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読売、「左」と「右」についての記事から思ったこと

 今日の読売新聞では、「左」「右」の動きが伝えられている。

 まずは、「左」で、社民党福島党首が、沖縄の米軍普天間基地の辺野古沖移設を鳩山内閣が決定したら、連立政権を離脱することを示唆したというものである。

 しかし、まだ、岡田外相が述べている普天間の嘉手納統合案についてはどうかということについては述べていない。県内移設自体に反対し、それを連立を参加の条件として示したわけではない。ただし、アメリカは、辺野古移設を今のところ譲るつもりはないようだ。これは、それなりに、鳩山政権への強い圧力となるかもしれない。参議院で単独過半数がない民主党としては、社民党が連立を離れることは、政権基盤を弱めることになる。もし、そうなれば、民主党の中間派的性格(中道性)、あるいは、ボナパルティズム的性格からして、政治性格が、大きく動くかもしれない。

 衆議院での民主党勝利の要因の一つは、明らかに、地方の農民や小経営主、それと都市の小経営主や小商店主、地方都市ブルジョアジー(関西圏など)と「連合」などの組織労働者、それに、新自由主義的構造改革路線によって不安定雇用に追い込まれた若年不安定雇用者などの支持を受けたことにある。小泉が支持基盤としようとした都市中間層も、その路線によって分解して、その上層が細った。そして、今の選挙制度によって、地方に、人口比では都市部よりも厚く議席が配分されているので、小泉が切り捨てようとした地方の自民党支持層が、民主党支持へと鞍替えしたのが大きかった。その他、もろもろである。

 そして、小泉後、保守主義の純化によって、例えば、改憲、教育基本法改悪を狙い、それを半歩だが、進め、政権基盤を固めようとした安倍元首相は、下の記事のような、「真・保守政策研究会」というのを作って、今月2日、都内で総会を開き、永住外国人への地方選挙権付与に反対する決議を採択したように、改憲を狙ったくせに、憲法によって、これを正当化しようとしている。岸元首相は、アメリカのエージェントとして、日米安保改定、そして、安保闘争で政権から引きずり下ろされると、反共親米の民間右翼を育成し、その路線を、運動化し、それで、自民党内の岸系の派閥の支援をした。つまり、親米反共右翼の多くは、アメリカからの金で岸やその仲間が育成したのであり、それらは、自民党内親米保守派を支援する民間運動であり、別働隊なのである。もちろん、それとは異なる右翼・保守主義もいろいろあるが、戦後右翼の大きい潮流は、自民党岸系保守派の民間運動としてあるのだ。

 しかし、それは、冷戦体制を前提として、その枠組みの中でこそ、存在意義があったので、ベルリンの壁が崩壊して、すでに20年以上が経った現在では、明らかに、時代にマッチしていない。そして、そうした政治基盤が、ついに、森政権以来、10年近く続いた岸派の流れを汲む森派政権が終わって、弱体化した。衆議院選挙の結果、町村派(旧森派)は、第二派閥に後退した。他方で、新たな民間右翼として、ファシズム的な性格を持つ「在日特権を許さない市民の会」が登場し、市民運動スタイルで街頭デモなどを行っている。それにぴったりと合わせるように、自民党・保守系無所属議員の「真・保守政策研究会」は、永住外国人の地方参政権付与反対を決議したのである。そして、それを地方議員にも広めていくことを決定したという。したがって、これから、地方議会を舞台に、反対決議をあげるなどの動き、そして、それを支持する自民党員や自民党支持者の運動が組織されることになるだろう。それを、民主党などの連立与党との対決政策として、自民党の巻き返しのテコとしていくというのだろう。

 他方で、オバマ政権は、アフガニスタンに、2万1千名の増派などの新アフガン戦略を発表し、読売の社説がそれを評している。それによると、オバマ大統領は、アメリカ国内に蔓延する厭戦気分を一掃し、ふたたび、戦意高揚を図ろうとしている。それに対して、社説は、アフガンの各部族と連携し、かれら自身による治安維持を援助し、日本は、民生支援やインド洋での給油活動などで貢献するが必要だと主張している。しかし、クラウゼヴィッツや孫子を引くまでもなく、戦争は、政治の延長であって、よき統治・よき政治がなければ、収まりようがない。アフガニスタンにとって、よき政治とはどういうものか、それがないと、いくら外から軍隊を送り込んでも、収拾することは出来ないのである。

 クラウゼヴィッツは、戦争を意志の押し付け合いというふうに述べていて、意志ということを強調しすぎて、それは、孫子が、戦争は、最後の最後の手段であるとしている(註1)のとはずいぶん違うが、それでも、戦争が政治問題だと述べた点では両者は一致している。それと、儒教のように、聖人君子、徳ある統治者としての理想像を描き、そういう聖人の人徳が、統治の安定を導くとする政治論もあり、それからする戦争論もある。いずれにしても、政治ということが、戦争問題の基本であり、それは、さらに、経済と結びついているわけである。政治は、経済を土台としているからだ。オバマの来日時の演説を聞く限り、明らかに、オバマは、アメリカ経済の危機を脱するために、生産の復興(これは、大統領就任演説でも生産性の強調ということで、すでに言われていたことである)、輸出産業の育成、その輸出先としての中国などの新興市場の拡大、世界市場の拡大、等々が必要であり、そのために、例えば、紅海の安全の確保、ソマリア沖の海賊退治のためのソマリアへの介入、非資本主義世界の資本主義化をねらった「中東民主化」なる構想を掲げたイラク戦争、アフガン戦争、資源確保のためのアフリカへの介入、等々を行っている。

 そして、読売のもう一つの社説で取り上げている、元外務省条約局長の、沖縄核密約の存在の暴露問題に明らかなように、アメリカも日本も、表の外交約束とは別に密約を結びながら、世界戦略、外交戦略を進めていることも明らかになった。アメリカは、日本だけではなく、他の世界の国々と、いろいろな秘密条約を結んでいるに違いない。ロシア革命の際に、レーニンたちロシア社会民主労働党ボリシェビキ派は、それまでの政府が結んでいた秘密条約の公開を掲げ、実際にそれを実行した。メンシェビキが参加したケレンスキー政府は、秘密条約を守り続けたし、ドイツとの戦争も継続した。アフガニスタンで米軍が苦戦し、現地参謀総長が、増派がなければ1年以内に敗北するだろうと悲観的な見通しを漏らさざるを得なかったのは、アメリカの多くの人々が、この戦争の正当性に疑いを持ち、それから、兵士が戦争目的について確信を失って戦意を喪失しているからだろう。

 戦争は、政治の延長である。つまり、戦争は、武器の善し悪しや戦闘員の数の多寡、その他の技術的要因の優劣だけで決まるものではなく、政治、つまりは、意志の状態を含む要素、将(将軍)の資質(孫子もクラウゼヴィッツも、将について詳しく検討している)、兵の状態、それから、クラウゼヴィッツは、心理的要素を重視しすぎるくらい、重視しているが、そいう「人間的」要素、ただし、それは、社会の状態、社会諸関係、実践=主体、等の要素を含んでいる。それに、地形などの自然的要素が合わさっているのである。

 「アフリカの東の角」にあるエリトリア、ソマリアは、分裂国家となっている。この地域は、紅海という狭い海を挟んで、イエメンなどのアラビア半島南部と近く、歴史的にも、中東、アラブ世界と関係の深い地域である。エリトリアは、二つの地域が独立状態にあり、それは、北部の旧イギリス植民地地域と南部の旧イタリア植民地地域という植民地支配の影が色濃いかたちでの独立である。ソマリアには、イスラム教徒が多く、一時、イスラム法廷というイスラムの聖職者が政治を行うという、イラン革命後のイスラム政権のようなかたちの政治が取られたこともある。アメリカの軍事援助を受ける隣国エチオピアが軍事介入し、それをアメリカが後押しして、軍事介入したこともある。しかし、米兵が殺害され、死体が路上を引きずられる姿が世界に放映されたことを記憶しておられる方もいると思うが、クリントン政権は、この地から、アメリカ兵を撤退させた。自・公政権は、ソマリア沖の海賊退治のために、自衛隊を送るということを云々したことがあったが、世界最貧国が並ぶこの地域で、国家の体をなさない流動状態にあって、氏族や部族が連合したり、分散したり、闘い合っているこの地域で、国土防衛という自衛の任務を基本にしてきた自衛隊が、一体、どうすることが出来るというのだろうか。海賊を多く出していると言われるエリトリアでは、海賊による収入は、国家予算をはるかに上回るほど巨額だという。漁業を主に生業にする氏族・部族が、紅海での漁が、海外から押し寄せる漁船による乱獲で漁獲量が減って、収入源にならなくなったことから、海賊業に転じていったとする説もある。エリトリア難民も、数百万という単位で、海外や国内難民となっている。

 国連中心主義者小沢民主党は、こうした問題を含む世界とどう向き合うのか、曲がりなりも与党という立場になった社民党はどうするのか。しかし、この世界的な不況が、日本経済を襲っている中では、どうしても内向きのベクトルの力が強く働くだろうし、それはそれで大変な問題であるから、そっちが優先ということになるのだろうか。しかし、世界市場の拡大が、この世界不況からの脱出のために是非とも必要なことだとしたら、地中海とインド洋を結ぶ、スエズ運河-紅海の航路の安全確保は、利害を共にする国々にとって重要事であり、公共事である。それをどうするのか。

 しかし、これだけの技術水準があり、生産能力があるにも関わらず、貧困問題が大発生するというのは、どう考えても、おかしな話で、世界的にも、ソマリアのような貧困国がいつまでもなくならないというのは、現在の経済システムがおかしいとしか思えないわけである。連立政権は、そんな根本的なところにはまったく触れず、手をつけないで、どうやって、これらの諸問題に対応していくのだろうか。

 当面、普天間基地の撤去は、96年以来の日米の合意した課題だから、決着をつけてもらうということ、それから、貧困化問題の解決、雇用の問題、等々で実績を上げてもらいたいということはある。それから、いろいろとあるが、とにかく、一つでも前進させることだ。

 (註1)
 孫子曰わく、
 兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
(戦争は国家にとって一大事である。生きるか死ぬかの地、存亡がかかる道を、よく見極めなければならない)

 百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり
(百戦して百勝するのは、最善ではない。戦わないで、戦を制するのが、最善である)

福島党首、「普天間」現行案なら連立離脱示唆

 社民党党首の福島消費者相は3日午前の党常任幹事会で、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題について、「(現行計画の名護市)辺野古沖に海上基地を造らせないことは極めて重要だ。社民党の根幹にかかわる。もし辺野古沿岸部に海上基地を造る、とこの内閣が決定した場合、社民党としても私としても、重大な決意をしなければならない」と述べ、移設問題が現行案で決着した場合には、連立政権から離脱する考えを示唆した。

 社民党内では、4日告示の党首選で4選を目指す福島氏に対し、対抗馬擁立の動きがある。福島氏の発言は、基地問題で譲歩しない姿勢を強調することで、党内の福島氏への批判を封じる狙いと見られる。移設問題の行方次第で、同党の連立離脱が現実味を帯びることになった。
(2009年12月3日、読売新聞)

 

永住外国人の選挙権、真・保守政策研が反対決議

 自民党や無所属議員らで作る「真・保守政策研究会」(会長・安倍晋三元首相)は2日、都内で総会を開き、永住外国人への地方選挙権付与に反対する決議を採択した。

 決議では、地方選挙権付与について、「憲法違反の可能性が極めて大きい」と指摘。会として、地方議員らにも反対の動きを広げる方針を確認した。

 同会の衛藤晟一幹事長は同日、大島幹事長に党として、反対するよう申し入れた。
(2009年12月2日 読売新聞)

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