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金融貴族の支配

  7月革命の後で、自由主義者の銀行家ラフィットは、自分の仲間のオルレアン公を意気揚々とパリ市庁舎に先導しながら、ふと漏らした。「これからは銀行家が支配する」と。ラフィットは革命の秘密を漏らしたんだ。
 ルイ・フィリップの下で支配したのは、フランスのブルジョワジーじゃなくて、その一分派、銀行家や株取引王、炭鉱・鉄鉱山・森林所有者、それと彼らに結びついている一部の土地所有者たち--いわゆる金融貴族たちなんだ。そいつらが玉座に座り、議会で法律を公布し、内閣の大臣からタバコ局の役職に至るまで公職を分配した。Copyright on Japanese Translation (C) 2002 Ryoichi Nagae 永江良一

 これは、マルクスの『フランスの階級闘争』の第1部1848年6月の敗北最初の部分である。1848年革命では、ブルジョアジー全体ではなく、その一分派である金融貴族を権力を握る。そこで、バルザックやフローベルが描く、金融貴族の支配が始まるのである。産業ブルジョアジーは、政府の反対派に加わっていた。いわゆる『ナショナル』派である。この時、男子普通選挙が始まり、この金融貴族の支配は、12月には、ナポレオン3世が大統領となり、帝政を復活することで終わる。

 7月革命後に支配を達成した金融貴族は、投機や山師的商売や詐欺や空想的な投資計画の作成に熱中した。フローベルの『感情生活』の主人公フレデリックは、田舎から出てきた貧しい学生で、法律家になることを目指していたが、ある時、突然、遺産を相続することなり、一夜にして成金となった。そこで、証券投資や投機などにそれを元手に投資していくが、証券投資の失敗で、元の木阿弥となる。その過程で、7月王政を倒して、権力を握るのが、こうした金融貴族たちである。これらの思惑取引、信用の状態、それらの変化が、社会生活を大きく動かした時代であった。主人公が恋するのは、共和派の産業ブルジョアジーの夫人だったが、時代は、金融貴族のものだった。農村では、ナポレオン1世が解放した農地が細かく分割されて分割地農民が発生していたが、金融貴族たちは、これらを抵当としてかれらを借金づけにした。負債の圧力に押しつぶされ、土地を失い、あるいは失いかけたかれらを十分に吸収する産業が都市に育っていなかった。もちろん、金融貴族がそれをまじめに実行するわけがなかった。あらゆる階級階層の代表者という綱渡りを演じて、帝政を復活させたのが、サン・シモン主義者のルイ・ナポレオンである。分割地農民たちは、彼に期待した。この間、わずか2年余りである。

 『感情生活』には、主人公が恋する夫人の子守の黒人女性が登場する。奴隷貿易は、15~16世紀にかけて、世界中で行われ、アフリカ大陸の人々ばかりではなく、中国の人々、日本の人々も、売り買いされた。この時代から少し後に、新大陸では、南北戦争が勃発し、北部が勝利して、黒人奴隷を解放し、奴隷貿易を禁止する。マルクスは、南北戦争についても、『ニューヨーク・デイリー・ドリビューン』などの新聞に記事を書いて分析・評価している。アメリカは、ヨーロッパ大陸でのごたごたをよそに、保護貿易主義をとって、内陸開発に邁進し、重化学工業化を進めていく。アメリカの金融貴族の「金ぴか時代」は、1920年代である。アメリカのプラグマティストのデューイの教育論が形成されるのは、科学と発明と実験とその産業化が豊かさを実現していく19世紀末から20世紀初頭の時代であり、未来に向かって前進し発展していく産業状態と教育・学校を結び付けようとするものであった。ちょっと、サン・シモン主義者ナポレオン3世の登場とパラレルな感じがする。アメリカの金ぴか時代は、29年恐慌であっというまに終わる。

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