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洞爺湖サミットによせて

  もうじき洞爺湖サミットがあるが、ここでは、今回は主に環境問題がテーマとなると言われている。

 もちろん、地球環境問題が、人類にとって大問題であることは言うまでもない。

 ただ、それは今日の経済活動によって生み出されている問題であるから、経済問題でもある。それは世界市場の問題でもある。

 昨日まで世界経済の枠組みだったのが、「ブレトン・ウッズ体制」と呼ばれる世界貿易の国際ルールの体制である。それが、今、WTO(世界貿易機関)に変わった。

 「ブレトン・ウッズ体制」は、有名な経済学者ケインズが参加して決定されたルールを基本にしている。したがって、それは、ケインズ経済学の基本的な考え方に基づいている。

 すなわち、「アメリカ発の世界恐慌が、その波及を経済のブロック化で防ごうとしたことが世界大戦を引き起こしたとの反省から、貿易による生活水準の向上、完全雇用、実質賃金増、有効需要の増加、資源の有効利用などを目的に、「関税その他の貿易障壁を実質的に軽減し、国際通商における差別的待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取り決めを締結する」(ガット協定前文)」(『共産主義運動年誌』第9号2008年)流広志「WTO体制と反グローバル運動・反貧困闘争について」53ページ)というものである。自由貿易とはいえ、国際ルールによる需要や投資や雇用や資源管理などの国際管理を目指しているわけで、今のWTOのように、市場主義的な自由貿易体制を目指したわけではない。とはいえ、すでに、世界銀行やIMF(国際通貨基金)を加えた「ブレトン・ウッズ体制」は、多国籍資本の運動にとって制約となってきたこともあり、規制緩和など投資の管理ではなく、自由などの資本の自由を拡大する形の新国際貿易ルールの必要が強調され、世銀やIMFが、まず、その魁として、新自由主義的政策を採用し、ガットの方も、WTOに改組されたわけである。

 しかし、それは、国益の衝突などによって、なかなか進まない。そのうちに、アメリカで、サブプライム・ローン破綻から金融危機、景気後退が起き、さらに原油・食料品などの価格上昇が起きて、アメリカはスタグフレーションに陥りつつある。

 私は別に岩田弘説に賛成するわけではないが、岩田説によると基軸通貨国アメリカは、「国民通貨が国際通貨たるためには、国際収支差額(流動性)を戦後のドルのように世界に供給する力(輸入等)がなければならない」(旭凡太郎「戦後マルクス主義の総括のために」同上140ページ)ということで、輸入力、あるいは資本受け入れの力によって、戦後世界経済体制を支えてきたわけであり、アメリカの輸入や投資受け入れの力の減退は、国際通貨危機、国際金融危機ひいては世界貿易体制の危機を呼び起こすことになるということである。

 1971年の金=ドル兌換の停止といういわゆるニクソン・ショックは、宇野経済学派の貨幣の成立によって、商品間の関係としての価値規定は、貨幣による積極的な働きかけによる価値規定に変わったとする説からする、貨幣=金との関係を断たれたドルの価値は、歯止めを失って、インフレを高進させる一方で、世界経済は破局に向かっているとする説は、その後の現実によって破綻した。商品価値が貨幣価値を規定するという『資本論』でマルクスが説いた説が正しかったのである。金=ドル兌換停止後、商品価値を積極的に規定するはずの貨幣=金との関係を断たれたドルは、いまだに、国際通貨として機能しているではないか!

 アメリカ経済の危機は、アメリカ向け輸出によって経済成長を続けてきた中国経済にとって打撃であるし、多くの国々にとっても打撃である。EUは、アメリカ依存からの脱却を目指してきたが、サブプライムローン破綻で、金融部門での打撃が大きく、さらに原油などの価格上昇が加わって、経済的打撃を受けている。投資先を失った投機マネーが、商品市場に流れ込んで、物価上昇に追い討ちをかけている。産油国はもちろん大もうけをしているが、その膨大なオイルマネーの有効な投資先があまりない。国内投資、建設ラッシュも続いているようである。それによって、労働力不足が起きて、家父長的なイスラム主義の規範も緩んで、女性が働きに出ることも増えているようだ。

 こうして、世界経済は、WTO体制のもとで、大きくかく乱され、揺れ動き、不安定さを増しており、それを管理する力を失いつつある。その結果、富と貧困の対立という近代的矛盾が拡大している。戦後、ソ連があった時代には、対抗上、この対立はある程度緩和されてきたわけだが、今やこの対立は、先鋭化している。ソ連崩壊からわずか17年しかたっていないというのにである。無政府的資本主義の巨大な力のおかげである。この暴風を、洞爺湖サミットでの多少の改良策、しかも投資による解決というおよそ解決とは言いがたい消極的な解決策ではどうにもならないことは明らかである。この巨大化した生産力をしっかりと統制できるような国際的な力が必要である。それは今は小さいものでしかないが、早急に、それを必要としていることは明らかである。
 

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