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2010年4月

第4次出入国管理基本計画について(6)

  「基本計画」は、全体状況について述べた上で、目的別の在留資格について、状況の分析を行っている。まず、「(2)就労を目的とする外国人の状況」(「外交・「公用」を除いたそれは、2006年に、前年比で、35パーセント減と大きく減少してからは、減少傾向にある。これは、世界不況入り前の出来事で、それは、前年からこの年にかけて行われた「興業」の在留資格にかかわる上陸許可要件の見直しによるものである。要するに、不法滞在外国人対策を強化したために、そうなったのである。それに加えて、2008年のアメリカ発金融危機の発生以後、その他の就労目的の在留資格による新規入国者が減っている(2009年に、前年比で30.2パーセント減の2万5,923人)。特に、「技術」の在留資格の減少幅が大きいことを指摘している。このことは、アメリカの金融恐慌以後の不況が、日本の製造業に大きなダメージを与えたことを示唆している。

  次に、就労目的の在留資格の外国人登録者数について、「興行」資格が減少しているのに対して、その他は増加し続け、2008年末に、198,504人となったと書いている。その中で、外国人社員に当たる「技術」、「人文知識・国際業務」、「企業内転勤」は、それぞれ、「興行」を除く就労目的の外国人登録者総数の、26.3パーセント、33.9パーセント、9.0パーセント(08年末現在)、となっている。この増加の原因は、留学生の国内企業への就職の増加だと分析している。

 「(3)学ぶことを目的とする外国人の状況」。学ぶこことを目的とする在留資格には、「留学」、「就学」、「研修」がある。「留学」の新規入国者は、2007年に、3万7,871人で過去最高となった。外国人登録者数は、13万8,812人。中国8万8,812人(64.1パーセント)、韓国・朝鮮1万9,441人(14.0パーセント)、ベトナム3,202人(2.2パーセント)などである(08年末現在)。


 「就学」の在留資格による新規入国者数を見ると,2007年(平成21年)には2万8,278人と過去最高を記録しており,これを国籍(出身地)別に見ると,中国が最も多く,1万8,053人(63.8パーセント),次いで韓国4,516人(16.0パーセント),中国(台湾)1,311人(4.6パーセント)などとなっている。また,外国人登録者数を見ると,2008年(平成20年末現在)4万1,313人で,国籍(出身地)別に見ると,中国が最も多く,2万5,043人(60.6パーセント),次いで韓国・朝鮮1万286人(24.9パーセント),タイ769人(1.9パーセント)などとなっている。

 ここで、「基本計画」は、政府の「留学生30万人」受け入れ目標の達成の取り組みを表明している。


 次に,「研修」の在留資格に係る外国人の状況を見ると,新規入国者数は2005年(平成19年)に過去最高を記録したが,平成20年からは世界的な景気後退等の影響により減少し,2009年(平成21年)には前年比21.0パーセント減の8万480人となっており,これを国籍(出身地)別に見ると,中国が5万3,876人で全体の66.9パーセントを占め,次いでベトナムが4,890人(6.1パーセント),フィリピンが4,726人(5.9パーセント)などとなっている。また,外国人登録者数も平成19年に過去最高を記録したが,平成20年末現在は前年よりやや減少して8万6,826人となっており,これを国籍(出身地)別に見ると,中国が6万5,716人で全体の75.7パーセントを占め,次いでベトナムが6,763人(7.8パーセント),インドネシアが5,085人(5.9パーセント)などとなっている。

 学ぶこと目的の在留資格の中で、「研修」目的だけが、08年以降減少していて、ここにも、世界的な景気後退の影響が現れている。いずれの目的での在留資格も、中国人が占める比率が圧倒的に多い。世界的景気後退の中でも、高度成長を続ける中国の政府が、積極的に、海外の知識や技術を取り入れようとしていることがうかがえる。

 また,研修から技能実習への移行状況を見ると,移行数は年々増加していたが,「研修」の在留資格による新規入国者数の減少を受け,平成21年には6万2,207人と前年に比べやや減少しており,これを国籍(出身地)別に見ると,中国が4万9,032人で全体の78.8パーセントを占め,次いでベトナムが4,972人(10.1パーセント),インドネシアが3,467人(7.1パーセント)などとなっている。

 これについて、「基本計画」は、「なお、研修・技能実習制度については、近年、制度の趣旨を理解せず、研修生や技能実習生を低賃金労働者として扱うなど、不適正な受入れが行われている事案が増加しているが、入国管理局においては,不正行為の認定を行い、法務省令等の規定に基づいて、当該機関が、研修生・技能実習生を受け入れることを3年間停止している」ということを但し書きしている。こうした不正行為を認定された機関数は、2005年に180機関、2008年には過去最高の452機関、09年360機関と高水準になっている。なお、「基本計画」は続いて、「企業単独型で受け入れた機関が2機関,団体監理型での受入れ機関が358機関となっている」ことを指摘している。ここで出てくる監理団体とは、「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」(09年12月法務省入管局)によれば、次のような団体である。しかし、団体監理型受け入れの下で、これだけの数の不正行為が起きているわけだが、この監理団体は、一体、何をどう監理してるのだろうか。もしかすると、ここにも、役人の利権、天下り先を作っているのでは、という疑問が頭に浮かぶ。

第2 適正な技能実習の実施について

 

3 適正な入国・在留のための留意点

(2) 監理団体の役割

 団体監理型の受入れにおいては,技能実習は「監理団体」の「責任及び監理」の下に行われます。監理団体とは,技能実習生の技能等を修得する活動の監理を行う営利を目的としない団体をいい,団体要件省令の要件を満たしたものが該当します。入管法上,監理団体には,技能実習生を受け入れて知識を修得させるとともに,技能実習を監理(「技能実習1号ロ」については監理団体自ら策定した技能実習計画に基づいて技能実習を監理)することが求められています。

① 「監理」の在り方

 技能実習制度における「監理」とは,技能実習生を受け入れる団体が,技能実習を実施する各企業等において,技能実習計画に基づいて適正に技能実習が実施されているか否かについて,その実施状況を確認し,適正な実施について企業等を指導することを言います。そして, 団体監理型の技能実習は, 商工会, 中小企業団体等の「責任及び監理」の下で技能実習を実施することにより,中小の企業等の実習実施能力を補完して,適正な技能実習を実施するものです。したがって, これらの団体が名目のみ監理団体となり, 実際の「監理」は他の機関が行うような場合は,当該技能実習は監理団体の「責任及び監理」の下に行われているとは認められず,不適正な受入れとなります。なお,従来の研修・技能実習制度では,受入れ団体による受入れ企業等に対する「監理」は在留資格「研修」の期間だけが対象となっていましたが,新たな技能実習制度では,従来の「研修」に相当する在留資格「技能実習1号ロ」の期間中だけでなく,従来の技能実習に相当する在留資格「技能実習2号ロ」の期間も監理団体による「監理」の対象となります。

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第4次出入国管理基本計画について(5)

 「Ⅱ 外国人の入国・在留等をめぐる状況」は、まず、「1 我が国に正規に入国・在留する外国人の状況等」を統計的に示し、分析している。「(1)全般的な状況」としては、再入国者を含む入国者数が、統計を取り始めた1950年には、1万8,000人であったものが、1977年に100万人を突破し、2008年に過去最高の約915万人に達したとしている。ところが、サブプライムローン破綻をきっかけとする世界的な景気後退によって、翌年は、ほぼ横ばい、昨年には、前年比17.1パーセント減の約758万人となっていると書いている。

 そのうち、「観光」などの「短期滞在」の在留資格による入国者が、9割以上、その約7割が韓国などのアジア地域からの新規入国者である。ここまでが、「短期滞在」の在留資格による入国者の状況で、主に「観光」目的の入国、在留で、短期的な滞在者である。したがって、「基本計画」は、この部分については、「観光立国」と位置付けている。

 次に、外国人の在留状況について、1955年~65年(昭和30年代)には、「外国人登録者数は50万人代後半から60万人代半ばで推移し,その9割近くをいわゆる在日韓国・朝鮮人を中心とする特別永住者が占めていた」としている。つまり、入管行政の基本的な対象は、この頃までは、ほぼ、「在日」であったということである。「基本計画」は、「その後、特別永住者数は減少している」として、その後の、いわゆるニューカマーの外国人の在留が増えていることを指摘している。国籍(出身地)別の外国人登録者数で、2007年末に、中国が、韓国・朝鮮を上回った。

 この特別永住者の減少という事態をどう見るか、あるいは、どうしてそうなっているのか、そして今後それがどうなっていくのか、をめぐって、坂中英徳(元入管局長)の「『在日』50年自然消滅論」などが、出されている。数字だけを見れば、確かに、2000年あたりから、年に約1万人規模の減少が続いていて、08年末時点の特別永住者数420,305万人(「入管白書」)から、単純に計算すると、坂中の言うとおりということになる。しかし、これには、国籍法の改定によって、出生者の国籍に、父母両系主義が採用されたことがあって、この法改定後に出生した特別永住者と日本人の子供は、二重国籍となり、成年に達してから2年以内に、いずれか一方の国籍を選択することとなっていることが絡んでいて、坂中の言うような日本人との婚姻の増加という一面的な見方では、まったく事態をとらえるには不十分である。しかし、それは、後で、検討することにして、「基本計画」を見ていこう。

 参考資料として、2005年に書いた「国籍・民族差別撤廃に向けて」を引用しておきます。

             国籍・民族差別撤廃に向けて
                                             流 広志

 1月30日のイラクの選挙は、予想通り、シーア派の勝利とスンニ派の棄権という結果に終わった。ブッシュのイラク政策を支持してきた『産経』も、さすがにカッコ付き「成功」と記すほかない惨めな結果であった。選挙が、国民の統合ではなく分裂を示したからである。そもそもファルージャ総攻撃は、選挙成功のために、その妨害を狙う「テロリスト」を掃討し、スンニ派住民を選挙参加させることが目的だったはずだ。『読売』『産経』社説はそう書いて攻撃を支持した。しかし、北部のスンニ派地域のある州の投票率2%などさんざんであり、スンニ派系政党の議席はないに等しい。選挙は「内戦」の火種を消せなかった。選挙に対する幻想はアメリカの国益のためにばらまかれたのである。ライス国務長官が自由・民主主義の基準は国益だと述べているように、アメリカ流自由・民主主義は、国益のための政治なのである。日本の民族問題の扱いは、同じことを示している。この問題の歴史的具体的な解決形態を生み出すのは、それとは根本的に異なる国際主義である。それをいくつかの事例を検討して明らかにしたい。

 鄭香均さんの国籍条項裁判の最高裁不当判決を弾劾する

 2005年1月26日、最高裁大法廷は、保健師の鄭香均さんの昇任試験の受験を国籍を理由に拒否した東京都の判断を正当と認め、彼女の訴えを退ける判決を下した(2名の反対意見があった)。その理由は、「公権力の行使と国家(公)意思の形成への参画に携わる公務員になるためには日本国籍が必要なのは当然の法理」という1953年の内閣法制局見解を支持する近代国民主義に基づくものである。そして、それに当たらない範囲では、各地方自治体の裁量で、外国籍者を採用することは認められるとしている。判決は、特別永住者の歴史的特殊性を捨象した形式主義的で、あいまいなものである。
 判決を支持する藤田裁判官は、その見解の中で、鄭さんが「日本国で出生・成育し、日本社会で何の問題も無く生活を営んで来た者であり、また、我が国での永住を法律上認められている者であることを考慮するならば、本人が日本国籍を有しないとの一事をもって、地方公務員の管理職に就任する機会をおよそ与えないという措置が、果たしてそれ自体妥当と言えるかどうかには、確かに、疑問が抱かれないではない」と述べ、この問題の具体性・歴史性に向きかけている。しかし、彼は、「入管特例法の定める特別永住者の制度は、、それ自体としてはあくまでも、現行出入国管理制度の例外を設け、一定範囲の外国籍の者に、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)2条の2に定める在留資格を持たずして本邦に在留(永住)することのできる地位を付与する制度であるにとどまり、これらの者の本邦内における就労の可能性についても、上記の結果、法定の各在留資格に伴う制限(入管法19条及び同法別表第1参照)が及ばないこととなるものであるにすぎない。したがって例えば、特別永住者が、法務大臣の就労許可無くして一般に「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」(同法19条)を行うことができるのも、上記の結果生じる法的効果であるにすぎず、法律上、特別永住者に、他の外国籍の者と異なる、日本人に準じた何らかの特別な法的資格が与えられるからではない」と述べ、入り口に立っただけで終わっている。
 彼は、特別永住者を、「あくまでも・・例外」、「・・制度であるにとどまり」、「・・にすぎない」と、消極的に規定している。それは、日本人に準じた特別の法的資格ではないというのである。しかし、朝鮮半島の植民地化、戦後における一方的な国籍剥奪、無権利・差別の歴史、暴露された日韓基本条約での日本の戦争責任回避、等々の歴史を見れば、「在日」に特別の扱いをするのが正当であることは明らかだ。特別永住者の制度により、日韓基本条約以来、日本の対朝鮮半島政策での「南」支持・優遇のために、「在日」の地位に分断をもたらしていた「協定永住」などの細かい区分が消えた。法律上、入管制度上の例外にすぎないというのは形式主義である。たとえ、法形式上そうであっても、内容上は、明らかに、それは、歴史的特殊性を考慮した制度であり、「日本人に準じた特別な法的資格」であり、公的権力の行使・公的意思形成過程への参画を含む日本国籍者と同等の権利付与まで進むべき過渡を示すものである。
 この最高裁判決は、1953年の内閣法制局の「当然の法理」としての国民主義を持ち出した。現在の憲法論議は、根本的議論を行うと口先では言っているが、国民主義を当然の前提として進められている。鄭さんが、最終陳述で述べているように、GHQの憲法草案のpeopleを日本側が国民と訳したことから、日本国憲法が国民主義を基本とする解釈が強められたのである。peopleには人民という意味があるので、鄭さんの言うように人民主義を基本とすることも可能である。現在の自民党の憲法調査会の議論では、憲法前文が無国籍的だとして、国民主義的に変えようという意見が出されている。自民党は先祖帰りして、すでに知っていることを思い出すことを議論と称しているだけなのだ。こんな議論もどきに一部マスコミが飛びついて何か重要なことであるかのよう騒いでいるのは、保守派の宣伝機関を務めているだけのことである。
 この最高裁判決は、特別永住者問題という歴史的特殊性の具体的評価を捨象し、古くさい国民主義を不動の前提として、国籍による差別のない新しい社会への前進を頭から拒否した不当なものである。

 (1)櫻井よしこ氏の個人主義・自由主義・エリート主義的支持論

 2004年2月1日「在日コリアンの日本国籍取得権確立協議会(確立協)」(李敬宰会長)設立記念集会が都内で開催された(参加者は、「JANJAN」では200人、ツルネン・マルティ氏の報告では100人、「高槻むくげの会」の報告では150人)。そこで、櫻井よしこ氏が講演を行った。「JANJAN」の記事によると、彼女は、参政権には日本国籍が必要だと述べ、届け出だけで日本国籍がとれる与党がまとめた「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律(案)」を早く通すべきだと述べた。彼女は、「差別があるのは当たり前、乗り越えていく障害は自分を育ててくれる材料である・・・・・・どの国にも差別があります。アメリカは素晴らしいところです。オープンな形は好きです。だからといってあの国に差別がないと思ったらとんでもない。日本の差別よりもっと根深いかもしれない」(同紙)。つまり、差別をなくすことは遠い理想であり努力目標であって、現実には差別はなくならない。日本よりも根深い差別社会であっても、オープンな形のアメリカ型の差別社会の方がいい。差別は、各人が努力してそれを乗り越えていく障害であり、自分を育ててくれる教育の役割をも持っているというのである。差別はあって当たり前なので、個人が強くなって、上にあがって、競争の勝者・強者として支配階級に入ればいいというのだ。彼女は、そうした強者として、サッチャーやライス国務長官のような女性を高く評価している。
 ライス国務長官は、エリートなることで差別から解放されると信じる親によって教育されたが、その結果、彼女は、9・11事件後のアラブ系住民への差別・抑圧・人権侵害にも無関心な冷たい人間になった。公民権運動の一部でこうした傾向が生まれたのだが、今は、こうした負の側面の反省が進められている。
 差別問題についての彼女の基本思想は、ブルジョア自由主義であり、それは、前稿で紹介したパット・ブレアーが右翼フェミニズムの台頭と表した現象の根本にあるものである。個人が絶対化され究極の責任主体とされる。しかし、彼女の描くような個人は、私有制の発展した特定の歴史的社会関係が生み出したものである。江戸時代の農村は連帯責任制だった。
 また彼女は、女性差別との闘いについて、自分が先駆者として後に続く女性の道を開いたと自画自賛しているが、この法制度の女性差別的側面にふれていない。この法と民族名の戸籍記載が容認がされても、夫婦別姓制度がないと、戸籍制度自体が女性差別制度である上に、どちらかの姓を選択できると形式的には平等に法文上はなっているが、実際には、家父長制の社会的慣習制度の力が強いために、男性の姓を選択する場合がほとんどであるような状況では、女性の民族名が消えていく可能性が高いという女性差別が絡んでくるのは明らかである。さらに、すでに批判があるように、問題を理性的に追求すべき人なら当然考えなければならない二重国籍問題にふれないのは不徹底である。
 差別をなくすことではなく、差別社会の中で、個人が強くなるという個人主義・自由主義・エリート主義が彼女の差別観と差別への関わり方を貫いている。彼女は、勇ましい言葉とは裏腹に、現行秩序を保守・絶対化し、それを変えることに消極的である。ただ一握りのエリートが個人として支配階級入りできる機会平等があればいいのである。それは問題のブルジョア自由主義的解決ではあるが、こんな多くの人にとって夢も希望もない解決は本当の解決ではない。彼女のような保守思想が空想的で非現実的なのは、個人・国家を見るが、社会や共同体を見ないせいである。だから、現実を変革して、実際に問題を解決することができないのである。それは、差別をなくすには社会・共同体を変革しなければならないが、それを呼びかけないで、差別に負けない強い個人になれという精神主義的説教でお茶を濁すということに現れている。差別に負けないと同時に差別をなくす社会性ある主体になること、差別からの解放の社会的共同の主体になることが、問題を本当の解決に導くために必要なのである。

 (2)坂中東京入管局長の同化主義的支持論

 坂中英徳東京入管局長は、90年代に、特別永住者が年1万のペースで日本国籍取得したため、このままだと約50年で特別永住者が消滅すると危機感をあおった上で、「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律(案)」を成立させるべきだと主張している。この人物については、この問題以前に、その管轄下で、入管が行っている数々の人権侵害や虐待行為などの「悪業」を直すべきだということがある。東京入管はつい先日もクルド難民二家族を強制送還するという「悪業」を働いたばかりだ。外国人を人間として扱わない入管行政を放置している責任ある大幹部が、どうして偉そうに「多民族共生社会」について語れるのだろうか。これは入管の実態を多少とも知るものに共通の思いだろう。まずは、足下の入管行政の改善に努め、責任を取るべきだ、と。例えば、彼は、2003年11月12日のアジア財団の国際シンポジュームで立派なことを述べている。「外国人を主として管理・規制の対象としてとらえる今の姿勢のままでは、「外国人を引きつける日本」「多民族が共存する日本」へと飛躍・発展できない。原則として外国人の権利を日本人と同等に保障するという基本的立場に立って、日本人と外国人の融和を図ることに主眼を置く、社会の少数者である外国人の立場に配慮する「外国人保護行政」への転換を図る必要がある」「民族や文化を異なる人たちと共に生きるという姿勢と外国人に対する偏見と差別のない社会を作ろうという気概が日本人に見られないのであれば、外国人の全面的な協力を得て経済大国と高福祉社会を維持してゆくという生き方をあきらめなければならない」(アジア財団HP)。まずは自ら率先垂範すべきだ。
 しかし、特別永住者の日本国籍取得が進んでいるし、日本人と結婚する者が8割を超えるというデータが示す現実があるのも確かだ。前者には、90年代の歴史的特殊事情がありそうである。後者の場合、日本人と特別永住者の子供が日本国籍を選ぶ場合が増えていることから、その急速な減少傾向が予想されているわけである。彼は、「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律」が成立すれば、それがさらに加速すると期待しているのである。入管データによると、韓国・朝鮮籍は、1994年に676,793人、2003年613,791人で、平均で1年に約6300人、10年で約6万3千人減少している。全外国人登録者に占めるその割合は、94年50%、2003年32.1%である。これに日本国籍取得者を加えると、「在日」の総数は約120万とも言われる。朝鮮民族が最大の在日少数民族であることに変わりはないが、他の外国籍の住民が増加しているために、全体に占める比率が下がっている。
 坂中東京入管局長は、アジア財団の国際シンポジュームで、8割(彼は9割と言う)を超える日本人との結婚や年に約1万ペース(この数字は一時的なものである)の日本国籍取得は、「在日」の同化が進んでいる証拠であり、その実態を法・制度に反映させることが必要だと述べている。また、特別永住者の制度は、在日外国人に対する法的地位としては最高のもので、それは日本国籍取得の前段階にすぎないと述べている。彼は、同時に、すでに同化している「在日」の民族名の戸籍記載を認め、在日コリアンとしての民族性を守れるようにすべきだと言っている。それは「国民という法的地位と、市民や生活者としての文化や民族は分けて考えるべきだ」(2003年12月14日『愛媛新聞』)という視点からのものである。彼は、同化が国民化と民族性の共存を実現している理想として、櫻井よしこ氏と同じように、法的地位としての国民(市民権)としては統合されているが多民族社会であるという形の移民国家アメリカ型の国家・社会を思い描いている。彼は、日本人の人口減少が、移民国家化をもたらすので、移民との共存の仕方として国民(法的地位)と民族性を分けようというのである。これは単一民族国家論に対する批判のように見えるが、やはり彼が言う同化は民族的同化を意味している。
 同シンポジュームで彼は、「今日の世界秩序の基本である国民国家体制の下においては、「外国人の地位」と「国民の地位」の間には越えられない壁がある。外国人の地位のままでさらなる権利を要求しても、例えばすべての政治的権利と無条件の居住権を求めても、これらの権利は国民固有の権利とされているので、決して外国人に与えられることはない」「時の経過とともに民族意識が風化し、朝鮮半島からの民族離れが進むのは自然の成り行きだ。/しかし、少なくとも名前だけは民族名であってほしいと思う」「その時(多民族社会化する時―筆者)、日本人に求められるのは、自らの民族的アイデンティティを確認するとともに、アジアの諸民族その他すべての民族を対等の存在と認めて待遇する姿勢を確立することである」と述べている。民族性は自然風化で消滅するものだし、「在日」の同化はきわまっているので、せめて名前だけには民族性を残そうというのである。しかし、名前だけでなく、民族的アイデンティティを獲得しようという運動が各地にある。同化がだめなら、そういう運動を支持・支援し、「在日」の民族性を育てるような具体策を示し、民族学級や民族学校などの民族教育を積極的に支援すべきだろう。しかし彼はそう言わない。わけがわからない。彼は、3世・4世は同化しきっていると見ているのに、これからは民族性を取り戻さなければならないという。そうしないと移民としてのコリアン系日本人にならないというわけだ。移民国家化のさきがけとしてのコリアン系日本人化の理念先行のエリート主義的主張である。
 また、今、日本人の間に民族性についての共通理解などない。それは自民党の憲法論議で、日本の伝統とは何かという問いに一致した答えが出せないことにも現れている。日本人の民族意識も風化した。彼は、日本人が自らの民族的アイデンティティをあえて確認し直さなければならないと認めたことで、民族的アイデンティティが自然風化に逆らって人為的に作られることを認めたことになる。彼は、「人類を、それぞれ独自な生活原理と独自な目的をもつ単子〔モナド〕へ解消すること」「社会戦争、すなわち万人の万人にたいする戦争」「人々はたがいに相手を役に立つ奴としか見ない。誰もが他人を食いものにする」「強者が弱者をふみにじり、少数の強者、すなわち資本家があらゆるものを強奪するのに、多数の弱者、すなわち貧民には、ただ、生きているだけの生活も残されない」(『イギリスにおける労働者階級の状態』1国民文庫83頁)という資本制社会の利己的個人化と民族同化を混同しているのである。
 彼は、移民国家アメリカには、民族的人種的な差別的ヒエラルキーがあり、民族・人種が同化することなく、民族・人種集団としてのアイデンティティを強弱の波があるが保持し続けている差別社会への転換を目的として「在日」の日本国籍取得推進を主張していることになる。アメリカでは、WASP(白人プロテスタント)を頂点とし、第二位の民族・人種、第三位の民族・人種・・・・という形での差別的序列があり、それがそれらの力関係の変化に応じて、時に順位が動く。例えば、アメリカ社会でユダヤ人は長く劣位におかれた民族であり、差別的ヒエラルキーに組み込まれていることには変わりはないが、今はずっと上昇している。ブッシュも南部出身という点が強調されるが、東部エシュタブリッシュメントとしての高等教育を受けている。
 また、彼は、「多民族社会における日本人と日本国は、アジアの諸民族その他すべての民族を自分たちと対等の存在として受け入れ、待遇するという基本姿勢を確立することが求められる。その上で、さまざまな民族集団を日本国という一つの国民国家秩序の下にいかにしてまとめてゆくかという困難な課題に立ち向かわなければならない。/そのときには、日本人と固い絆で結ばれ、民族名を名乗り、朝鮮系日本国民として生きる在日韓国・朝鮮人は、まさに多民族の国民統合の象徴として日本社会で重きをなすであろう」(同上)と述べていることで明らかなように、「在日」に対して、日本国籍を取って、「国民統合」し、日本国家を支える第二位の民族になるように勧めている。

 (3)国籍による差別撤廃方策の選択肢の一つとしての賛成論

 両者とは異なる観点からこの法案の趣旨に賛同を示しているのがフィンランド系日本人で民主党議員のツルネン・マルティ氏である。その基本は「国籍による差別のないことが国際社会の理想の姿である」(確立協HP)というものである。その上で、選択肢の一つとして届け出だけで日本国籍を取得できるようにすることに賛成している。しかし同時に、在日外国人の地方参政権も必要であり、「日本人と同様に地域住民としての権利と義務を持ちながら日本国籍を選ぶか、それとも母国国籍のままで日本に暮らすかという選択」権を持つべきだとしている(同上)。また2002年4月の「多民族共生社会への提言」では、「帰化したのは、日本人になればこの社会で生きていく上で、非常に便利だから。例えば国政選挙にも参加できる、社会保障や老後の問題なども国籍を取得すれば解決する。しかし、帰化しないと今の日本社会ではこれらの問題は解決しない。帰化と共生とは別問題であり、帰化してもしなくても日本社会で共生ができることを願う」(氏のHP)とも述べている。つまり、氏の場合は、国籍は自由意志による強制のない選択行為だったということである。「在日」の場合は、歴史的経緯などによって、そうなりにくい。氏の根本は、国籍に関係なく在日外国人に地域住民としての平等の権利が与えられるべきだというものであり、したがって、彼は、日本国籍積極的取得推進派ではなく、それを自由意志による選択肢の一つとするという立場である。この場合の自由意志が形式的外見的なものでないことを意味することは文脈から明らかである。

 多文化主義からする日本国籍取得積極推進論批判

 すでに述べたように、日本国籍取得によって、「在日」の問題は、国籍問題とは切り離されて、同一国籍内の民族間の関係の問題に移行する。それを多民族共生社会化と言うのであれば、その限界はすでに見えている。『火花』207号(1998年11月)「マルチカルチュラリズム(多文化主義)のゆくえ ―オーストラリアの人種・エスニック問題をめぐって3」は次のように指摘している。
「ところで、マルチカルチュラリズムの推進者たちは、それを「国民統合」の中心理念におくことを主張している。だが、マルチカルチュラリズムは、古い区切りに基づく秩序を自律的な結合に基づく新しい社会秩序に置き換えようとする実験ではないか。それが歴史的概念としての「国民統合」とすっきり結びつくとは思えない。/さらに、次のような問題を指摘しておかなければならない。/先に触れたとおり、資本主義のもとで階級・階層分裂が不可避に進行している。それは社会諸集団の地位の変動や分解・序列化とも結びつく。この現実を脇においた形での「国民統合」は全くの幻想である。そして、本稿ではとりあげなかったが、オーストラリアの国家(権力)機構をどうするのか、という問題がある。それは、資本主義的秩序を維持するために構築されたものであり、不断に境域を越えようとするマルチカルチュラリズムに対する「たが」としての役割を果たし続けるだろう。また、それは帝国主義の世界支配体系の一環として存在する。オーストラリアの国際政治でのふるまいがストレートに多文化社会内の政治的緊張につながることは想像に難くない(注5)」。
 すなわち、民族は、歴史的にブルジョアジーによって国家と結びつけられてきたが、それは「国民統合」の差別的ヒエラルキーとして構成されてきたのであり、同時に、階級・階層分裂と絡む形で形成されてきたのである。また、「在日」の存在は、朝鮮半島をめぐる国際関係を反映する。それらを捨象して、現象のいくつかの特徴を取り出して強調することは抽象的である。たとえそういう抽象的な考えの実現として、なんらかの制度が作られたとしても、現実の矛盾の解決形態としてマッチしなければ破綻する。そうなれば、歴史的解決形態に到達するまで、さらに運動が必要となるだけである。
 国民化と多民族共生社会化を結びつけることは、同時に、国民と民族を切り離して二重化することを意味する。坂中東京入管局長は、近代国民国家の支配民族である支配階級=国民の一員で、そんな二重化を生きたことなどないのに、それが進むべき道であると強調する。それを日本人に適用するなら、日本人は新たに民族的アイデンティティを確立し民族として形成し直さなければならないことになる。それは日本人を多数支配民族として形成し直すだけであり、民族間の平等化の反対である。それに、近代国民国家とは、国民として組織された支配階級のことに他ならないのであり、被支配階級・階層は、形式的には国民であるが実質的には国民ではない。彼の言う多民族共生社会化は、国民としての同化、「国民統合」が前提なのであり、それは、多民族から競争で選抜された一握りの勝者を支配階級=国民へと組み込み、その他を被支配者にするだけで、民族間の差別を解消するための具体的方策もないアメリカ型の新たな差別社会への移行を意味するにすぎない。法的地位の平等は形式的平等にすぎない。
 これにはフェミニズムをめぐって起きている混乱に似たところがある。内容上対立している主張が、部分的に、あるいは抽象的なレベルで一致していたりする。パット・ブレアーは、拙稿ではラディカル・フェミニストに分類したドウォーキンとマッキャノンをカルチュラル・フェミニズム(文化的フェミニズム)としているが、彼女たちが、歴史の無知ゆえに、19世紀のエリート主義的道徳主義的な立場をフェミニズムに引き入れ、男性すべてを潜在的レイプ犯と見なす機械主義的決定論的観点から、分離主義的で社会純化主義的な方策を主張するようになったが、それはナチスの思想に似ていると指摘している。機械主義的な決定論は、社会の平等主義的な変革を不可能とする主張になり、それが保守主義者の消極的な自由観に結びつく。したがって、彼女たちは、社会・国家の根本的な変革や権利の積極的な獲得ではなく、消極的な自由としての法の執行、「小さな政府」の中心的な治安機能の発揮を、積極的な対策として押し出す。彼女たちの主張では、ポルノグラフィーの公的規制は、暴力犯罪の予防・規制であり、治安対策なのである。それは、パット・ブレアーが指摘している通り、新たな抑圧と差別を生むだけだ。しかし、男性の女性へのジェンダー支配を批判し、性暴力をなくそうとしている点では、他のフェミニズムと共通する。

 さいごに

 坂中東京入管局長や櫻井よしこ氏のような「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律(案)」を支持する日本国籍取得推進論は、前者が同化主義的で後者が個人主義的自由主義的という違いはあるが、近代国民国家の国民=支配階級という共通の立場に立っている。しかし、この問題では、ツルネン・マルティ氏の言うように、基本は「国籍による差別のないことが国際社会の理想の姿である」ということであり、鄭さんに下された最高裁不当判決は、それに反するものである。国籍条項はまず特別永住者については全廃すべきである。特別永住者の権利拡大は、在日外国人の権利拡大の道を切り開く。国籍と民族性の結合は歴史的なものである。同国籍内での日本の民族=国民=支配階級による民族的抑圧・差別が、アイヌの民族的団結と復権を促進したように。また、支配階級の影響によって形成されている被支配階級階層の差別性をなくす変革が必要である。
 支配階級=国民=支配民族に対する被支配階級階層の解放運動の当面する任務は、自らを別の支配階級・別の国民に形成することである。しかし、形態はそうでも、内容は国際主義であり、国境に左右されないプロレタリア的利害である。それは、支配階級=国民に対する別の国民なのだが、形態も内容も国際的なプロレタリアートへの成長の過渡を示すにすぎないし、そうすべきである。
 諸民族の強制によらない自由な接近・融合とプロレタリアートの国際文化の発展を支持するという立場から、プロレタリアートが内容において国際主義的になっていくこととして、「国籍による差別のないことが国際社会の理想の姿である」を基本に、「国民統合」をうち破り、国籍条項などの民族差別のあらゆる現れをなくす運動の発展を支持する。そして、この領域をめぐって、上述のような日本型差別社会からアメリカ型差別社会への転換を求めるような批判を要する議論も含めて、運動内から、新しい社会の内容や質を求める議論が出てきていることに注目し、それを「未来の創造」への飛躍と結びつけることが必要である。                                                         (「火花282号(2005年2月)所収)

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第4次出入国管理基本計画について(4)

 出入国管理基本計画は、「活力ある豊かな社会」、「安全・安心な社会」、「外国人との共生社会」の実現への貢献という視点に立って、基本方針を4点あげている。

○ 本格的な人口減少時代が到来する中,我が国の社会が活力を維持しつつ,持続的に発展するとともに,アジア地域の活力を取り込んでいくとの観点から,積極的な外国人の受入れ施策を推進していく
○ 我が国社会の秩序を維持し,治安や国民の安全等を守るため,テロリストや犯罪者の入国を確実に水際で阻止し,また,依然として相当数存在する不法滞在者や今後増加が懸念される偽装滞在者対策等を強力に推進するとともに,法違反者の状況に配慮した適正な取扱いを行っていく
○ 我が国における在留外国人の増加,活動内容の多様化等に対応し,在留外国人の居住・在留状況等を正確に把握等するために導入される新たな在留管理制度を適切に運用し,情報を活用した適正な在留管理を行っていくとともに,地方公共団体における円滑な行政サービスの実施に必要な情報の提供を行うなど,外国人の利便性の向上に努めていく
○ 国際社会の一員として,難民の適正かつ迅速な庇護を推進していく

 まず、少子化時代における社会活力の維持、持続的発展、アジア地域の活力の取り入れということから、積極的な外国人を受け入れていくとして、外国人受入れ先として、アジアに重点を置いている。次に、秩序維持、治安、安全を守るために、テロリストや犯罪者の水際での周国阻止、不法滞在者、偽装滞在者の取り締まり、摘発強化を表明している。そのために、すでに、外国人の指紋採取、そして、在留カードによる管理(指紋押捺拒否闘争によって、指紋採取が廃止されたにも関わらず、特別永住者にまで指紋押捺の義務を復活させようと狙っている)、等々の治安管理強化策が、打ち出され、あるいは実施されている。これは、言うまでもなく、9・11事件後のアメリカの対テロ戦争への突入以来、世界的に強められている出入国管理強化の流れに沿うものである。公務員削減、行政改革の流れの中でも、入管職員は増員され続けている。この過程で、様々な人権侵害事件が起きている。外国人を端から潜在的犯罪者という視線で見、そしてそのように扱うのだから、当然である。一見、善良な外国人も、もしかしたらテロリストの巧みな偽装かも知れないと疑ってかかれば、そういうことになりがちなのは明らかである。出入国する日本人も同じである。出入国審査の段階での様々なチェックは、人権侵害を引き起こすこともある。それから、武器を携行することや武器の使用を認められている入管職員がいて、在日外国人を取り締まり、家宅捜索、捜査、入管へ収容し、などを行っている。かれらは警察職員的な存在なのである。

 次の在留管理の適正化というのは、すでに書いたとおりで、外国人の在留情報を法務大臣が一元管理し、治安管理の対象として管理するということである。それは、在留カードの導入策動とつながっている。難民政策については、ただ、「難民の適正かつ迅速な庇護を推進していく」という意志表明がなされているだけである。前の三点に比べて、まったく素っ気ない書き方だ。実際には、難民認定数は、申請者の増大にかかわらず、年に数十人で、3桁に達しない。裁判は何年もかかり、その間、多少の支援策がとられてはいるものの、まったく足りない状況だ。

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第4次出入国管理基本計画について(3)

 出入国管理基本計画は、つづいて、第3次出入国管理基本計画策定(2000年)後の出入国管理をめぐる変化を、4点、指摘している。

 第1は国内外の社会状況の変化である。我が国では,少子・高齢化の急速な進展の結果,生産年齢人口を中心に総人口が減少するという本格的な人口減少時代を迎えるとともに,いわゆるバブル経済以降の景気の大幅な変動を経て,平成20年後半からは,世界的な金融危機の影響により,深刻な経済不況に見舞われている。このような中で,我が国社会の活力を維持しつつ,持続的な発展を図っていくことが重要な課題とされ,近年,成長の著しいアジア諸国の活力を我が国に取り入れていくことも重要である。その一方で,日系人を始めとする定住外国人の失業や不安定な雇用等の問題も生じている。

 第2は不法滞在者等に係る状況の変化である。近年の入国管理局による厳格な水際対策や不法滞在者対策の実施等により,我が国の不法滞在者数は着実に減少しているが,依然として相当数の不法滞在者が存在する上,稼働先の拡散化等により効率的な摘発の実施等が困難となっている。また,偽装婚,偽装留学など身分や活動目的を偽り,正規在留者を装って滞在する偽装滞在者の増加が懸念されているほか,テロリストや犯罪者など我が国の治安等を脅かす外国人の水際での阻止も引き続き課題となっている。

 

 第3は新たな在留管理制度の導入である。我が国に在留する外国人の数は年々増加するとともに,その活動内容は多様化し,定住化傾向を強める者も少なくないが,現行制度の下ではこれらの者の居住実態等の把握を十分に行えず,適正な在留管理を行う上で支障を生じるなどしていた。これに対処するべく,第171回通常国会で在留管理制度の大幅な見直し等を内容とする出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)等の改正法が成立した。同改正法は公布の日から3年以内に施行することとされているが,同改正法による新たな在留管理制度を今後の出入国管理行政の基盤として適切に運用し,公正な在留管理を行うとともに,外国人と共に生きる社会づくりに貢献していくことが求められている。

 

 第4は難民問題である。近年,我が国における難民認定申請数は急増しているが,これに伴い審査期間が長期化する中,難民として認定されるべき者等の法的地位の早期安定化が求められている。

 1点目。日本の経済にとってのアジア経済の重要性を指摘し、さらに、日系人などの定住外国人の失業や雇用不安について指摘している。現在、日系ブラジル人労働者は、一人30万円ほどの渡航費用を国が支給し、再入国制限をした上で、帰国を支援している。

 2点目。不法滞在者については、摘発を強化していて、減少しつつあるということである。それに対して、偽装滞在者(偽装留学や偽装婚など)に対する警戒感を表明している。

 3点目。在留管理の問題で、先の入管法改悪のことを、「外国人と共に生きる社会づくりに貢献していく」ものだと誤魔化している。これは、外登法の改悪とセットであり、それによって、特別永住者の戸籍管理を戸籍台帳制度の下に組み入れた上に、在留管理情報を法務大臣が把握するようにしたもので、自治体を管轄する総務省から、治安を担当する法務省に、在日外国人管理を一元化しようというものである。

 4点目。難民問題については、難民認定申請数の増加に対して、難民認定手続き期間中の法的地位の安定化を課題としてあげている。この間、難民認定申請者の生活問題が発生していて、かれらの権利について曖昧で不安定な状態を余儀なくされている。入管の裁量次第という状態である。

 ここで、あらかじめお断りしておきます。こういう行政文書をただ読んでいくのは、たいして楽しい作業でもないので、適当に脱線していきますが、ご容赦下さい。

 脱線ではありませんが、坂中元東京入管局長は、第1の点の「我が国社会の活力を維持しつつ,持続的な発展を図っていくことが重要な課題」とする認識を共有している。彼は、在日外国人問題を、「日本にとって」どうかという点のみから見ていて、それは、「我が国社会」という基本的視点を取っている出入国管理基本計画の視点と同じである。「彼にとって」と「日本にとって」は同じ視線であって、もちろん、幻想的な一致だけれども、元官僚としては、一致しているのである。

 それから、4点目の難民対策については、具体的にどういう対策なのか、早いところ明らかにしてもらいたいと思う。法的地位には、就労権も入るようにしてもらいたい。それは、「難民を支援し、連帯する会」の先の入管・法務省への「要望書」にも記しているところだ。現実的には、難民申請中の申請者の生活の面倒を国が全面的にみることは困難だし、申請者が急増する中では、難民認定手続き期間の短縮も短期的には望めない。行政改革の中で、入管職員は右方上がりに増え続けているが、それも「仕分け」が進められている状況では大幅な増員は難しいだろうし、裁判の迅速化も望み薄だ。だとすれば、難民申請手続き中の就労を公式に認め、保障すべきである。これは、難民問題に取り組んでおられる大橋弁護士も自身のホームページで要求されていることである。

 ユーチューブでアリランで検索すると、李政美(イ・ジャンミ)さんの映像がいくつか出てくる。その中に、ミリャン・アリランがある。アリランは、地方によって、いろいろあって、ミリャン・アリランは、釜山(プサン)の北の密陽(ミリャン)地方のアリランである。これも、40番地自治会子供会でたしか教わった。唄は覚えている。

 40番地は、運動側がつけた番地で、それは、その地区には番地がなかったからである。河川敷であったから、土木事務所河川行政の管轄であった。そこに、実態調査の後、自治会を再建した。東九条松ノ木町40番地実態調査団の報告書『九条思潮』に、40番地の名がはっきりと出ている。法律というものについては、いろいろなことを感じるが、差別の結果として形成されたし、住まざるを得なかった「在日」(40番地の多くの人々が「在日」であった)について、ただ、法形式上、「不法」となっていることについて、それを解決するような制度も法も存在していないので、運動なしには、かれらの命も人権も守れないという状態にあったことから、法制度の「冷たさ」を強く感じた。夜、雨が降り続くと、家が流されてないか、心配で、早朝に、目が覚めた。この地域が、移転したのは、90年代であり、それも、鴨川環境浄化政策として、という名目でのことであった。かれらの歴史、生きた証の積み重ね、人権、等々はどこにいってしまったのか。公式記録上、かれらは抹殺された存在である。「声なき人々」とされてしまったのだ。しかし、私は、少数の仲間と一緒に、住民を一人一人説得して、自治会を再建し、一緒に、行政交渉を行い、自治会活動、夏祭りをやった。この頃、私は、「在日」と結婚した大将の経営する市場の卸売の店で働き、また、「在日」の親方の下で、40番地に住む人と一緒に働いた(この現場では、日本人は私一人だった)。東九条に住んで店を出していた人の系列の店でも働いた。「在日」の人のやってるお好み焼きや焼き肉によく行った。自治会事務局会議後は、よく、近くの「在日」が経営するお好み焼き屋に行った。指紋押捺拒否闘争の時には、関学連の学生部隊と共に、地域の団地の中庭で集会し、南区役所まで、デモを行った。東九条に住んでいたので、ほとんど、「在日」の中で生活していた。

 あの40番地の人々は、どうして、40番地に刻んだ人生の記憶、記録を、公式には否定され、抹消されなければならなかったのか、という不条理を感じた。そこには、人はいないと、公的には存在を消されている人々の「声なき声」を聞くことは、われわれの活動の一つの柱であった。そこに人はいるし、存在するし、声を持っているし、生きている。そのことを訴え続けなければならなかった。出入国管理基本計画には、こうした生きた「在日」の声も姿も、そして、難民やニューカマーのそれらの、影も形も感じられない。日本にとって、いい外国人か、悪い外国人か、と、あくまでも国益の観点から、区別し、そして、後者を、治安管理するにはどうしたらいいかという観点が貫かれているのである。

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第4次出入国管理基本計画について(2)

 出入国管理基本計画を見ていて、日本の入管政策の基本が、「在日」対策にあったことを改めて感じたが、たまたま、アリランを聞いていて、自分が、過去、日韓連帯運動から活動に入り、そして、京都の東九条という「在日」の多く住む地域で、地域反差別運動を通して、いろいろなことを学んだことを思い出した。40番地自治会運動の中で、ある年の夏祭りの前だったと思う。奥平の底辺研究会の活動を真似て、子供会をやり、「在日」の多い地域であったから、子供たちに、チャンゴなどの民族楽器や踊りや遊びを教えたりしていたが、そんな時、自治会役員の方が、チャンゴを自治会室に持ってきて、朝鮮の歌をいろいろと唱ってくれたということがあったのを思い出した。

 その中で、日本人の民族性とは何かと考え続けたが、その時は、結局、結論は出なかった。それは、結局、日本人の場合は、支配民族なので、自分が時代の支配的な民族性を持っているので、つまりは、普通であることが、それだけで、民族性を表現しているのだということに、後で気づいた。それに気づいたのは、私の場合は、「在日」との関係があったからだと思う。それから、最近、「在日」のアイデンティの問題が、云々される話をきくが、それは、実は、時代・社会の状況によって、変化するものであるからだと思う。『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書)によると、アメリカでの統計では、「「白人」、「黒人」、「その他の人種」に分けられるが、「そのさい、黒人とは、「混血の黒人」も「純粋な黒人」と区別なく一様に「黒人」とみなされ、白人との混血は「黒人」の血の割合がどんなに少なくとも黒人として申告しなければならない」(12頁)。しかも、1960年以降、それは、自己申告制となっている。1970年のルイジアナ州法では、「32分の1以上の黒人の血が混じっている住民は黒人とみなされ、出生、結婚、死亡などの証明書に黒人と明記されることになっている」(13頁)。著者は、「たとえ白人の血がいかに多くても、黒人の血が一滴でも確認されれば、その人は「白人」ではなくて、れっきとした「黒人」だということである」(同)と書いている。まさに、これは、人種主義の特徴をなすものだ。著者は、「したがって、われわれが、ごく普通に思い浮かべがちな黒人の身体上の特徴によってアメリカ黒人のことを判断すると、とんだ間違いをおかすことになりかねない」(同)と言っている。外見上、白人と変わらない黒人がいることを指摘していて、血だの外形的特徴から、人種を規定しても仕方ないということである。

 私は、東九条40番地子供会で、「在日」の仲間と共に子供たちに朝鮮の文化を教えた。もちろん、教えるなどというものというよりは、子供たちと共に学びながら、手伝ったという程度にすぎない。夏祭りでは、マダン劇をやった。楽しかったが、その中で、アイデンティティーの揺らぎを経験し、そうして、アイデンティティーは変化するということを感じたことは大きかった。その経験から、自我というアイデンティティーを問うという視点を獲得したのである。「自我という病」からの解放への道が開けたのだ。そうすると、自我の延長としての家族-故郷-国家というナショナリズムの構図から抜け出すことが容易になった。この解放感があるので、保守派の愛国主義には何も感じない。私が、地元の盆踊りを踊ったり、それを教えるだけなら、そうしたアイデンティティの揺らぎや相対化は不可能だ。アイデンティティーの揺らぎがなければ、問いもなく、考えるということがない。それでは、哲学もないし、進歩もない。だから、いろいろと学ぶものがあって、東九条での子供会活動は、私にとって大きな意味があった。子供たちのアイデンティティーはどうなったか、気になるところではある。三線の調べにのせた琉球民謡を冒頭に歌い、沖縄自立解放、「独立」を語った高良勉さんの講演をききながら、そして、私の頭の中では、その時、アリランのメロディーが鳴っていたが、そこでも同じように感じた。

 それとは正反対に、多民族共生社会を唱える坂中英徳(元東京入管局長)は、血統主義を基本に、「在日」50年消滅説を唱えている。民族には、支配的民族と被支配的民族があり、それは、国籍を根拠とされていたが、それだけで規定されるものではない。支配民族は、その支配的地位を脅かすと見なした者を、様々な理由を付けて、排除しようとする。先のアメリカの黒人の場合もそうで、ある時期までは、支配的地位に多数進出したのが、その後、後退している。オバマが大統領になって少しは改善が進むかもしれないが、今のところ、それほど大きな変化が起きているようには見えない。そうすると、支配民族から抑圧され排除される被支配民族は、当然、民族的抑圧に対して、民族性を強めることで団結し、対抗しようとする。けれども、支配民族の実態は、一握りの支配階級にすぎない。それ以外の多数者、ましてや被差別者は、そこから排除されるのである。アメリカ史で言えば、黒人奴隷と共に、植民者にほとんど奴隷的に隷属させられたイギリス本国の底辺層の白人年期奉公者が送り込まれていた。しかし、黒人奴隷制は、南部での綿花のプランテーション経営の発展につれて強化されるが、白人年季奉公者は、先に解放されるのである。こうして、被支配者の間には、民族的などの差別的ヒエラルヒーの構造が作られる。プロレタリアートは、こうして、差別・分断され、支配されている。こういう構造そのものを打ち破らないと、プロレタリアートは解放されない。つまり、真の民主主義も自由も人権も実現しない。

 坂中英徳は、日本の移民国家化を主張するにあたって、日本の国益を論じ、日本の寛容性、「和をもって尊しと為す」という協調性などを強調している。もちろん、そんなのはある部分的な性質を意図的に取り出して強調しているのであって、日本史は、戦乱の歴史もあり、第一、その言葉の主とされている聖徳太子は、戦争によって、物部氏を破った蘇我氏によって政権の中枢にすえられたのであって、和だの平和だのというイメージとは遠い存在である。今度は、その蘇我氏が、戦争で打ち破られ、大化改新が起こるのである。坂中の多民族共生社会とは、日本が少子高齢化で活力を失っていくという予想に対して、アメリカ型の移民国家とならなければ、日本が滅びるという危機感に基づいている。しかし、その際に、「在日」問題がまず片づかなければならないことを述べているが、日本国籍になったところで、それは、国籍を規定根拠とする差別がなくなるだけであって、民族性を根拠とする差別がなくなることを意味しない。2005年に、私は、そのことを指摘したが、それは、日本国籍取得の容易化を主張した桜井よし子が、それによって、アメリカ型の差別社会に移行するだけだと正直に認めていることで明らかである。坂中もまた、「在日」の差別については、ほとんど述べておらず、せいぜいが、法的地位において平等であるという形式平等の実現ということしか語っていない。そして、移民のアイデンティティーの尊重よりも、日本社会に早期に同化させ、職業訓練を急いで行うための、日本語教育を積極的に行うように求めている。彼の言う多民族社会のための施策はどこに行ったのか? そんなものに力を入れようという気など、彼にはないのだ。移民を労働者として働かせて、税金を取って、それで、日本人が得をしようというソロバン勘定しかないのだ。それをいろいろとけっこうな理屈をつけて合理化しているのが坂中の日本移民国家化論なのである。彼の『入管戦記』という本は、タイトル通り、「悪い」外国人との闘いの歴史であり、そこで、入管の人間として、いかに外国人犯罪と闘ったかの記録である。彼には、一貫して、入管体制の基本たる治安管理の姿勢に対する反省も、そして、何よりも問題なのが、戦争責任、植民地支配の清算、戦後責任について、まったく総括がないということだ。それに、差別に対する問題意識もない。それは、第4次出入国管理基本計画でも同じである。それで、どうして、坂中は、入管行政を人権行政化するなどということを言えるのだろうか。法務省人権局なる部局、あるいは、人権省でも作って、そこに在日外国人行政を任せるか。国籍による差別と民族による差別は、位相を異にしながらも、絡み合っていて、例えば、特別永住者の場合、朝鮮半島の南北分断状況、台湾・中国問題とからんでいる。しかし、いずれにしても、現在のような「同化」強制的状況の解消、そして、民族差別の撤廃、それには、歴史的前提としての歴史清算が必要である。それなしには、鳩山政権が掲げる「東アジア共同体」など、たんなる夢物語でしかないことは、子供たちでもわかることである。

 いずれにしても、第4次出入国管理基本計画は、在日外国人問題を、犯罪対策という視点で、書き始めている。そうして、法務省は、在日外国人政策の基本姿勢が変わってないということを読む者に知らしめているのだ。

 出入国管理行政の目的は,すべての人の出入国の公正な管理を図ることにある。これを敷衍するならば,出入国管理行政の要諦は,外国人の適正・円滑な受入れを進めていく一方で,テロリストや犯罪者など我が国の治安等を脅かす外国人の入国・滞在を阻止し,もって我が国社会の活性化と健全な国際化の進展に資するとともに,安全・安心な国民生活の確保に寄与することにある(「Ⅰ第4次出入国管理基本計画策定に当たって」 下線は引用者)

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第4次出入国管理基本計画について(1)

 先日の参議院法務委員会での民主党今野東議員の質疑の中で、出入国管理計画の策定うんぬんという答弁が、法務大臣からありました。大臣の発言は、この基本計画に基づいたものが多く、現在の入管政策の基本がこれに表現されている。そこで、この3月付で公表されている第4次出入国管理基本計画を見ていくことにする。まず、目次を引用しておきます。

(目次)

Ⅰ 第4次出入国管理基本計画の策定に当たって

Ⅱ 外国人の入国・在留等をめぐる状況

1 我が国に正規に入国・在留する外国人の状況等

(1)全般的な状況

(2)就労を目的とする外国人の状況

(3)学ぶことを目的とする外国人の状況

(4)身分又は地位に基づいて入国・在留する外国人の状況

2 我が国に不法入国・不法滞在等する外国人の状況等

(1)個人識別情報を活用した上陸審査の状況

(2)不法滞在者の状況

(3)偽装滞在者等に係る在留資格取消しの状況

3 難民認定申請等の状況

Ⅲ 出入国管理行政の主要な課題と今後の方針

1 我が国社会に活力をもたらす外国人の円滑な受入れ

(1)経済成長に寄与するなど社会のニーズにこたえる人材の受入れ

 

 ア 高度人材に対するポイント制を活用した優遇制度の導入
 イ 経済社会状況の変化に対応した専門的・技術的分野の外国人の受入れの推
   進
 ウ 我が国の国家資格を有する医療・介護分野の外国人の受入れ

(2)日系人の受入れ

(3)国際交流の一層の推進

 

ア 観光立国実現に向けた取組
 イ ワーキングホリデー制度等を通じた青少年交流の拡大
 ウ ビジネス関係者等の交流の一層の活発化

(4)留学生の適正な受入れの推進

(5)研修・技能実習制度の適正化への取組
 ア 技能実習生の保護に係る措置
 イ 団体による監理の強化,不正行為機関等への厳格な対応
 ウ 送出し機関の適正化,送出し国への働きかけの強化

(6)外国人の受入れについての国民的議論の活性化

2 安全・安心な社会の実現に向けた不法滞在者対策等の推進

(1)厳格な出入国審査等の水際対策の実施

 

 ア 個人識別情報を活用した上陸審査の推進
 イ 関係機関との連携による情報を活用した水際対策の強化
 ウ 船舶等を使った不法入国者への対策の強化

(2)国内に不法滞在・偽装滞在する者への対策の推進

 ア 不法滞在者・偽装滞在者に係る情報の収集・分析体制の整備等
 イ 積極的な摘発等の実施
 ウ 偽装滞在者に対する在留資格の取消し等の実施
 エ 警察等捜査機関との連携の強化
 オ 迅速な送還の実施

(3)被収容者の処遇の一層の適正化に向けた取組

(4)在留特別許可の適正な運用

3 新たな在留管理制度の円滑な導入と同制度に基づく出入国管理行政の展開

(1)情報を活用した適正な在留管理の実現

(2)外国人との共生社会の実現に向けた取組

4 難民の適正かつ迅速な庇護の推進

(1)適正かつ迅速な難民認定のための取組

(2)第三国定住による難民の受入れ

5 その他

(1)出入国管理体制の整備

(2)国際協力の更なる推進

(3)人身取引被害者等への配慮

(4)外国人登録制度の適切な運用及び新制度への円滑な移行

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資料:3月16日参議院法務委員会での入管問題での質疑

 以下は、3月16日の参議院法務委員会での、入管関係の民主党今野東議員の質疑の議事録です。今野議員は、西日本入管センターでの収容者約80人によるハンストの問題を取り上げています。その他、入管、難民問題についても問いただしています。

参議院- 法務委員会 2010年3月16日

○今野東君 

 おはようございます。民主党の今野東でございます。
 今日は大臣の所信に対する質疑ということでございまして、先日、大臣の所信を伺いました。この中にはしっかりと取調べの可視化についても大臣の決意が書かれてありまして、取調べの可視化の成立については大臣の中にも変わらぬ情熱がめらめらと、めらめらとかどうか分かりませんけれども、燃え続けていることを知り、ほっとしたところでありますし、できるだけ早い時期に取調べの可視化成立に向けてやっていかなければならないという思いを強く改めてしたところでございます。
 また、適正な入国管理というところについては、近年急増している難民認定申請について、一層の処理期間の短縮と適正化に努めますと、難民条約上の難民には該当しない申請者についても、本国の事情、経歴、家族状況などを個々に考慮して、人道的な配慮が必要な場合には、我が国への在留を特別に認めているところですが、引き続き、申請者の置かれた立場に十分に配慮した対応を行いますとおっしゃっておいでで、大変この決意は是とするものでございますけれども、すばらしいと思いますけれども、しかし、実際にはどのような入管行政が行われているかといいますと、実は過日二月十六日、ペルー人の親子が強制的に送還をされてしまったという事案がありました。
 今日はそのことを中心にお伺いしたいと思いますけれども、その前に、大阪の西日本入国管理センターでも男性収容者のおよそ七十人がハンストをしているという報道がありました。何が問題で、なぜこのようなことになっているのか、また今後どういうふうに対応しているのか、まず冒頭これを伺いたいと思います。

○国務大臣(千葉景子君) 

 所信に対して今野委員から大変心強い応援のお言葉をいただいて、ありがとうございます。
 その中で今お尋ねがございました、三月八日、西日本入国管理センターに収容中の被収容者百三十三人のうち約八十人が、開放処遇終了時に帰室ですね、部屋に戻るのを拒否をしたということがございました。その際に、一部の者が居室外の区域で立てこもるなどのようなこともございました。職員の説得等で帰室はしたものの、官給食の搬入を拒否して給食を取らないという、そういう事態が起こっております。三月十五日夕食時の現在で、七十一人が引き続き拒否をしております。その一方で、有り難いということでしょうか、支援者からの差し入れや自費購入の食品類を摂食をして、一定の体力といいましょうか、そういうものは保持をしているのではないかと承知をいたしております。
 この事案の発生後、被収容者から、仮放免について改善を求める、そういう申出がなされているものの、なかなかその要望に至った原因、背景というのは必ずしもまだ確たるものは分かりませんで、今調査中でございます。いずれにしても、このような行為は、収容している者の安全、それから収容所自体の安全と秩序ということを阻害するということもございますので、大変重大なことだというふうに認識をしております。
 これ、今後の対応ですけれども、長期化することになると被収容者の健康上の問題が大変危惧される、そういう意味では、職員が被収容者に対し官給食の摂食を促してはおりますが、今後もそういう点は説得を継続をしてまいりたいと思っております。
 一つの理由に仮放免ということが挙げられているようですけれども、仮放免については、本人の情状や仮放免の請求理由など諸般の事情を総合的に考慮して、また人道上の観点からこれまでも弾力的に運用させていただいております。
 仮放免については今後ともそういう観点で適切に対応してまいりたいというふうに思っておりますが、どのような理由に基づいてこのような事態が生じているか、今調査もしておりますので、そういうことも踏まえて今後の対応を検討してまいりたいと思っております。

○今野東君 

 西日本入国管理センターは前にもこういうことがあって、つまり、こうして複数回このようなことがあるということはやっぱり何らかの問題があるのではないかと。これはしっかり対処していかなければまた同じようなことが起こって、それぞれぎくしゃくした関係が続くということは決して好ましくないことですので、一応途中の経過ですけれども、私自身も見詰めていきたいと思っておりますが、善処をよろしくお願いいたします。
 さて、このようにして様々な問題を抱えながら実際に行われている入管行政ですけれども、政権が替わりまして半年であります。入国管理行政、どのように変わったんでしょうか。
 むしろ、替わってから以降、仮放免、在留特別許可については非常に厳しくなったように思い、そして、その数字を出してくれと私自身も入国管理局に出しているんですけれども。特に子供がいる家庭といいますか、家族についての在特について詳しく知りたいと思って、小学生がいる家庭、中学生、高校生どういうふうになっているのかと調べてくれと言うと、高校生は高校生以上という分け方になっていて大人もその中に入れて数字を出してきて、これじゃ駄目だからもう一回出してくれと言ってもいまだに音さたがないという状況なんですよ。よく分からないんです、政権が替わって半年、どうなっているのか。
 入管行政は政権が替わってどのように変わっている、あるいはどう変えるべきだというふうに指示をしていらっしゃるんでしょうか。

○国務大臣(千葉景子君) 

 入管行政については、従来どのような対応を取っていたかということは必ずしも私が確たるものを持ち合わせているわけではありませんけれども、私の基本的な認識といたしましては、政権替わって私がその責任者を務めさせていただくということになってから、基本的な考え方としては、やはり我が国の経済成長、こういうことのみを考えることではなくして、これから幅広い文化交流、あるいは友好関係の土台の構築、言わば共生型の社会、こういうことを頭に置くことが大変重要だというふうに認識をいたしております。そのため、入国管理行政を適正にそういう観点で行うことは不可欠なことだという認識でございます。
 そのために二つの視点が必要だというふうに思いますが、一つは、やはり外国人の皆さんの円滑なそしてまた人道的な受入れ、外国人の皆さんの暮らしやすさ、こういうものを向上、発展させていく、こういうことが一つは大事な視点だというふうに思いますが、もう一方で、やはり違法な行為をもくろむようなそういう意味での外国人の入国というのは、やはりこれはきちっと厳しく適正に対処して暮らしの安全、安心を確保していかなければいけない、こういうことも一方では言えようかと思っております。
 そういう視点で私も認識をしながら運営をさせていただいておりますが、現在少し取組を進めさせていただいているということは、例えば政府全体としては、新成長戦略に掲げられた観光立国、こういうことを実現するための入国審査、こういう点についても新たな視点として取組をさせていただくことになっておりますし、それから中長期在留する外国人の皆さんの利便性の向上、それから専門的、技術的分野における外国人労働者の受入れを促進をすること、それから御指摘がありました難民認定の一層の処理期間の短縮そして適正化、こういうときに、例えばUNHCR等々、そういう機関との連携などもより一層密にしていかなければならないというふうに考えております。
 また、先ほど言いました主に安全、安心という観点からいえば、水際で不法なものはきちっと阻止をしていくと、こういうことも必要ですし、それから、やはり不法、非正規な形で滞在をしているようなケースについてはでき得る限り摘発もきちっといたしますけれども、積極的な広報やあるいは在留特別許可、これをできるだけ自発的に出頭していただくなどして適正に運用するということによって、でき得る限りきちっと日本で生活をしていただくべき方については生活をしていただく、しかし不法な場合には厳正にしていく、こういうめり張りをした対応を取っていかなければいけないというふうに考えております。是非、これからもより一層、在留特別許可等についても特に透明性を確保していくということにも留意をしていきたい。
 なかなか、今お話がございましたように、より厳しくなったんではないか、そういう御指摘もございます。そういう意味では、やはりどうして在留特別許可が出たのだ、あるいはこれは認められなかったのだというようなことについても、できる限り透明性を確保することによって納得いただける、こういうことに私は留意をできるだけしていきたいというふうに思っております。
 なかなか一遍に半年等々で大きな、何というのでしょうね、変化ということが見えないところはあろうかというふうに思いますけれども、今申し上げましたような認識の下で是非取組をしていきたいというふうに思いますし、大きく言えば、これから外国人の皆さんの、どういう形で日本に来ていただくのか、受入れ、そういうことについては、やはり政府全体として日本の社会のあるべき姿ということを踏まえて検討していくものだというふうには思っておりますので、こういう点について私の方からも積極的な提起をしてまいりたいというふうに考えております。

○今野東君 

 大臣のそういう思いが表れてくるのは恐らくこれからなんだろうと思います。
 今、入国管理行政について基本計画を恐らく作っているところだろうと思いますけれども、それの基になるのがこの第五次出入国管理政策懇談会の報告なんだろうと思いますが、この中には、残念ながら難民認定申請について今非常に長い期間、一年半から長い人は四年も五年も放置されている。にもかかわらず、この報告書には早くその短縮と適正化に努めるべきだというような内容のことが残念ながら書かれていない。
 是非、大臣の思いとして、これからの基本政策の中にはそのことも書き込んでいただきたいと思いますし、ガイドラインもついこの間新たに出ているものもありますけれども、在特を出すについても明確な基準を是非その基本計画の中でお示しいただければなという思いがしております。
 さて、そうした大臣の思いが、先ほどもちょっと触れましたけれども、この大臣の所信の中にも、申請者の置かれた立場等に十分に配慮した対応を行いますと大臣が言っているにもかかわらず、足下の行政の窓口ではとんでもないことが起きております。
 二月十七日、成田空港から強制送還されたペルー人の親子の件について、ここから伺います。
 親子は二月十六日、仮放免延長の申請のために弁護士と一緒に品川入管に出頭いたしましたところ、弁護士と引き離されたまま、お母さん、母親だけではなくて子供も収容されて、弁護士と面会することもかなわないまま、翌日七時五分に成田空港に移送されて強制送還されました。人権を最も尊重し、むしろ他の省庁に範を示さなければならない法務省という役所の中でこのような非人道的な措置が堂々と行われているということに私は驚きを感じ、非常な怒りを感じました。
 強制送還されたお母さんは、これは弁護士さんの了解も得て名前を出しますが、サンチェス・コロネル・ヒエンダ・バネッサさんという方であります。一九九三年五月、九十日の短期滞在で入国して、その後、オーバーステイになりました。日本に来てからペルー人男性と交際して、一九九八年六月に男子出産をしております。この男の子は今十歳、小学校四年生です。二〇〇七年十二月五日、自宅で摘発を受けまして、二〇〇八年の九月十八日、退去強制令書が発付されました。二〇〇九年五月、退去強制令書取消しの再審申出をしていますが、六月に再審について不開始の告知がありました。二〇〇九年七月、再び再審の申出をしています。
 なぜ二度の再審申出をしているかというと、在留特別許可を出してもらえるのではないかという希望を持っていたからなんです。なぜこういう希望を持つに至ったかというと、この母親は一九九三年五月十四日に来日しています。十六年半も日本に滞在している。子供は十歳になっている。日本でもちろん生まれた子供です。母親がペルー人なのでスペイン語であいさつ程度はできますけれども、日常の会話は日本語です。日本の小学校にもちろん通って、間もなく五年生になるところでした。完全に日本になじんでいます。
 平成二十一年七月に改訂された在留特別許可に係るガイドラインによりますと、この中に積極要素の四というところがありまして、四、当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護及び養育していることに当てはまります。
 重大犯罪等による刑に処せられたこともありませんし、反社会性の高い違反を犯しているわけではありません。現に、このガイドラインでは、在留特別許可方向で検討する例としてもこういうことが書かれています。「当該外国人が、本邦で出生し十年以上にわたって本邦に在住している小中学校に在学している実子を同居した上で監護及び養育していて、不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなどの在留の状況に特段の問題がないと認められること」と記してありまして、そうしますと、この親子はここからすると在留特別許可を出せる方向だったのではないかと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○国務大臣(千葉景子君) 

 今、ガイドライン等に照らして、在留特別許可を出せるものではなかったかという御指摘でございます。
 私の認識では、様々な判断材料、当局でもきちっと状況を調査をした上で、本件については、改訂された在留特別許可に係るガイドラインに照らしても、在留を特別に許可をするという事案には該当しないということで、私もそれを報告を受け、承知をしたところでございます。
 ガイドライン上の様々な条件があるわけですけれども、例えば、本件については、自宅で摘発されたということで出頭申告ではないというような事情もございます。あるいは、お子さんが裁決時に小学校三年生で、いまだ可塑性に富んでいるという実情もございますし、お子さんが母国語の読み書きが十分にできるということなどもあります。
 こればかりではございませんけれども、様々な状況を配慮した上で、総合的に判断をしても在留特別許可には今回は該当させることができないという判断であったと私は承知をいたしております。

○今野東君 

 これ大臣、どういう報告を受けていらっしゃるのか分かりませんけれども、再審でも新しいガイドライン適用すると言っているんです、法務省は、私が呼んで勉強会をしているところで。
 ですから、これは当然在特を出すことに当たると思いますし、それから大臣、これも大変重要なところですけれども、母国語が十分できるという報告を下から受けているようですが、実際どうなっているかというと、この少年は、ペルーに、本国に帰されて小学校で入学手続をしたんですが、今、今度五年生ですよ、この四月から、日本にいれば四年生終わるところだったんです。ですが、言葉が不自由なので小学校一年生に編入なんです。母国語ができていません。こういうことを、大臣、どうやって報告を受けているのか分かりませんけれども、正しい報告を出してくれというふうにこれからは請求してください、是非。子供が十分言語できないんですよ。四年生だったんだけど、一年生に入れられることになっているんです、ペルーの小学校では。母国語が十分ではありません。
 どういうことをチェックしてそういうふうになっているのか、私にはよく分からない。わざわざ在特を出さないために正しい情報をつかもうとしていない入国管理局の姿勢というのがここに表れていると思います。そして、大臣にそうじゃない、真実ではない報告をしている。大臣、そんなことを一々現場に行って調べることできませんから。入管当局、今日来ていますけれども、今後決してこういうことがないようにしていただきたい。
 続いて質問をしますが、親子は仮放免を繰り返して二月十六日まで日本に滞在していたんです。母親は、仮放免の延長手続のときには息子は学校なので連れていかないことが多かったんですけれども、二月十六日の出頭のときには、入国管理局側から、子供と話したいから連れてきてほしいと、今度は子供を連れてくるようにという連絡がありました。弁護士さんは電話で入管に、子供の出頭を求めているのは収容のためじゃないんですかと問い合わせをしています。しかし入管の職員は、それは同居や就学状況を聞くためですと言っているんです。
 親子は、弁護士と一緒に、二月十六日九時半、東京品川の入管に仮放免許可証と仮放免延長許可申請書を提出しました。そして、九時五十分に母親が面接室に案内されています。九時五十五分に子供が面会室に連れていかれて、そのとき執行部門の職員は弁護士に対して何と言ったかというと、これ私に対する入管の報告ですけれども、個人的な状況を伺うので同席していただくまでもない、子供の状況も確認する必要がある、自後説明すると言ったとなっています。
 しかし、十二時五分、面接室で、今度は執行部職員が弁護士に対して説明したときには、強制令書を執行し収容したということは伝えているんですが、送還することは伝えていません。しかも、積極的にそのことを隠している。弁護士には何と言ったかというと、私、弁護士の先生に聞いたんですけれども、先生には子供の収容はするなと言われていたが、結論として退去強制令書を執行した、ただし子については児童相談所に送るか、今後検討の余地もあると言っている。送還することを決定したと言っていないんです。なぜこんなうそを報告されているんでしょうか。今日は入管局長来ていますから、お話を伺います。

○政府参考人(田内正宏君) 

 送還のことにつきましては、その送還前にこれを話すということは、送還を遂行する上でなかなか難しいところがあると考えております。
 お尋ねのペルー人親子を担当した東京入国管理局の職員からは、弁護士に対応した翌日に行政書士の方がお見えになりました、その際、事案によっては子を児童相談所に預ける場合や親と一緒に収容する場合等があるという説明をしたと、そういう記憶があるという報告を受けております。ただ、弁護士さんと話をしたときに同様の説明をしたかどうかは記憶が定かではないということでございます。この行政書士さんにお話をしたことは、行政書士さんの方から子供の収容は異例ではないかと、こういう御質問があったということから、児童の収容の実情について児童相談所に預ける場合や親と一緒に収容する場合があると、こういう説明をしたと、一般的にお答えをしたものということでございます。
 一般的には、親が帰国説得に応じないなど、その送還を確実に実施する必要から親を収容せざるを得ない場合がございます。その場合には児童の収容をなるべく避けるべく、親の意向や監護養育を行う適当な者の有無などを踏まえ、できる限り児童相談所や親族に預けるなどしております。
 本件につきましては、翌日、出頭の翌日に国費で送還する予定であったことから、収容する部屋には当該親子のみとするなど、その心情に配慮しつつ、親とともに収容したということでございます。

○今野東君 

 つまり、子供をだまして連れてこさせて、そして送還したんです。当然、在特を出す事由もあった。当然この枠の中に入っているじゃないですか、ガイドラインの中に。だけれども、連携して弁護士にも会わせないようにして強制的に帰したんですよ。
 弁護士に会わせなかったことについて私に対する説明では、この間、弁護士と面会を希望する旨の申出がなかったというふうに報告をし、書かれているんですけれども、これは本当ですか。

○政府参考人(田内正宏君) 

 先生の方に御報告いたしました内容、そのようになっておりますし、東京入国管理局からは、ペルー人親子から弁護士と面会したいという発言はなかったと、こういう報告を受けております。

○今野東君 

 これも大臣、そこで聞いていただいていますけれども、うそなんですよ。こんな困ったときに、弁護士と一緒に来ているんですよ、入管に。それで自分は送還される危険を感じているわけで、そのときに弁護士と会わせてくださいと言わないわけがないじゃないですか、通常考えて。
 実際に、品川入管では親子に仮放免期間延長許可申請について不許可の通知書を出して、署名をするように求めているんです。入管局長、報告を受けているかどうか分かりませんけれども、このときにこのペルー人の母親は、よく分からないから弁護士さんと相談したい、相談しないと署名できないから会わせてほしいと言っているんです。さらに、母親は、弁護士に電話をしたい、何度も申し出たと言っています。入管職員は、後でとか、あるいはあしたなどと言って電話を掛ける機会さえ与えなかった。その申出は事実と違いますよ。

○政府参考人(田内正宏君) 

 御指摘も踏まえまして、東京入管の方に慎重に聴き取りをして調べております。
 東京入国管理局においては、仮放免担当の統括審査官がペルー人親子から仮放免期間延長許可申請を受理し、主任審査官の決裁を仰いだところ、不許可とされたことから同統括審査官が不許可の告知を行っておりますが、ペルー人親子は淡々と不許可の説明を聞き、母親が子供の分も含め不許可通知書に署名を行ったものと報告を受けております。
 東京入管からは、これら手続の間、さらに送還するまでの間、当該親子から弁護士と会いたいとか弁護士に電話をしたい等の発言はなかったとの報告を受けております。

○今野東君 

 十六年半も日本にいて、そして子供にもキミオという名前まで付けて日本の社会に溶け込んで暮らしていた人が、いよいよ送還されるというときになって淡々と聞くと思いますか。そんな説明通じると思いますか。弁護士に会わせてくれと悲痛な叫びをしているんです、このお母さんは。それでも無視したんだ、あんたたちは。
 小学生に対して収容、送還が行われたことについては、児童の権利条約からも明確に逸脱しています。児童の権利条約三条一項、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」、児童の権利条約三十七条(b)、「いかなる児童も、不法に又は恣意的にその自由を奪われないこと。児童の逮捕、抑留又は拘禁は、法律に従って行うものとし、最後の解決手段として最も短い適当な期間のみ用いること。」。(d)、「自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有し、裁判所その他の権限のある、独立の、かつ、公平な当局においてその自由の剥奪の合法性を争い並びにこれについての決定を速やかに受ける権利を有すること。」というふうに書いてあります。

○国務大臣(千葉景子君) 

 今、今野委員から様々な今回の事案についての御指摘をいただいております。これについては、私も大変重く受け止めさせていただいております。きちっとした報告を私も受けることが大切だということは当然のことでございますし、それに基づいてガイドラインあるいは人道的な観点から対処をしていかなければいけないというふうに思います。
 この御指摘のあった事案についても、やはり弁護士との面会が実施できなかった、確かに弁護士と面会は要らないと言っているともなかなか思えませんし、そういうときにできるだけ援助を必要とするということは私もよう理解ができます。
 そういう意味で、弁護士等の面会が実施できなかったというようなことは、私も配慮が足りなかった、やっぱりもうちょっとそこをきちっと考えて対応をすべきだったというふうに思います。
 こういう点について、弁護士からの面会の申出があったような場合には、できるだけ面会時間や、あるいはいろんな状況があろうとも面会について配慮をすべしという通知をこれから各入管当局に発出する指示を出したところでございまして、それぞれ現場で、執務時間等にとらわれず、それから本人の意思等の確認は必要ですけれども、できるだけ弁護士との面会などができるようにこれから私もきちっと配慮それから監視をしてまいりたいというふうに思っておりますし、そういうときがどうしても難しいというときには電話等での対応もできるように配慮をすべし、こういうこともこれから徹底をしてまいりたいというふうに思っております。
 今回の件につきましては、ガイドライン等におきましても在留特別許可ということに必ずしも該当しないという事案ではございますけれども、やはりその手続あるいは御本人の納得、そういうことを含めてこれからも適切に対処をしていかなければいけない、大変重要な御指摘をいただいた事案だというふうに思いますので、これから私も重く受け止めて対応してまいりたいと思います。

○国務大臣(千葉景子君) 

 今、今野委員から様々な今回の事案についての御指摘をいただいております。これについては、私も大変重く受け止めさせていただいております。きちっとした報告を私も受けることが大切だということは当然のことでございますし、それに基づいてガイドラインあるいは人道的な観点から対処をしていかなければいけないというふうに思います。
 この御指摘のあった事案についても、やはり弁護士との面会が実施できなかった、確かに弁護士と面会は要らないと言っているともなかなか思えませんし、そういうときにできるだけ援助を必要とするということは私もよう理解ができます。
 そういう意味で、弁護士等の面会が実施できなかったというようなことは、私も配慮が足りなかった、やっぱりもうちょっとそこをきちっと考えて対応をすべきだったというふうに思います。
 こういう点について、弁護士からの面会の申出があったような場合には、できるだけ面会時間や、あるいはいろんな状況があろうとも面会について配慮をすべしという通知をこれから各入管当局に発出する指示を出したところでございまして、それぞれ現場で、執務時間等にとらわれず、それから本人の意思等の確認は必要ですけれども、できるだけ弁護士との面会などができるようにこれから私もきちっと配慮それから監視をしてまいりたいというふうに思っておりますし、そういうときがどうしても難しいというときには電話等での対応もできるように配慮をすべし、こういうこともこれから徹底をしてまいりたいというふうに思っております。
 今回の件につきましては、ガイドライン等におきましても在留特別許可ということに必ずしも該当しないという事案ではございますけれども、やはりその手続あるいは御本人の納得、そういうことを含めてこれからも適切に対処をしていかなければいけない、大変重要な御指摘をいただいた事案だというふうに思いますので、これから私も重く受け止めて対応してまいりたいと思います。

○委員長(松あきら君)

 いいですか。

○今野東君 

 いいです。大臣、三月十日なんですよ、お聞きになったのは、大臣が報告を受けているのは。これ、二月十七日なんです。そして、その直後、私はこれについて説明してほしいと部屋に来てもらって、東京入国管理局の職員の方に説明を受けているんです。それでもなおかつ大臣のところにこの説明が上がっていない。質問をしますよということになって初めて大臣はこの事実を聞いているんです。報告が上がっていないんですよ。
 こういうことをやるのはどこで決定されるんですか。大臣名でこれは帰されているんですよ、このペルー人の親子は。大臣名で執行されているんです、こんな非人道的なことが。一体これはどこで決定するんですか、入管の中の。

○政府参考人(田内正宏君) 

  御指摘の事案に関しまして、被収容者の送還要件具備及び退去強制令書の執行並びにその執行のための護送及び送還に関する事務は、東京入国管理局執行担当の首席入国警備官が行っております。その監督上の責任者は東京入国管理局長でありますが、適正な入管行政の運営は入管局全体で取り組むべきものと思っております。

○政府参考人(田内正宏君) 

  御指摘の事案に関しまして、被収容者の送還要件具備及び退去強制令書の執行並びにその執行のための護送及び送還に関する事務は、東京入国管理局執行担当の首席入国警備官が行っております。その監督上の責任者は東京入国管理局長でありますが、適正な入管行政の運営は入管局全体で取り組むべきものと思っております。

○今野東君 

そういう執行をするということは、当然、この現場の統括入国警備官が決定をして、そして局長のところに上がってきて、それを大臣のところには上げないの。

○政府参考人(田内正宏君) 

本件の執行の際には大臣のところには上がっておりません。

○今野東君 ]

大臣名でやるのに、何で大臣のところに報告が上がらないんですか。

○政府参考人(田内正宏君) 

それは、それぞれ東京入管に委任された事項、専決された事項ということでやっているところでございます。

○今野東君

 これは日本の恥なんですよ、こういう非人道的な措置は。国連でも恐らく問題になりますよ、千葉景子法務大臣名でこの親子は送還されているんですから。私たちは、大臣を支える立場として、こんなことを勝手にやられちゃ困るんです。
 大臣、こういうことがないように、これからどういう処置をされますか。

○国務大臣(千葉景子君)

 私もできるだけ報告を適切に受けるということはしたいというふうに思っておりますけれども、なかなかすべて私も決裁をするということは困難だというふうに思います。何か問題のある、あるいは御指摘があるような事例について、私も適宜報告を受けるように努力をしていきたいというふうに思っております。

○今野東君 

二度とこのようなことが起こらないように、入管行政、しっかりしていただきたいですし、そして、東京入管、今日は入国管理局長もおいでですけれども、大臣のこの不自由なつらい立場をしている方々に対する温かい思いを十分に行政の窓口のところでも具体的に表していただけますようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

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3月30日、入管・法務省要請行動報告

 3月30日、「難民を支援し、連帯する会」は、SYI(入管収容者友人有志)と共に、東京入管と法務省に対する要請行動を行いました。SYIは、西日本入管センターでの、収容者約80人のハンストへの支援・連帯行動で要請を行い、「難民を支援し、連帯する会」は、品川入管に収容されているジャマルさんを強制送還しないようにとの要請などを入管・法務省に対して行いました。SYIのブログで、その報告がすでにアップされてます。
 民主党を中心とした連立政権が成立し、人権派弁護士と言われる千葉景子氏が法務大臣になり、入管行政の改善が少しは進むかと思いきや、そんなことはありませんでした。入管行政の基本が、まったく変わっていないのは、もちろんですが、民主党政権以前からの入管政策通りに、入管当局は、在日外国人に対する人権抑圧、差別体質を強めていて、相次ぐ、収容、追い出し(強制送還)、収容者への人権侵害を強め、あるいは、「在日」への監視を強めています。入管法を扱うのは、犯罪対策特別委員会であり、そこに、日本政府の外国人政策の基本姿勢が、示されています。政府のそういう態度は、人々が、国境を超えて横につながっていくことへの障壁です。このような障壁を低くし、撤廃していく大衆的運動を発展させていきたい。

                   WE ARE THE WORLD! WE ARE THE PEOPLE!

Image050_3                                 法務省に対する要請行動(10年3月30日)

                  要請文

千葉景子法務大臣殿                        2010年3月31日

東京入管所長殿       難民を支援し、連帯する会(事務局長酒井雅巳)

 私たちは、祖国での圧制、差別、弾圧をのがれて日本にやってきた難民を支援することを目的とする、市民の自主的な組織です。私たちは、その前身「ジャマルさんを支援する会」時代も通じて、何回か入管行政の改善を法務省や入管に申し入れてきました。

 しかし残念なことに、最近になっても入管行政には着実な改善が見られませんし、以前より悪化しているのではないかと思われる節もあります。そこで今回、改めて以下のことを申し入れ、速やかな対処をお願いするものです。

1.イラン人難民ジャマル・サーベリ(ジャラル・アマンザデ・ノーイ)君を強制送還しないこと。

 現在、ジャマル君は東京入管に強制収容されています。私たちは、法務省・入管当局が、彼を彼の祖国イランに強制送還しないよう、要請します。

 というのは、現在のイランは、イスラム聖職者たちが独裁的に支配する専制国家であり、とりわけアフマデネジャド大統領のもとで、民衆の自由への抑圧、反体制派に対する弾圧が苛酷なものになっています。共産主義のグループはもちろん、自由主義のグループ、個人、いやイスラム教を信じるものであろうt、少しでも政府やイスラムの支配に抗議の声を挙げる者には、仮借のない弾圧が襲いかかっています。

 とりわけジャマル君については、祖国に送還されれば、逮捕、拷問、投獄、処刑等々の危険があることは、目に見えて明らかです。その事は、以下に記す06年10月31日の東京地裁鶴岡判決も、明確に認めるところです。

 判決は言っています。「原告は共産主義思想を抱いており、イラン・イスラム体制を否定する立場に立っており、難民申請、裁決の時点で思想は強固なものであり、WPI(イラン労働者共産党)の一員としての具体的な活動をしている。イランの人権抑圧、反体制派に対する苛酷な弾圧から見ても、迫害を受ける危険があり、難民該当性を有する」。

 よって私たちは、法務省・入管におかれましては、彼を強制送還しない旨、明確に言明されるよう、強く求めます。もしも彼を強制送還するならば、「正義」(Justice)をつかさどる筈の法務省が、邪悪な圧制による犯罪行為、殺人に自ら手を貸すことを意味します。それは言うまでもなく、民主主義、人権を擁護し、命の尊厳をたっとぶ世界の良識を蹂躙することを意味します。

2.弾圧の恐れのある国に強制送還しないこと、難民申請者をすみやかに難民と認め、庇護すること。

 ジャマル君に限らず、イランからは、大勢の人々が自由を求め、祖国の民主化を願って、日本で難民申請しています。ビルマやエチオピア、トルコ等々多くの国からも、難民がやってきています。

 しかるに日本政府は、ヨーロッパ諸国など他の難民条約締結国と比べて、著しく少数しか彼らを難民として認めようとしてはいません。私たちは、法務省・入管に対して、この「難民鎖国」と呼ばれる恥ずかしい現状を、ただちになくすよう、心から要請するものです。
3.「仮放免」中の労働する権利を保障すること。
 難民に対する処遇という点で、最も早急に改善をお願いしたいのは、難民申請中、もしくはそれをめぐる裁判を継続中の者に対して、合法的に働く権利を保障することです。
 この事が保証されず、労働することが犯罪、違法行為とみなされることによって、当該の難民や支援者がどんなに大きな犠牲を強いられているかを、真剣に考えて下さい。その事によって、難民の方々が、生活の糧、生きる手段を奪われるだけではありません。もし、かろうじて働く場を得たとしても、一般の労働者よりも一段と劣悪な条件を強いられることになります。
 また、難民から生活の手段を奪うことは、家賃、食費、交通費、医療費等々を賄う費用が、すべて余裕のない支援者の財布から賄われることにならざるをえません。
 「犯罪者」扱いされ、差別され、生活の手段を奪われる人々の苦痛、苦悩を考えて下さい。自暴自棄になって、窃盗その他の犯罪行為に走る可能性がありますし、そうでなくても労働は、いわば人間の本質ともいうべきものです。その機会を奪われることは、難民の人間性を損ない、道徳的に堕落させることにもなりかねません。
 法務省が難民に労働する権利を保障しないことは、難民条約に違反するのみならず、重大な人道に対する犯罪です。ただちに、この点に改善を強く求めます。
4.入管の職員に、名札の着用を
 入管の一部の職員による暴言・暴行、さらには病院に行かせない、治療に役立たない有害な影響を与える薬を大量投与するなど、入管施設における人権侵害や虐待も、収容者たちからよく耳にするところです。このような事例をなくすことは急務です。
 私たちは、これまでも、こうした状態を改善するための一助として、職員の方々の制服に名札をローマ字入りで、着用させるように要請してきました。こうすれば、職員の自覚を促し、人権侵害を少なくすることができるし、もしそうした事例が起きた場合にも、真相の解明に少なからず寄与と考えます。
                                                 以上

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