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2010年5月

第4次出入国管理基本計画について(11)

 「2 安全・安心な社会の実現に向けた不法滞在者対策等の推進」は、文字通りであって、冒頭、「外国人の適正・円滑な受入れ施策等を進める一方で、我が国の治安や国民の安全等を守るため、我が国での不法就労や不法行為を企図して入国する者、テロリスト、密航者等の入国を水際で確実に阻止するとともに、これらの者が既に国内に滞在している場合には、これを着実かつ速やかに退去強制していく必要がある」と、不法、密航者などを入れないということと、滞在者を退去強制するという追い出しとを強化すると述べている。特に、テロリストの摘発を掲げているのは、2001年9・11事件をきっかけとして、アメリカが「対テロ戦争」に入り、日本政府が、これを支持し、イラクへの自衛隊派遣、インド洋での給油活動などで、事実上、参戦したことに対応した措置である。

 2003年12月の犯罪対策閣僚会議で決定された「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」で、「5年間で不法滞在者を半減する」ことが目標として定められたので、その後、不法滞在者の摘発が強化されたということである。翌年から2007年まで、「厳格な入国事前審査の実施、個人識別情報(指紋,顔画像)の活用や偽変造文書鑑識の強化等による厳格な上陸審査の実施,摘発専従部隊である摘発方面隊の設置や警察との合同摘発等による摘発の強化、収容施設の拡充、出国命令制度の創設による不法滞在者の出頭申告の促進など、不法滞在者の減少を図るための各種施策を実施し」た。「その結果、平成16年1月時点で約22万人であった不法残留者は同21年1月には約11.3万人となり、5年間で48.5パーセントの不法残留者を削減するなど、ほぼ半減目標を達成した」とその成果を強調し、引き続き摘発の強化をはかるとしている。

 まず、「(1)厳格な出入国審査等の水際対策の実施」として、2007年11月に導入された個人識別情報(入国する外国人に提供が義務づけられた指紋・顔写真)の成果を強調している。関係機関との連携による情報を利用した水際対策の強化として、国際刑事警察機構(ICPO)との連携で、紛失・盗難パスポート情報検索システムが導入された。
 特に、「査証審査を行う外務省との連携を強化」するとしている。海からの密入国対策では、海上保安庁との連携を強化するとしている。

 次に、「(2)国内に不法滞在・偽装滞在する者への対策の推進」では、不法滞在者対策として、情報の収集・分析を強化するとしている。鑑識能力を高めると共に「必要に応じて厚生労働省から提供される外国人雇用状況届出情報」を利用するとして、厚生労働省情報の活用を言っている。さらに、摘発に当たって、隣接する地方入管局での合同摘発を行うとしている。また、警察などの捜査機関との合同摘発や連携していくと述べている。

(3)被収容者の処遇の一層の適正化に向けた取組
 入国者収容所等においては、保安上支障がない範囲内において、できる限りの自由を与え、人権を尊重しつつ適正な処遇を行うとの被収容者の処遇の原則に沿った処遇を実践していくため、被収容者処遇規則に定める不服申出制度等の適正な運用などを通じて、処遇の一層の適正化に取り組んでいく。
 さらに、平成22年度に設置される外部の有識者からなる「入国者収容所等視察委員会」の活動を通じて、一層の透明性を確保するとともに、第三者の視点からの意見を踏まえて処遇の適正化に取り組んでいく。

 先日、西日本入管センターと東日本入管センターで、相次いで、収容者のハンストが行われた。「人権を尊重しつつ適正な処遇を行うとの被収容者の処遇の原則」が現場では死文化していると言わざるを得ない出来事だ。早期の処遇の改善が必要である。外部からの視察は、形ばかりの骨抜きではなく、実のあるように行ってもらわなければならない。

 (4)在留特別許可の適正な運用
 入管法上、法務大臣に法違反者に対し在留を特別に許可する権限が与えられているが、その判断は、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、さらには他の不法滞在者に与える影響等の諸事情を総合的に考慮して決定されている。
 出入国管理行政においては、これまで、在留特別許可の透明性と予見可能性を確保する観点から、「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」の公表(平成16年以降随時実施)、「在留特別許可に係るガイドライン」の策定・公表(平成18年10月策定,平成21年7月改定)といった措置を講じているが、今後とも、透明性の向上、適正な運用の確保等に更に取り組み、在留特別許可を受けられる可能性のある者の一層の出頭を促し、在留特別許可の対象となり得るものについてはこれを適正に許可し、その法的地位の早期安定化を図っていく。そのため、市区町村や公的機関などに入国管理局の取組について周知するほか、地方入国管理局等に設置されている外国人在留総合インフォメーションセンター等における不法滞在者からの相談に対し、十分な対応を図っていく。

 法務大臣の自由裁量権限に属する在留特別許可(いわゆる在特)者は、難民認定者が昨年30人と少ないのに対して、ここ2年間は「人道的配慮による在留許可」という名目で大幅に増やされている。しかし、これは、強制退去処分の規定のある期限付きの在留資格でしかないことはすでに述べた。なぜ、それ以前に比べて急増したのか、理由はわからない。「在留特別許可に係るガイドライン」があるので、参考に貼っておく。

  

在留特別許可に係るガイドライン

 第1 在留特別許可に係る基本的な考え方及び許否判断に係る考慮事項在留特別許可の許否の判断に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由,家族状況,素行、内外の諸情勢,人道的な配慮の必要性、更には我が国における不法滞在者に与える影響等,諸般の事情を総合的に勘案して行うこととしており、その際、考慮する事項は次のとおりである。

 積極要素

 積極要素については、入管法第50条第1項第1号から第3号(注参照)に掲げる事由のほか、次のとおりとする。

1 特に考慮する積極要素

(1)当該外国人が、日本人の子又は特別永住者の子であること
(2)当該外国人が、日本人又は特別永住者との間に出生した実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって、次のいずれにも該当すること
ア当該実子が未成年かつ未婚であること
イ当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
ウ当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上、監護及び養育していること
(3)当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために、婚姻を仮装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、次のいずれにも該当すること
ア夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助していること
イ夫婦の間に子がいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること
(4)当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を監護及び養育していること
(5)当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること、又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

2 その他の積極要素

(1)当該外国人が、不法滞在者であることを申告するため、自ら地方入国管理官署に出頭したこと
(2)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格(注参照)で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって、前記1の(3)のア及びイに該当すること
(3)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格で在留している実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって、前記1の(2)のアないしウのいずれにも該当すること
(4)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること
(5)当該外国人が、本邦での滞在期間が長期間に及び、本邦への定着性が認められること
(6)その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

 消極要素

 消極要素については、次のとおりである。

 1 特に考慮する消極要素

(1)重大犯罪等により刑に処せられたことがあること

<例>
・凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること
・違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入・売買により刑に処せられたことがあること
(2)出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること

<例>
・不法就労助長罪、集団密航に係る罪、旅券等の不正受交付等の罪などにより刑に処せられたことがあること
・不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあること
・自ら売春を行い、あるいは他人に売春を行わせる等、本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがあること
・人身取引等,人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること

2 その他の消極要素

(1)船舶による密航、若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと
(2)過去に退去強制手続を受けたことがあること
(3)その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
(4)その他在留状況に問題があること

<例>

・犯罪組織の構成員であること

 

第2 在留特別許可の許否判断

 在留特別許可の許否判断は、上記の積極要素及び消極要素として掲げている各事項について、それぞれ個別に評価し、考慮すべき程度を勘案した上、積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合には、在留特別許可の方向で検討することとなる。したがって、単に、積極要素が一つ存在するからといって在留特別許可の方向で検討されるというものではなく、また、逆に、消極要素が一つ存在するから一切在留特別許可が検討されないというものでもない。

主な例は次のとおり。

<「在留特別許可方向」で検討する例>

・当該外国人が、日本人又は特別永住者の子で、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、日本人又は特別永住者と婚姻し、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、本邦に長期間在住していて、退去強制事由に該当する旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、本邦で出生し10年以上にわたって本邦に在住している小中学校に在学している実子を同居した上で監護及び養育していて、不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなどの在留の状況に特段の問題がないと認められること

<「退去方向」で検討する例>

・当該外国人が、本邦で20年以上在住し定着性が認められるものの、不法就労助長罪,集団密航に係る罪、旅券等の不正受交付等の罪等で刑に処せられるなど、出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること
・当該外国人が、日本人と婚姻しているものの、他人に売春を行わせる等、本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行っていること

(注) 出入国管理及び難民認定法(抄)

(法務大臣の裁決の特例)

第50条 法務大臣は、前条第3項の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。

  1. 永住許可を受けているとき。
  2. かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
  3. 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
  4. その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。

2、3(略)

別表第二

                   
 

在留資格

 
 

本邦において有する身分又は地位

 
 

永住者

 
 

法務大臣が永住を認める者

 
 

 

日本人の配偶者等

 

 
 

日本人の配偶者若しくは民法(明治二十九年法律   第八十九配偶者等号)第八百十七条の二の規定による特別養子又は日本人の子として出生した者

 
 

 

永住者の配偶者等

 
 

永住者の在留資格をもって在留する者若しくは特別永住者(以下「永住者等」と総称する。)の配偶者又は永住者等の子として本邦 で出生しその後引き続き本邦に在留している者

 
 

定住者

 
 

法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者

 

                                    

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第4次出入国管理基本計画について(10)

 「第4次出入国管理基本計画」と坂中英徳(元東京入管局長)の日本移民国家論の認識がよく一致しているのは、次のようなところである。

(6)外国人の受入れについての国民的議論の活性化
 厚生労働省の人口動態統計によれば、平成20年において、出生数(109万1,156人)と死亡数(114万2,407人)の差である自然増加数はマイナス5万1,251人となるなど、人口減少の進行が本格化しつつある。
 人口減少は我が国の社会に様々な影響・問題を及ぼすものと考えられている。労働力人口の減少は1人当たりの労働生産性を向上させない限り、経済成長に対してマイナスの影響を与えることになる。また、高齢者医療費・介護費が増大する中での社会保障制度の維持、高速道路や鉄道等の公共的なインフラの人口減少に対応した整備、過疎地域の存立の危機への対応など様々な問題への検討が必要である。
 人口減少時代への対応については、出生率の向上に取り組むほか、生産性の向上、若者、女性や高齢者など潜在的な労働力の活用等の施策に取り組むことが重要である。他方で、これらの取組によっても対応が困難、不十分な部分がある場合に、それに対処する外国人の受入れはどのようにあるべきか、我が国の産業、治安、労働市場への影響等国民生活全体に関する問題として、国民的コンセンサスを踏まえつつ、我が国のあるべき将来像と併せ、幅広く検討・議論していく必要がある。我が国の将来の形や我が国社会の在り方そのものに関わるこの問題について、国民的な議論を活性化し、国全体としての方策を検討していく中で、出入国管理行政においても、その方策の検討に積極的に参画していく。

 「移民政策研究所」http://www.jipi.gr.jp/goaisatsu.html

 

一般社団法人移民政策研究所誕生のあいさつ

 

 人口は国家と経済と社会を構成する基本的要素です。その人口が減少の一途をたどれば、国家は衰退し、経済は縮小し、社会は成り立たなくなります。これは自明の理です。

 日本は未体験の人口減少期に入り、人口危機の重圧が社会全体をおおいつつあります。特に、このままでは負担が重くなる一方の少子化世代(0歳から30歳まで)の未来に暗雲が垂れ込めています。少子高齢化がもたらした閉塞状況を打開し、明るい未来への展望を開くために、我々は何をなすべきでしょうか。それは青少年の共感を呼ぶ「日本の未来像」を示すことです。

 私は2005年8月、人口減少社会の外国人政策に関する提言づくりを目指し、民間活動団体「外国人政策研究所」を設立しました。そして、「移民」と「多民族共生」をキーワードに移民政策論を展開してきました。

 その帰結が、今後50年間で総人口の10%、1000万人規模の移民を受け入れる「移民国家構想」です。超少子化と超高齢化の人口危機に「移民立国」で立ち向かい、日本の中に世界の人材を取り込むものです。異なる民族がまじわることで新たな文化と創造力とエネルギーを生み出し、日本を生き生きした国にしようというものであります。これは日本の未来を担う少子化世代の心を引き付ける国家ビジョンではないでしょうか。

 移民国家を実現するには、適正な移民受け入れを推進する「移民政策」の立案が欠かせません。私は、外国人を国内で有能な人材に育て、永住者として受け入れる「日本型移民政策」を提案しています。

 私の提案は、自由民主党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」が取り入れて、2008年6月、「人材開国!日本型移民国家への道」という報告書を福田康夫首相(当時)に提出しました。

 日本経済団体連合会は同年10月、「人口減少に対応した経済社会のあり方」と題する提言書を発表しました。その中で「総合的な『日本型移民政策』を本格的に検討していくことが求められる」と提言しています。

 外国人政策研究所を設立した当時と今日を比較しますと、日本の移民政策をめぐる状況は一変しました。「移民」という言葉がマスコミや学問の世界で広く使われるようになりました。「移民が人口危機の日本を救う」という新しい考えも広がりを見せています。

 以上のような活動の実績を踏まえ、かつ日本型移民国家への道をさらに確かなものにすることを目的として、2009年4月1日、「外国人政策研究所」から「一般社団法人移民政策研究所」へ名称を変えて組織の拡充を図りました。移民政策研究所は、外国人政策研究所の事業を継承するものでありますが、同時に決意を新たにし、移民国家日本への先導役を務めます。

 この法人は、次のような事業を行います。そのひとつは、人口減少社会の日本の移民政策に関する調査研究と国民に対する啓発活動であります。例えば、移民政策に関する論文の発表やセミナーの開催、出入国管理及び難民認定法に関する研究などを行います。もうひとつは、難民など人道的配慮を要する移民に対する定住支援活動であります。人道移民に対する日本語教育や職業支援を行うため、この法人の内部組織として「人道移民支援センター」を設置します。

 移民政策研究所は、難民その他の移民に対する不当な差別又は偏見の防止および根絶を図り、もって日本型多民族共生社会を創ることを目的として結成された団体です。この法人の目的に賛同して参加した7人の社員は、より良い日本社会の形成のため努力する所存であります。

 人口減少時代の日本の行く末を真剣に考えておられる方々にお願いがございます。経済危機に人口危機がかぶさる二重危機に陥った日本を元気にする方法は「移民開国」しかないことをご理解いただき、移民政策研究所が行う事業に何分のご支援をたまわりますよう、よろしくお願い申し上げます。                                                                            2009年4月1日 移民政策研究所 所長 坂中英徳


 両者をこうして並べてみれば、「基本計画」と坂中が、人口減少時代→日本の人口危機という認識を共有していることは一目瞭然である。ただ、前者は、外国人の受け入れにはコンセンサスが必要な議論の段階であるとしている点、また、一人あたり労働生産性の上昇や子育て支援などの少子化対策という人口政策などをその解決策としてあげているのに対して、後者は、1千万人の移民受け入れを積極的に提唱している点が違う。それから、坂中は、難民支援について、「難民など人道的配慮を要する移民に対する定住支援活動であります。人道移民に対する日本語教育や職業支援を行うため、この法人の内部組織として「人道移民支援センター」を設置します」としているが、ここでの難民支援の内容は、定住支援活動を基本にして、日本語教育、職業訓練を行うというものである。基本的には、難民は、元々の居住していた国で、迫害や危難にあって、それを逃れて庇護を求めてきている人々で、自発的な移民ではない。政治的迫害にあった難民の場合、政情が変化し、祖国での安全が確保されれば、帰国する可能性のある存在である。それを、日本の人口危機を救うための労働力として、定住を促進するというのは、あまりにも国益主義的であり、エゴイスティックである。だから、日本語を早く覚えて、仕事を覚えろと言うわけだ。難民が日本語を覚えた方がいいのは、日本での生活が様々な理由で伸びるからだし、法律・制度・権利など、難民のために必要な知識を身につけた方が、よいからである。職業支援の必要が増えているのは、難民認定の裁判が長期化しているためである。なによりも、日本の場合は、難民認定数が、他の先進国に比べて、あまりにも少なすぎるという問題がある。しかも、彼は、2008年10月の日本経団連の「人口減少に対応した経済社会のあり方」と題する提言書を発表したことに触れ、「その中で「総合的な『日本型移民政策』を本格的に検討していくことが求められる」と提言しています」として、財界、そして、「自由民主党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」が取り入れて、2008年6月、「人材開国!日本型移民国家への道」という報告書」に自己の提案が取り入れられたとしているように、財界・自民党などと、人口危機の解決という国益観念を共有しつつ、それを入管行政に反映させようとしているのである。そして、入管もまた「基本計画」において、その観点を基本的に取り入れ、ただ、具体的なことについては、議論を待つとして慎重な態度を取っているのである。

 「基本計画」は、すでに見てきたように、「よい」外国人の積極的受け入れ、優遇と、「悪い」外国人の取り締まり強化の二極的対応を打ち出している。前者は、専門技術者などの高度人材であり、後者の多くは、単純労働力として密入国したりした外国人やオーバーステイの外国人などである。坂中の移民国家化論は、専門技術者のみならず、単純労働力へも、積極的受け入れの対象を拡大するもので、その点は、「基本計画」とは違う。しかし、難民支援として、日本語教育と職業支援を打ち出しているのが、あくまでも、日本の人口減少危機への対応としてであるという点が問題である。ただ、超善意に受け取って、こうした名目で、難民支援を進めようとしているというふうに読めないこともないが、その他の彼の書いたものや実際にやってきたことを見ると、とうてい、そうは思えない。やはり、坂中の基本的観点は、日本の国益のために、外国人をどう扱うかということにある。

 例えば、先の移民政策研究所HPに、「移民政策研究所坂中英徳代表は、2009年12月11日、内閣府に中井洽拉致問題担当相を訪ね、日本人妻の早期帰国を北朝鮮政府との外交問題にするよう要請しました」ということで、その要請文が載っている。その中で、彼は、「今日の世界では、自国民、外国人を問わず、すべての人の出国の自由は普遍的な権利とされています。しかし、北朝鮮は出国の自由を認めていない国であります」と書いている。日本もまた、出国の自由の制限をしている国であるということを忘れているし、日本人妻という日本人だけのことを要求している。ここでも、あくまでも日本政府は日本人のことだけを救うべきだとして、国民国家観を示している。そして、ここには、坂中の血統主義的民族観が現れている。

 前に、品川駅前で、入管抗議・収容者激励のビラまきをしていたら、残留孤児の人に話しかけられたことがある。何かを伝えようとしていたが、中国語で、わからない。紙を渡したら、「残留孤児」と書いた。現在は日本国籍のはずだし、多少の国の支援を受けているはずだが、その年老いた残留孤児は、一体、何人なのだろう? アイデンティティの問題が、複雑で微妙であることを感じた。それに対して、坂中は、ストレートに、「共和国」在留の日本人妻は、血統によって日本人だと決めつけて疑っていない。同じ日本人だから政府に外交課題とせよと申し入れている。

 そう言えば、彼女は、風が強くて横断幕が飛びそうになるのを押さえようとしてくれた。その時、彼女は、とても、うれしそうに見えた。そして、笑顔で、去っていった。なぜだろう?

 その昔、NHKで、山崎豊子原作の『大地の子』というドラマを観たことがあり、残留孤児の苛酷な運命が少しはわかったような気がしていたが、それでも、実際に当事者に遭遇してみると、そこに、何か歴史の深さというか、自分の理解を超えるような歴史的世界の存在を感じた。

 こういうアイデンティティの問題に直面すると、同化とは一体何かということを考えざるを得なくなる。アメリカのライス元国務長官は、黒人で、公民権運動活動家の牧師の娘であるが、価値観や文化においては、WASP(白人プロテスタント)のエリートと変わらないように見える。前に、『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書)を少し見たが、そこで、外見は白人と変わらない黒人がいることが指摘されていた。彼は、人種とは、歴史的に形成された社会的・政治的概念であると言う。当時のイギリスの下層の都市貧民層がアメリカ植民地に年季奉公人として労働力として送り込まれることが、黒人奴隷の移入と平行して、行われていた。年季奉公人は、ほとんど黒人奴隷と扱いが変わらなかった。血という点では、後に、年季奉公人は、黒人より先に解放されるので、他の白人と同じということになるわけだ。先の大戦の時、アメリカ軍に加わって、日本軍相手に勇敢に戦った日系人の部隊があった。その前には、日系人排斥運動によって収容所に収容されたりしたというのに。あるいは、それゆえか? それはわからない。

 同化とは何か? さらに、それについて、坂中が「共和国」の日本人妻の問題を論じているので、それを素材に、少し、考えてみたい。、

 日本人だからという理由だけで、同情するのは当然と、愛国的に同情を強制するイデオロギー攻勢が続いていて、そう言われると、同情を表明しないと、仲間はずれになりそうだということで、同情して見せる。でも、よく考えてみると、それはおかしいし、それが問題解決をかえって妨害しているというようなことがある。例えば、坂中の鳩山由起夫総理に対する日本人妻に関する要請文(なぜか、前書き部分では、鳩山邦夫総理となっているのだが)は、「日本国籍を持っているのに北朝鮮公民とされ、日本に帰国することが許されなかった日本人妻(1831人)のほとんどは、祖国に帰る願いがかなわず無念の死を余儀なくされました。亡くなった日本人妻は、「私が死んだら、頭を日本海のほうに向けて埋葬してほしい」と言い残したと聞いています。日本へ帰ることがかなわないとわかると、せめて遺体は祖国の方角へ向けて埋めてほしいと願ったのです」と書いてある。ここで、日本国籍を持っているのに北朝鮮公民とされ、と、彼女たちが日本国籍を自発的に喜んで捨てる者はないと決めつけている上に、そうした決めつけに基づいて、日本人妻のほとんどは、祖国への帰還を願っていたにもかかわらず、無念の死を遂げたと、あたかも強い願いが叶わないまま、亡くなったかのように描いている。そして、その証拠として、彼女が、「私が死んだら、頭を日本海のほうに向けて埋葬してほしい」と言い残したと聞いています」ということをあげている。けれども、これは、そういう人がいたというにすぎず、この一事例をもって、日本人妻全体を代表させ、それが彼女たちの共通の願いであると断定するのは、明らかに、空想化である。同じ日本人だから、そう思うのも当然だと想像して、そうだとうなずくのは、間違いに陥ることだ。それに、本人の言葉とされるこの言葉だけから、「日本へ帰ることがかなわないとわかると、せめて遺体は祖国の方角へ向けて埋めてほしいと願ったのです」という解釈を唯一の解釈とすることには、無理がある。最後に、「存命の日本人妻に残された時間はわずかしかありません。日本政府は一刻も早い日本人妻の解放・帰国を求めるべきです」と言うのだけども、そもそも、日朝交渉は、小泉元首相が電撃訪朝し、「ピョンヤン宣言」で、国交回復交渉の開始を合意して以降、国内世論の反対に押されて、頓挫したままで、日朝間には直接的な外交チャンネルはないままである。どの場で、この要望を相手に言ったらいいのか? どっか、他の国に代わりに言ってもらう他はないということになるが、それでいいのだろうか? 「これは緊急を要する邦人保護問題なのです」がシメの言葉であるというのに。坂中は、日本人妻は、日本国籍を持ったままだと考えているようである。実際にどうなっているのかは、わからない。戸籍ではどう記載されているのか? もっとも、彼は、この要請文の中で、この問題を、日朝交渉で取り上げるように求めていて、日朝交渉をするように求めている点は、一切の直接交渉を否定している「救う会」などとは、違っている。問題を本当に解決するには、どうすればいいのか、どういう条件が必要なのか、どういう方法がよいのか、それをしっかりと議論し、解決を確実に進めていくのではなく、それを阻害する方向へと人々を煽った佐藤克己などの「現代コリア研究所」とは、そこが違う。

 坂中は、日本人妻が、相変わらず邦人であるのは、日本国籍があるからだと言っている。それと同時に血が同じという同一性をも重ねている。彼の多民族国家論からすると、彼の言う同化とは、国籍が同一ということではない。「帰化」しても、民族名を守ったり、民族文化を持つことは当然とも言っているからである。では、彼の言う同化とは何を指すのか? 実は、曖昧で、明確な観念や定義はないのである。それにも関わらず、彼は、「『在日』50年自然消滅説」を日本人との婚姻数の増大ということを根拠に結論している。彼の頭では、両民族の血が混血することが、同化の印なのである。しかし、朝鮮民族は、朝鮮半島だけではなく、世界各地にいて、華僑、イスラエル、イタリアに次いで、世界で4番目に海外在住者が多い。とりわけ、在米コリアンは数が多い。中国内にも多く住んでいる。それから、ロシアにも多くいる。朝鮮半島の朝鮮人ばかりではなく、在米コリアンや在中コリアンなどとの関係もあり、その点からも、朝鮮人の民族性は、影響を受けるだろう。韓流ドラマを観ると、例えば、『冬のソナタ』の男性主人公は、アメリカから帰国しているし、アメリカとの間を行き来している。そういうわけで、「在日」の存在は、単に、日本人との関係のみから見、国内問題とだけ見るのは、現実の一部を見て、問題を論じているに過ぎないということが言える。坂中の論は、事象の一部を極端化しているにすぎないのである。金昌宣氏の『在日朝鮮人の人権と植民地主義』(社会評論社)によると、朝鮮半島の人口約7000万人の10パーセントの約700万人が、海外に暮らしていると言われているそうだ。彼は、「そもそも日本において帰化という行為は、差別から逃れるための「逃避としての帰化」(33頁)でしかないし、「日本の帰化制度は「血統観念」に基づく制度で、帰化とは部外者に「帰服」と「徳化」を求めるものである」(34頁)と述べている。坂中には、この点をどう考え、どう直そうとしているのかの考えがない。むしろ、彼は、こういう「帰化」観念の持ち主であるように見える。

 坂中が、特別永住者の50年後の消滅を唱え、それを証明するかのように、90年代後期より、特別永住者の毎年1万人程度の減少が続いている。もっとも、21世紀に入ってからは、減少数は落ちているが。減少の理由は、いくつかあると思うが(先述の金昌宣氏は、前掲書で、4点あげている)、この時代は、「共和国」では、飢餓やミサイル実験、核開発問題などでの国内的・国際的緊張があり、韓国では、国家破産の危機、IMF管理下に置かれ、緊縮財政を強いられるなどの危機があり、教科書問題、独島・竹島領有問題での韓国ナショナリズムの高揚による日韓関係の悪化、さらに、「拉致問題」の発覚による日本と「共和国」の関係悪化、万峰号の渡航禁止、「共和国」への経済制裁、総連施設の在外公館扱いの廃止など、朝鮮半島との関係が悪化した時期であることも関係があるのかもしれない。しかし、いずれにしても、坂中の「『在日』50年自然消滅論」は、特別永住者という在留資格の消滅のことを指しているにすぎず、あたかも「在日」自体が50年で消滅するという印象を創り出しているにすぎないということは明らかである。昔、「ルーツ」という映画があったが、ルーツは消えないし、記録もあるし、記憶、歴史もあり、そこから、どのようなアイデンティティを形成するようになるかは、歴史的・社会的状況、社会関係、文化状態、その人間の意志、等々の多様な要因によって、決まるのである。ある民族的アイデンティティを押し付けても、そうなる根拠がなければ、そのとおりになどはいかないのだ。かつて、朝鮮半島で、日帝が行った日本人化(同化)強制は、深いところで、朝鮮人の民族性を強め、民族的団結を促進した。小林よしのりは、あたかも、左翼が、アイヌや沖縄に対して、そうしたことを意図的にやっているかのように言ってるが、それは、まったく的はずれで、事実ではないのである。支配民族による民族的抑圧や差別が、被抑圧民族の民族形成を促進する大きな要因である。

 先日の難民問題スタディでの山本興正さんの講演や出された資料をみると、この時代は、朝鮮半島との国境を超えた人の往来が、非合法ルートも含めて相当多くあって、日本の治安当局は、朝鮮半島からの共産主義の日本への浸透をかなり警戒して、差別・排外主義を煽りつつ、住民を協力者にしながら、日本からの排除・取り締まりの強化を進めていた。それを背景にしながら、「在日」の帰国運動があったのである。

 「基本計画」から離れてしまった。この最後は、「我が国の将来の形や我が国社会の在り方そのものに関わるこの問題について、国民的な議論を活性化し、国全体としての方策を検討していく中で、出入国管理行政においても、その方策の検討に積極的に参画していく」として、議論をおこすと同時に積極的に検討するとしている。入管政策は、国家戦略・国益に関わる重要な問題となっていて、それに、入管政策担当者が、積極的に関わっていくという姿勢を示しているのである。   

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第4次出入国管理基本計画について(9)

 「Ⅲ 出入国管理行政の主要な課題と今後の方針」は、まず、国益上、「よい」外国人の積極的受け入れについて、「1 我が国社会に活力をもたらす外国人の円滑な受入れ」という項目で、基本的な視点を出している。

 それによると、まず、国際化、グローバリゼーションが進展するのに対応して、専門・技術的分野を特にあげたうえで、「我が国社会が必要とする外国人」の円滑な受け入れを進めるとしている。それによって、「国民生活の安定と繁栄、我が国社会の国際化の健全な発展」をはかってきたというのである。そして、課題として、「今日、少子・高齢化の進行とこれに伴う人口減少社会の本格的な到来などを背景に、我が国社会の活力の維持が課題となっている一方、アジア地域各国が高い経済成長を成し遂げる中、これら地域の活力を取り込むという観点から、我が国社会が必要とする外国人の受入れの在り方も、より積極的なものへ展開していくことが求められている」と述べている。これは、坂中英徳(元東京入管局長)の1977年の「坂中論文」と基本的観点が同じである。彼は、近年の入管行政が彼と同じ観点に立っていることを、自己の政策提案の反映として自己評価している(彼のブログ、SAKANAKA CHANNEL http://blog.livedoor.jp/jipi/archives/cat_50006458.html 、坂中英徳の『移民国家宣言』http://www.the-journal.jp/contents/sakanaka/を参照)。

 共通しているのは、あくまでも、日本の国益のためになる外国人を「よい」外国人としていて、かれらのみを差別・選別して積極的に受けれようとしていることである。その対極には、かれらが「悪い」と見なす外国人の存在がある。この「善悪」の具体的な作用の実際を見ていくと、結局、中曽根元首相の日本単一民族国家論が、国家機構・法体系・治安体系の中で、しっかり生き続け、厳として機能していることがわかる。それは、国内少数民族や在日外国人に対する差別・排除・抑圧のシステムとして機能し続けているのである。つまり、イデオロギー・法・システムの機能としての権力作用として(「善悪」振り分けシステムとでも言おうか)。坂中英徳の多民族共生社会論、あるいは、日本移民国家化論は、よく見ていくと、実は、国民統合の新しい形態であるにすぎず、衣装を変えた単一民族国家論にすぎないのである。それは、彼が、国際結婚、そして混血を同化の証拠と考えており、結局、血統主義的民族観しか持っていないことを露わにしていることでも明らかだ。

 「基本計画」は、「よい」外国人として受け入れる対象として、(1)経済成長に寄与するなど社会のニーズにこたえる人材、(2)日系人、(3)観光客・国際交流、(4)留学生、(5)研修・技能実習生の5つのタイプをあげている。

 まず、(1)の「専門的・技術的分野の外国人」、とりわけ、「高度の知識・技術等を有する高度人材」は、「我が国経済社会における新たな活力の創造、国際競争力の強化等に大きく寄与するものと考えられ、少子・高齢化に伴う人口減少社会の到来が本格化する中で、我が国が持続的な経済成長を成し遂げていくため、このような我が国社会に活力をもたらす高度人材の受入れを強力に推進していく必要がある」として、優遇策をとって、積極的に受け入れると述べている。特に、ポイント制の活用をうたっている。

 具体的には、イノベーションと高い付加価値のあるサービス等を生み出すなど、我が国が戦略的に受入れを促進していくべき人材、例えば、①研究者、科学者、大学教授等の「学術研究分野」の人材、②医師や弁護士、情報通信分野等の技術者など、高度な資格、専門知識、技術を有する「高度専門・技術分野」の人材、③企業の経営者や上級幹部などの「経営・管理分野」の人材等を対象として、「学歴」、「資格」、「職歴」、「研究実績」など、分野の特性に応じて設定した所定の項目について、項目毎にポイントを付け、ポイントが一定点数に達した者に対し、我が国への円滑な入国や安定的な在留を保障する様々な出入国管理上の優遇措置を講ずることとする。芸術、スポーツ、技能分野等も含め、様々な分野の専門性、技術性を有する外国人についても、我が国経済社会の活性化の観点から、引き続き積極的に受け入れていく。

 また、情報処理技術者については、外国との資格の相互認証をするという。

 「我が国経済社会の活性化」に役立つ「よい」とみなす外国人には、優遇策を積極的に取るというのである。それに対して、前に見たように、「悪い」とみなす外国人には、取り締まりの強化が打ち出されている。これは、典型的・古典的な「アメとムチ」のやり方ではないか! 今日、対外国人行政が、このようなものでしかないというのは、どういうことだろう? 教化、あるいは、教育、そして、ヘゲモニー(同意の契機)、文化は、どこに行ったのか? 入管体制の在り方を見ていくと、人権の看板の下に、「アメとムチ」の古典的で権力的なやり方が厳として存在し、機能しているのに、否応なくぶつかるのである。 

 それから、「国内外の経済情勢の変化等に迅速に対応する必要のある企業活動等を支援する観点等から、在留資格認定証明書交付申請その他諸申請における提出書類の簡素化、審査の迅速化措置についても、これを一層徹底していく」として、グローバル化の中での企業活動支援を行政事務の改良によって支援する姿勢を示している。

 日本の国家資格を持つ外国人のうちで、医療の在留資格で在留する外国人の現状を以下のように述べている。

 「医療」においては、「医療」の在留資格で我が国に在留する外国人のうち、歯科医師の場合は原則として歯科医師の免許を受けた後6年以内、看護師の場合は看護師の免許を受けた後7年以内、保健師、助産師、准看護師の場合は保健師等の免許を受けた後4年以内に就労年数が制限されている。また、介護分野における外国人の受入れについては、現在、インドネシア及びフィリピンとの間の経済連携協定(EPA)に基づき、特例的に受入れが行われているが、経済連携協定で受け入れた外国人介護福祉士の就労状況や、この分野が国内人材の重点的な雇用創出分野と位置付けられていることも踏まえながら、我が国の大学等を卒業し、介護福祉士等の一定の国家資格を取得した外国人の受入れの可否について、検討を進めていくこととする。

 この部分は、検討課題をあげているだけである。ここで、インドネシアとフィリピンから、経済連携協定(EPA)に基づいて、介護労働者(看護師候補者、介護福祉士候補者、看護師、介護福祉士-平成20年厚生労働省告示第312号、平成20年厚生労働省告示第509号)を受け入れていることを記している。そして、2008年から受け入れが始まっている。もちろん、かれらも入管法、施行規則その他の入管法・制度の対象である。

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第4次出入国管理基本計画について(8)

 次に、難民認定申請等の状況である。

 難民申請者数は、2005年に384人。2008年には、1,599人。昨年は、1,388人である。問題は、次の数字である。「難民として認定された者については、近年、30人から50人程度で推移しており、平成21年は30人となっている」。

 難民申請者は、2005年の384人から、954人→816人→1,599人→1,388人と推移するのに対して、認定数は、同46人→34人→41人→57人→30人である。人道配慮による在留数が、同97人→53人→88人→360人→501人で、両者を併せると、同143人→87人→129人→417人→531人という具合に推移している。

 この人道配慮による在留者とは、「難民として認定されなかった者についても、例えば本国の状況等により帰国が困難である者又は日本で在留を認めるべき特別な事情がある者に対しては、当該事情を個々に考慮した上で、人道的な配慮が必要な場合には、我が国への在留を特別に認めている」(法務省)者である。難民認定申請者が増加しているのに対して、難民認定数を小さくしながら、人道配慮による在留許可の数を増やして対応しているのである。これは、入管法第50条の特別許可の四、「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」に当たる。この難民不認定者への特別在留許可について、難民支援協会の「難民認定申請を行う人への助言」(2002年2月)は、「難民認定申請した場合は、難民認定申請の中で在留を特別に許可される必要性が考慮されるため、従来のように退去強制手続の中で在留特別許可が考慮されないことに留意してください」と注意している。つまり、それは、3カ月の仮滞在許可の期間中には強制退去処分が行われないのに比べて、不安定な法的地位でしかないのである。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の今年3月23日付けの「Asylum Levels and Trends in Industorialized Countries」(2009年の先進工業諸国の難民の水準と傾向)というレポートによると、統計している44カ国(EU、アルバニア、ボスニア・ヘル ツェゴビナ、クロアチア、アイスランド、リヒテンシュタイン、モンテネグロ、ノルウェー、セルビア、スイス、マケドニア、トルコ、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、韓国、アメリカ)で、09年に、37万7,200人の難民申請者があった。09年の新規の難民申請者の受け入れ国のトップ・テンの順位は、アメリカ(約49,000人)→フランス(約42,000人)→カナダ(約33,300人)→イギリス(約29,800人)→ドイツ(約 27,600人)→スウェーデン(約24,200人)→イタリア(約17,600人)→ノルウェー(約17,200人)→ベルギー(約17,200人)→ギ リシャ(約15,900人)である。また、このレポートからは、現在の世界の政治・経済状況がうかがえて、興味深いので、もっと分析してみたいものだが、ここではこれだけにする。とにかく、「近年は、30人から50人程度で推移」などという日本とは、桁が大きく違う。世界の先進工業国が万単位で難民を受け入れている状況と比べると、「基本計画」が、「昨年の認定数は30人」などと、何の反省もなく書き記しているのは、恥ずかしいことではないだろうか。

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5月6日 第6回 品川入管行動、法務省申し入れ行動報告

 本日、品川入管抗議、収容者激励行動に行って来ました。

 収容者の解放を求める垂れ幕を下げたバルーンをあげました。今回は、前回に続き、クルド難民と家族が一緒です。入管は、相変わらず、収容者に対する非人道的扱いを続けています。支援者と難民とその家族は、「家族を返せ!」と声をあげました。続いて、クルド難民たちと、現在、収容者の解放、処遇の改善などを求めて、法務省への申し入れ行動を行いました。それから、クルド難民たちは、続いて、国連大学での行動に向かいました。突然、家族を収容され、残された家族は、たちまち、生活困難に陥ったり、精神的な苦痛を味わっています。難民やその家族は、いつ、収容されるかと不安な毎日を余儀なくされています。そして、収容者に対して、尊大で、非人道的な扱いをする入管職員に尊厳を傷つけられ、怒りをためています。法務省で、クルドの若い男性の「難民申請者に、こんなひどい扱いをするぐらいなら、難民条約から抜けるべきだ」という意味のことを言ったのには、こんな入管行政を許してるのは、なんとも申し訳ないことだと思いました。

 難民条約を批准しながら、認定の門を狭くしている日本の難民・入管行政に対して、改めて怒りを覚えました。法務省職員は、ただ、収容者の家族の言うことを聞き、資料などを受け取りましたが、とにかく、担当のところに伝えるとだけ言いました。引き続き、入管を、人々の側から監視していく必要があると思いました。そして、日本の法務省・難民行政の在り方を変えていく必要を強く感じました。

 余談ですが、ちょうど、この行動中、大相撲の外国人力士が何人か来ました。バルトも来ました。かれらも、外国人として、入管での手続きをしている存在なのです。なお、行動については、詳しくは、リンクをはってあるSYIのピンキー・ドラゴン・ブログをご覧下さい。

Image053_4        2010年5月6日 品川入管前で、収容者の激励と入管に抗議するクルド難民・家族とSYI(入管収容者友人有志一同)などの支援者

Image055_4     2010年5月6日 法務省前で、職員に、収容家族の解放などを訴えるクルド難民・家族とSYI(入管収容者友人有志一同)な どの支援者

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第4次出入国管理基本計画について(7)

 「(4)身分又は地位に基づいて入国・在留する外国人の状況」では、「日本人の配偶者等」と「定住者」の在留資格は、どちらも新規入国者数は減少している。2009年には、前者が、2.0パーセント減の1万4.946人、後者が、25.2パーセント減の9,946人となっている。これは、ブラジル等が大きく減少しているのであり、景気の後退で南米の日系人等の労働力需要が減ったためである。外国人登録者数では、ほぼ横ばいで、「これらの在留資格で在留する外国人の定着化が進んでいる状況がうかがえる」と分析している。

 「定住者」の在留資格については、2008年末で、49万2,056人と過去最高を記録し、永住許可を求める外国人が増えているとしている。

 ここで、日系人は、日本人の子孫などとしての地位に着目して、「日本人の配偶者等」、「定住者」、「永住者」等の在留資格で入国・在留しているが、ブラジル30万5,717人、ペルー5万4,223人、外国人登録者数の16.2パーセントを占める。日系人は、「日本人の子孫等としての地位に着目」して受け入れられている。「基本計画」は、「これら日系人については、近年の景気の後退等により困難な状況に置かれているところ、地域の一員としてその義務を果たしつつ、我が国社会で安定した生活を送るための受入れの在り方等」という課題を指摘している。

 次に、「2 我が国に不法入国・不法滞在等する外国人の状況等」である。ここで、まず、「(1)個人識別情報を活用した上陸審査の状況」について述べる。「基本計画」は、2007年の入管法改定で、「テロの未然防止及び不法滞在者対策のため」として導入された外国人に対する指紋と顔写真の採取の義務づけ、それによって、退去命令を受けた者と退去強制手続きが執行された者の、07年(11月以降分のみ)、123人、08年807人、09年617人、という数字をあげて、効果が大きかったと評価している。

 まず、不法滞在者の状況として、1993年の5月1日現在での約30万人をピークに減少し、2004年の「不法滞在者5年半減計画」に基づく不法滞在者対策の結果、今年1月1日現在で、約9万2千人と減少したという。

国籍(出身地別)で、韓国2万1,660人(23.6パーセント)、中国1万2,933人(14.1パーセント)、フィリピン1万2,842人(14.0パーセント)である。「また,不法残留となった直前の時点での在留資格について見ると,「短期滞在」が6万3,169人(68.8パーセント)で最も多くなっている。

 入管は、不法入国外国人を約1万3千人から2万2千人前後と推測している。それと不法残留者を会わせると不法滞在者数は、約11万人前後となると推計している。

 次に,入国管理局が退去強制手続を執った入管法違反者数は,不法残留者等の減少等に伴い2009年(平成21年)には3万2,661人と前年比17.1パーセント減となっている。これを国籍(出身地)別に見ると,中国が9,522人で全体の29.2パーセントと最も多く,次いでフィリピン,韓国,タイ,インドネシアの順となっており,これら5か国で全体の71.3パーセントを占めている。また,退去強制事由別に見ると,平成21年は,不法残留が2万5,503人で78.1パーセント,不法入国が5,373人で16.5パーセントとなっている。

 昨年中に退去強制手続を執った外国人のうち,不法就労事実が認められた者は2万6,545人、入管法違反者全体の81.3パーセント。東京都が最も多く、全体の17.4パーセントを占めているが、2005年の36.2パーセントからは半減している。それに対して、愛知が、05年の7.4パーセントから、昨年は横ばいの14.8パーセント、神奈川県が、05年9.7パーセントから、09年の13.3パーセントと上昇している。拡散化していると「基本計画」は述べている。

 次に、「(3)偽装滞在者等に係る在留資格取消しの状況」で、偽装婚、偽装留学等の不法就労者などが、少なからずいるとして、2004年の入管法改定で、在留資格取消制度を導入したことを述べ、在留取消しが、05年46件が、昨年に157件に増加したという。「基本計画」は、その増加に懸念を表明している。

 

 それにしても、入管にかかわる法・制度というのは、なんとも細かいし、複雑で、よく、入管や法務省の役人も、こんなもんを、ちゃんと覚えて、きちんと執行できるもんだ。よく、頭がこんがらないね。でも、実際には、きちんとなんかしてないけど。それで、行政書士なんぞが、入管関係の手続きを業とする必要があるんだろう。まして、日本に来て間もない、まだ日本語もよくわからない外国人が、こんな小難しい法律・制度など、わかるはずがない。こんなことについて、勝海舟は、『氷川清話』で、明治の役人は、徳川幕府の役人と違って、やたら難しい言葉を使うのを批判している。

 昔、幕府が、種々の規則を出す時には、人民にわかりやすい文字を、なるべく用いるようにして、掛(かか)りの人は、始終この事に心掛けて居た。しかるに、今はその反対で、なるべくむつかしい文字を用いるようになって、なかなか通常の人には分らない。いつであったか、法典発布の前に、或る人がおれに、発布の上は、世論がやかましいだろうといったから、おれは、いや、法典の文字が人民に分からぬから、やかましくいうものは、少いだろうと言った事があったが、果たしてその通りだった。そこでおれもむつかしい文字を選ぶも、一つの方便だと感じたヨ。これにつけて思い出すのは、清朝の官府語だ。清は、元来漢字の本家だから、どんな字でも人民は読むだろうと思われるけれども、この官府語は、一種特別で、小説語でもなく、古文の語でもなく、流石の中国人も、読めるものが少いという話だが、日本にもこれからは、次第に官府語が、出来るだろうヨ(『氷川清話』講談社学術文庫244頁 文中、いくらか、表現を直してます)。 

 勝は、幕府の役人は、出来るだけわかりやすい表現を使ったのに、それとは反対のことを、新政府の役人たちはやっているというのである。そんな、明治の伝統を、今の法務省を筆頭にした役人も継承してるんだろう。昔は、代書屋がいたが、それが、今日では、行政書士と呼ばれるようになった。そんなものが必要なのは、法制度が、やたら難しく作られてるからだ。この状態のまま、裁判員制度なんぞに、一般の人々が参加させられても、結局は、司法役人(裁判官・検察)と弁護士任せということになって、人々のための司法などというご立派な理念など、どうやっても実現するはずがないことがあらかじめ見えていて、破綻が必至の制度いじりの無駄なことをするというのだから、この国の司法当局も、どうかしてるんじゃないかと思う。

 勝は、西郷隆盛を非常に高く評価している。西郷には、大胆識と大誠意があるというのである。勝は、外交の極意は、誠心誠意にあると言っている。今、NHK大河ドラマ「竜馬伝」が結構流行っているらしいが、勝は、『氷川清話』で、、勝の弟子となった竜馬が、これは司馬遼太郎の『竜馬がゆく』にも出てくる話だが、西郷について、「成程西郷という奴は、わからぬ奴だ。少しく叩けば少しく響き、大きく叩けば大きく響く。もし馬鹿なら大きな馬鹿で、利口なら大きな利口だろう」(同70頁)と言ったと書いている。西郷は、情の大きな人だ。それが大きすぎて、通常の人の理解を超えているというのである。そして、懐の深さである。そうでなければ、江戸城無血開場などという大仕事は出来なかったというのだ。

 上の数字で見ると、05年以後、東京都で、不法滞在者に対する取り締まりの強化があって、「不法就労者」が、神奈川や愛知に移動するなど、各地へ分散したようだ。それにしても、行政文書というのは、数字ばかりで、不法就労者とされた者の具体的な姿もなにも浮かんでこない。どういう人が、どうして、どうなったの? と、訊きたくなる。

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転載:【第 6回東京入管抗議・収容者激励】

《転送歓迎》
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【第 6回東京入管抗議・収容者激励】
2010 年5月6日(木)
11:00~ 品川駅港南口(東口)前集 合、バスで品川入国管理局前へ移動
12:00~13:00 入管前アクション
SYI (収容者友人有志一同)は、品川の東京入国管理局における収容者への非人道的な待遇、およびこの国の入国管理システム全般に対して、抗 議をする有志グループです。
東京入管前での抗議・収容者激励アクションはこれで6回目になりますが、前回の アクションは Japan Times と International Press ポルトガル語版に掲載されました。
入国管理局は、自主的な帰国に応じない外国人を、無期限の収容によって心身が荒廃す るまで追い詰めています。
ゆっくりと拷問・虐待・抹消していくやり方は、まさに殺人施設にほかなりません。
ことしになって、東日本入管センター(茨城・牛久)では2人の自殺が報じられました。
品川の東京入管でも、最 近フィリピン人女性が亡くなったという噂が収容者のあいだで流れています。
2月の西日本入管センター(大阪・茨木)では、あまりの長期収容にたえかねて、収容者がハンストを決行しました。
3月には、ガーナ人男性が強制送還のさなかに謎の死を遂げましたが、東京入管および千葉県警はかれの死の原因をうやむやにしつづけ、しかるべき責任をとることを避けつづけています。
入管の職員たちに、自分たちがどれほどに非人道的な仕事をしているのかを、はっきりと突きつけましょう。
そして今回の行動では、収容されている友人たちのために、おどろきの仕掛けを準備中(?)
ぜひご参集くださ い。
SYI (収容者友人有志一同) 
MAIL: freeimmigrants★yahoo.co.jp (★は@に変えてください)

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5・15難民問題スタディ

                            5・15難民問題スタディ

 1981年の入管法改定によって、入管法は、出入国及び難民認定法となり、新たに難民対策が入管体制に包含されるようになりました。しかし、そもそも、日本の戦後の入管体制は、植民地支配に起因する「在日」対策として作られてきたもので、それで基本が出来ました。そこに、新たに、難民対策とニューカマー対策を加えていったのです。

 そこで、今回は、入管体制の基本がどのように形成され、変遷してきたのかを中心に、入管問題などを研究されている山本さんをお招きして、難民・入管問題の歴史的基礎の理解を深めたいと思います。是非、ご参加を

☆テーマ 「戦後入管体制の変遷について 」

講師:山本興正さん(東京大学大学院博士課程)

日時:5月15日(土)1時~

場所:新宿元気館第1洋室 (地下鉄新都心線西早稲田駅を出てすぐ)

資料代:300円

                                   難民を支援し連帯する会  

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