届かない定額給付金
先日、フランスのハウジングプア問題を描いた映像を観た。
最近、フランスで増えている旧植民地からの移民労働者が、公営住宅にも入れないため、職もないという悪循環に陥っているので、空きアパートを占拠する闘争を行った様子を映したものである。
移民労働者といっても、もちろん不法移民である。この闘争に参加しているのは、女性が多かったのだが、彼女たちは、ハウスキーパーなどの雑業に従事している。パリの民間アパートにはけっこう空きが多いにもかかわらず、家主は、彼女たちの足元を見て、家賃を高めにしている。したがって、彼女たちは、職を失えば、ただちに住むところを失うことになる。もちろん貯えなどわずかしかできない。それをアピールするために、こうした闘争が行われているわけである。
日本でも似たような情況になっているが、だからといってこういう闘争戦術を取れるということにはならないだろう。しかし、職と居住と貧困と差別がつながっているということをこの映像は示していた。旧植民地出身者ということで言えば、植民地支配の清算とかその保障とかいう観点からも事態を見なければならないだろうが、それは直接には描かれていなかった。ただ、闘争の現場では、イスラムの音楽が流され、文化とともに、権利を主張していて、そこには、生存権から住居権から労働権から文化権から、いろいろな総合性を持った社会性の創設という志向とエネルギーを感じた。
下の記事は、麻生の人気取りのばらまき生活給付金が、結局、住所の明確な人々にまでしか渡らず、住所不定の野宿者やネットカフェ難民などには渡らなかったこと、つまりは、緊急にそういうお金を必要とする人たちには渡っていないことを示している。定額給付金をめぐる議論では、上層が受け取るのは公平かどうかとか、自主的に受け取りを拒否するかとか、上の方の態度や反応ばかりが議論された。居住権の保障なしに、生存権も保障されないということが、フランスの例でも示されている。
それと関連して、デヴィッド・ハーヴェイの『パリ』という本を読んで大変面白かった。ハーヴェイは、フランスの1848年革命がナポレオン三世の第二帝政に帰着する中で、このサン・シモン主義者の皇帝が、オスマンに命じて行ったパリの都市大改造計画が、資本、とりわけ、金融資本の街へとパリを変えていく様子を、バルザックやフローベルの小説や絵画などの象徴分析を用いて分析し、そういうイマージュの空間化に対して、それに対抗する様々な対抗空間の創設を通じて、1871年のパリ・コミューンが準備されていく過程を描いている。イメージや象徴を配置して、金融資本の支配と権力をうち立てる過程に対して、それに反発する産業ブルジョアジーや女性プロレタリアートの姿を描いている。それは、想像や象徴や表象をぶつけ合う闘いでもあり、そうして感情レベルでの闘争の過程であった。王党派支持者のバルザックは、王党派が基盤とする農村地主の感情生活を理想として描き、パリの雑多な階級階層のひしめき合う都市生活者をエゴイストの群れとして描いている。例えば、『ゴリオ爺さん』では、フランス革命に参加して、一代で製粉業者として、つまりは産業資本家として財を成した職人上がりのゴリオ爺さんは、妻亡き後、大切に育ててきた二人の娘を新興の金融貴族に嫁がせるが、娘たちは、過去の人に追いやられた父親に金の無心をするばかりで愛情を返さず、ゴリオ爺さんは、財産の多くを娘に与えて自らは安下宿に引っ越して、つつましく暮らし、ついには娘に看取られることなく、死ぬのである。彼が住んだ安下宿のある一角は、教会に挟まれた馬車も通れないような急坂の路地の底にあるところにあった。
この頃のパリの女性の現実について、ハーヴェイは、データをも示しながら、ほぼ職業から締め出されていて、教育を受けた女性なら家庭教師、そうでなければ裁縫師や家政婦などわずかな働き口しかなく、結婚は生活の必要であったことを示してる。しかし、既婚女性が離婚すると、これらの働き口ぐらいしかなく、しかも、賃金は安かった。だから、娼婦になる者も多かったという。金持ちや貴族の愛人というのも、比較的実入りのいいものでありえたという。それに、地方から来る学生の世話をするという仕事もあったという。しかも、産業の必要と男性労働者の賃金を抑え、抵抗を抑えつけるために、女性労働者をスト破りとして雇い入れることも行われるようになった。女性は、男性の下で従順に家庭のことに専念すべきだという考えが、プルードンなどによって広められた。しかし、ハーヴェイによると、そうした考えには、男性労働者はあまり染まらず、むしろ、女性労働者の賃金や待遇の改善を要求したという。しかし、全体としては、女性労働者を家庭に引き戻し、男の支配の下に従順な妻としておくべきだとする考えは、広まっていった。しかし、フェミニストの一部は、女性連盟を組織して、パリ・コミューンに参加していく。
山谷における取り組みとして、空いている簡易宿泊所を行政に買い取らせて、野宿者の住居として、住所を確保して生活保護を取らせる試みが行われているという。以前、大阪で、野宿者を大量に労組の事務所を住所として登録したことに、行政がそれを解除するという事件が起きたことがある。住民登録が行われていなければ、権利主体とされないということは、フランスでも同様だったようだ。今は多少の改善が行われているようである。「年越し派遣村」の件で明らかになったのは、日本でもそうした問題が広がっているということであり、下の記事は、それを示してるのである。それに、難民問題や不法外国人労働者問題は、居住権というよりも、労働権と生存権の関係の問題を提起していて、それに難民問題の場合は、政治問題が絡んでいる。日本の不法滞在外国人労働者問題の場合は、産業的にはほぼ製造業に偏っており、したがって、愛知県豊田市とか浜松市などに集中している。それは、国土交通計画による産業配置による空間配置によって形成された全国空間の配置図にしたがって形成されている地域の抱える問題となっている。対策が急がれる。
定額給付金の申請書、47万世帯に未到達
総務省は3日、市区町村が発送した定額給付金の申請書のうち転居先不明などにより、47万1567世帯分が世帯主に届いていないと発表した。
6月26日現在の調査で、支給対象約5475万世帯の0・9%にあたる。同省は今月中旬から、申請が終わっていることを確認するよう広報活動を始める。
定額給付金の申請書は、住民基本台帳または外国人登録原票を基に世帯主にあてて送られる。しかし、引っ越す際に市区町村に転出届を出していなかっ たり、郵便物の転送手続きをしていなかったりすれば、申請書は市区町村に返送される。届いていない申請書が最も多いのは東京都の9万492通。次いで神奈 川県4万9099通、大阪府4万7384通で、人口移動の多い都市部が目立つ。日本人にあてたものが約23万3000通で外国人は約7万3000通ある。 残りは日本人か外国人かを確認できていない。
定額給付金を受け取るための申請期間は市区町村の受け付け開始日から6か月以内で、多くの市区町村が10月ごろに申請期限を迎えるとみられ、申請漏れのため給付金を受け取れない人が出てくる可能性もある。
また、6月26日までに支給された定額給付金は総額1兆7726億円で給付対象世帯の86%に支給済みだった。
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コメント
沖縄のN市(笑)在住。
役所へ2度行ったが、まだ届かず…。
モノ言う日本人なので、まだ粘るつもりです。
投稿: | 2009年7月22日 (水) 22時11分