グルジアでの事態について
グルジア情勢は、アメリカによるグルジアへの支援、ライス長官のEU・グルジアへの派遣、グルジアのCISからの脱退決定(グルジア議会)、等々とめまぐるしく動いている。
前に紹介した対グルジア軍事侵攻にNO!署名文を下に引用しておく。
この署名文は、「ロシアによる、この恐るべき軍事攻撃は、ロシアの帝国主義的野望を明白に表しています。ロシア軍による主権国家グルジアに対する攻撃は、モスクワがソ連時代を懐かしく思い、周辺の平和な諸国をふたたび自らの支配圏に取り戻したいという熱望を持っていることのあらわれでしょう。「ロシアの周辺国がアメリカやEUのような民主主義と人道主義的な価値観を求めれば、どの国に対しても鉄槌を下す」ということを、ロシアはグルジアを侵略することで自由世界に示しているのです」という部分ではっきりと示されているように、ロシアのみが帝国主義で、それに対して、欧米を民主主義と人道主義の伝道者として描き、ロシアの侵略に対して、侵略を禁止する欧米の行動を求めている。
それに対して、天木直人氏は、「グルジア戦争は、最大の軍事覇権国家米国と、その米国に軍事的に対峙する軍事覇権国家ロシアの代理戦争である。/どちらが正しい、どちらが悪い、などという議論はまったく無意味だ。/悪しき指導者たちによって引き起こされた、およそ無益な絶対悪の戦争である」と述べている。
署名文は、価値観の対立として事態を描き、天木氏は、外交・政治問題として事態を描いていている。
「2007年11月に与党サアカシュヴィリ政権に対する野党デモの鎮圧を期にグルジア全土で非常事態宣言が発令されるなど政情不安は続き、これに対するサアカシュヴィリ政権の強硬政策は、民主化の後退を位置付けるものとなった」ということがウィキペディアにあるが、これをどう見るか? 現グルジア共和国政権は、民主主義と人道主義の価値観を持つ自由世界入りの資格が十分あると言えるのか?
『毎日新聞』は、現地取材報告として、南オセチア自治州では、オセット人の死亡者が、1600人にのぼるという現地の声を伝えている。もちろん、戦時において、双方が、情報戦を行っており、グルジア側、オセチア側が、それぞれ自分達に有利な情報をつくって流している可能性が高いので、その数字もどこまで真実を伝えているものかはわからない。
推測になるが、グルジア共和国は、トビリシなど都市部において、一定の工業・商業の発展があり、それに対して、南オセチア自治州などは、農業地域で農民の多い地方だと思われる。
「地球座」所収の「グルジア情勢にみる米ロの「縄張り意識」<里見明>」は、「メドベージェフ大統領は南オセチア情勢に関し「ロシアは歴史的にカフカス諸民族の安全の保証者であったし、今後もそうであり続ける」と語っている。帝政期から受け継いだ旧ソ連の版図を自国の勢力圏とみる強烈な縄張り意識が、この発言には色濃く投影している。/NATO拡大を急ぐ米国も、同盟国の拡大と伝統的なロシア「封じ込め」の戦略から脱却できていない。冷戦とは、ベトナム戦争のような代理戦争を除き、米国とソ連が直接、衝突することなく、ソ連の自滅で終わった「戦われなかった」戦争である。ロシアには敗者の実感が今ひとつ薄く、一方の米国も勝者として完全に安心できなかった。こうした大国の心理が、旧ソ連圏の縄張り争いに拍車をかけ、今回の「戦争」の伏線となった」と書いている。
これは、天木氏の見方に近く、ロシア対欧米の縄張り争いという見方である。言い換えれば、この戦争は、帝国主義的地球分割戦の現れだということである。
現在、世界中に軍隊を派遣して、どこででも軍事作戦を遂行できる能力を持っているのはアメリカだけだが、ロシアは、旧ソ連崩壊の混乱から回復し、経済成長し、国富を増やし、大統領に権限を強めて政治的にも安定し、世界支配のヘゲモニーをアメリカと争う力を伸ばしつつあると見てよいだろう。周辺を、欧米の属国化しているポーランド、バルト三国、ウクライナ、グルジアに取り囲まれる中で、オセット人の後ろ盾となっているのは、そうしたことなのであろう。しかし、ポーランド「連帯」労組やワレサ元議長らが、これらの国々で、自由主義的民族主義の育成に励み、そうすることによって、民族間対立を激化させ、そして階級闘争を鋭くし、階級間の矛盾を拡大させていることは、こうした紛争の火種をまき散らしていることになるわけである。ポーランドにおいて、連帯系政治勢力は、資本の自由を拡大させる政策を支持し、搾取の強化、労働者と農民の間の対立を拡大して、農民をイギリスやEUへ移民労働者・出稼ぎ労働者として追い立てている。「連帯」は、労農大衆の敵に転化しつつある。
グルジアにおいて、サーカシビリ政権に対して立ち上がった野党勢力は、かれらが握る都市に対する地方・農村・少数民族・下層の決起だったのだろう。それを徹底弾圧したことは、この政権の性格を露わにしたのだろう。そして、その政権の危機からの脱出のためには、グルジア民族主義をかき立てて、その代表者となることが必要だと考えたのであろう。
このような流動的な情勢においては、事態の性格は急速に変わる。グルジア側が停戦している中で、ロシア軍が依然として軍事行動を続けているとすれば、この戦争の性格は、ロシアによるグルジアへの軍事侵略という性格を強めていると言えるだろう。
15日の『中日新聞』によると、ロシアとグルジアが合意した「◆和平案の6原則」は、(1)武力不行使、(2)軍事行動停止、(3)難民・避難民への人道支援確保、(4)グルジア軍は常駐地域まで戻る、(5)ロシア軍は戦闘開始前の地域まで撤退、(6)南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の安全と安定についての国際協議を開始、である。
大富氏が指摘するように、ロシアは、ここでは少数民族の独立を支持しているのに対して、チェチェン独立派の独立運動を徹底弾圧している。しかし、欧米も、チェチェン独立派をテロリストと呼び、かれらを支持していない。
「チェチェン総合情報」http://chechennews.org/index.htm
13.Aug 2008 対グルジア軍事侵攻にNO!署名にご協力を
Online petition for stop the agression against Georgia
【転送・転載歓迎】少し遅くなってしまったのですが、グルジア侵攻への反対署名サイトの情報を教えていただきました。Sさんありがとうございます。
ロシア側が停戦を受け入れたという報道もあり、終息に向かっているとすればうれしいことなのですが、今回のような事態に世界中の市民が反対を伝えるということは、必要だと思いますので、ぜひ署名にご協力ください。この署名文を読んだいただくだけでも、かまいません。よろしくおねがいします。
下記のサイトから、ロシアの侵攻に反対し、平和を求める文書に署名できます。
署名サイト: http://www.petitiononline.com/557799/
ざっと訳しますと
「主権国家グルジアへの、ロシアによる非合法な軍事侵攻を止めよう」
宛先:米国大統領、米国議会、欧州理事会、欧州委員会会長、NATO事務局長、欧州安全協力委員会
2008年8月8日より世界は、独立した主権国家であるグルジア共和国に、ロシアが公然と軍事侵攻するのを目にしてきました。ロシア連邦の何千もの兵士や戦車が国際的に認められた国境を侵犯し、グルジア軍に猛攻撃を加えています。のみならず、ロシア軍機は、グルジア領空を侵犯し、紛争地域外にある、いくつものグルジアの街まちを空爆しています。この空爆により、一般市民の犠牲者が何百人も出ています。ロシアによるこの軍事侵攻の主な理由は、グルジアがアメリカやEU諸国と緊密な関係を築き、自由で民主的な社会を築こうとしていることと関係しています。ロシアによる侵攻は、グルジアがNATOとEUに加わることを阻止しようという、やぶれかぶれの行動です。
ロシアによる、この恐るべき軍事攻撃は、ロシアの帝国主義的野望を明白に表しています。ロシア軍による主権国家グルジアに対する攻撃は、モスクワがソ連時代を懐かしく思い、周辺の平和な諸国をふたたび自らの支配圏に取り戻したいという熱望を持っていることのあらわれでしょう。「ロシアの周辺国がアメリカやEUのような民主主義と人道主義的な価値観を求めれば、どの国に対しても鉄槌を下す」ということを、ロシアはグルジアを侵略することで自由世界に示しているのです。
アメリカとEUにとって、真価を問われる時が来ています。ロシアの侵略を止めるため、グルジアはアメリカやヨーロッパの友人の「助け」を必要としているのです。ロシアのこの図々しい軍事攻撃を放置すれば、将来、この地域だけでなく、それ以外の地域の民主主義を損なうことになるでしょう。また、アメリカやEUが何もしなければ、今後、他の地域へのロシアの軍事侵攻にも「ゴー・サイン」を与えることになります。
私たちは、アメリカ合衆国大統領とEU諸国の指導者たちに、グルジアを救い、ロシアが停戦し主権国家グルジアから軍を引き上げるよう、ロシア政府に現実的な圧力をかけることをお願いするものです。
心をこめて
署名した人たち
***
右下のSincerely の下、undersignedをクリックすると、署名した人のナンバーが出ます。それぞれのナンバーをクリックすると、その人の名前――と場合によってはショートメッセージも――が見れます。
また下の真ん中の、click here to sign petitionという灰色長方形のボタンをクリックすると、署名ページに飛びます。ローマ字で自分の名前、そしてメールアドレスを入れれば終わりです。
コメントや自分の国籍も、入れたければ入れることができます。
その下のEmail Address Privacy Option:というのは、何もしなければPrivateになっているので、メルアドが公開されません。公開したければ、一番下のpublicを選びます。
***
以上です。
署名サイト: http://www.petitiononline.com/557799/
9.Aug 2008 対グルジア軍事侵攻に反対+アムネスティ声明Ingushetia: Detention and beating of human rights activist must be investigated
ロシア軍の対グルジア軍事侵攻が大変なことになっています。グルジアが南オセチアで先に手を出してしまったという報道もあり、きっかけはまだわかりませんが、他国(この場合グルジア)に軍隊を派遣して戦闘するのは、侵略そのものです。(メディアははっきり「侵略」ないし「軍事侵攻」と書くべきだと思います)
今回の事件の背景には、グルジアのNATO加盟を止めたいというロシア側の思惑と、それに沿った未承認国家支援策があります。しかし南オセチアの独立を支援するなら、チェチェンの独立も許すべきでしょう。
EUは、欧州安全保障協力機構(OSCE)とともに、監視団の派遣を模索しています。現在のような事態が続けば、問題は今以上にこじれます。今のところ、この監視団の派遣に期待するしかありません。
さて、このところ地方に行っていたのでフォローできていませんでしたが、イングーシ共和国でのNGOワーカーの拉致事件について、アムネスティが声明を出しました。こちらもご一読ください。(大富亮)
「ズラブ・ツェチョーエフはマガスにあるロシア連邦保安局(FSB)の建物に連れて行かれ、その地下室で拘禁された疑いがある。伝えられるところでは、地下室で彼は、法執行官から殴られ虐待を受けた。・・・ズラブ・ツェチョーエフの拘禁が広く知られるようになると、彼は釈放された。しかし釈放にあたり、もしツェチョーエフが拘禁されたことについて申し立てたり、MASHRの仕事を辞めなかったり、9月までにイングーシから去らなければ、彼とその家族を殺すと脅しをかけたと伝えられている」
天木直人ブログ 2008年08月15日
グルジア戦争ですべてを失ったブッシュ大統領
15日の日経新聞は、13日ホワイトハウスでグルジア戦争に関する声明を発表するブッシュ大統領とライス国務長官の写真を掲載している。
ブッシュ政権の末路を象徴するこれほど皮肉な写真はない。
繰り返して私はこのブログで書くが、グルジア戦争は、最大の軍事覇権国家米国と、その米国に軍事的に対峙する軍事覇権国家ロシアの代理戦争である。
どちらが正しい、どちらが悪い、などという議論はまったく無意味だ。
悪しき指導者たちによって引き起こされた、およそ無益な絶対悪の戦争である。
それにしてもブッシュ大統領は愚かだ。
ブッシュ大統領の8年間は、イスラエル、ネオコンに引っ張られた誤った中東政策のため、イラク攻撃を始め、テロとの戦いを引き起こし、そして国際社会を分断させた。
ブッシュ大統領の8年間はまた、グローバリズムと言う名の新自由主義によって内外に格差社会をつくり、行き過ぎた金融資本主義によって世界経済を不安定化させた。その末路がサブプライムローン問題の炸裂である。
そして今度のグルジア戦争である。
もしブッシュ大統領が冷戦後の安定した米ロ協力関係を構築できていたのなら、そこに一つの評価を認められたはずである。
しかし、ブッシュ大統領は自らの手で、その可能性を閉ざした。それどころか「新たな冷戦」関係をつくってしまったのだ。
これでブッシュ大統領の8年間は、文字通り評価すべき何物もない歴史的な不毛の8年間となった。
それにしてもライス国務長官は無能だ。
彼女はロシアの専門家ではなかったのか。ブッシュ大統領の教師ではなかったのか。
ライス国務長官の虚像がついに白日の下に晒された。
もはやすべての側近が去っていった裸の王様ブッシュ大統領に、最後まで忠誠を尽くした、ただの無能な追従者でしかなかったということだ。
そんなブッシュ大統領を正しいと叫び、日本をブッシュ大統領の米国に売りわたして国民を塗炭の苦しみに突き落とした小泉元首相の責任を、今こそ我々は追及しなければならないのだ。
その追求を恐れて小泉元首相は政策を語らないのだと思う。
にわかボーリング愛好家になってごまかそうとしているに違いない。
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『毎日新聞』グルジア:南オセチア州都破壊 住民「露軍は解放者」
ロシア軍兵士のロケット砲で完全に破壊されたグルジア軍の戦車=ツヒンバリで2008年8月13日、杉尾直哉撮影
13日、ツヒンバリで、グルジア軍のロケット弾の攻撃で破壊された部屋を見せる地元住民=杉尾直哉撮影
【ツヒンバリ(グルジア南オセチア自治州)杉尾直哉】ロシア、グルジア両軍が激しく交戦したグルジア南オセチア自治州の州都ツヒンバリに13日入った。欧州連合(EU)の和平案にグルジア、ロシア双方が合意する中、グルジア軍の攻撃にさらされた住民らは街中を行き交うロシア軍装甲車に手を振り、グルジア軍を追い出した「解放軍」として歓迎していた。
露国防省の外国人記者向け現地視察に英BBCなど9社の特派員15人と参加。日本からは毎日新聞だけだった。ツヒンバリはロシア軍が完全に掌握。戦車の砲撃で破壊されたロシア軍平和維持部隊の駐屯地やロケット弾の猛攻を受けた住宅密集地、ロシア軍の歓迎ムードなど、欧米メディアが伝えきれない現実の一端が見られた。
「ロシア軍が助けてくれた」--。砲撃の衝撃で自宅アパートの一部を破壊された女性、フェーニャ・ジャビエワさん(60)はそう語った。男性のユーラさん(70)も「ロシア人が来てくれて本当にうれしい。そうでなかったら街は消滅していた」と話した。
ロシア当局によると、今回の軍事衝突で、南オセチア住民約1600人の死者が出たという。この日までにすでに遺体が回収されたといい、街頭では目にすることはなかった。
◇木立の影に戦車
欧州連合(EU)の仲介で停戦状態となり、激戦地だったグルジア南オセチア自治州ツヒンバリは13日、一応の落ち着きを取り戻しつつあった。だが、ツヒンバリの北約20キロ地点ではロシア南部ウラジカフカスへ続く道の木立の下に、ロシア軍戦車数台が隠すように置いてあった。自走迫撃砲などの軍事車両はあちこちにある。ロシア軍はいつでも本格攻撃を再開できる臨戦態勢にあった。
ツヒンバリにはウラジカフカスからバスで向かった。ツヒンバリの北約15キロで軍の護衛付きの装甲車3台に乗り換えさせられた。軍広報担当は「途中、グルジア軍が支配する地域を通過するので危険だ」と説明した。
ツヒンバリでは軍施設や州政府庁舎、大学のほか、州立病院もグルジア軍の攻撃対象になっていた。また、グルジア兵が住民を捕まえ、パスポートでグルジア人でないことを確認した上でその場で射殺した、と証言する市民もいた。「住民抹殺が狙いだ」「サーカシビリ(グルジア大統領)は戦争犯罪者だ」と、街で会った誰もが考えていた。
だが、こうした声は、サーカシビリ政権支持でほぼ一致している欧米諸国には伝わりにくいのが現状だ。
◇「残虐行為」目撃者なく
この日、住宅地区には、ロシア最高検察庁内務省の捜査官のグループが訪れていた。「戦争犯罪」の証拠を調べるためだ。
「グルジアの戦車が老人や子供をひき殺した」「グルジアがダムを破壊し、集落を水没させた」--。これまでに報道されてきた話をあたかも自分が見たかのように話す人も多かったが、「目撃した」という人はいなかった。
戦闘発生の原因や戦場での残虐行為などをめぐり、当事者間の非難合戦が繰り広げられる中、ロシア軍は今後も積極的にプレスツアーを展開する方針だ。
内外知性の眼―時代の流れを読む
<08.08.13>グルジア情勢にみる米ロの「縄張り意識」<里見明>
<さとみあきら:ジャーナリスト>
▽危険な男
グルジアのサーカシビリ政権が、八月七日深夜から南オセチア自治州の州都ツヒンバリを総攻撃した。なぜ自国領を攻撃するのかと言えば、南オセチアが独立宣言をして、事実上ロシアに帰属、ロシア軍が駐留しているからだ。これに対して、友軍を支援するため、ロシアの部隊が国境を越えてなだれ込んだ。ロシア軍は新たに軍事介入したというより、もともといる部隊を急きょ増強したというのが実態に近い。しかし、世界の人々は、南オセチアがいったいどこにあるのか、ほとんど知らない。ロシア軍が駐留していることはなおさら知らない。だから、新聞には「ロシアが軍事介入」との見出しが躍る。
サーカシビリ大統領は、北京五輪の開会に合わせて軍事行動を起こし、ロシアを世界の悪者にすることに成功した。南オセチアの州都ツヒンバリから素早く撤退を宣言し、南オセチアをロシア軍の「占領下」に置き、ロシアの侵略性を印象付けたのも、国際世論を意識した戦術とみられる。
サーカシビリ大統領は、二〇〇三年十一月に当時のシェワルナゼ大統領を辞任に追い込んだ民衆による「バラ革命」を指導して政権の座についた。バラを持った支援者を率いて国会議場に乱入、シェワルナゼを追放した行動力は群を抜いていた。米国の法律事務所で働いていたインテリだが、扇動と挑発に長け、勝負どころで思い切った動きをする。シェワルナゼは「ミーシャ(サーカシビリの名前ミハイルの愛称)は危ない男」と言ったが、今回もその危うさと勝負勘が緒戦で発揮された。
▽情報戦
軍事力で圧倒したロシアも当初の情報戦では分が悪かった。いくら南オセチアが事実上、ロシアの統治下にあっても、コソボとは異なり、国際社会の大方が独立を承認した訳ではない。国際法上は厳然たるグルジアの領土なのだ。そこに、軍隊を送り込んだばかりか、南オセチア以外のグルジア領も爆撃し一般市民の犠牲を出した。
ロシア外務省は、自国の行動の正当性を世界に訴えるよう各国の在外公館に指示した。東京の駐日ロシア大使館でも、ガルージン臨時代理大使が十一日に急きょ記者会見をした。大使は、南オセチアの住民の多くがロシア国籍をもっているので、自国民を守るのは、国際法で認められた当然の権利であると主張した。また、グルジア部隊はロシア軍将兵やオセチア人住民に対して「民族浄化」を展開していると非難した。旧ユーゴ紛争で欧米の軍事介入の根拠となった民族浄化を、今度は逆手に取って持ち出したのだ。
外交や防衛の実権を握るプーチン首相は、南オセチア以外での軍事行動を批判したブッシュ米政権に「白を黒とすり替え、侵略者を侵略の犠牲者にするシニカルな能力に驚く」と感情的に反応した。
▽ロシア化政策
どちらが侵略者か、という問題を論じるためには、時計の針を旧ソ連崩壊前の一九九〇年まで戻さねばならない。民族問題が各地で噴出したこのころ、南オセチアでも住民のオセット人がロシア領の北オセチア共和国との統合を求めて、グルジアの武装部隊と衝突を繰り返した。ソ連が崩壊、ロシアもグルジアも独立国家となった一九九二年六月にようやく、ロシアのエリツィン大統領、グルジアのシェワルナゼ国家評議会議長に南北オセチアの指導者を加えた四者の和平合意が成立した。
この合意でロシアとグルジアによる南オセチアの平和維持軍が創設されたので、ロシア軍の「合法的」な駐留が始まり、今に至っているわけだ。
平和維持軍は本来、中立の国や機関の部隊が構成するべきだが、ロシア軍はそうではなかった。南オセチアがロシアへの編入を求めているのだから、平和維持とは建前ばかりで、グルジアと対立する南オセチア政府の守護者として機能するようになる。ロシア政府は南オセチアの「ロシア化」を進めるため、ロシア国籍を、ばらまくように住民に付与した。
今回、ロシア軍が介入の根拠として挙げた「自国民の保護」は、グルジア領の南オセチアの住民でありながら、このような経緯でロシア国籍ももつようになった人々が対象なのだ。南オセチアの「ロシア化」は現在のココイトイ大統領の下でますます進み、通貨もロシアのルーブルが主に流通しているのが実態だ。南オセチアはグルジアの大統領といえども、自由に足を踏み入れることはできない事実上の治外法権地帯となっていた。
▽NATO加盟問題
旧ソ連崩壊後、南オセチアでは、紆余曲折はあったものの、南オセチア政権を守るロシア軍とグルジア部隊の対立、衝突という基本構図が定着していた。とはいえ、実際の支配権は南オセチアとロシアが握り、グルジア側を押さえ込んでいた。しかし、最近はロシア部隊とグルジア部隊の挑発合戦がエスカレートしていた。グルジア軍のツヒンバリ進攻は、その延長線上に起きた。
対立が沸騰点を超えたきっかけの一つは、コソボ独立に刺激された南オセチア独立気運の再燃である。しかし、さらに大きな力学はグルジアのNATO加盟問題に象徴される米ロの「縄張り争い」だ。旧ソ連圏で親欧米政権のグルジア、ウクライナのNATO加盟は、時間の問題となりつつある。資源をロシアに依存する欧州は、ロシアの顔色を見つつ両国の早急な加盟に慎重だが、米国のブッシュ政権は、両国のNATO加盟を急いで実現させようと露骨に動いてきた。グルジアでは米ロの合同軍事演習が行われ、米軍の専門家がグルジア軍の訓練を担当、ロシアを刺激している。
こうした流れの中で、南オセチアは、同じようにグルジアから独立を目指す黒海沿岸アブハジア自治共和国とともに、グルジア政権をけん制する道具として、ロシアに重要視されるようになった。「NATOに入るなら、南オセチアとアブハジアを完全独立させる」とのメッセージが発せられ、駐留ロシア軍側からのグルジア部隊挑発も盛んになっていた。今回のツヒンバリ進攻は、今度はグルジア政権がロシアの侵略性を世界に示し、NATO加盟を急ぐ根拠にするために、南オセチアを利用した面を見逃すことはできない。
▽納得できない敗者 安心できない勝者
ロシアにとって、ウクライナとグルジアのNATO加盟と、米ミサイル防衛の東欧配備は、絶対に超えて欲しくない一線なのだが、ブッシュ政権はその声に真面目に耳を傾けようとしなかった。ロシアから見れば「我々は共産主義を捨て、民主主義と市場経済の価値観を共有するG8の一員となったのに、ロシアを仮想敵国とみるNATOをなぜ、国境に近づけるのか」という反感と失望感が深まるばかりだ。
南オセチアを超えて広範囲なグルジア本土攻撃に踏み切ったロシアには、できればサーカシビリ政権を倒して、もっとロシアの立場に配慮する政権に代える道を探る思惑もありそうだ。メドベージェフ大統領は南オセチア情勢に関し「ロシアは歴史的にカフカス諸民族の安全の保証者であったし、今後もそうであり続ける」と語っている。帝政期から受け継いだ旧ソ連の版図を自国の勢力圏とみる強烈な縄張り意識が、この発言には色濃く投影している。
NATO拡大を急ぐ米国も、同盟国の拡大と伝統的なロシア「封じ込め」の戦略から脱却できていない。冷戦とは、ベトナム戦争のような代理戦争を除き、米国とソ連が直接、衝突することなく、ソ連の自滅で終わった「戦われなかった」戦争である。ロシアには敗者の実感が今ひとつ薄く、一方の米国も勝者として完全に安心できなかった。こうした大国の心理が、旧ソ連圏の縄張り争いに拍車をかけ、今回の「戦争」の伏線となった。
最近、あるロシア人から「日本人は、米国との戦争は原爆で終止符を打たれたが、ソ連とは正規の戦争がなかったので、ソ連に敗れたとは考えていない。だから、勝者の権利のごとく北方領土を要求するのだ」と聞かされた。冷戦に本当に負けたとは思わないロシア人の心理も同じようなものかもしれない。(了)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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コメント
米イ悪の枢軸による第3次大戦へ向けたグルジア戦争の全体像
イスラエルの最新兵器と訓練を受けたグルジア軍の南オセチア州に対する侵攻で始まったグルジア戦争には、世界再分割の戦略がある。
それは、シオニストのイスラエルと世界最大のテロリスト国家米国の悪の枢軸が目指す、かつて失われたユダヤ人の祖国ハザール帝国(ウクライナ+ロシア南部を中心とする広大な領土)の再建という野心的な戦略だ。
しかし米ブッシュ政権はすでに、銀河連邦新指導部との協定に違反して日本の岩手県沿岸北部地震をアラスカ配備の地球破壊兵器HAARPで08.7.24に起した結果、世界的に展開配備した虎の子の核兵器を全部同じ日に一掃されて、無力化している。
イスラエルと米ブッシュ政権は、このグルジア戦争にEUとNATOと巻き込んで有利な力関係で情勢打開を図ったが、サルコジが訪ロしてメドベジェフと6項目で合意した結果、グルジア戦争の戦略計画が一先ず挫折した。
詳細は:
http://gold.ap.teacup.com/tatsmaki/55.html
投稿: たつまき | 2008年8月16日 (土) 00時50分