。鹿島も任意の税務調査で数億円の所得隠しを指摘されたとみられる。プロジェクトは投資額約1000億円に及んでおり、同国税局は大手ゼネコンなどを巻き込んだ巨額の資金の流れについて解明を進めている。

  プロジェクトは、キヤノンが03年以降、大分市東部の丘陵地帯に建設したデジタルカメラ生産子会社「大分キヤノン」と、プリンター関連生産子会社「大分キヤノンマテリアル」の2工場。広瀬勝貞大分県知事が経済産業省事務次官時代から交際のあった同県出身の御手洗冨士夫・キヤノン会長らに働き掛け、工場誘致に成功したとされる。  関係者によると、大賀社長は、用地造成と2工場建設を鹿島が受注できるよう営業。受注額の約3%を「仲介手数料」として受け取る契約を結んだ。工場建設では当初、九州のキヤノン関連工事で実績がある「大林組」が有力視されていたが、これを覆した。

 工場建設に先立つ造成工事は、県土地開発公社から、鹿島が76億円余の随意契約で受注した。  大賀社長の仲介による鹿島の受注額は、500億円を超えるとみられ、大賀社長側は仲介手数料のほか、鹿島から架空の下請け工事代金や、鹿島が別の下請け業者に水増し発注して作った裏金を受領していた疑いがある。鹿島はこうした不正な資金を巡って、追徴課税されたとみられる。大賀社長が受け取った金は計数十億円に及ぶとみられ、家族名義などで約30億円分の株などが見つかっているという。

 大賀社長は、実兄が御手洗会長と高校の同級生で、自らも同窓であることなどから、親しい関係にあるという。大賀社長の警備会社が両工場の警備を請け負っているほか、関連会社も含めてキヤノン関連の仕事を受注している。鹿島が絡む工事では、下請け業者を決めるなど強い影響力があるという。

 大光は、8日までの毎日新聞の取材要請に回答していない。鹿島は「個別の工事や税務についてはお答えできない」としている。

  大光は90年12月設立で、民間信用調査機関によると従業員は6人。キヤノン関連工事の下請けや不動産開発が主な業務で、06年9月期の売上高は6億4300万円

 ▽コンサルタント会社 一般的には設計業務や会社経営など、各専門分野での業務支援を目的にした会社。一方、公共工事の入札情報を聞き出したり、特定の業者が受注できるよう働き掛けを行ったケースもある。鈴木宗男衆院議員の汚職事件(02年)を巡っては、大手の「日本工営」幹部が、北方領土の施設工事で入札情報を鈴木議員の秘書に漏らしたとして、偽計業務妨害罪に問われた。「業際都市開発研究所」の事件(02年)では、同社社長が政界人脈などを生かして、業者の受注を自治体に働き掛けるなど「口利きビジネス」を行い、贈賄罪などで有罪が確定した。

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