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オバマ大統領就任演説と「独立宣言」

 2009年1月20日、アメリカの第44代大統領に、黒人のオバマが就任した。

 オバマは、就任演説で、宗教的多様性、民族・人種・文化の多様性を、アメリカ建国の理念における自由主義的伝統の力に基礎づけられているというようなことを述べた。

 ヨーロッパ大陸での宗教的迫害を逃れてきたキリスト教の新宗派の移民共同体から始まったアメリカの移民の歴史は、大英帝国の植民地建設の歴史でもあった。しかし、移民たちは、旧帝国で、カトリックとプロテスタントの折衷として創作されたイギリス国教会が支配する大英帝国による植民地統治と収奪に対して、抵抗を始める。そして、フランスの支持と支援を受けながら、大英帝国に対する独立革命戦争に立ち上がる。

 ウィキペディアによると、アメリカでは、この戦争を、The American Revolution(アメリカ独立革命)若しくはthe Revolutionary War(革命戦争)と呼び、イギリスでは、American War of Independence(アメリカ独立戦争)と呼んでいるという。アメリカ側から見れば、これは、革命もしくは革命戦争であり、イギリス側から見ると、植民地の宗主国からの独立戦争なわけである。アメリカ側は、革命、イギリス側は、戦争、である。

 オバマが就任演説で立ち戻ることを呼びかけた「アメリカ独立宣言」は、まず、独立の正当性を明らかにしなければならないと前置きして、自明のこととして、「すべての人は生まれながらにして平等であり、すべての人は神より侵されざるべき権利を与えられている、その権利には、生命、自由、そして幸福の追求が含まれている。その権利を保障するものとして、政府が国民のあいだに打ち立てられ、統治されるものの同意がその正当な力の根源となる」と、自然権、社会契約思想を基本にすえている。

 続いて、「いかなる政府といえどもその目的に反するときには、その政府を変更したり、廃したりして、新しい政府を打ちたてる国民としての権利をもつ」として、革命権を認めている。

 革命権を軽々しく行使すべきではないと注意した上で、「アメリカ独立宣言」は、「権力の乱用や強奪が長くつづき、絶対専制支配の下に置こうとする意図が明らかで、その同じ目的をずっと追求しようとしているときには、そんな政府をなげすて、自分たちの将来の安全を新たに防護してくれる政府を求めるのが義務である」と革命権を再強調する。そして、独立革命を起こさざるを得なくなった宗主国イギリスが行った「権力の乱用や強奪」そして「絶対専制支配の下に置こうとする意図」を列挙する。そして、アメリカ合衆国の名で、独立を高らかに宣言している。

 オバマは就任演説で、始めの方で、「米国が前進し続けてきたのは、指導者たちの技量や洞察力のためだけではなく、「われら人民」が先人の理想と建国の文書に忠実であり続けたからでもあります」(在日米大使館HP)と述べている。建国の文書に、アメリカ合衆国憲法をも含めているのかどうか具体的にははっきりしないが、「先人の理想」の継承として、それを含めているのかもしれない。

 オバマは、「建国の父たちは、私たちが想像もできないような危険に直面しながら、法の支配と人権を保障する憲章を起草しました。そしてこの憲章は、その後いくつもの世代が血を流しながら拡充してきました」と言うが、就任演説の中に、「建国の父」が「独立宣言」に記した革命権という言葉がない。アメリカ建国の理念は、法の支配と人権の保障、信教の自由、などで、革命権が消えてしまっている。

 オバマが、合衆国憲法そのものというよりも、後に第3代大統領になるトーマス・ジェファソンが推進して合衆国憲法の修正条項として入れられた「権利章典」をとくに重視していることには、彼の政治的立場や思想を表しているように見える。

 しかし、憲法にもはっきりと記されている民兵の規定は、もともと、植民地時代に、正規軍を持たず、民兵しかなく、そして、独立革命戦争を、その民兵に依拠して戦った歴史に起源を持っており、西部邁流に言えば、アメリカが革命国家であることの歴史的証である。

 オバマが就任演説の中で、独立革命戦争、南北戦争、公民権運動などの革命的戦いに言及していること、そして、また、現在、そして、これから、そうした革命の伝統の継続、再戦闘を呼びかけていることは、アメリカという国や社会をしっかりと理解する必要を感じさせる。

 アメリカの歴史や社会や政治や思想や文化などについて、しっかりと見ていこうと思う。

プロジェクト杉田玄白HP「独立宣言の翻訳」
http://hw001.gate01.com/katokt/independence.htm

独立宣言

katokt訳 (katoukui@yahoo.co.jp)

(c) 2002 katokt プロジェクト杉田玄白正式参加作品 (http://www.genpaku.org/)
本翻訳は、この版権表示を残す限りにおいて、訳者および著者にたいして許可をとったり使用料を支払ったりすることいっさいなしに、商業利用を含むあらゆる形で自由に利用・複製が認められる。(「この版権表示を残す」んだから、「禁無断複製」とかいうのはダメだね、もちろん)

 人類の歴史のなかで、ある国民と他の国民を結びつけてきた政治的なつながりを解消し、世界の国々のなかで自然の法則と神の法則が与えてくれる、独立した対等な立場をとることが必要になる場合がある。その際に人類のいろいろな意見にきちんとした敬意をはらうには、分離へと駆りたてられる原因を述べなければならないだろう。

 われわれは、以下の事実を自明のことと考えている。つまりすべての人は生まれながらにして平等であり、すべての人は神より侵されざるべき権利を与えられている、その権利には、生命、自由、そして幸福の追求が含まれている。その権利を保障するものとして、政府が国民のあいだに打ち立てられ、統治されるものの同意がその正当な力の根源となる。そしていかなる政府といえどもその目的に反するときには、その政府を変更したり、廃したりして、新しい政府を打ちたてる国民としての権利をもつ。新しい政府は、国民の安全と幸福が最大となるような原則の基盤の上に打ちたてられ、また国民の安全と幸福が最大となるような形の権力の組織化を図らなければならない。実際には分別を働かせれば、長いあいだ確立されてきた政府は、軽々しい一時的な理由で取って代わられるべきではないということはわかるだろう。従って今までの経験では、人類は不満がある政府を廃止して誤りを正すよりは、その弊害が耐えられる限りは耐える傾向にあるのだ。しかし権力の乱用や強奪が長くつづき、絶対専制支配の下に置こうとする意図が明らかで、その同じ目的をずっと追求しようとしているときには、そんな政府をなげすて、自分たちの将来の安全を新たに防護してくれる政府を求めるのが義務である。これこそが、この植民地が耐えしのんできたことである。そしてこのような必要性に迫られて、現在の政府を変えなければならなくなったのだ。現在の英国国王による歴史は、傷つけ、奪ってきたことの繰り返しであり、その直接の目的は、これらの州への絶対専制を打ちたてることである。これを証明するために、偏見のない世界へ事実を知らせたい。

 国王は、もっとも健全かつ公共の福祉に必要な法律に異議をとなえてきた。

 国王は、自分が承認するまでその執行をさしとめなければ、緊急かつ差し迫った重要性をもつ法律を植民地の総督が通過するのを禁じた。さしとめておいて、法律に注意をはらわず完全に無視してきたのである。

 国王は、国民が立法府における代議権を放棄しなければ、その国民の広大な地域を調整する法律を通すことも拒否してきた。その権利は国民にとっては大事なものであり、専制君主のみにとって問題となるものである。

 国王は、国民が根負けし、自分の政策を守るようにする目的だけのために、いつもとは違った不便で公文書の保管場所からも離れたところで立法府を召集した。

 国王は、国民の権利を侵害するのに断固として反対したという理由で、下院を何回も解散してきた。

 国王は、解散の後で、立法府を廃止することはできないので、その行使を一般の人々に戻すことによって、選挙を行うことを長い間拒否してきた。合衆国はそのあいだ、外国の侵攻や国内の動乱の危険にさらされてきた。

 国王は、合衆国の人口の増加をなんとか押さえようとしてきた。そのために外国人の帰化の法律に反対し、合衆国への移民を奨励する法律が通過することを拒否し、新たに土地を取得する条件を厳しくした。

 国王は、司法権を確立する法律へ異議をとなえることで、司法の執行を妨害してきた。

 国王は、在職期間や給与の額や支払方法で、司法を自分の意のままになるようにしてきた。

 国王は、多くの官職を設け、多くの役人をわれわれ国民をこまらせるために派遣してきており、その財産を食いつぶしている。

 国王は、平時でさえ、立法府の同意なしにわれわれのところに軍隊を駐留させている。

 国王は、軍隊に文民統制から独立し、優越した力を与えるようにしてきた。

 国王は共謀して、憲法が及ばない、法律によっても認められないような司法権にわれわれを従わせるようにしてきた。そしてうわべだけの立法行為による、次のような法律に承諾を与えたのだ。

 大規模な軍隊がわれわれのところに駐留する法律

 州の住民に対して犯した殺人の罪から、模擬裁判で軍隊を保護する法律

 世界中とのすべての地域との貿易を遮断する法律

 われわれの同意なしに課税をする法律

 われわれから多くの事件において、陪審による裁判をうける利益を奪う法律

 みせかけの罪で裁判にかけるために、海を越えてわれわれを移動させる法律

 アメリカに隣接した地域でイギリスの法律が自由に執行されるのを廃し、そこに独裁的な政府を樹立し、その政府がこのアメリカの植民地にも同じような独裁制を導入しようとする例に、また格好の手段となるように、国境を拡大しようとする法律

 われわれの憲章を奪い、もっとも大事な法律を廃止し、根本から政府の形をかえる法律

 われわれアメリカの立法府の活動を一時停止させ、みずからが今後すべてのケースにおいて立法権をもつとした法律

 国王はアメリカが保護対象外だと宣言し、宣戦布告することでアメリカの統治を放棄した。

 国王はアメリカの海を略奪し、沿岸地域を荒し、町を焼き払い、多くのわれわれアメリカ国民を殺した。

 国王は、現在大規模な外人傭兵部隊を派遣し、死と破壊と暴政を全うしている。それらは、野蛮な時代の残虐さや裏切りにも匹敵するほどの状況の中で始まっていて、十分に文明化した国の指導者としてはふさわしくないことである。

 国王は、公海上で捕虜にしたアメリカ市民たちに武器をとって、アメリカと戦い友人や同朋の死刑執行人になるのか、自分で自分の命を絶つのかを強制してきた。

 国王はアメリカで内乱が起こるように扇動し、辺境の地に住む人々や残酷な野蛮人のインディアンを育成しようとしてきた。彼らのよく知られた戦いの掟は、年齢や性別や状態に関わらず無差別に殺すというものである。

 このような圧制のあらゆる段階で、われわれはできる限り丁寧な言葉で、それらが取消されることを嘆願してきた。われわれがくりかえし嘆願してきたことは、ただくりかえし傷つけられることでしか報いられなかった。専制者であるかのような全ての行為により、その性格が特徴づけられる国王は、自由な人々の統治者としてはふさわしくない。

 われわれは同胞のイギリス国民が注意をはらってくれることを望んでいるだけではなく、イギリスの立法府がわれわれに不当な司法権をかざそうとするのを折にふれ警告してきた。われわれは、イギリス国民にわれわれが移民して、ここに移住した状況を思い起こさせてきた。われわれは彼らの正義心、そして度量の大きさに訴えかけてきて、われわれの間のつながりや交流を断ち切ってしまうようなこれらの略奪行為をやめるように、血縁の結びつきをつかって思い起こさせてきた。しかしイギリス国民もまた、正義と血縁関係にもとづく声に耳を傾けてはこなかった。だから、われわれは分離を宣言し、イギリス国民に対しても、世界の他の国々と同様に、戦時には敵に、平和時には味方になる必要性に従わざる得ない。

 だから、われわれはアメリカ合衆国を代表して、大陸会議を召集し、われわれの意図が間違ってないことを世界のすぐれた司法にアピールし、アメリカ植民地の善良な国民の名前と権威において、厳粛に次のことを出版し宣言する。アメリカ植民地は自由で独立した国家で、また権利として自由で独立した国家であるべきである。アメリカ植民地は、イギリス国王に対するあらゆる忠誠の義務を免れる。アメリカ植民地と英国との全ての政治的なつながりは完全に解消し、また解消されるべきである。そして自由で独立した国として、戦争をはじめ、平和を締結し、同盟をむすび、通商を開く全ての権利と、独立した国家が当然行う権利をもつ全ての物事を実施する権利をもつ。この宣言を支持するために、神の摂理による加護を強く信じて、われわれはお互いの生命と財産、そして名誉にかけて相互に誓いをたてる。

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