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第4次出入国管理基本計画について(10)

 「第4次出入国管理基本計画」と坂中英徳(元東京入管局長)の日本移民国家論の認識がよく一致しているのは、次のようなところである。

(6)外国人の受入れについての国民的議論の活性化
 厚生労働省の人口動態統計によれば、平成20年において、出生数(109万1,156人)と死亡数(114万2,407人)の差である自然増加数はマイナス5万1,251人となるなど、人口減少の進行が本格化しつつある。
 人口減少は我が国の社会に様々な影響・問題を及ぼすものと考えられている。労働力人口の減少は1人当たりの労働生産性を向上させない限り、経済成長に対してマイナスの影響を与えることになる。また、高齢者医療費・介護費が増大する中での社会保障制度の維持、高速道路や鉄道等の公共的なインフラの人口減少に対応した整備、過疎地域の存立の危機への対応など様々な問題への検討が必要である。
 人口減少時代への対応については、出生率の向上に取り組むほか、生産性の向上、若者、女性や高齢者など潜在的な労働力の活用等の施策に取り組むことが重要である。他方で、これらの取組によっても対応が困難、不十分な部分がある場合に、それに対処する外国人の受入れはどのようにあるべきか、我が国の産業、治安、労働市場への影響等国民生活全体に関する問題として、国民的コンセンサスを踏まえつつ、我が国のあるべき将来像と併せ、幅広く検討・議論していく必要がある。我が国の将来の形や我が国社会の在り方そのものに関わるこの問題について、国民的な議論を活性化し、国全体としての方策を検討していく中で、出入国管理行政においても、その方策の検討に積極的に参画していく。

 「移民政策研究所」http://www.jipi.gr.jp/goaisatsu.html

 

一般社団法人移民政策研究所誕生のあいさつ

 

 人口は国家と経済と社会を構成する基本的要素です。その人口が減少の一途をたどれば、国家は衰退し、経済は縮小し、社会は成り立たなくなります。これは自明の理です。

 日本は未体験の人口減少期に入り、人口危機の重圧が社会全体をおおいつつあります。特に、このままでは負担が重くなる一方の少子化世代(0歳から30歳まで)の未来に暗雲が垂れ込めています。少子高齢化がもたらした閉塞状況を打開し、明るい未来への展望を開くために、我々は何をなすべきでしょうか。それは青少年の共感を呼ぶ「日本の未来像」を示すことです。

 私は2005年8月、人口減少社会の外国人政策に関する提言づくりを目指し、民間活動団体「外国人政策研究所」を設立しました。そして、「移民」と「多民族共生」をキーワードに移民政策論を展開してきました。

 その帰結が、今後50年間で総人口の10%、1000万人規模の移民を受け入れる「移民国家構想」です。超少子化と超高齢化の人口危機に「移民立国」で立ち向かい、日本の中に世界の人材を取り込むものです。異なる民族がまじわることで新たな文化と創造力とエネルギーを生み出し、日本を生き生きした国にしようというものであります。これは日本の未来を担う少子化世代の心を引き付ける国家ビジョンではないでしょうか。

 移民国家を実現するには、適正な移民受け入れを推進する「移民政策」の立案が欠かせません。私は、外国人を国内で有能な人材に育て、永住者として受け入れる「日本型移民政策」を提案しています。

 私の提案は、自由民主党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」が取り入れて、2008年6月、「人材開国!日本型移民国家への道」という報告書を福田康夫首相(当時)に提出しました。

 日本経済団体連合会は同年10月、「人口減少に対応した経済社会のあり方」と題する提言書を発表しました。その中で「総合的な『日本型移民政策』を本格的に検討していくことが求められる」と提言しています。

 外国人政策研究所を設立した当時と今日を比較しますと、日本の移民政策をめぐる状況は一変しました。「移民」という言葉がマスコミや学問の世界で広く使われるようになりました。「移民が人口危機の日本を救う」という新しい考えも広がりを見せています。

 以上のような活動の実績を踏まえ、かつ日本型移民国家への道をさらに確かなものにすることを目的として、2009年4月1日、「外国人政策研究所」から「一般社団法人移民政策研究所」へ名称を変えて組織の拡充を図りました。移民政策研究所は、外国人政策研究所の事業を継承するものでありますが、同時に決意を新たにし、移民国家日本への先導役を務めます。

 この法人は、次のような事業を行います。そのひとつは、人口減少社会の日本の移民政策に関する調査研究と国民に対する啓発活動であります。例えば、移民政策に関する論文の発表やセミナーの開催、出入国管理及び難民認定法に関する研究などを行います。もうひとつは、難民など人道的配慮を要する移民に対する定住支援活動であります。人道移民に対する日本語教育や職業支援を行うため、この法人の内部組織として「人道移民支援センター」を設置します。

 移民政策研究所は、難民その他の移民に対する不当な差別又は偏見の防止および根絶を図り、もって日本型多民族共生社会を創ることを目的として結成された団体です。この法人の目的に賛同して参加した7人の社員は、より良い日本社会の形成のため努力する所存であります。

 人口減少時代の日本の行く末を真剣に考えておられる方々にお願いがございます。経済危機に人口危機がかぶさる二重危機に陥った日本を元気にする方法は「移民開国」しかないことをご理解いただき、移民政策研究所が行う事業に何分のご支援をたまわりますよう、よろしくお願い申し上げます。                                                                            2009年4月1日 移民政策研究所 所長 坂中英徳


 両者をこうして並べてみれば、「基本計画」と坂中が、人口減少時代→日本の人口危機という認識を共有していることは一目瞭然である。ただ、前者は、外国人の受け入れにはコンセンサスが必要な議論の段階であるとしている点、また、一人あたり労働生産性の上昇や子育て支援などの少子化対策という人口政策などをその解決策としてあげているのに対して、後者は、1千万人の移民受け入れを積極的に提唱している点が違う。それから、坂中は、難民支援について、「難民など人道的配慮を要する移民に対する定住支援活動であります。人道移民に対する日本語教育や職業支援を行うため、この法人の内部組織として「人道移民支援センター」を設置します」としているが、ここでの難民支援の内容は、定住支援活動を基本にして、日本語教育、職業訓練を行うというものである。基本的には、難民は、元々の居住していた国で、迫害や危難にあって、それを逃れて庇護を求めてきている人々で、自発的な移民ではない。政治的迫害にあった難民の場合、政情が変化し、祖国での安全が確保されれば、帰国する可能性のある存在である。それを、日本の人口危機を救うための労働力として、定住を促進するというのは、あまりにも国益主義的であり、エゴイスティックである。だから、日本語を早く覚えて、仕事を覚えろと言うわけだ。難民が日本語を覚えた方がいいのは、日本での生活が様々な理由で伸びるからだし、法律・制度・権利など、難民のために必要な知識を身につけた方が、よいからである。職業支援の必要が増えているのは、難民認定の裁判が長期化しているためである。なによりも、日本の場合は、難民認定数が、他の先進国に比べて、あまりにも少なすぎるという問題がある。しかも、彼は、2008年10月の日本経団連の「人口減少に対応した経済社会のあり方」と題する提言書を発表したことに触れ、「その中で「総合的な『日本型移民政策』を本格的に検討していくことが求められる」と提言しています」として、財界、そして、「自由民主党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」が取り入れて、2008年6月、「人材開国!日本型移民国家への道」という報告書」に自己の提案が取り入れられたとしているように、財界・自民党などと、人口危機の解決という国益観念を共有しつつ、それを入管行政に反映させようとしているのである。そして、入管もまた「基本計画」において、その観点を基本的に取り入れ、ただ、具体的なことについては、議論を待つとして慎重な態度を取っているのである。

 「基本計画」は、すでに見てきたように、「よい」外国人の積極的受け入れ、優遇と、「悪い」外国人の取り締まり強化の二極的対応を打ち出している。前者は、専門技術者などの高度人材であり、後者の多くは、単純労働力として密入国したりした外国人やオーバーステイの外国人などである。坂中の移民国家化論は、専門技術者のみならず、単純労働力へも、積極的受け入れの対象を拡大するもので、その点は、「基本計画」とは違う。しかし、難民支援として、日本語教育と職業支援を打ち出しているのが、あくまでも、日本の人口減少危機への対応としてであるという点が問題である。ただ、超善意に受け取って、こうした名目で、難民支援を進めようとしているというふうに読めないこともないが、その他の彼の書いたものや実際にやってきたことを見ると、とうてい、そうは思えない。やはり、坂中の基本的観点は、日本の国益のために、外国人をどう扱うかということにある。

 例えば、先の移民政策研究所HPに、「移民政策研究所坂中英徳代表は、2009年12月11日、内閣府に中井洽拉致問題担当相を訪ね、日本人妻の早期帰国を北朝鮮政府との外交問題にするよう要請しました」ということで、その要請文が載っている。その中で、彼は、「今日の世界では、自国民、外国人を問わず、すべての人の出国の自由は普遍的な権利とされています。しかし、北朝鮮は出国の自由を認めていない国であります」と書いている。日本もまた、出国の自由の制限をしている国であるということを忘れているし、日本人妻という日本人だけのことを要求している。ここでも、あくまでも日本政府は日本人のことだけを救うべきだとして、国民国家観を示している。そして、ここには、坂中の血統主義的民族観が現れている。

 前に、品川駅前で、入管抗議・収容者激励のビラまきをしていたら、残留孤児の人に話しかけられたことがある。何かを伝えようとしていたが、中国語で、わからない。紙を渡したら、「残留孤児」と書いた。現在は日本国籍のはずだし、多少の国の支援を受けているはずだが、その年老いた残留孤児は、一体、何人なのだろう? アイデンティティの問題が、複雑で微妙であることを感じた。それに対して、坂中は、ストレートに、「共和国」在留の日本人妻は、血統によって日本人だと決めつけて疑っていない。同じ日本人だから政府に外交課題とせよと申し入れている。

 そう言えば、彼女は、風が強くて横断幕が飛びそうになるのを押さえようとしてくれた。その時、彼女は、とても、うれしそうに見えた。そして、笑顔で、去っていった。なぜだろう?

 その昔、NHKで、山崎豊子原作の『大地の子』というドラマを観たことがあり、残留孤児の苛酷な運命が少しはわかったような気がしていたが、それでも、実際に当事者に遭遇してみると、そこに、何か歴史の深さというか、自分の理解を超えるような歴史的世界の存在を感じた。

 こういうアイデンティティの問題に直面すると、同化とは一体何かということを考えざるを得なくなる。アメリカのライス元国務長官は、黒人で、公民権運動活動家の牧師の娘であるが、価値観や文化においては、WASP(白人プロテスタント)のエリートと変わらないように見える。前に、『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書)を少し見たが、そこで、外見は白人と変わらない黒人がいることが指摘されていた。彼は、人種とは、歴史的に形成された社会的・政治的概念であると言う。当時のイギリスの下層の都市貧民層がアメリカ植民地に年季奉公人として労働力として送り込まれることが、黒人奴隷の移入と平行して、行われていた。年季奉公人は、ほとんど黒人奴隷と扱いが変わらなかった。血という点では、後に、年季奉公人は、黒人より先に解放されるので、他の白人と同じということになるわけだ。先の大戦の時、アメリカ軍に加わって、日本軍相手に勇敢に戦った日系人の部隊があった。その前には、日系人排斥運動によって収容所に収容されたりしたというのに。あるいは、それゆえか? それはわからない。

 同化とは何か? さらに、それについて、坂中が「共和国」の日本人妻の問題を論じているので、それを素材に、少し、考えてみたい。、

 日本人だからという理由だけで、同情するのは当然と、愛国的に同情を強制するイデオロギー攻勢が続いていて、そう言われると、同情を表明しないと、仲間はずれになりそうだということで、同情して見せる。でも、よく考えてみると、それはおかしいし、それが問題解決をかえって妨害しているというようなことがある。例えば、坂中の鳩山由起夫総理に対する日本人妻に関する要請文(なぜか、前書き部分では、鳩山邦夫総理となっているのだが)は、「日本国籍を持っているのに北朝鮮公民とされ、日本に帰国することが許されなかった日本人妻(1831人)のほとんどは、祖国に帰る願いがかなわず無念の死を余儀なくされました。亡くなった日本人妻は、「私が死んだら、頭を日本海のほうに向けて埋葬してほしい」と言い残したと聞いています。日本へ帰ることがかなわないとわかると、せめて遺体は祖国の方角へ向けて埋めてほしいと願ったのです」と書いてある。ここで、日本国籍を持っているのに北朝鮮公民とされ、と、彼女たちが日本国籍を自発的に喜んで捨てる者はないと決めつけている上に、そうした決めつけに基づいて、日本人妻のほとんどは、祖国への帰還を願っていたにもかかわらず、無念の死を遂げたと、あたかも強い願いが叶わないまま、亡くなったかのように描いている。そして、その証拠として、彼女が、「私が死んだら、頭を日本海のほうに向けて埋葬してほしい」と言い残したと聞いています」ということをあげている。けれども、これは、そういう人がいたというにすぎず、この一事例をもって、日本人妻全体を代表させ、それが彼女たちの共通の願いであると断定するのは、明らかに、空想化である。同じ日本人だから、そう思うのも当然だと想像して、そうだとうなずくのは、間違いに陥ることだ。それに、本人の言葉とされるこの言葉だけから、「日本へ帰ることがかなわないとわかると、せめて遺体は祖国の方角へ向けて埋めてほしいと願ったのです」という解釈を唯一の解釈とすることには、無理がある。最後に、「存命の日本人妻に残された時間はわずかしかありません。日本政府は一刻も早い日本人妻の解放・帰国を求めるべきです」と言うのだけども、そもそも、日朝交渉は、小泉元首相が電撃訪朝し、「ピョンヤン宣言」で、国交回復交渉の開始を合意して以降、国内世論の反対に押されて、頓挫したままで、日朝間には直接的な外交チャンネルはないままである。どの場で、この要望を相手に言ったらいいのか? どっか、他の国に代わりに言ってもらう他はないということになるが、それでいいのだろうか? 「これは緊急を要する邦人保護問題なのです」がシメの言葉であるというのに。坂中は、日本人妻は、日本国籍を持ったままだと考えているようである。実際にどうなっているのかは、わからない。戸籍ではどう記載されているのか? もっとも、彼は、この要請文の中で、この問題を、日朝交渉で取り上げるように求めていて、日朝交渉をするように求めている点は、一切の直接交渉を否定している「救う会」などとは、違っている。問題を本当に解決するには、どうすればいいのか、どういう条件が必要なのか、どういう方法がよいのか、それをしっかりと議論し、解決を確実に進めていくのではなく、それを阻害する方向へと人々を煽った佐藤克己などの「現代コリア研究所」とは、そこが違う。

 坂中は、日本人妻が、相変わらず邦人であるのは、日本国籍があるからだと言っている。それと同時に血が同じという同一性をも重ねている。彼の多民族国家論からすると、彼の言う同化とは、国籍が同一ということではない。「帰化」しても、民族名を守ったり、民族文化を持つことは当然とも言っているからである。では、彼の言う同化とは何を指すのか? 実は、曖昧で、明確な観念や定義はないのである。それにも関わらず、彼は、「『在日』50年自然消滅説」を日本人との婚姻数の増大ということを根拠に結論している。彼の頭では、両民族の血が混血することが、同化の印なのである。しかし、朝鮮民族は、朝鮮半島だけではなく、世界各地にいて、華僑、イスラエル、イタリアに次いで、世界で4番目に海外在住者が多い。とりわけ、在米コリアンは数が多い。中国内にも多く住んでいる。それから、ロシアにも多くいる。朝鮮半島の朝鮮人ばかりではなく、在米コリアンや在中コリアンなどとの関係もあり、その点からも、朝鮮人の民族性は、影響を受けるだろう。韓流ドラマを観ると、例えば、『冬のソナタ』の男性主人公は、アメリカから帰国しているし、アメリカとの間を行き来している。そういうわけで、「在日」の存在は、単に、日本人との関係のみから見、国内問題とだけ見るのは、現実の一部を見て、問題を論じているに過ぎないということが言える。坂中の論は、事象の一部を極端化しているにすぎないのである。金昌宣氏の『在日朝鮮人の人権と植民地主義』(社会評論社)によると、朝鮮半島の人口約7000万人の10パーセントの約700万人が、海外に暮らしていると言われているそうだ。彼は、「そもそも日本において帰化という行為は、差別から逃れるための「逃避としての帰化」(33頁)でしかないし、「日本の帰化制度は「血統観念」に基づく制度で、帰化とは部外者に「帰服」と「徳化」を求めるものである」(34頁)と述べている。坂中には、この点をどう考え、どう直そうとしているのかの考えがない。むしろ、彼は、こういう「帰化」観念の持ち主であるように見える。

 坂中が、特別永住者の50年後の消滅を唱え、それを証明するかのように、90年代後期より、特別永住者の毎年1万人程度の減少が続いている。もっとも、21世紀に入ってからは、減少数は落ちているが。減少の理由は、いくつかあると思うが(先述の金昌宣氏は、前掲書で、4点あげている)、この時代は、「共和国」では、飢餓やミサイル実験、核開発問題などでの国内的・国際的緊張があり、韓国では、国家破産の危機、IMF管理下に置かれ、緊縮財政を強いられるなどの危機があり、教科書問題、独島・竹島領有問題での韓国ナショナリズムの高揚による日韓関係の悪化、さらに、「拉致問題」の発覚による日本と「共和国」の関係悪化、万峰号の渡航禁止、「共和国」への経済制裁、総連施設の在外公館扱いの廃止など、朝鮮半島との関係が悪化した時期であることも関係があるのかもしれない。しかし、いずれにしても、坂中の「『在日』50年自然消滅論」は、特別永住者という在留資格の消滅のことを指しているにすぎず、あたかも「在日」自体が50年で消滅するという印象を創り出しているにすぎないということは明らかである。昔、「ルーツ」という映画があったが、ルーツは消えないし、記録もあるし、記憶、歴史もあり、そこから、どのようなアイデンティティを形成するようになるかは、歴史的・社会的状況、社会関係、文化状態、その人間の意志、等々の多様な要因によって、決まるのである。ある民族的アイデンティティを押し付けても、そうなる根拠がなければ、そのとおりになどはいかないのだ。かつて、朝鮮半島で、日帝が行った日本人化(同化)強制は、深いところで、朝鮮人の民族性を強め、民族的団結を促進した。小林よしのりは、あたかも、左翼が、アイヌや沖縄に対して、そうしたことを意図的にやっているかのように言ってるが、それは、まったく的はずれで、事実ではないのである。支配民族による民族的抑圧や差別が、被抑圧民族の民族形成を促進する大きな要因である。

 先日の難民問題スタディでの山本興正さんの講演や出された資料をみると、この時代は、朝鮮半島との国境を超えた人の往来が、非合法ルートも含めて相当多くあって、日本の治安当局は、朝鮮半島からの共産主義の日本への浸透をかなり警戒して、差別・排外主義を煽りつつ、住民を協力者にしながら、日本からの排除・取り締まりの強化を進めていた。それを背景にしながら、「在日」の帰国運動があったのである。

 「基本計画」から離れてしまった。この最後は、「我が国の将来の形や我が国社会の在り方そのものに関わるこの問題について、国民的な議論を活性化し、国全体としての方策を検討していく中で、出入国管理行政においても、その方策の検討に積極的に参画していく」として、議論をおこすと同時に積極的に検討するとしている。入管政策は、国家戦略・国益に関わる重要な問題となっていて、それに、入管政策担当者が、積極的に関わっていくという姿勢を示しているのである。   

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総務省が本日(18日)に発表した労働力調査(2010年1〜3月期平均)によると、完全失業者332万人のうち、失業期間が1年以上の「長期失業者」は前年同期比23万人増の114万人で、四半期ベースで過去3番目に多い水準。100万人を超えたのは05年1〜3月期以来5年ぶりで、失業者数の増加幅は02年の調査開始以来、最大になったとのことです。総務省の指摘では、「職がなかなか見つからず労働市場に長期間滞留する失業者が多く、さらに... [続きを読む]

受信: 2010年5月19日 (水) 03時02分

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