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アメリカ現代思想理解のために(11)

  アーレントの自由論の特徴を、仲正氏は、複数性にみている。

 アーレントは全体主義が抑圧する「自由」の本質を、「複数性plurality」あるいは「人々の間の運動の空間soace of momemento betweenn men」と特徴付けている。つまり、均質的な思考や行動パターンの人たちだけでなく、様々なタイプの人たちが存在し、相互作用することによって世界に絶えず変化があり、多様性が生まれるような状態が自由である。その逆に、全ての人間が集団として文字通り“一体”となり、動物の群のように、あるいはまるで「一人の人間One Man」のように均質的な振る舞い方をするのが、全体主義社会である。したがって、アーレントにとって「自由な社会」を守ることは、各人が様々な仕方で自己形成しながら、交渉し合うことを可能にする「複数性」を守ることである」(46~7頁)

 これらは、弁証法を知る者なら、一方と他方が相互に連関し合っている、あるいは相互浸透して統一されている過程的状態であることがわかる。一と多についての、ヘーゲルの「エンチュクロペディ」の記述を見れば、そのことがわかる。多様性と一性は、このように切り離されて、相互の統一を見失うと、わけがわからなくなる。それは、一と多は、関係だからである。これは、磁石が、S極だけで成り立たず、N極と両極があってはじめて磁性があるのと同じである。N極がなくなることは、同時にS極がなくなることで、それによって、それは磁石でなくなる。つまり、磁性を失う。関係というのは、こういうものである。例えば、アメリカは、アメリカ市民の多様性としての「自由」の対極に、君主=大統領という一者One Manがある。そういう関係がある。

 大統領は、建国からしばらくは、今ほどの権限を集中していなかった。独立戦争の際には、戦争遂行の最高機関は、連合議会であり、それが、ワシントンを軍事司令官に任命したが、彼も、連合議会の一員として振る舞った。アメリカ大統領は、その後、長く、党派のナンバーワンではない者が正式候補となるという習慣が続いたという。今のように、アメリカ大統領が、一身に強大な権限を集中するようになるのは、先の戦時体制構築の過程においてである。

 仲正氏は、アーレントの複数主義を、多元主義pluralismと呼び、その中に位置付けている。そして、アイザイア・バーリンの「価値多元主義value pluralism」を彼女と近しい政治思想の持ち主として紹介している。

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