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2010年8月

金石範氏の坂中論文評価

  金石範氏は、『在日の思想』(筑摩書房1981年12月5日初版)で、「近年、在日朝鮮人問題関係者の注目を集めた論文に、入管当事者の執筆による通称「坂中論文」、「今後の出入国管理行政のあり方について」(坂中英徳『入管月報』―七六号、一九七六年、―一九七五年、出入国管理行政発足二五周年記念の一つとして、法務省入管当局が全国の入管職員から募集した「出入国管理行政のあり方」に関する応募論文中の優秀作)がある」と述べている(27ページ)。この坂中論文をめぐって、同化という問題がクローズアップされた。当時、入管令の下におかれ、またすでに二世問題が浮上し、「在日」の世代を継いだ日本定住が確実となっていくなかで、それまでの「帰国」促進、「在日」の定住阻止に腐心してきた日本政府の入国管理行政の破綻が明らかになりつつあった。日立就職差別反対闘争をはじめ、「在日」の差別撤廃、権利要求運動が高まっていた。そこで、入管側から、「在日」の定住という事態にどう対応するかが問われたのである。

 「坂中氏も在日朝鮮人処遇策の(二)「外国人として処遇する政策」について、「…在日朝鮮人の〈日本化〉という現実の重みを直視し、また、〈人類を分類するのに一番大切な基準は何か〉という問に対する日本人の答えが〈国籍〉〈人種〉〈職業〉〈家族〉の順位、となっているとの調査報告にも示されているように、外国人に対して閉鎖的な面が強い日本の社会的風土を考慮するとき、将来にわたって、在日朝鮮人が外国人として日本社会で生活するかぎり家族、習俗、ものの考え方等について〈日本化〉していくことは自然のいきおいと考えられるが、(外国人としての処遇政策は)この自然の傾向に反するものであること、また、それにより在日朝鮮人の民族意識を高揚させることとなり、在日朝鮮人が実質的に日本国内で少数民族を形成し、少数民族問題として将来の日本に禍根を残す可能性が強いものであることなどが指摘されよう。」と自らの所見を述べている。(同)

 ここで坂中が言う「日本化」が、同化であるが、この同化の中身は「日本化」ではなくて、同時に「日本人」の非「日本人」化であったということが、彼の頭にはないのである。つまり、坂中が言う「日本化」が自然のいきおいというのは誤りで、非「日本化」が自然のいきおいだったのだ。そこで、いつまでたっても、彼の期待する同化は進まず、むしろ、(外国人としての処遇政策)こそが、日本人を「日本化」する道であるのに、逆の道を行ったのである。坂中の頭の中には、「少数民族形成を防ぐための帰化政策を推進せねばならぬ」(同)という強迫観念があり、それは、金石範氏によれば、さらに一歩を踏み出している。

 「これまでの民族教育を強制的に規制したり入管法制など在日朝鮮人の生活を締めつけるなどお、差別から逃げ出させるような強権的に帰化へ追い込むようなやり方は限界があって、究極的な解決策にならぬ。在日朝鮮人が日本社会に馴染み、一般に持っている帰化アレルギーをなくすようにする一方で、日本社会が朝鮮人を受け入れるような環境作りをすべきだ、つまり差別的な処遇を続けていては究極的な同化には至らぬという、かなり柔軟な考え方が出されているところに留意する必要がある」(28ページ)。

 帰化ということが基本であって、それは、最近の坂中の「多民族社会化」論にも基底として流れているものである。しかし、民族的権利の保障、民族教育・文化の擁護ということが基本であり、坂中の論はそれとまったく反している。違うことの保障の上に、相互交流・交通・相互理解のベースを置かねばならないのであり、それが一般民主主義の基本なのだ。ところが坂中は反対のことを言う。

 「日本政府としてできることは、(略)すすんで日本国籍を選択したいという気持が在日朝鮮人の間に自然と盛りあがってくるような社会環境づくりい努めることであろう。この意味で何よりも必要なことは、教育の機会と職業選択の自由とを広く在日朝鮮人に認めることであり、この『開かれた日本社会』の実現をめざし、まず政府が率先した在日朝鮮人に公務員及び公共企業体の職員の門戸を開放し、さらに、国民世論を喚起し、企業などの理解と協力を求めることであろう。
 社会的文化の進行した産業的、都市的社会(我が国はこの典型である。)においては『人間の評価される基準が、人種といった生得的なものばかりでなく、学歴・職業といった、普遍的な基準をも加味するようになるのであるが、日本社会が在日朝鮮人に教育と就職の機会均等を保障し自由競争の場を提供するようになれば、在日朝鮮人は日本社会で生きる希望を見い出すであろうし、在日朝鮮人のなかからその『能力』や『職業』によって高い社会的評価を受ける者が進出してくるであろう。そうなれば、日本人の朝鮮人観もおのずから変化していくであろうし、日本への帰化を積極的に肯定する方向でのコンセンサスが在日朝鮮人社会に形成されていくだろう。
 もちろん十年や二十年で同化ができるものではない。何十年も要する百年の大計としての展望に立ってのことである。
 金英達氏はその著「在日朝鮮人の帰化」で、注目すべきこととして、「韓日会談」の際に「在日朝鮮人帰化政策が、韓日会談を通じて韓国政府側の暗黙の了解を取りつづけていたものだと思われることがある」と指摘している。そして当時の韓国外相李東元の「在日僑胞は遠からず日本人に同化する運命にある」との“有名”な発言を引用し、さらに韓日会談会議録のなかの在日朝鮮人帰化に関する意見の遣り取りを詳しく引例しながら、「韓国側も日本政府の考え方に同調して、在日朝鮮人が日本に帰化して日本国民となってしまえば、法的地位に関する問題はすべて解決されて好都合であると考えているようである…」(28~9ページ)。

 金氏は「ここから見ても、「韓日条約の性格、そして朴正熙政権がいったい何者たちの集団であったが、推測できるだろう」(29ページ)と述べている。つまり、朴政権は親日派の政権だったということである。ないものをあることにしようという最近のファナティックな排外主義者に見えないのは、「日本」なるのもの、「日本人」なるものが、もはや、国境を超えた支配階級の共通利害のシンボルに化しているというような事態である。こうして、かれらは、日韓米の支配階級の手先として、日本人性なるものを叫び、そして、排外主義の頒布者になろうとしているのだ。しかし、それは、まったくそれら諸国の民衆にとって、利益をもたらすものではなく、その逆であって、それを見抜いた人々による国際的な絆が強められることは、かれらに打撃を与える。そして、その打撃が大きく加えられたのだ。国際的な民衆の大きな利益となる国際連帯の絆は強まり前進した。さらに前へ

 

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ダーバン宣言(3)B国際レベル

B 国際レベル

148 包容、正義、平等と公平、人間の尊厳、相互理解、そして文化的多様性と普遍的人権の促進と尊重に基づいた国際秩序を構築し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づいたあらゆる排除の原理を拒否することを、国際社会のあらゆる担い手に求める。

149 あらゆる係争や紛争が平和的手段と政治対話によって解決されるべきだと信じる。世界会議は、そのような紛争のすべての関係当事者に、抑制を発揮し、人権と国際人道法を尊重するよう求める。

150 あらゆる形態の人種主義に反対するにあたり、世界中に及ぶ反ユダヤ主義、反アラブ主義およびイスラム排斥に対抗する必要を認識するよう国家に要求し、これらの共同体に関する人種主義的で差別的な考えに基づいた運動の発生を防止する効果的措置をとることを要求する。

151 中東情勢に関しては、イスラエルとパレスチナ人が和平プロセスを再開し、安全と自由のもとで発展し繁栄できるよう、暴力の終結と交渉の早期再開、国際人権・国際人道法の尊重、自決の原則の尊重とすべての苦難の終結を要求する。

152 国家、金融機関を含む地域・国際組織、そして市民社会に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容につながりうるグローバル化の側面に既存の機構内で対処すること、もしくは必要であれば機構を設立および/もしくは発展させることを奨励する。

153 国連事務局の平和維持活動局および他の国連関連機関、組織やプログラムに、ジェノサイド、戦争犯罪または人道に対する罪につながりうる状況のさらなる悪化の危険性を評定するために、人権および人道法の重大な侵害の類型を見極めるよう調整を強化するよう勧告する。

154 世界保健機関や他の関連国際組織に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の影響を、HIV/AIDSの流行やヘルスケアへのアクセスを含む肉体的・精神的な健康状態の重要な社会的決定要素として認識するための活動を促進し発展させ、差別の犠牲者に公平な医療・保健システムを確保するために、調査研究を含めた具体的なプロジェクトを準備するよう奨励する。

155 国際労働機関に、労働の世界で人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うプログラムや活動を実施し、この分野における国家、雇用者組織、そして労働組合の行動を支援するよう奨励する。

156 ユネスコに、人権および人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いに関連する教育や研修、教育的活動を促進するための教材や教具の準備において、国家を支援するよう求める。

IV 国家、地域、国際レベルの効果的な救済、回復、是正、その他の措置

157 「新アフリカイニシアティブ」(New African Initiative)などの計画や「貧困撲滅のための世界連帯基金」(World Solidarity Fund for the Eradication of Poverty)などの革新的な機構を通じて、貧困、低開発、周縁化、社会的疎外、経済格差、不安定および秩序の不安の課題に真剣に対処する発展途上国の努力、とくにアフリカのリーダーたちのコミットメントと決意を認識し、これらの計画・構想を支援するために事業プログラムを通じて適宜新たなおよび追加的な財政資源を提供するよう、先進国、国連とその専門機関、そして国際金融機関に要求する。

158 これらの歴史的な不公正が世界各地の多くの人びと、とくに発展途上国の人びとが陥っている貧困、低開発、周縁化、社会的疎外、経済格差、不安定および秩序の不安の原因となったことは否定しがたいと認識する。世界会議は、以下の分野において、これらの社会と離散共同体の社会的経済的発展のためのプログラムを、連帯と相互尊重の精神に基づいた新たなパートナーシップの枠組みにおいて発展させる必要を認識する。
・債務救済
・貧困撲滅
・民主制度の構築または強化
・外国直接投資の促進
・市場アクセス
・発展途上国向けの政府開発援助に関する国際的な合意目標を達成する努力の強化
・新しい情報・通信技術による情報格差の是正
・農業と食料の保障
・技術移転
・透明で説明責任をとりうる政府
・「世界エイズ・保健基金」(Global AIDS and Health Fund)など、HIV/AIDS、結核やマラリアの課題に取り組む保健インフラへの出資
・インフラ開発
・能力開発を含む人材開発
・教育、研修および文化の発展
・違法に取得した、および違法に移動(隠匿)した資金の返還のための、国内および国際文書に基づいた司法共助
・小火器/軽兵器の違法売買
・二国間協定または国際文書に基づいた、美術品、歴史的な遺物や文書の原産地への返還
・人、とくに女性と子どもの人身売買
・奴隷にされたアフリカの人びとの子孫の帰還の歓迎と移住の促進

159 影響を受けた国家や社会の発展の課題に対処する、とくにアフリカ大陸や離散共同体におけるプログラムにより高い優先性を与え、適切な資金を配分するよう国際金融・開発機関と国連の事業プログラムや専門機関に求める。

法的支援

160 緊急事項として、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者のための正義を実現する切迫した必要性に対応するために、そして、犠牲者が情報、支援、効果的保護、そして損害に対する公正で完全な賠償と満足を求める権利を含む国家的、行政的および司法的救済、ならびに必要な場合は法的支援への十分なアクセスを有するよう確保するために、必要なあらゆる措置をとるよう、国家に求める。

161 拷問や虐待の犠牲者を含む、人種差別の犠牲者に対し、あらゆる適切な法的手続きおよび無料の法的支援へのアクセスを、法的代理など、彼ら/彼女らの特有のニーズや脆弱さに対応した方法によって促進することを、国家に求める。

162 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の行為に対する申立人や証人の被害者化を防ぐことを確保し、申立人が求めた場合は適宜法律扶助を含む法的支援を提供し、可能ならば、NGOが法的手続きにおいて人種主義の訴えを申立人の同意のもとで支援できるようにするなどの措置を考慮するよう、国家に求める。

国内の立法およびプログラム

163 市民、政治、経済、社会および文化的分野において、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と効果的に闘うために、この世界会議は、それぞれの国家の立法の枠組みが、明白、明確に人種差別を禁止し、国内機関、独立機関、専門機関の指定を含め、効果的な司法などの救済または是正を提供するよう、すべての国家に勧告する。

164 国内法に規定される手続き的救済に関し、次のことを念頭に置くことを国家に求める。
(a)そのような救済へのアクセスが非差別、平等を基本に、幅広く提供されるべきである。
(b)該当する行動に関する現行の手続き的救済が周知されているべきで、人種差別の犠牲者が、自身の特定のケースに応じてその手続きを利用できるよう支援されなければならない。
(c)人種差別の申し立ての調査および裁定はできるだけ迅速に実施されなければならない。
(d)人種差別の犠牲者には、申し立ての手続きにおいて法的支援および扶助が、適当な場合は無料で提供されるべきであり、必要な場合はそのような申し立ての手続きまたは人種差別から発生するもしくは関連する民事あるいは刑事手続きにおいて、能力のある通訳の支援が提供されるべきである。
(e)人種差別の訴えを効果的に調査し、申立人を脅迫や嫌がらせから保護するための権限ある国家機関の設立は望ましい展開であり、実施されるべきである。人種、皮膚の色、世系、ナショナルまたはエスニックな出身に基づいた差別的慣行を禁止し、違反者に対する適切な刑罰の適用と犠牲者に対する十分な補償を含む救済を規定した立法の制定に向けた措置がとられるべきである。
(f)差別の犠牲者に対して法的救済へのアクセスを容易にすべきであり、その点において、国内機関および他の機関、ならびに関連するNGOに犠牲者を支援する権限を与えるという改革が真剣に考慮されるべきであり、最も弱い立場にある集団を法制度へのアクセスを有するようにするプログラムが策定されるべきである。
(g)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づく係争や紛争に関与する当事者間の紛争解決、仲裁および和解のための新しく革新的な方法を模索し、可能な場合、確立すべきである。
(h)該当する形態の差別の犠牲者のための回復的司法の政策やプログラムの策定が望ましく、それらを真剣に考慮すべきである。
(i)人種差別撤廃条約の第一四条に基づく宣言を行った国家は、国民に同条のもとの申し立てのメカニズムの存在について知らせる努力を拡大すべきである。

救済、補償、賠償

165 あらゆる人が効果的で適切な救済へのアクセスを有し、差別の結果生じたいかなる損害に対しても十分な補償と満足を権限のある国内の法廷や他の国内機関に求める権利を享有することを確保することによって、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対する保護を強化することを国家に求める。さらに、人種主義および人種差別の苦情申立人にとっての法と裁判所へのアクセスの重要性を強調し、司法および他の救済が、広く周知され、容易にアクセスでき、迅速で、過度に複雑でないことの必要性に注意を喚起する。

166 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の行為を償うために、公正で十分な補償と満足を求める犠牲者の権利を国内法で規定された通り確保するために必要な措置をとること、そして、そのような行為の繰り返しを防止する効果的な措置を立案することを国家に求める。

V 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いにおける国際協力、および国連その他の国際メカニズムの拡大を含めた効果的な平等を達成するための戦略ならびにフォローアップ

167 国家に、自国が参加した地域会議の宣言や行動計画において同意したすべてのコミットメントを着実に実施し、他の関連する文書や決議に掲げられた目的に従い、それらの規定に応じて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための国家政策や行動計画を策定するよう要求する。さらに、すでにそのような人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための国家政策や行動計画が存在する場合には、それらのなかに地域会議から生じたコミットメントを取り入れるように要請する。

168 ジュネーブ諸条約(一九四九年八月一二日)とその二つの附属議定書(一九七七年)、および国際人道法の他の条約にまだ加盟していない国家に、加盟を考慮し、国際人道法のもとの義務、とくに差別禁止規則に関連する義務を完全に実施するために必要な措置をとり、最優先事項として適切な法律を制定することを求める。

169 国家に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者の利益のために機会の平等を促進するための協力プログラムを発展させるよう促し、また、同じ目的で多国間の協力プログラムを提案することを奨励する。

170 地域統合機関や地域的な国家間の対話フォーラムの作業プログラムのなかに、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いの問題を含めるよう、国家に勧める。

171 社会を構成する人種、皮膚の色、世系、ナショナルまたはエスニックな出身、宗教や言語の異なる人びとが共に生き、調和のとれた多人種および多文化社会をつくろうとするなかで経験する挑戦課題を認識するよう、国家に求める。また、カリブ地域のいくつかの社会のように比較的成功している多人種・多文化社会の肯定的事例が吟味され分析される必要があること、そして、人種、皮膚の色、世系、言語、宗教、ナショナルまたはエスニックな出身に関連する要素に基づいた紛争を和解させ、調和のとれた多人種・多文化社会を発展させる技術、メカニズム、政策、プログラムを系統的に検討し発展させる必要があることを認識するよう国家に促し、したがって、国連とその関連専門機関に、国際社会の利益のためにこの重要な作業を行うための多人種・多文化研究および政策策定の国際センターを設立することを検討するよう要請する。

172 国家に、それぞれの領域内のマイノリティのナショナルまたはエスニックなアイデンティティや文化的、宗教的および言語的アイデンティティを保護し、いかなる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容からも保護するために、そのようなアイデンティティを促進するような条件を奨励する適切な立法的および他の措置を発展させることを求める。この点においては、複合差別の形態について十分考慮するべきである。

173 さらに、歴史的に不利な立場にある共同体のアイデンティティを、それが適切であるという特殊な状況においては、平等に保護し、促進することを確保するよう、国家に求める。

174 貧困、低開発および機会平等の欠如など、人、とくに女性や子どもを人身売買に対して無防備にし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を引き起こし、一部には差別的慣行とも関連しうる根本原因に対処するために、二国間または多国間協力を通じてなど、措置をとる、または強化するよう国家に求める。

175 すべての人、とくに女性が十分な情報に基づいた決定ができ、人身売買の犠牲者となることを防止できるよう、移住した際の機会、制限および権利を明確にすることを目的としたキャンペーンをNGOと協力して実施するよう、国家に奨励する。

176 とくに非識字率、初等教育の全体普及、幼児死亡率、五歳以下の子どもの死亡率、健康、すべての人に対する性と生殖に関するヘルスケア、および安全な飲料水に関して、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者が生活条件において直面する既存の格差を大きく縮めることを目的とし、信頼できる統計データに基づき、かつ、一九九五年にコペンハーゲンで開催された「世界社会開発サミット」の行動計画第三六段落に挙げられたすべての人の基本的ニーズを満たすというコミットメントを二〇一五年までに達成させることを目的とした社会開発政策を採択し、実施することを国家に求める。これらの政策の採択と実施においてジェンダーの平等の促進も考慮される。

国際法の枠組み

177 関連文書を効果的に実施すること、そして、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の苦情申し立てに関して人種差別撤廃委員会、お よび他の人権諸条約監視機関が採択した勧告を適切に考慮することを促進するために、建設的で透明な対話を含めて、それらの機関との協力を継続するよう国家 に求める。

178 その任務を十分に果たせるように、人種差別撤廃委員会への十分な資源を要請し、また、すべての国連人権諸条約機関に十分な資源を提供することの重要性を強調する。

一般的国際文書

179 調和のとれた多文化世界をつくるために国家や共同体内、およびそれらの間での文化的多様性の尊重を促進し、それを保護する国際社会の努力、とくに ユネスコの後援のもとで行われている措置を支持する。それには国際人権文書と矛盾しない形で可能な国際文書をつくりあげようとする努力も含まれる。

180 障碍をもつ人の権利および尊厳を保護し促進する、とくに障碍をもつ人に対する差別的な慣行や処遇に対応する規程を含む、必須で包括的な国際条約の作成を検討するよう、国連総会に勧める。

地域・国際協力

181 列国議会同盟に、この世界会議の目的の達成状況を振り返るよう各国議会に奨励することによって、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対し、力を合わせて行動する国際年」の活動に貢献することを勧める。

182 移住の問題に関する地域的な対話に参加するよう国家に奨励し、移住労働者に関する二国間および地域的協定の交渉を行うこと、そして、移住者の権利を保護するためのプログラムを他の地域の国家とともに計画し実施することを考慮するよう勧める。

183 国家に、市民社会との協議において、法の執行と国境管理だけではなく、移住者の人権の促進と保護および移住と発展の関係に焦点を当てた、移住の原因と結果についての地域的な包括的対話を適宜支持または確立することを求める。

184 とくに移住問題を扱う権限を有する国際組織に、国連人権高等弁務官事務所の支援を受け、移住労働者を含む移住者に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が関わる事項に関して、情報を交換し、活動を調整するよう奨励する。

185 影響を受けた市民の深刻な人道主義的苦難と多くの受け入れ国、とくに発展途上国および移行期にある国が引き受ける負担について深い懸念を表明し、 受け入れ国が犠牲者を助け、祖国から追放された人びとの困難に公平に対応できるよう十分な財政的および人道的緊急支援が維持されることを確保するよう関連 国際機関に求め、難民が出身国に自発的に安全に尊厳をもって帰国する権利を自由に行使できるよう十分な保障措置を求める。

186 国家に、女性と子ども、とくに少女の人身売買、および移住者の密輸の問題に対応する二国間、小地域間、地域間、および国際間の協定を締結することを奨励する。

187 国家に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための協力を拡大するために、地域および国際レベルで、独立した国内機関の間の交流を、そして適用可能であれば他の独立機関の間の交流も含めて適宜促進するよう要求する。

188 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う地域機関またはセンターが存在する地域では、そのようなセンターの活動を支援するよ う国家に促し、そのような機関が存在しない地域では、すべての地域に設立することを勧告する。これらの機関またはセンターは、とくに次のような活動を実施 することができる。人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の状況およびその犠牲者である個人や集団の状況の評価とフォローアップ、傾向や 問題事項の認識、とくに地域会議やこの世界会議の成果に関連する情報を含めた情報の収集・発信および交換とそのためのネットワークづくり、良き実行の例の 紹介、啓発キャンペーンの組織、適宜および可能な場合、国連・地域的機関および国家や国内人権機関との調整による協同作業を通して、提案・解決策および予 防措置を発展させること。

189 国際機関に、その任務と権限の範囲内で、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いに貢献するよう求める。

190 金融・開発機関や国連の事業プログラムおよび専門機関に、その通常予算と理事会の手続きに従い、以下のことを奨励する。
(a)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の現象と闘うために、その権限と予算の範囲内で、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連 のある不寛容の犠牲者の状況を改善することにとくに優先性を与え、十分な資金を配分し、そのような人びとに関連するプロジェクトの策定と実施にその人びと を含めること。
(b)政策やプログラムに人権の原則や基準を取り込むこと。
(c)組織内のプログラムや活動において、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者の参加を促進することに自分たちがどれだけの貢 献や努力ができているかという情報を、理事会への定期報告のなかに含めることを考慮し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶にこ れらの政策や慣行が貢献することを確かなものにすること。
(d)それらの政策や慣行が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者にどう影響を与えるかを検討し、その政策や慣行が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶に貢献することを確保すること。

191
(a)国内人権機関、および人種主義と闘うために法律によって設立された他の機関、そして市民社会との協議において、この宣言と行動計画の規定を実施するためにとられた措置に関する行動計画やその他の関連資料を作成し、国連人権高等弁務官に提出するよう国家に要求する。
(b)この世界会議のフォローアップとして、五名の独立した優秀な専門家と協力して、宣言と行動計画の規定の実施状況を追跡するよう、国連人権高等弁務官 に要請する。その専門家は国連人権委員会の議長が提案した候補者のなかから地域グループとの協議の後、事務総長によってそれぞれの地域から一人ずつ任命さ れる。これらの規定の実施の進展に関する年度報告は人権高等弁務官によって国連人権委員会と総会に提出される。その際、国家、関連する人権諸条約機関、国 連人権委員会の特別手続きおよび他のメカニズム、国際・地域組織およびNGOや国内人権機関からの情報や見解を考慮する。
(c)人権高等弁務官事務所内に人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う反差別の部局を設置し、平等と非差別を促進するという国連人 権高等弁務官の意向を歓迎し、とくにその権限と任務に含めるものとして、人種差別とその進展、法的・行政的支援や人種差別の犠牲者に対する助言についての 情報の収集、そして、この世界会議のフォローアップ・メカニズムのもとで国家、国際組織、地域組織およびNGOや国内人権機関から提供される背景的情報の 収集を考慮するよう勧める。
(d)人権高等弁務官事務所が、国家、国際組織、地域組織およびNGOや国内人権機関と協力して、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容 に対応する実践的手段に関する情報、とくに差別禁止法を含む国際文書、地域文書、国内法ならびに人種差別と闘う法的手段、人種差別の犠牲者が利用できる国 際メカニズムを通じた救済ならびに国内の救済、異なる国や地域で実施される教育・予防のためのプログラム、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のあ る不寛容に対応する最良の慣行、技術協力の機会、そして学問的研究および専門文書の情報を含むデータベースを創造し、このようなデータベースを、ウェブサ イトや他の適切な手段を通じてなど、権限をもつ人びとおよび社会全体にもできるだけ利用しやすいよう確保することを勧告する。

192 国連とユネスコに、「文明間の対話」のハイ・レベルの会合およびその他の会合を継続して組織し、その目的のために資金を投入しパートナーシップを促進することを勧める。

人権高等弁務官事務所

193 とくに人権と寛容の文化の尊重を促進し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容という災いに関する認識のレベルを高めるために、親善大使の任命を継続させ、その指名を世界中のすべての国に拡大するよう、国連人権高等弁務官に奨励する。

194 人種差別撤廃委員会やその他の国連人権条約機関の取り組みに対する認識を高める努力をさらに継続するよう、人権高等弁務官事務所に要求する。

195 ユネスコおよび人権の促進と保護の分野において活動するNGOとの協議のもとで、それら組織と定期的に協議し、世界のあらゆる文化によって人種主 義との闘いのためにつくられた技術的、科学的、教育的資料や情報資料を収集、保持、および活用するための研究活動を奨励するよう、人権高等弁務官事務所に 勧める。

196 人権高等弁務官事務所に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者、とくに移住労働者を含む移住者の人権侵害にとくに注意 を払い、外国人排斥との闘いにおける国際協力を促進すること、そして、その目的のために適切な協力協定に基づいて諸国において実施可能なプログラムを発展 させることを要請する。

197 人権高等弁務官事務所が国家の要請を受けて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うことを目的とした具体的な技術協力プロジェクトを策定し、資金を提供する上で支援を行うよう、国家に勧める。

198
(a)国連人権委員会に、人権委員会の特別報告者や作業部会、とくに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の現代的形態に関する特別報告 者の権限のなかに、とくに国連総会および人権委員会に報告を提出してその権限を行使する際に、この世界会議の宣言と行動計画での関連する規定として考える 勧告を含めること、そして、この世界会議の成果のフォローアップを行うその他のあらゆる適切な手段を検討することも勧める。
(b)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に関する事項について、国連人権委員会での関連のある特別手続きやその他の国連メカニズム、とくに特別報告者、独立専門家および特別代表と協調・協力するよう、国家に要求する。

199 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する国際文書を、そのすべての側面で強化し更新するための補完的な国際基準を準備するよう、国連人権委員会に勧告する。

国連国際の一〇年

200 国家と国際社会に、「人種主義および人種差別と闘う第三次一〇年」を支援するよう求める。

201 人身売買、とくに女性、若者および子どもの尊厳と人権を保護するために、彼ら/彼女らの人身売買に反対する国連年または国際一〇年を宣言することを考慮するよう、国連総会に勧告する。

202 ユネスコとの緊密な協力のもとで、「平和の文化に関する宣言と行動計画」の実施と二〇〇一年に開始した「世界の子どもたちのための平和と非暴力の文化の国際一〇年」の趣旨を促進するよう国家に求め、ユネスコに、これらの活動に貢献するよう勧める。

先住民族

203 「先住民族の国際一〇年」(一九九五年?二〇〇四年)の結果の評価を行い、適切なフォローアップを含めて、この一〇年の終了の区切りをいかに示すかに関する勧告を行うよう、国連事務総長に勧告する。

204 国連システム内に先住民族に関する問題の「常設フォーラム」を将来設立するために、事業枠組みと確固とした基盤の確立のための十分な資金を確保するよう、国家に要請する。

205 先住民族の人権と基本的自由の状況に関する特別報告者の作業に協力するよう、国家に求め、特別報告者が自分の任務を果たすために必要なあらゆる人的、技術的および財政的資源を提供されることを確保するよう、国連事務総長と人権高等弁務官に要請する。

206 国連人権委員会の一九九五年三月三日付委員会決議1995/32に従って作業部会で審議されている先住民族の権利に関する宣言の草案について、できるだけ早急に交渉を終結し、文案を承認するよう、国家に要求する。

207 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と、国内および国際レベルにおける人民(peoples)および個人の貧困、周縁化および 社会的疎外との関係に照らして、所得と財産の不平等を縮小する政策と措置を拡大し、個別に、および国際協力を通して、経済、社会および文化的権利を非差別 的に促進し保護する適切な措置をとることを、国家に求める。

208 国家と金融・開発機関に、それぞれの政策や慣行が民族一般、とくに先住民族にどのように影響を与えるかを検討し、国民およびとくに先住民族による 開発プロジェクトへの参加を通してそれぞれの政策や慣行が人種主義の根絶に貢献することを確保し、国際金融機関をさらに民主化し、先住民族の肉体的、精神 的もしくは文化的完全性に影響を与えうる事項について先住民族と協議することによって、グローバル化の否定的影響を緩和するよう求める。

209 金融・開発機関や国連の事業プログラムおよび専門機関に、その通常予算と理事会の手続きでのもとで、次のことを行うよう勧める。
(a)「先住民族の国際一〇年」の趣旨を達成することを目的とした具体的なプログラムの準備を含めて、とくに発展途上国の先住民族のニーズに特別な注意を払いながら、その権能の範囲内で、先住民族の地位の改善にとくに優先性を与え、十分な資金を配分すること。
(b)適切な手続きをふんで、また、先住民族との協力のもとで、先住民族の取り組みを共同体レベルで支援する特別プロジェクトを実施し、また、先住民族とこの分野における専門家の間の情報および技術的ノウハウの交換を促進すること。

市民社会

210 国家に、NGOと市民社会のあらゆる部門との協力を強化し、パートナーシップを発展させ、定期的に協議することを求める。それによってそれらの経 験と専門知識を利用し、立法、政策およびその他の政府の取り組みの発展に役立てることを促し、同時に人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛 容と闘うための政策やプログラムの作成や実施において、それらを緊密に関与させることができる。

211 宗教的コミュニティの指導者に、とくに社会内および社会間の和解、癒しおよび調和をもたらす対話とパートナーシップを促進し、提案することを通じ て、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に立ち向かうことを求め、宗教的コミュニティに、経済的および社会的活性化の促進に参加するよ う提案し、宗教指導者に、多様な人種集団間の協力と交流の拡大を培うことを奨励する。

212 女性、とくに複合差別を受ける女性のジェンダー平等と進歩向上を促進しようと活動しているNGOを含む市民社会のあらゆる関連部門との効果的な パートナーシップを確立、強化し、適宜、支援を提供すること、また、あらゆる形態の女性と少女に対する差別の根絶に向けた統合された、全体的なアプローチ を促進することを、国家に求める。

NGO

213 NGOがそれぞれの社会で自由で開放的に機能できるよう、開放的で活動しやすい環境を提供し、それにより世界中で人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の撤廃に効果的な貢献をもたらし、草の根組織のより幅広い役割を促すことを、国家に求める。

214 とくに市民間の連帯を深めること、市民の参加を広げ自発的な協力を増やすことを促進することにより人種および社会階級間の溝を越えた信頼の拡大を促進することなどを通じて、社会におけるNGOの役割を拡大する方法を模索することを、国家に要求する。

民間部門

215 自国領域内で事業を行う多国籍企業および他の外国企業が、非人種主義および非差別の規則や慣行に従うことを確保する措置を、適宜立法措置も含めて とることを国家に求め、さらに、多国籍企業および外国企業を含む経済界には、労働組合や市民社会の他の関連部門と協力して、人種主義、人種差別、外国人排 斥および関連のある不寛容を防止し、対処し、根絶するように作成したすべての事業に関わる自発的な行動規範を策定するよう奨励する。

若 者

216 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための活動の作成、計画、および実施において、青少年の十分で積極的な参加を奨励 し、彼ら/彼女らにより緊密に関与させるよう、国家に求める。また、NGOや社会の他の部門とのパートナーシップにおいて、国連システムの「世界若者 フォーラム」(World Youth Forum)や新しい技術の活用、交流その他の手段を通じて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に関する若者による全国的および国際 的対話を促進するよう、国家に要求する。

217 若者組織や若い女性・男性が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いの精神に則り、情報の発信と交換およびそのための ネットワークづくり、啓発キャンペーンの組織および多文化教育プログラムへの参加、適切で可能な場合の提案や解決策の創出、文化間交流と対話を促進する計 画やプログラムの策定におけるNGOやその他の市民社会の担い手との定期的な協議と協力などの活動を通じて、自分たちで準備した若者のためのメカニズムを 確立し維持することを、奨励し促進するよう、国家に求める。

218 政府間組織、国際オリンピック委員会と国際・地域スポーツ連盟との協力において、いかなる差別もなく、また、人間理解、寛容、フェア・プレーそし て連帯が必要とされるオリンピック精神に基づき行われるスポーツを通して、世界の若者を教育し、とくにスポーツにおける人種主義との闘いを強化することを 国家に求める。

219 この行動計画の成功には、政治的意志と、国、地域および国際レベルにおける十分な資金、そして国際協力が必要であることを認識する。


(1)この宣言および行動計画において、「ジェンダー」とは社会の文脈における二つの性、男性と女性を指すと理解されている。「ジェンダー」はその他のいかなる意味ももたない。
(2)この宣言および行動計画に対するすべての留保および声明を列挙した世界会議報告の第VII章を参照のこと。

【翻訳=ヒューライツ大阪、監訳=前田 朗】

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ダーバン宣言(2)行動計画147まで

                     行動計画

 宣言の目的を実際的で実行可能な行動計画に置き換える緊急の必要性を認識し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議は、

I 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の源泉、原因、形態、現代的現象

1 国家に、国内努力において、そして他の国家、地域や国際組織および金融機関と協力しながら、とくに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者が多く住む地域の貧困を撲滅するために、それらの影響を受けているコミュニティと協議しながら、公共および民間の投資の利用を促進するよう求める。

2 国家に、奴隷化および奴隷類似慣行の現代的諸形態を終わらせるために必要で適切な措置をすべてとり、それらから生じた問題や被害を是正するために、国家間の建設的対話を開始し、措置を実施するよう求める。

II 人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者

被害者-一般

3 国家に、HIV/AIDSのような流行病の感染者あるいは感染者と見なされた人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者の人権を促進し保護する国内機構を強化し、予防措置、医薬や治療への適切なアクセス、教育プログラム、研修およびマスメディアによる情報発信を含む具体的措置をとり、暴力、烙印づけ、差別、失業ほかこれら流行病から生じる否定的な影響を排除するよう、国内で、そして他の国家や関連する地域および国際組織やプログラムと協力しながら活動することを求める。

アフリカ人およびアフリカ系人民

4 国家に、アフリカ系人民による政治、経済、社会および文化の全側面での参加および国の進歩と経済的発展への参加を容易にし、アフリカ系人民のもつ遺産および文化のよりよい理解と尊重を促進するよう求める。

5 国家に、適宜国際協力の支援を受け、主としてアフリカ系人民で構成されるコミュニティにおける医療制度、教育、公衆衛生、電気、飲料水そして環境管理、ならびにその他のアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)の取り組みに、追加の投資を積極的に集中させることを考慮するよう要請する。

6 国連、国際金融・開発機関、そしてその他の適切な国際機構に、アフリカ人およびアメリカをはじめとした世界中のアフリカ系人民に向けた能力構築プログラムを発展させるよう要求する。

7 人権委員会に、アフリカ系人民が離散した先の土地で直面している人種差別の問題を調査し、アフリカ系人民に対する人種差別の撤廃に向けた提案を行う国連の作業部会その他の機構を設置することを考慮するよう要請する。

8 国連の金融・開発機関や事業プログラムあるいは専門機関に、それぞれの通常予算と理事会の手続きに従って、以下のことを行うよう求める。
(a)とくに具体的な行動計画の準備において、発展途上国にいるアフリカ人およびアフリカ系人民のニーズに特別な注意を傾けながら、それぞれの権能および予算の枠内において、アフリカ人およびアフリカ系人民の状況を改善することに特別な優先権を与え、十分な資金を割り当てること。
(b)適切な手続きを通じて、そしてアフリカ人およびアフリカ系人民との協力のもとで、彼ら/彼女らのコミュニティレベルでの取り組みを支援し、これら人びととこれら分野の専門家との間の情報および技術的ノウハウの交換を促進する特別プロジェクトを実施すること。
(c)追加の投資を医療制度、教育、住居、電気、飲料水および環境保全の措置に割り当て、雇用における機会均等、ならびにその他のアファーマティブ・アクションの取り組みを促進させることを意図したアフリカ系人民に向けたプログラムを発展させること。

9 国家に、人種主義がアフリカ系の女性および若い男性にとくに深刻な影響を及ぼし、より疎外された不利な状況に追い込んでいることを考え、彼ら/彼女らに利益となる公的な措置および政策を増やすよう要請する。

10 国家に、アフリカ人およびアフリカ系人民、とりわけ女性と子どもたちに教育へのアクセスを保証し、地域社会における教育、技術発展および遠距離学習のための十分な資源を提供するような新しい技術へのアクセスを促進するよう求め、さらに、アフリカ人およびアフリカ系人民の歴史と貢献を教育カリキュラムに最大限かつ正確に含むことを促進するよう求める。

11 国家に、公共サービスを含む公的部門のあらゆるレベル、とりわけ司法の運営において、アフリカ系人民の平等なアクセスや公平な参加を疎外する要因を特定し、特定した障害を取り除く適切な措置をとるよう奨励し、また、民間部門には、それぞれの組織内のあらゆるレベルで、アフリカ系人民への平等なアクセスと公平な参加を促進するよう奨励する。

12 国家に、すべての個人、とりわけアフリカ系人民の司法制度への十分で効果的なアクセスを保証する具体的手段をとるよう要求する。

13 国家に、国際人権基準とそれぞれの国内法の枠組みに従って、アフリカ系人民によって世代を越えて受け継がれてきた土地の所有権の問題を解決し、彼ら/彼女らの文化と独自の意思決定の形態を尊重しながら、これらコミュニティの土地の生産的な利用と包括的な開発を促進するよう求める。

14 国家に、多数のアフリカ系人民が経験している宗教的偏見と不寛容のとりわけ厳しい問題を認識し、その他の形態の差別と一緒になった場合には複合差別の形態となるような宗教と信条に基づくすべての差別を防止し撤廃するよう計画した政策と措置を実施するよう求める。

先住民族

15 国家に、以下のことを行うよう求める。
(a)先住民族の権利の享有を促進、保護および保証する憲法、行政、立法、司法上の措置、およびすべての必要な措置を、先住民族と協調しながら採用あるいは継続して実施するとともに、社会のすべての領域において、とくに彼ら/彼女らの利益に影響を及ぼしたり関係するような問題において、平等、非差別、そして完全で自由な参加を基盤に、彼ら/彼女らの人権および基本的自由の行使を保証すること。
(b)先住民の文化と遺産のよりよい理解と尊重を促進すること。それに関して国家がすでにとっている措置を歓迎する。

16 国家に、先住民族と協力し、適宜、先住民族による企業の設立、取得あるいは拡大を通して、また研修や技術支援の提供、貸付金の便宜などの措置の実施を通して、先住民族の経済活動へのアクセスを刺激し、彼ら/彼女らの雇用のレベルを高めるよう求める。

17 国家に、先住民族と協力し、彼ら/彼女らのコミュニティの発展につながる研修やサービスへのアクセスを提供するプログラムを確立し、実施するよう求める。

18 国家に、先住民族の女性および少女のために、彼女らと協調して、彼女らの市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利を促進し、ジェンダーとエスニシティーによる彼女らの不利な状況に終止符を打ち、教育、肉体的・精神的健康、経済生活において、そしてドメスティック・バイオレンスを含む彼女らへの暴力の問題において彼女らに影響を及ぼしている緊急の問題に対処し、先住民族の女性および少女が人種とジェンダー差別の複合した理由により受けている一層悪化した差別の状況を取り除く目的で、公共政策を策定し、プログラムを促進するよう要請する。

19 国家に、暗示的、明示的あるいは内在的であるかのいかんにかかわらず、先住民族および先住民個人に向けられた人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を認識し根絶するために、適切な国際人権文書、国際人権の規範および基準に従って、自国の憲法、法律、法制度および政策を吟味するよう勧告する。

20 先住民族との条約や協定を重視し、尊重し、それらを正当に認識して遵守するよう、関係する国家に要求する。

21 先住民族が世界会議における独自のフォーラムで出した勧告を、十分かつ適切に考慮するよう、国家に要求する。

22 国家に、以下のことを行うよう要請する。
(a)先住民族に関して本行動計画にて合意された目標と措置の達成を促進する制度的機構を構築するか、すでに存在している場合はそれらを支持すること。
(b)先住民族団体、地方当局およびNGOと協力して、先住民族に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を克服することを目指した行動を促進し、この点において達成状況を定期的に評価すること。
(c)先住民族が直面している不利な状況を克服するための特別措置の重要性を社会全体が理解するよう促進すること。
(d)先住民族に直接影響を及ぼす政策や措置に関する意思決定のプロセスにおいて、先住民族の代表と協議を行うこと。

23 国家に、都市に住む先住民族および個人が直面している特殊な克服課題を認識するよう求め、そして彼ら/彼女らが伝統的、文化的、言語的、精神的な生活習慣を継続して実践する機会をもつことに特別な注意を払いつつ、先住民族が遭遇する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をなくすために、効果的な方策を実施するよう要求する。

移住者

24 すべての国家に、移住者に対する一般化された拒絶現象と闘い、外国人排斥の行動や移住者に対する拒絶、否定的感情を生み出すすべての人種主義的なデモンストレーションや行動を積極的に防止することを要請する。

25 国際NGOおよび国内NGOに、そのプログラムと活動に移住者の人権の監視・保護を含め、移住者に対する人種主義的な行動や差別の現象、外国人排斥および関連ある不寛容を防止する必要性に関して、政府の意識を高め、すべての国家の人びとの認識を高めることを勧める。

26 国家に、移住者の在留資格にかかわらず、世界人権宣言および国際人権文書の義務に従って、すべての移住者の人権と基本的自由を完全かつ実効的に促進・保護することを要請する。

27 国家に、移住者の人権に関する教育を促進し、移住者の受け入れ社会に対する積極的な貢献や、とくに非正規状態にある移住者の弱い立場を含めて、移住者や移民問題に関して公衆が正確な情報を受け取ることを確保するような情報キャンペーンを行うことを奨励する。

28 国家に、多くの家族構成員が独立した地位を得たいと願っている事実に相応の注意を払い、移住者の統合にプラスの影響をもたらすような迅速かつ効果的な方法による家族再結合を促進するよう要求する。

29 国家に、職場における人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をなくす具体的な対策をとり、万人が労働法を含めて法のもとで完全に平等であるよう保証するよう求め、さらに国家に、職業訓練、団体交渉、雇用、契約、労働組合活動への参加、不当行為を処理する司法・行政裁判所へのアクセス、居住国内の異なる場所での求職活動、そして安全かつ健康を守れる条件での労働について、適宜、障壁をなくすよう求める。

30 国家に、以下のことを行うよう求める。
(a)移住者と受け入れ社会の間の共生と寛容を育むために、多くの社会に蔓延する個人・集団による暴力行為を含めた人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の現象を根絶することを目的として、政策と行動計画を立案・実施し、予防的措置を強化・実施すること。
(b)人種差別的でなく国際人権法のもとでの国家の義務に合致するように、出入国管理法、政策や慣行を、必要に応じて見直し、改正すること。
(c)文化的多様性の尊重を促進し、移住者を公平に処遇し、社会、文化、政治、経済的生活への統合を促進するようなプログラムを適宜発展させるために、移住者と受け入れ社会を巻き込んだ特別な措置を実行すること。
(d)とくに取調べに際して、関連する国際法規範や国際人権基準に従って、在留資格のいかんにかかわらず、公的機関に拘束された移住者が人道的かつ公平に扱われ、効果的な法的保護を受け、能力のある通訳の援助を適宜受けられるよう保証すること。
(e)とくに行政官、警察官、入管職員その他関係者のために、特別な研修コースを準備することを通じて、警察や入管当局が国際基準に従い移住者の尊厳を守り彼ら/彼女らを差別なく取り扱うことを確かなものにすること。
(f)新たに居住する国家への移住者の貢献を最大化するために、移住者の教育的・職業的・技術的資格の認識をいかに促進するかという問題を認識すること。
(g)公平な賃金や例外のない同一価値労働同一賃金に関する権利や、失業、病気、障碍、配偶者の死亡、高齢化など不可抗力による生活不能の場合の保障、さらに社会保険、教育アクセス、ヘルスケア、社会的サービスを含む社会保障を受ける権利、そして文化的アイデンティティの尊重を含めて、すべての移住者がすべての人権を十分に享有することを促進するためのあらゆる可能な措置をとること。
(h)配偶者間の暴力もしくはドメスティック・バイオレンスの犠牲者となっているとくに女性と子どもの移住者が、虐待を受けるような関係から逃れられるような入管政策およびプログラムの策定・実施を考慮すること。

31 女性移住者の比率が増加していることを受けて、とくに女性移住者が直面するさまざまな障壁が重なる場合に、性差別を含むジェンダー問題にとくに焦点を当てるよう国家に求める。女性移住者に対して蔓延する人権侵害に関してのみならず、出身国と移民先の国の経済に対する貢献についても詳細な調査を行い、そこでの知見が条約機関への報告に含まれるべきである。

32 国家に、正規滞在の長期移住者に対して、経済的な機会と責任を、社会の他の構成員と同等に認めるよう求める。

33 移住者の受け入れ国に、国連機関、地域機関、国際金融機関と協力して、とくに保健、教育、適切な住居の分野での十分な社会的サービスの提供を優先課題として考慮することを勧告し、また、これらの機関に、こうしたサービスの要求に十分対応するよう勧告する。

難 民

34 国家に、難民、難民申請者、避難民に関する国際人権法、難民法および人道法のもとで負っている義務に従うよう求め、国際社会には、責任の分担のための国際連帯、負担の共有、国際協力の原則に従い、公平な方法で、また世界のさまざまな地域にいる彼ら/彼女らのそれぞれのニーズに相応の配慮をして保護と援助を提供するよう求める。

35 国家に、難民が受け入れ国の社会の生活に参加しようと努力するなかで直面するかもしれない人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を認識するように要求し、その国際義務とコミットメントに従って、この差別を解決するための方策を打ちたて、難民の権利の十分な享有を促進するよう奨励する。締約国は、難民に関するすべての措置が、「難民の地位に関する条約」(一九五一年)とその議定書(一九六七年)と完全に一致することを確保するべきである。

36 国家に、難民および国内避難民の女性および少女を暴力から保護する実効的手段をとり、そのような人権侵害はすべて調査し、適宜、能力のある関連組織と協力して、責任者を裁判にかけるよう求める。

その他の被害者

37 すべての人がいかなる差別もなく公的に登録され、法的な身分証明に必要な文書にアクセスをもち、利用可能な法的手続き、救済および発展の機会から利益を得ること、ならびに人身売買の発生を軽減することを確かにするために、あらゆる可能な措置をとるよう、国家に求める。

38 人身売買の被害者が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容にとくにさらされていることを認識する。国家は、人身売買に対するすべての措置、とりわけ人身売買の被害者に影響を及ぼすような措置が人種差別の禁止や適切な法的救済の利用可能性を含む国際的に認識された非差別の原則と一致していることを確保しなくてはならない。

39 国家に、ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーの子どもおよび若者、とりわけ少女に、教育への平等なアクセスが与えられること、そして、なかでも彼ら/彼女らが就学前に公用語を学ぶ機会を与える可能性をもち、そのような子どもや若者が母語を学ぶことができるようロマの教員や補助教員を雇用する異文化間教育の補足的プログラムを含めて、あらゆるレベルの教育カリキュラムが、彼ら/彼女らのニーズに敏感に対応することを確保するよう要求する。

40 国家に、ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーのニーズが満たされるよう、彼ら/彼女らに対する差別を根絶し、平等を実現し、彼ら/彼女らのすべての人権の十分な享有を保証するために、ロマの場合について人種差別撤廃委員会の一般的勧告27で勧告されているように、彼ら/彼女らの代表と協力しながら、適切で具体的な政策と措置がまだ存在しない場合はそれらを策定し、実施のメカニズムを確立し、経験を交流するよう奨励する。

41 政府間組織に、さまざまな国家との協力プロジェクトあるいは支援プロジェクトにおいて、ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーの状況に適宜対処し、彼ら/彼女らの経済的、社会的そして文化的進歩を促進するよう勧告する。

42 ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーが経験している人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に関する関心を呼び起こし、彼ら/彼女らの文化および歴史の理解と尊重を促進することを、国家に求め、NGOに奨励する。

43 ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーのメディアへの平等なアクセスと参加を促進し、同様に、彼ら/彼女らを人種主義的で差別的な紋切り型のメディア報道から保護するようメディアに奨励し、この点におけるメディアの努力を促進するよう国家に求める。

44 国家に、ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーとの協議のもとで確認された課題をふまえ、社会における彼ら/彼女らの地位をできるかぎり正確に反映した信頼できる統計データに基づいて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための政策を策定することを勧める。そのような情報は、すべて、データ保護規則やプライバシー保護などの人権および基本的自由に関する規定に従い、関係する人びとと協議しながら収集しなくてはならない。

45 国家に、アジア系人民に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の問題に取り組むよう奨励し、そして、そのような人びとが経済的、社会的、文化的および政治的生活において直面する参加の障壁を取り除くために必要なすべての措置をとるよう奨励する。

46 国家に、ナショナルあるいはエスニック・マイノリティや宗教的および言語的マイノリティに属する人びとが、いかなる差別もなく、また法の前に完全に平等で、すべての権利と基本的自由を全面的かつ有効に行使できることを管轄内で保証するよう求め、また、国家および国際社会に、そうした人びとの権利を促進・保護するよう求める。

47 国家に、ナショナルあるいはエスニック・マイノリティや宗教的および言語的マイノリティに属する人びとが受けている、あるいは受けているかもしれないあらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から彼ら/彼女らを保護するために、彼ら/彼女らがそれぞれ個別に、あるいはその集団の他の構成員と共にそのコミュニティにおいて私的および公的空間で自由に妨害なく独自の文化を楽しみ、独自の宗教を信仰し、独自の言語を使用する権利と、彼ら/彼女らが住む国の文化的、社会的、経済的および政治的生活に効果的に参加する権利を保障するよう求める。

48 差別、周縁化および社会的排除が、数の上でマイノリティである状況のなかで暮らす国内の多くの人種集団に与えてきた、および与え続けている影響を認識し、そのような集団に属する人がそのような集団の個人構成員として区別なく法のもとでの完全な平等のもと、すべての人権と基本的自由を全面的かつ有効に行使できるよう保証し、適用可能な場合は、人種差別を防ぐという目的で、雇用、住居そして教育において適切な措置をとるよう国家に求める。

49 国家に、雇用、住居、社会サービスおよび教育において、ナショナルあるいはエスニック・マイノリティや宗教的および言語的マイノリティに属する人びとに対する人種差別を防止するための適切な措置を適宜とるよう求める。この文脈において、複合差別の形態を考慮に入れるべきである。

50 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対するすべての行動計画においてジェンダーの視点を取り入れ、とりわけ先住民女性、アフリカ人女性、アジア人女性、アフリカ系女性、アジア系女性、女性移住者、その他不利を被っている集団の女性に課せられているそのような差別の重荷を考慮し、彼女らがコミュニティの経済的および生産的発展に参加することを促進する手段として、生産資源へのアクセスを男性と平等に保証するよう、国家に求める。

51 女性、とりわけ人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者を、そのような差別の根絶に向けて取り組むなかでの意思決定にすべてのレベルで巻き込み、世界会議の行動計画および国内行動計画のすべての側面、とりわけ雇用プログラム、サービスおよび資源の割り当ての領域で人種/ジェンダー分析を取り入れた具体的措置を策定するよう、国家に求める。

52 貧困は経済的および社会的地位を形成し、効果的な政治的参加に対する障害を女性と男性とで異なる形、異なる程度に生じさせるということを認識し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である個人あるいは集団の利益になるように立案され実施されている措置を含め、すべての経済的・社会的政策およびプログラム、とりわけ貧困撲滅の措置において、ジェンダー分析を行うよう国家に求める。

53 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である女性および少女が、公的および私的生活のすべての空間で彼女らの権利を十分に行使できるようエンパワーし、あらゆるレベルでの意思決定、とりわけ女性たちの生活に影響を及ぼす政策と措置の立案、実施および評価に、彼女らの十分で平等で効果的な参加を保証するよう国家に求め、社会のすべての部門に奨励する。

54 以下のことを行うよう、国家に求める。
(a)時には国家の黙認あるいは煽動を伴いながら、戦争の武器として組織的に使われてきた性暴力は、国際人道法の深刻な違反であり、一定の状況では、人道に対する罪および/あるいは戦争犯罪を成すこと、そして、人種とジェンダーに基づく差別の交差は、とりわけ女性と子どもを人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容とたびたび関係するこの種の暴力に無防備にしていることを認識すること。
(b)不処罰を終わらせ、人道に対する罪、および女性や少女に対する性暴力その他のジェンダーに基づく暴力に関する犯罪を含む戦争犯罪に責任のある者を訴追し、同様に、それらを犯したり、命令したり、勧誘したり、誘導したり、ほう助したり、教唆したり、援助したり、何らかの形で犯行もしくは犯行の未遂に加担した責任を負う当局の人間を特定し、捜査し、起訴し、処罰することを確保すること。

55 国家は、必要な場合は国際組織と協力し、子どもの最善の利益を第一の考慮事項として、とくに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に無防備な状況にある子どもたちに保護を提供し、関連する政策、方策およびプログラムを立案する際に、そうした子どもたちの状況に特別な注意を払うよう要請する。

56 国家は、自国の国内法および関連する国際文書のもとでの履行義務に従い、すべての子どもたちが権利と基本的自由を行使できるようにするために、利用できる資源を最大限使ってすべての措置をとり、即時の出生登録に対する平等な権利を差別なく保障するよう求める。国家は、国籍に関して、男性と平等な権利を女性に与えなくてはならない。

57 障碍をもつ人びともまた人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容にさらされており、彼ら/彼女らの状況に対処するよう、国家、国際組織および地域組織に求め、NGOおよび民間部門に奨励する。また、障碍をもつ人びとのすべての人権の十分な享有を保証し、生活のあらゆる領域への彼ら/彼女らの十分な統合を促進するために必要な措置をとるよう国家に求める。

III 国家、地域、国際レベルで人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶を目指した予防・教育・保護の措置

58 国および国際の両レベルで、すでにある差別禁止の国内法および関連する国際文書と機構に加え、すべての市民と機関に人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する立場をとるような効果的な施策と政策を採択・実施し、政府当局が国際的なNGOや市民社会のその他の部門とパートナーシップを組んで活動するようなプログラムを含み、とりわけ文化的多様性の利益の認識と理解を高めるための情報公開や教育プログラムを通して、地域社会の間および国民の間に正義、平等と反差別、民主主義、公正と友情、寛容と尊重などの価値と原則を実践して促進することで、調和のとれた生産的未来の建設に向けた共同作業における全国民の間の多様性の利益を認識して尊重し、最大限に活用するよう、国家に求める。

59 国家に、あらゆるレベルでの人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶に向けた予防、教育そして保護の措置の立案および策定の流れの中心に、ジェンダーの視点を取り入れ、それにより女性と男性の異なる状況に効果的に照準を合わせるよう保証することを求める。

60 国家に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である個人あるいは集団のニーズと経験を考慮に入れた貧困撲滅および社会的排除の軽減のための国内プログラムを、適宜採用あるいは強化するよう求め、それらプログラムの実施において、二国間および地域・国際レベルの協力を培うためにさらなる努力を行うよう求める。

61 国家に、それぞれの政治および法制度に社会のなかの多文化多様性を反映させるよう保証し、必要ならば、それらがより完全な参加型となり、社会の特定の分野の周縁化、排除および差別を回避できるように、民主的制度を改善するよう求める。

62 国家に、政策およびプログラムを通じて、とりわけ女性および少女に対する人種主義と人種により動機づけられた暴力に取り組むためにすべての必要な措置をとり、協力、政策対応、国内法ならびに関連する国際文書のもとでの義務、およびあらゆる形態の人種により動機づけられた差別と女性および少女に対する暴力の撤廃に向けたその他の保護的および予防的措置の効果的な実施を増強するよう求める。

63 経済界、とりわけ観光業界とインターネット・プロバイダーに、人身売買を防止し、そのような売買、とくに売買春における被害者をジェンダーに基づく差別および人種差別から保護し、彼女らの権利、尊厳および安全を促進する目的で、行動規範を策定するよう奨励する。

64 国家に、立法措置、防止キャンペーンおよび情報交換を含む包括的な反人身売買戦略を通じた女性および子ども、とりわけ少女のあらゆる形態の人身売買を防止、根絶および撤廃するための効果的措置を、国、地域および国際レベルで策定し、実施し、強化するよう求める。また、適切に資源を配分して、被害者の癒し、社会への再統合および社会復帰のために彼ら/彼女らを支援して保護することを目的とした包括的なプログラムを提供するよう国家に求める。それに関して国家は、法執行、入国管理および人身売買の被害者を扱うその他関連する職員への研修を提供あるいは強化しなくてはならない。

65 国連の組織、関連のある機関およびプログラム、そして国家に、「国内避難民に関する指導原則(E/CN.4/1998/53/Add.2)」、とりわけ非差別に関する条項を促進および活用することを奨励する。

A 国内レベル

1 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を防止し、それらから保護するための立法、司法、規制、行政およびその他の措置

66 国家に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容について、ジェンダーに基づくそれらの現象を含み、それらと闘う国内政策および行動計画を策定し、遅滞なく実施するよう求める。

67 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である外国人労働者を含む特定の労働者集団が経験する深刻な状況に対する効果的な立法および行政政策、ならびにその他の予防的措置を立案するか強化し、促進して実施するよう、国家に求める。家事労働に従事する人びとおよび人身売買された人びとを差別と暴力から保護し、また、彼ら/彼女らに対する先入観をなくすことにも特別な注意を払うべきである。

68 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)のもとでの義務に従い、留保がその条約の趣旨および目的に反しないことを保証しつつ、特別かつ明確に人種差別に対抗し、あらゆる公的生活の空間で直接的・間接的のいかんを問わず、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を禁止する国内法および行政措置を採択して実施あるいは強化するよう、国家に求める。

69 債務労働、奴隷制、性搾取あるいは労働搾取など、人間の生命を脅かしたりさまざまな種類の強制労働や搾取につながる慣行を考慮に入れて、とりわけ女性や子どもの人身売買および移住者の密輸入に対する法律を適宜制定および実施するよう、国家に求める。また、そのような慣行と闘い、法執行と被害者の権利の保護を保証する適正な資源を配分する機構がまだ存在していなければそれを確立させ、人身売買と移住労働者の密輸入をなくすために、被害者を支援するNGOを含め、二国間、地域および国際レベルの協力を強化するよう、国家に奨励する。

70 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である個人および集団への平等を促進するために、必要とされるすべての憲法、立法および行政上の措置をとり、そのような形態の差別を生み出す国内法や行政規定を改正あるいは撤廃する目的で、既存の措置を見直すよう、国家に求める。

71 警察官およびその他の法執行官による人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に動機づけられた職権濫用を予防し、発見し、説明責任を確保する効果的政策やプログラムを立案して全面的に実施し、そのような職権濫用の犯行者を訴追するよう、国家およびその法執行機関に求める。

72 警察官やその他の法執行官が、程度の差こそあれ、人種、皮膚の色、世系、ナショナルあるいはエスニックな出身に基づいて人びとを調査活動の対象にしたり、ある個人が犯罪行為に関与しているかどうかを判定する慣行の一部となっている、「人種別プロファイリング」として広く知られている現象を撤廃する効果的措置を立案し導入し施行するよう、国家に求める。

73 遺伝子研究あるいはその応用が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を助長するために用いられることを防止し、個人の遺伝子情報のプライバシーを保護し、そのような情報が差別的もしくは人種主義的な目的に使用されるのを防ぐ措置をとるよう、国家に求める。

74 以下のことを行うよう国家に求め、NGOと民間部門に勧める。
(a)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から自由で質が高く多様な警官隊の形成を促進する政策を策定・実施し、マイノリティを含むすべての集団を、警察および刑事司法制度内のその他の機関(検事など)を含む公務員の雇用に積極的に取り入れる。
(b)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に動機づけられたものを含み、暴力を以下によって減らす努力をする。
 (i) 若い人びとに寛容と尊重の重要性を教える教材を開発する。
 (ii) 偏見が暴力的な犯罪行為として発現する前に、それに対処する。
 (iii) とくに地域社会のリーダーと国および地方レベルの法執行官からなる作業グループを組織して、暴力的な犯罪行為を予防する目的で、地域社会の関与、調整、研修、教育およびデータ収集を改善させる。
 (iv) 暴力的な犯罪行為を禁止する市民的権利の法律が確実に施行されるよう保証する。
 (v) 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に動機づけられた暴力に関するデータの収集を強化する。
 (vi) 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に動機づけられた暴力事件の被害者への適切な支援と、それらがさらに発生するのを予防するための社会教育を提供する。

人権および非差別に関する国際および地域法制文書の批准と効果的実施

75 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をなくす国際人権文書の批准あるいは加盟をまだ行っていない国家に、そうすることを考慮し、とりわけ、二〇〇五年までの全世界的な批准のために、緊急課題として人種差別撤廃条約に加盟することを考慮すること、そして、同条約第一四条のもとで宣言を行いその報告義務に従うことを考慮すること、そして、人種差別撤廃委員会の総括所見を公表し、それに従って行動することを求める。また、国家に、その条約の目標および目的に反するような留保を撤回し、その他の留保の撤回も考慮するよう求める。

76 国家に、人種差別撤廃委員会の所見および勧告を十分に考慮するよう求める。そのために、国家は、これら所見や勧告に従うための適切な手段がすべてとられることを保証する適切な国内での監視および評価の機構を確立することを考慮すべきである。

77 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」および「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の締約国になっていない国家と、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の選択議定書に加盟をしていない国家に、そうすることを考慮するように求める。

78 以下の文書を署名・批准あるいは加盟していない国家に、そうすることを検討するよう求める。
(a)「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」(ジェノサイド条約)(一九四八年)
(b)「移民労働者に関する条約」(ILO第九七号)(一九四九年改正)
(c)「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」(人身売買禁止条約)(一九四九年)
(d)「難民の地位に関する条約」(難民条約)(一九五一年)およびその議定書(一九六七年)
(e)「雇用及び職業における差別に関する条約」(ILO第一一一号、雇用・職業差別禁止条約)(一九五八年)
(f)一九六〇年一二月一四日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)総会で採択された「教育における差別を禁止する条約」(教育差別禁止条約)
(g)五年以内の世界的批准を目指しての「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(女性差別撤廃条約)(一九七九年)とその選択議定書(一九九九年)
(h)一九八九年の「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)と二〇〇〇年のその二つの選択議定書、そして「就業の最低年齢に関する条約」(ILO第一三八号)(一九七三年)と「最悪の形態の児童労働に関する条約」(ILO第一八二号)(一九九九年)
(i)「移住労働者に関する条約」(補足条項)(ILO第一四三号)(一九七五年)
(j)「独立国における先住民及び種族民に関する条約」(ILO第一六九号)(一九八九年)、および「生物の多様性に関する条約」(一九九二年)
(k)「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」(移住労働者権利条約)(一九九〇年)
(l)「国際刑事裁判所ローマ規程」(一九九八年)
(m)「国連多国間組織犯罪禁止条約」、条約を補足する「女性および子どもを中心にした人身売買を防止、抑止および処罰するための議定書」、そして、条約を補足する「陸、海、空による移住者密輸禁止議定書」(二〇〇〇年)

 さらに、これら文書の締約国にそれらを完全に実施するよう求める。

79 他の特定の形態の差別と結びついて複合した形態の差別を構成する宗教的差別を取り除くために、一九八一年一一月二五日の国連総会決議36/55「宗教又は信条に基づくあらゆる形態の不寛容及び差別の撤廃に関する宣言」(宗教的不寛容撤廃宣言)に明記されている権利の行使を促進して保護するよう、国家に要求する。

80 法的地位および在留資格に関係なく、外国籍者が逮捕あるいは拘束された場合に自国の領事館員に連絡をとる権利にとくに関係しているため、「領事関係に関するウィーン条約」(一九六三年)の十分な尊重と遵守に努めるよう、国家に求める。

81 とくに労働ビザや労働許可の付与、住居、医療および裁判へのアクセスに関して、人種、皮膚の色、世系あるいはナショナルまたはエスニックな出身に基づいた外国人および移住労働者に対する差別的処遇を、適宜禁止するよう、すべての国家に求める。

82 国際レベルでの人権侵害および国際人道法の侵害に対する不処罰は、公正で公平な裁判システム、ついには調和と安定への深刻な障害となることを留意しつつ、人種主義あるいは外国人排斥の動機による犯罪を含み不処罰をなくすことの重要性を強調する。また、既存の国際刑事法廷の活動と国際刑事裁判所のローマ規程の批准を全面的に支持する。そしてすべての国家にこれら国際刑事法廷に協力するよう求める。

83 国家に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をなくすために、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」(一九九八年)の関連条項を十分に適用すべくあらゆる努力を払うよう求める。

人種差別行為を犯した者の訴追

84 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に動機づけられた犯罪行為をなくす効果的措置を採用し、そのような動機が判決を下す上で刑罰加重要因として考慮されるように措置をとり、それらが不処罰で放置されるのを防止し、そして法による統治を確保するよう国家に求める。

85 刑事訴追、警察による暴力および刑事制裁と、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との間の考えられるつながりについて調査し、そのようなつながりや差別的慣行の根絶に必要な手段をとるための証拠を得るよう国家に求める。

86 人種憎悪と人種差別を助長するネオファシスト的で暴力的な民族主義的思想、ならびに人種主義的な外国人排斥の感情の発生を防ぎ、それらに対処する措置を、そのような思想がとりわけ若い人びとに与える否定的影響をなくすための措置を含み、定型的および非定型的教育、メディアそしてスポーツを通じて促進するよう国家に求める。

87 とくに非差別の原則に関連して、一九四九年八月一二日のジュネーブ諸条約とその第一追加議定書およびその他の戦争法規慣例の重大な違反を犯したり、あるいは犯すよう命じた者を訴追および処罰するために、受け入れた義務を実施する法律を採用するよう締約国に求める。

88 国家に、あらゆる形態の人身売買、とりわけ女性および子どもの人身売買を刑事犯罪とし、売買業者および仲介者を非難して処罰し、その一方で人身売買の被害者の人権を十分に尊重しながら、彼ら/彼女らに対する保護と支援を確保するよう求める。

89 人種主義と人種差別のあらゆる不法行為に対する包括的で徹底的で遅滞のない公平な調査を行い、適宜、職権で刑事犯罪を訴追するか、人種差別あるいは外国人排斥の性質をもつ違反に対応するすべての適切な行動を開始あるいは促進し、人種差別あるいは外国人排斥の性質をもつ違反に対する刑事および民事調査と訴追に高い優先権が与えられ、それらが積極的かつ終始一貫して行われることを保証し、法廷およびその他すべての司法行政機関において平等な処遇の権利を保障するよう、国家に求める。これに関係して、世界会議は、公正で公平な法の適用を保証するために、刑事司法制度内の機関の職員への意識啓発とトレーニングを提供することの重要性を強調する。この点において、世界会議は、反差別の監視職務を設置するよう勧告する。

独立し専門化した国内機関の設置および機関による調停の強化

90 一九九三年一二月二〇日の国連総会決議48/134に添付された「人権の促進と保護のための国内人権機関の地位に関する原則」に準じながら、とりわけ、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の問題における独立した国内人権機関の実効性を、適宜、確立、強化、見直しおよび補強し、それら機関に、これらの現象に立ち向かうための調査、研究、教育および公的な啓発活動を行える適切な財源、権限および能力を与えるよう、国家に求める。

91 また、以下のことを行うよう国家に求める。
(a)これら機関とその他の国内機関との間の協力関係を育てること。
(b)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者である集団あるいは個人が、これら機関に十分に参加できることを保証するような手段をとること。
(c)とくに現行の法律や判例の公表と伝達、さらにその他の国々の機関との協力を通じて、これら差別慣行の発現、機能および仕組み、そしてそれらを防止し除去し根絶するための方策についての知識が得られるように、これら機関および類似した組織を支援すること。

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ダーバン宣言(1)

 以下は、「ダーバン宣言」の日本語訳と「植民地諸国、諸国民に対する独立付与に関する宣言」である。

 いずれも、植民地主義を否定し総括することを求めている。少なくとも、この宣言と決議に署名した諸国は、それを公式に承認したことになる。

 8月22日、1000名が参加して大成功した日韓市民共同宣言大会で採択された宣言は、植民地主義と植民地支配の総括を掲げた内容を含んでいる。

 それに対して同日日比谷公会堂で開かれた「在日特権を許さない市民の会」などによる国民大集会とやらは惨めに破産した。

 かれらの欧米列強は植民地支配を謝罪していないのになぜ日本だけが謝罪しなければならないのかという一つの主張は、これらの文書によって破綻していることが明らかだ。

 宣言の14は、「植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である」と述べている。

 難民問題について行動計画は、34で、「国家に、難民、難民申請者、避難民に関する国際人権法、難民法および人道法のもとで負っている義務に従うよう求め、国際社会には、責任の分担のための国際連帯、負担の共有、国際協力の原則に従い、公平な方法で、また世界のさまざまな地域にいる彼ら/彼女らのそれぞれのニーズに相応の配慮をして保護と援助を提供するよう求める」と述べているが、この間の法務省・入管の人権侵害の実態を目の当たりにしている人は、この規定など日本政府が本気で実行しているなどとはまったく思わないだろう。

 ダーバン宣言は長いので、3つに分けて掲載する。

植民地諸国、諸国民に対する独立付与に関する宣言 採択 一九六〇年一二月一四日 国際連合総会大一五回会期決議一五一四(XV)

 総会は、

前文(一部略)

 いかなる形式及び表現を問わず、植民地主義を急速かつ無条件に終結せしめる必要があることを厳粛に表明し、
この目的のために、

 次のことを宣言する。

一 外国人による人民の征服、支配及び搾取は、基本的人権を容認し、国際連合憲章に違反し、世界の平和及び協力の促進の障害になっている。

二 すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し、並びにその経済的、社会的地位及び文化的発展を自由に追及する。

三 政治的、経済的、社会的又は教育的基準が不十分なことをもって、独立を遅延する口実にしてはならない。

四 従属下の人民が完全なる独立を達成する権利を、平和かつ自由に行使しうるするようにするため、かれらに向けられたすべての武力行為はあ らゆる種類の抑圧手段を停止し、かつかれらの国土の保全を尊重する。

五 信託統治地域及び非自治地域はまだ独立を達成していないたのすべての地位において、これらの地域の住民が独立及び自由を享受しうるようにするため、ならかの条件又は留保もつけず、その自由に表明する意識及び希望に従い、人種、信条又は皮膚の色による差別がなく、すべての権 利を彼らに委譲するため、速やかな措置を講じる。

六 国の国民的統一及び領土の保全の一部又は全部の破壊をめざすいかなる企図も、国際連合憲章の目的及び原則と両立しない。

七 すべての国家は、平等、あらゆる国家の国内問題への不干渉、並びにすべての人民の主権 的権利及び領土保全の尊重を基礎とする。国際連合憲章、世界人権宣言、及び本宣言の諸条項を誠実かつ厳格に遵守する。

出典  「ベーシック条約集」 第2版  東信堂

人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議
                  宣 言

 二〇〇一年八月三一日から九月八日にかけて南アフリカのダーバンで会議を開き、

 本世界会議を主催した南アフリカ政府に深い感謝を表明し、

 アパルトヘイト制度に反対し、民主主義のもとでの平等と正義、発展、法の支配、人権の尊重を求める南アフリカ人民の英雄的闘いから示唆を受け、その意味で、その闘いに国際社会が果たした重要な貢献、とりわけアフリカ諸国の人民と政府の重要な役割を想起し、NGOなどの市民社会のさまざまな関係者がその闘いや、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との現在進行中の闘いにおいて果たした重要な役割を想起し、

 一九九三年六月の世界人権会議で採択された「ウィーン宣言と行動計画」が、あらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の速やかで包括的な廃止を呼びかけていることを想起し、

 「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議(「世界会議」)」の開催に関連する一九九七年四月一八日の人権委員会決議1997/74、一九九七年一二月一二日の国連総会決議52/111、これらの機関のその後の諸決議を想起し、一九七八年と一九八三年にジュネーブで開催された二度の「人種主義および人種差別と闘う世界会議」も想起し、

 国際社会の努力にもかかわらず、三度の「人種主義および人種差別と闘う一〇年」の主要目標が達成されていないこと、ならびに、数え切れない人間が今日もなお、さまざまな形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者となり続けていることに重大な懸念をもって留意し、

 二〇〇一年が、世界会議の目標に世界の関心を引き寄せ、あらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を廃止する政治公約に新しい推進力を与えることを目的としている「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する国際運動年」であることを想起し、

 国連総会が二〇〇一年を「国連・文明間の対話の年」と宣言し、協調・パートナーシップ・包容によって、共有された価値、普遍的人権および人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いを脅かす人道への共通の挑戦に対処するために、多様性のための寛容と尊重、文明間の共通の地盤を模索する必要を強調したことを歓迎し、

 国連総会が「世界の子どもたちのための平和と非暴力の文化の一〇年(二〇〇一年?二〇一〇年)」を決定し、ならびに、「平和の文化に関する宣言と行動計画」を採択したことを歓迎し、

 世界会議が、「先住民族の国際一〇年」とともに、世界中の政治・経済・社会・文化・精神の発展への先住民族の貴重な貢献、ならびに、先住民族が直面している人種主義や人種差別などの挑戦について検討する独自の機会を提供することを認め、

 一九六〇年の「植民地諸国人民独立付与国連宣言」を想起し、

 国連憲章と世界人権宣言に含まれた諸目的と諸原則へのわれわれの公約を再確認し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、国連憲章の諸目的と諸原則を否定するものであることを確認し、

 世界人権宣言の平等と非差別の原則を再確認し、人種・皮膚の色・性・言語・宗教・政治その他の見解・ナショナルな、または社会的な出身・財産・出生その他の地位のようないかなる種類の区別もなく、すべての者に人権と基本的自由が尊重されるよう奨励し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を撤廃するための原則的国際文書としての「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)の普遍的加入または批准、そのもとで生じる義務の完全な履行が基本的に重要であることを確信し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いに際して、関連するすべての国際人権文書を普遍的支持という観点で署名・批准・加入を検討することが各国にとって基本的に重要であることを認め、

 ストラスブール、サンティアゴ、ダカール、テヘランで開催された地域会議の報告書、各国から提出された報告書、ならびに、専門家セミナー、NGO地域会合、その他の世界会議準備会議の報告書に留意し、

 新生南アフリカの最初の大統領であった尊敬すべきネルソン・マンデラの後援と、国連人権高等弁務官兼世界会議事務局長のイニシアティブで、ターボ・ムベキ南アフリカ大統領が行い、七四カ国の国家元首・政府首脳・高官が署名した「ビジョン声明」に感謝をもって留意し、

 文化的多様性が、人道全体の前進と福利のために重要なプラスとなり、われわれの社会を豊かにする永続的長所として、評価、享受、真に受容され、取り入れられるべきであると再確認し、

 関連する人権文書において義務として規定されているように、人種差別、ジェノサイド、アパルトヘイト犯罪、奴隷制の禁止からの逸脱は許されないことを認め、

 世界の人民に耳を傾け、正義、すべての者の機会平等への世界の人民の示唆や、発展の権利、平和で自由に生きる権利、経済・社会・文化・市民・政治生活における差別のない平等の参加を含む、すべての者の人権の享受への世界の人民の示唆を認め、

 正当な、公平な、民主的で包容的な社会の形成にすべての個人と人民が平等に参加することが、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から世界を解放するのに寄与しうることを認め、

 国内の意思決定と世界的な意思決定に、すべての者が差別なく公平に参加することの重要性を強調し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、それが人種主義および人種差別に等しい場合、すべての人権の重大な侵害であり、その完全な享受の障害となり、すべての人間は尊厳と権利において自由かつ平等に生まれているという自明の真実を否定し、諸人民や諸国の間の友好で平和な関係の障害となり、武力紛争を含む多くの国内紛争や国際紛争の根因となり、住民の強制移送に帰結することを確認し、

 普遍的・不可分・相互依存・相互関係的であるすべての人権、経済・社会・文化・政治的権利の完全な享受を保証するために、すべての諸国の男性・女性・子どもの生活条件を改善するために、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う国内活動と国際活動が求められていることを認める。

 人権の促進と保護のための、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う目標を達成するための、国際協調を強化する重要性を再確認する。

 外国人排斥は、さまざまな現象で現れるが、各国と国際社会による緊急の注目と迅速な行為で闘う必要のある差別と紛争の主要な現代的源泉と形態の一つであると認め、

 国際社会、政府、地方自治体が行った努力にもかかわらず、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容という災難が継続して、人権侵害、苦痛、不遇、暴力をもたらしており、適用できるすべての適切な措置によって、最優先事項として、できれば影響を受ける共同体と協力して、これと闘わなければならないことを完全に認め、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の継続的暴力的な発生、および、植民地時代に促進され実行された、ある人種や文化が他の人種や文化より優越しているという見解が、今日でもあれこれの形態で唱えられ続けていることに懸念をもって留意し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が、より陰険な、現代的形態と現象で出現したり継続して発生していること、および、人種差別、民族差別ならびに優越性に基づく理論や慣行に警鐘を鳴らし、

 いわゆる人種間の差異の存在を決定しようとする学説とともに、いかなる人種的優越理論をも強く拒絶し、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いと非難が、すべての人、とくにすべてのレベルの公の当局や政治家によって行われなければ、その永久化を促進する要因となることを認め、

 各国には、すべての被害者の人権と基本的自由を保護・促進する義務があり、各国は、女性が直面する多元的な差別の形態を認めて、ジェンダー観点を採用するべきであり、女性が市民・政治・経済・社会・文化の権利を享受することが世界中の社会の発展に必要であることを再確認し、

 世界のグローバル化の進行が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止の闘いに関して、もたらしている挑戦とチャンスの双方を認め、

 グローバル化とテクノロジーが人びとを一つにまとめるのにかなり貢献している時代に、平等・尊厳・連帯を基礎とした人間家族の観念を実現し、二一世紀を人権の世紀とし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を廃止し、すべての個人と人民にとって機会と取り扱いの真の平等の実現の世紀とすることを決意し、

 人民の平等権と自己決定の原則を再確認し、すべての個人が尊厳と権利において平等に生まれていることを想起し、その平等が最優先事項として保護されなければならないことを強調し、すべての形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を廃止する観点で、迅速で、断固とした、適切な措置をとることが各国の義務であることを認め、

 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容という災難と完全に効果的に優先事項として闘い、世界のすべての部分における人種主義の現象と過去の経験に、再発を回避する観点で学ぶことに専念し、

 普遍的平等、正義、尊厳への新しい政治意思と公約にともに参加して、世界中すべての人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容のすべての被害者の記憶に敬意を表し、われわれは厳粛に「ダーバン宣言と行動計画」を採択する。

                     

 総 論

1 本宣言と行動計画の目的にとって、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者とは、これらの災悪の影響を受け、被り、目標とされている、または目標とされてきた個人または個人の集団であると宣言する。

2 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が、人種、皮膚の色、門地(世系)またはナショナルあるいはエスニックな出身に基づいて発生し、被害者は、性、言語、宗教、政治その他の意見、社会的出身、財産、出生、またはその他の地位などの関連のある理由に基づいて、複合的でいっそう悪化する差別を被ることを認める。

3 第三のミレニアムの初めにあたり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容、および、すべてのそうした憎むべき発展した諸形態や現象に対する世界的な闘いが、国際社会にとって優先事項であり、本会議が、人道を破壊するそれらの悪のすべての局面を、とりわけ、国内、地域、国際レベルで革新的全体的アプローチの導入と、実践的効果的措置の強化・増大を通じて、全体的に廃止する観点で、評価し確定する独自の機会を提供することを、われわれは認め、確認する。

4 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いを続けているアフリカ人民との連帯を表明し、アフリカ人民の犠牲、ならびにこれらの非人間的な悲劇について国際的関心を高めてきたアフリカ人民の努力を認める。

5 連帯、尊重、寛容、多文化主義の価値をとくに重要視し、それらが人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と、世界中、とくにアフリカの人民にあまりにも長い間、影響を与えてきた非人間的な悲劇に対する世界的な闘いに道徳的根拠と示唆を与えることも確認する。

6 すべての人民と個人は、多様性に富んだ、一つの人間家族であることを確認する。すべての人民と個人は、共通の遺産である人道を形づくる文明と文化の前進に貢献してきた。寛容、多元主義、多様性の尊重の保持と促進は、より包括的な社会を創り出すことができる。

7 人間はすべて、自由に、かつ、尊厳と権利において平等に生まれ、その社会の発展と福利に建設的に貢献する能力を有する。いかなる人種的優越の理論も科学的に誤りであり、道義的に非難されるべきであり、社会的に不正義であり、危険であり、人種間の差異の存在を決定しようとする試みとともに、拒絶されねばならない。

8 宗教、精神性、信仰は、多数の女性と男性の人生、その生き方や他者の扱い方において中心的役割を果たすと認める。宗教、精神性、信仰は、人間の固有の尊厳と価値の促進と、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶に貢献することができる。

9 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が、とりわけ、富の不公平な配分、周縁化および社会からの排除によって悪化させられることに懸念をもって留意する。

10 何人も、すべての人権がすべての者に差別なく完全に実現される社会的国際的秩序を保障されることを再確認する。

11 グローバル化の過程が、すべての諸国の利益、発展、繁栄に、例外なしに、利用/活用されるべき強力でダイナミックな力となることを留意する。発展途上国が、この中心の挑戦に応じて、特別の困難に直面していることを認める。グローバル化が大きな機会を提供する一方で、現在、その利益は不公正に配分され、そのコストは不公正に配当されている。グローバル化の消極的効果を予防し軽減するべきという決定を表明する。これらの効果は、とりわけ、貧困、低開発、周縁化、社会からの排除、文化支配、経済不均衡を悪化させ、これらが国家内や諸国家間で、人種の境界に沿って発生し、不利な影響をもたらしている。さらに、グローバル化の利益を、とりわけ、貿易、経済成長、維持可能な発展、新しいテクノロジーの利用によるグローバルなコミュニケーション、文化的多様性の保護と促進による知識の交換の増大についての機会均等を増加させる国際協調の強化と増進によって最大限にするという決定を表明する。それが人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶に寄与しうる。共通の人道とそのすべての多様性に基づいて未来が配分されるようにする広範で継続的な努力を通じてのみ、グローバル化は、完全に包容的で公平となりうる。

12 グローバル化の結果として、とくに南から北への、領域内外の移住が増加していることを認め、移住についての政策は人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づいてはならないことを強調する。

人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の源泉、原因、形態、現代的現象

13 大西洋越え奴隷取引などの奴隷制度と奴隷取引は、その耐え難い野蛮のゆえにだけではなく、その大きさ、組織された性質、とりわけ被害者の本質の否定ゆえに、人類史のすさまじい悲劇であった。奴隷制と奴隷取引は人道に対する罪であり、とりわけ大西洋越え奴隷取引はつねに人道に対する罪であったし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の主要な源泉である。アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は、これらの行為の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けている。

14 植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である。

15 国際法の用語におけるアパルトヘイトとジェノサイドは人道に対する罪であり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の主要な源泉と現象であることを認め、これらの行為によって語られざる悪事と苦痛が引き起こされ、それが起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は予防されねばならないことを確認する。

16 とくに移住者、難民、難民申請者など国民でない者に対する外国人排斥が、現代の人種主義の主要な源泉の一つであり、この集団構成員に対する人権侵害が差別、外国人排斥および人種主義の慣行の文脈で広く発生していることを認める。

17 若者や被害を受けやすい集団がさらされるかもしれない人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の新しい現象に特別な注意を払う重要性を留意する。

18 貧困、低開発、周縁化、社会からの排除、経済不均衡は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と密接に結びついており、さらなる貧困を次々に生じさせる人種主義的態度と慣行の存続に貢献することを強調する。

19 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の経済・社会・文化への否定的帰結は、発展途上国とりわけアフリカの低開発に著しく貢献したことを認識し、一〇億以上の彼ら/彼女らが今日も受けている極度の貧困というみじめで非人間的な状況から男性・女性・子どもを解放し、すべての者のために発展させる権利を現実のものとし、人間全体を欠乏から解放することを決意する。

20 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が武力紛争の根源の一つであり、武力紛争の帰結として生じることが非常に多いことを認め、非差別が国際人道法の基本原理であることを想起する。武力紛争のすべての当事者に、この原理を誠実に遵守し、各国および国際社会に、武力紛争の間にはとくに用心深くし、すべての形態の人種差別と闘い続ける必要を強調する。

21 他の原因もあるにしても、社会経済の発展が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から生じるものを含む人権の重大侵害や、民主的・包括的・参加的統治の欠如に由来する国内紛争の広がりによって妨害されることに深い懸念を表明する。

22 住民が多民族・多文化・多言語であるのに、政治制度・法制度がそれに対応していない国家があり、中には継続して今日もなおそうである国家があり、多くの場合、先住民族を排除した差別の主要因となっていることに深い懸念を表明する。

23 先住民族の権利は各国の主権と領土の統合の原理と矛盾しないことを完全に認め、それゆえ、適用可能な国際文書から引き出されるものを含む、適切な憲法、行政、立法、司法上の措置が採用される必要を強調する。

24 世界会議の宣言と行動計画で用いられる「先住民族」という用語は、とくにその問題を扱う文章に関して進行中の国際交渉の文脈で用いられるのであり、その交渉の結果を待たずに判断できない。また、国際法のもとでの権利を含意するものと解釈することはできない。

25 いくつかの諸国における刑罰制度の機能や、法の適用、法執行に責任のある機関や個人の行為や態度に存続している人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に強く拒否を表明する。拘禁・収容されている人びとから多く申し立てられているように一定の集団に影響を与えている場合、とくにそうである。

26 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容によって被害を受けた個人や集団の人権と基本的自由の侵害についての不処罰を終わらせる必要を確認する。

27 人種主義が根拠を得ている事実のほかに、人種主義・外国人排斥の現代的形態と現象が、ある種の政党や政治機関の綱領、人種的優越の観念に基づく見解の現代的コミュニケーション・テクノロジーによる散布によるなど、多くの方法で政治・道徳・法的認知を回復しようとしていることに懸念を表明する。

28 人種・ナショナル・エスニックその他の理由により特定可能な集団、集合体、共同体に対する迫害は、国際法のもとで許されず、アパルトヘイトの罪であると普遍的に承認されており、重大人権侵害であり、場合によっては人道に対する罪にあたることを想起する。

29 世界の一部にいまだに奴隷制と奴隷類似慣行が存在している事実を強く非難し、重大人権侵害であるこうした慣行を終わらせるために優先事項として即座に措置をとるよう各国に促す。

30 すべての形態の人身売買、とくに女性と子どもの人身売買を予防し、これと闘い、廃止する緊急の必要を確認し、人身売買の被害者が特別に人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容にさらされていることを認める。

人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者

31 また、とりわけ多くの人びとにとっての教育、雇用、健康、住居、幼児死亡率および平均余命の分野における統計数値は、とくに人種主義、人種差別、外国人排斥および不寛容を含む要因がある場合に、不利な状況を示すことに深い懸念を表明する。

32 アフリカ人民とアフリカ系人民の文化遺産の価値と多様性を認め、彼らがすべてのレベルの意思決定過程に完全に参加できるようにする観点で、社会・経済・政治生活に完全に統合する重要性と必要性を確認する。

33 アフリカ系ディアスポラのいるアメリカ領域その他のすべての地域の諸国にとって、アフリカ系住民の存在、ならびに、その住民による文化・経済・政治・科学への貢献を認めること、彼ら/彼女らに特定の影響を与える人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が存在することを認め、多くの諸国で、とりわけ教育、健康、住居へのアクセスの長期にわたる不平等が、彼ら/彼女らに影響を与える社会経済不均衡の大きな原因であることを認めることが重要であると考える。

34 アフリカ系人民が数世紀にわたって人種主義・人種差別・奴隷化の被害者であり、その権利の多くを歴史によって否定された被害者であることを認め、アフリカ系人民がその尊厳について公正かつ尊重されて扱われるべきであり、いかなる種類の差別にも苦しんではならないと主張する。それゆえ、文化と自己のアイデンティティへの権利、政治・社会、経済・文化生活における自由で平等な条件で参加する権利、自己の欲求と慣習の文脈で発展する権利、自己の組織形態・生活様式・文化・伝統・宗教様式を維持・持続・促進する権利、自己の言語を持続・使用する権利、自己の伝統的知識や文化遺産・芸術遺産の保護への権利、住居が自然に更新されて供給される使用・享受・保存への権利、特別に特徴的なものも含む教育制度・教育課程の設定・実施・発展に積極的に参加する権利、適用できる場合には先祖伝来の居住地への権利が認識されるべきである。

35 世界の多くの地域で、アフリカ人とアフリカ系人民が公私の制度で支配的な社会的偏見と差別の結果としての障害に直面していることを認め、アフリカ人とアフリカ系人民が直面しているあらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止に向けての公約を表明する。

36 世界の多くの地域で、アジア人とアジア系人民が公私の制度で支配的な社会的偏見と差別の結果としての障害に直面していることを認め、アジア人とアジア系人民が直面しているあらゆる形態の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止に向けての公約を表明する。

37 数世紀にわたって人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に直面してきたにもかかわらず、アジア系人民が彼らが居住する諸国の経済・社会・政治・科学・文化生活に貢献してきたし、いまも貢献していることに感謝をもって留意する。

38 国際人権文書に合致していない移住政策を、アジア人やアジア系人民を含む移住者に対するすべての差別政策と慣行を廃止する観点で、見直し、必要な場合には改正するようすべての諸国に呼びかける。

39 先住民族が数世紀にわたって差別の被害者であったことを認め、先住民族が尊厳と権利において自由かつ平等であって、いかなる差別、とくに先住民族の出自とアイデンティティに基づく差別をされてはならないことを確認し、先住民族に影響を与える人種差別、人種主義、外国人排斥および関連のある不寛容の継続を克服する行為の必要が続いていることを強調する。

40 先住民族の文化と遺産の価値と多様性は、社会の発展と文化的多元主義、および社会のすべての局面での完全な参加への先住民族の格別の貢献、とくに先住民族の関心のある問題での貢献が、政治的社会的安定や、先住民族が居住している各国の発展にとって基本的であることを認める。

41 先住民族が人権と基本的自由を完全に実現することが人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止にとって絶対に必要であるという確信を強調する。先住民族が市民・政治・経済・社会・文化的権利を完全かつ平等に享受し、先住民族に特徴的な性質やイニシアティブを尊重されつつ、持続可能な発展のためになるよう促進するという決定をしっかりと確認する。

42 先住民族が自己のアイデンティティを自由に表明し、権利を行使するために、先住民族がすべての形態の差別から自由であり、当然のことながら人権と基本的自由の尊重が伴うことを強調する。先住民族の権利に関する宣言案の交渉において先住民族のために普遍的な認知が保証されるよう努力がなされている。先住民族の権利には以下のものが含まれる。自己の名前で呼ばれる権利、居住する自国の政治・経済・社会・文化的発展に自由かつ平等に参加する権利、自己の組織・生活様式・文化・伝統を持続する権利、自己の言語を持続・使用する権利、居住する地域において自己の経済構造を持続する権利、教育制度・教育プログラムの発展に役割を果たす権利、狩猟・漁業など自己の土地と資源を管理する権利、司法に平等にアクセスする権利。

43 先住民族がその精神的、肉体的、文化的存在の基礎として土地との間にもっている特別の関係を認め、可能であれば、先住民族が国内法で保障されている自己の土地と資源の所有権を保有できるよう各国に促す。

44 国連システムの中に「先住民問題常設フォーラム」を創設して、「先住民族の国際一〇年」とウィーン行動計画の主要目標に具体的表現を与えるという決定を歓迎する。

45 国連が「先住民の人権と基本的自由の状況に関する特別報告者」を任命したことを歓迎し、特別報告者に協力すると公約する。

46 移住者が、出身国でも受け入れ国でも、経済・社会・文化に積極的に貢献することを認める。

47 移住についての自国の法的枠組みと政策を策定して適用する各国の主権を再確認し、各国の政策が適用可能な人権文書・規範・基準に合致するべきであり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容から自由であることを保証するよう立案されるべきであると再確認する。

48 移住者に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の現象と行為、および移住者に適用されるステレオタイプに懸念を留意し、強く非難する。裁判管轄権のもとで移住者の人権を保護する各国の責任を再確認する。移住者を不法行為や暴力行為、とくに人種差別と、個人や集団が人種主義や外国人排斥の動機で行った犯罪から保全・保護する政府の責任を再確認する。移住者が社会で、職場で、公正、正義、公平な取り扱いを受ける必要があることを強調する。

49 移住者が居住している諸国で、移住者に対する人種主義と外国人排斥の現象を廃止するために、移住者とその他の社会構成員との間の調和、寛容、尊重を増大させるのに役立つ条件をつくる意義を強調する。家族がともに暮らすことが統合に積極的な影響を与えることを強調し、各国に家族の再統合を促進するよう強調する。

50 出身国から離れているため、とくに、言語・習慣・文化の差異ゆえに遭遇する困難のため、未登録や不正規の状況にある移住者の帰国に経済的社会的困難・障害があるため、移住者がしばしば陥る被害を受けやすい状況に留意する。

51 雇用、教育や保健等の社会サービス、ならびに司法へのアクセスなどの問題に関連して、移住労働者等の移住者に対する人種差別を廃止する必要性を再確認し、移住者の取り扱いが、国際人権文書に従って、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から自由でなければならないことを再確認する。

52 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が、とりわけ、人びとを難民や難民申請者として自分の出身国から強制排除したり、移動せざるをえなくさせることに関心をもって留意する。

53 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いの努力にもかかわらず、とりわけ、難民や難民申請者、国内避難民に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容のさまざまの形態の事例が継続していることも懸念をもって認める。

54 排除の根源を取り扱い、難民や排除された者のための永続的な解決、とくに、安全かつ尊厳をもった出身国への任意の帰還、ならびに、適切かつ可能な場合には、第三国への定住とその地への統合による解決を見いだす緊急性を強調する。

55 難民、難民申請者、帰還者、国内避難民の保護に関連する人道的義務を尊重し実行する公約を確認し、この点で、難民の保護のために責任を共有する国際連帯、負担共有、国際協力の重要性を留意し、難民の地位に関する一九五一年条約および一九六七年の議定書が、国際的難民機関の創設を求めていることを再確認し、当事国がこれらを完全に適用することの重要性を認める。

56 複合的な民族・人種の出身のメスティーソ人民が多くの諸国に存在し、その社会における寛容と尊重の促進にとって彼らの存在が貴重な貢献をしていることを認め、とくにその陰湿な性質のために差別が存在することを否定されがちであるので、メスティーソに対する差別を非難する。

57 人類史が重大人権侵害の結果としての多くの残虐行為に満ちていることを自覚し、歴史を記憶することによって将来の悲劇を防ぐことを教訓として学ぶことができると信じる。

58 ホロコーストは決して忘れてはならないことを想起する。

59 世界のさまざまな部分で、一定の宗教的共同体に対する宗教的不寛容、ならびに宗教的信仰や人種的またはエスニックな出身を理由とする宗教的共同体に対する敵対行為と暴力が出現し、彼ら/彼女らの信仰を自由に行う権利が制限されていることを認める。

60 世界各地に、宗教共同体やその構成員に対する宗教的不寛容の存在、とくに自由に信仰を実践する権利の制限、ならびに、宗教的信念、民族、いわゆる人種的出身を理由とした、否定的なステレオタイプの増大、敵対行為、宗教的共同体に対する暴力の出現も深い懸念をもって認める。

61 世界のさまざまの地域で反ユダヤ主義とイスラム排斥が増大し、ならびに、ユダヤ、イスラムおよびアラブのコミュニティに対する人種的および差別的観念に基づく人種主義運動や暴力的運動が出現していることを深い懸念をもって認める。

62 人類史が、人間の平等の尊重の欠如を通じて加えられた恐るべき犯罪に満ちていることを自覚し、世界のさまざまの地域でこうした慣行が増大していることに驚きをもって留意し、とくに紛争状況にある人びとに人種主義的煽動、軽蔑的な言葉、否定的なステレオタイプを思いとどまるように求める。

63 外国占領のもとにいるパレスチナ人民の窮状に懸念をもつ。パレスチナ人民の自己決定と独立国家の建設の奪うことのできない権利を認める。イスラエルを含むその地域のすべての国家の安全への権利を認め、すべての国家に和平のプロセスを支援し、早期の解決を実現するよう呼びかける。

64 その地域における正当な、包括的、継続的な平和が実現し、すべての人びとが共存し、平等、正義、国際的に認識された人権および安全を享受することを求める。

65 難民が尊厳と安全のうちに任意に自国に帰り財産を取り戻す権利を認め、すべての国家に難民の帰還を促進するよう求める。

66 民族・文化・言語・宗教的マイノリティのアイデンティティが存在する場合、それらは保護を受けなければならず、そうしたマイノリティに属する者は平等に扱われ、いかなる差別もなく人権と基本的自由を享受するべきであることを確認する。

67 他とは異なった文化のアイデンティティをもつ集団の構成員が、民族、宗教、その他の要因、ならびに、伝統や慣習の複合した相互作用から生じた障壁に直面していることを認め、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止を目指した政策と計画が、諸要因の相互作用がもたらす障壁を取り扱うよう保証するよう各国に呼びかける。

68 ロマ/ジプシー/シンティ/トラベラーに対する暴力を含む人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の進行中の現象に深い懸念を寄せ、彼ら/彼女らの完全な平等達成のための効果的な政策と実行メカニズムを発展させる必要を認める。

69 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容が女性と少女にとって差異的な方法で明るみに出て、彼女らの生活条件の悪化、貧困、暴力、多様な形態の差別、彼女らの人権の制限や否定に導く要因となりうることを確信する。多様な形態の差別を扱うために、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に反対する関連の政策、戦略、行動計画にジェンダーの視点を採り入れる必要を認める。

70 女性に対する人種差別、ならびに、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容のために、女性が市民・政治・経済・社会・文化的権利を完全に実現し、享受するのに直面している不利益・障害・困難を、調査し監視するためのよりシステマティックで一貫した方法を発展させる必要を認める。

71 一定の信仰や宗教的マイノリティに属する女性に自分の文化や宗教のアイデンティティを回避させ、正当な表現を制限し、教育と雇用に関して差別する試みがあることを嘆く。

72 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者に、子どもと若者、とくに少女の数が多いことに関心をもって留意し、子どもの最善の利益と子どもの意見の尊重の原則に従って、これらの慣行の被害者である子どもと若者の権利と状況に優先的な関心を払うため、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う計画に特別な措置を盛り込む必要があることを強調する。

73 民族・宗教・言語マイノリティに属する子どもや先住民族である子どもは、個人的にも、自己の集団の他の構成員との共同体においても、自己の文化を享受し、自己の宗教を告白し実践し、自己の言語を使用する権利を否定されてはならないことを認める。

74 子ども労働が貧困、発展の欠如、関連のある社会経済条件に結びついているので、ある場合には、影響を受ける集団の子どもに、生産生活において必要とされる能力を身につけ、経済成長から利益を得る機会を不釣り合いなほどに否定することによって、貧困と人種差別を永続化してしまうことを認める。

75 多くの諸国で、HIV/AIDSの感染者、ならびに感染したと考えられた人びとが、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害を受けやすい集団に属し、保健や医療へのアクセスに消極的な影響と障害を受けていることに深い懸念をもって留意する。

国家、地域、国際レベルで人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶を目指した予防・教育・保護の措置

76 不公平な政治・経済・文化・社会条件は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を育て、それが不平等をますます悪化させることを認める。発展の領域を含むすべての領域ですべての者の真の機会の平等が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止にとって基本であると信じる。

77 人種差別撤廃条約の普遍的な支持と完全な実施が、世界における平等と非差別を促進するのに最も重要であることを確認する。

78 すべての諸国が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の予防と廃止における基本要素としてのすべての人権、発展の権利を含む経済・社会・文化・市民・政治的権利の普遍的尊重、遵守、保護を促進するよう厳粛な公約をすることを再確認する。

79 人種差別を克服し人種平等を達成するのを妨げるのは、主に、政治意思の欠如、立法の弱体、国家による実施戦略と具体的行為の欠如、ならびに人種主義的態度と否定的なステレオタイプの流行であると固く信じる。

80 法律制定や政治・社会・経済政策を含む国際人権規範と義務の教育、発展、誠実な実施が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うのに決定的であることを固く信じる。

81 人民の必要と念願に応じた民主主義、透明性、責任、説明責任、参加統治、および、人権、基本的自由の尊重、および法の支配が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の効果的予防と廃止にとって不可欠であることを認める。人種主義者や外国人排斥の態度に動機づけられた犯罪の不処罰はいかなる形態でも、法の支配と民主主義を弱体化させる役割を果たし、そうした行為の再発を促すことを再確認する。

82 「文明間の対話」が諸文明の間の共通の土俵の確定と促進、すべての人間の生まれながらの尊厳と平等権の認知と促進、正義の基本原理の尊重を実現する過程であり、こうして、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づく文化優越性という考えを拭い去り、人間家族のための調和した世界の建設を助長することができることを確認する。

83 政治指導者と政党が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うのに役割を果たすことができ、またそうするべきである鍵の役割を強調し、政党が連帯、寛容および尊重を促進する措置を講じるよう奨励する。

84 ネオ・ナチ、ネオ・ファシズムおよび人種的偏見や民族的偏見に基づく暴力的な国家主義イデオロギーが存在することを非難し、どのような場合であれどのような条件であれ、このような現象が正当化されてはならないと述べる。

85 人種主義、外国人排斥および人種的優越の理論その他の差別に基づいた政治綱領と組織、ならびに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づいた立法と実務は、民主主義、透明性、責任ある統治と矛盾するものとして非難する。政府の政策によって容認された人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は人権を侵害し、人民の間の友好的関係、諸国の間の協力、国際平和と安全保障を危うくすることを確認する。

86 人種的優越や憎悪に基づくすべての観念の宣伝は、世界人権宣言に体現された諸原則および人種差別撤廃条約第五条に明定された諸権利に照らして、法によって処罰される犯罪であると宣言されるべきであることを想起する。

87 人種差別撤廃条約第四条b項が、人種的優越や憎悪に基づいた観念、暴力行為やそうした行為の煽動を宣伝する組織に対して用心深くし、裁判にかけることを各国の義務としていることに留意する。これらの組織は非難され、阻止されるべきである。

88 メディアは多文化社会の多様性を描写し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うのに役割を果たすべきであると認める。この点で、広告の力に関心を寄せる。

89 一部のメディアが、被害を受けやすい集団と個人、とくに移住者と難民について誤ったイメージとステレオタイプを助長して、公衆の間に外国人排斥や人種主義の感情を広げるのに寄与し、個人や集団の人種主義者による暴力を助長してきたことに残念ながら留意する。

90 とくにメディアと、インターネットを含む新しいテクノロジーによる表現の自由の権利行使、および情報を求め、受け取り、伝達する自由の完全な尊重が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いをするのに積極的な貢献をすることを認める。この点で、メディアの編集の独立性と自律が尊重される必要性を強調する。

91 人間的価値、平等、非差別の尊重や、他者と寛容の尊重とは逆の目的で、人種主義、人種憎悪、外国人排斥、人種差別および関連のある不寛容の宣伝などのためのインターネットなどの新しい情報テクノロジーの利用、および、新しい情報テクノロジーにアクセスするとくに子どもと若者がそれによって否定的な影響を受けていることに深い懸念を表明する。

92 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いに役立てるためのインターネットなどの新しい情報伝達テクノロジーの利用を促進する必要性も認める。新しいテクノロジーは、寛容と人間の尊重、および平等と非差別の原則の促進を支援することができる。

93 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者の声を伝えるコミュニティ・メディアの重要性をすべての国家が認めるべきであることを確認する。

94 公の当局・制度・メディア・政党・国家機関・地方機関の作為・不作為による異なった出身の人びとへの非難は、人種差別行為であるのみならず、人種差別行為の再発を煽動するものであり、それによって人種主義的態度や偏見を増強する悪循環をつくりだす結果になり、非難されねばならないことを再確認する。

95 とくに人権教育における、すべてのレベル、すべての年齢における、家庭内教育を含む教育が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づく態度や行動を変化させ、社会における寛容と多様性の尊重を促進する鍵であることを認める。さらに、こうした教育が正義と平等という民主的価値の促進、宣伝および保護における決定的要素であり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の流布を予防し闘うのに必要であることを再確認する。

96 平等教育、非識字の根絶、すべての者の無償初等教育へのアクセスは、より包容的社会、公平、諸国・人民・集団・個人の間の安定した調和関係と友好、平和の文化に貢献し、相互理解・連帯・社会正義・すべての者のすべての人権の尊重を促進することを認める。

97 教育の権利と人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いの間の結合、および、人権教育や文化的多様性に敏感でこれを尊重する教育、とくに子どもと若者の教育が、すべての形態の不寛容と差別の予防と撤廃に重要な役割を有することを強調する。

国家、地域、国際レベルの効果的な救済、回復、是正、補償その他の措置

98 過去の悲劇を包括的かつ客観的に認識できるようにするために、古代から最近の過去までの人類史の事実と真実を教えること、ならびに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の歴史、原因、性質と結果の事実と真実を教えることの重要性と必要性を強調する。

99 奴隷制、奴隷取引、大西洋越え奴隷取引、アパルトヘイト、植民地主義およびジェノサイドがもたらした大規模な人間の苦痛と無数の男性、女性および子どもたちの苦境を認め、深く残念に思い、過去の悲劇の犠牲者の記憶に敬意を捧げ、それらがいつどこで起きたものであれ、それらが非難されねばならず、再発が予防されねばならないことを確認するよう関連する各国に呼びかける。これらの慣行や組織が、政治的、社会経済的、文化的に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらしてきたことを残念に思う。

100 奴隷制、奴隷取引、大西洋越え奴隷取引、アパルトヘイト、ジェノサイドおよび過去の悲劇の結果として無数の男性、女性および子どもたちに加えられた語られざる苦痛と害悪を認め、深く残念に思う。さらに、犯された重大かつ大規模侵害について進んで謝罪をしてきた国家や、適切な場合には、補償を支払った国家があることに留意する。

101 歴史の暗い章を閉じて、和解と癒しの手段として、国際社会とその構成員がこれらの悲劇の犠牲者の記憶に敬意を捧げるよう勧める。さらに、進んで、残念に思う、遺憾の意を表明する、または謝罪を表明するとしてきた国家があることに留意し、被害者の尊厳を回復しようとしていないすべての諸国に、そのための適切な方法を見いだすよう呼びかけ、それを行った諸国に感謝する。

102 関連するすべての国家に道義的義務のあることを認め、それらの慣行の結果が継続しているのを停止し、逆転させるために適切で効果的な措置を講じるよう呼びかける。

103 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の過去と現代的形態の結果が、世界の平和と安全、世界の多くの人民、とくにアフリカ人、アフリカ系人民、アジア系人民および先住民族の人間の尊厳、人権と基本的自由の実現にとって重大な挑戦となっていることを認める。

104 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容により引き起こされた人権侵害の犠牲者が、社会的、文化的、経済的に被害を受けやすい状況に照らして、そうた差別の結果として受けた損害について公正で十分な補償や満足を求める権利を含めて、適切な場合の法律扶助、そして効果的かつ適切な保護や救済を含む司法へのアクセスをもつことを、多くの国際人権文書と地域人権文書、なかでも世界人権宣言と人種差別撤廃条約に示されているように、保証されるべきことを強く再確認する。

105 「ミレニアム宣言」で提示された諸原則、および、われわれには人間の尊厳、平等、公平の諸原則を支持し、グローバル化が世界の人民すべての肯定的な力となるよう確保する集団的責任があることの承認に従って、国際社会は、発展途上国をグローバル経済に有利に統合し、その周縁化を抑止し、経済成長と持続可能な発展を促進し、貧困、不平等および損失を根絶することにみずから関与する。

106 いつどこで起きたものであれ、過去の犯罪や悪事を想起し、人種主義的悲劇を明白に非難し、歴史の真実を語ることが、国際的な和解、ならびに、正義、平等および連帯に基づく社会の創造にとって必須の要素であることを強調する。

人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いにおける国際協力、および国連その他の国際メカニズムの拡大を含めた効果的な平等を達成するための戦略

107 国家、地域および国際レベルで戦略、計画、政策、および、特別な積極的措置を含む適切な立法を立案し、促進し、履行し、平等な社会発展を進め、政治・司法・行政制度へのより効果的なアクセスを通じて人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者すべての市民・政治・経済・社会・文化的権利を実現し、ならびに、司法への効果的なアクセスを促進し、発展、科学および技術の利便性が、差別なしに、すべての者の生活の平等の改善に効果的となることを保証する必要を強調する。

108 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者が社会に完全に統合されることを促進するために特別な措置や積極的な行為が必要であることを認める。社会的措置などの効果的な行為のための手段は、社会のすべてのセクターのすべての人種、文化、言語、宗教集団の平等の参加を奨励し、すべての者に平等の基礎を提供するための権利の享受と特別な措置の導入を損なうような状況を是正することを目的とするべきである。それらの措置には、教育制度、住居、政党、議会、雇用、とりわけ司法、警察、軍隊その他の社会サービスにおいて、適切な代表を達成する措置が含まれるべきであり、選挙制度改革、土地改革および平等参加のためのキャンペーンが含まれる場合もある。

109 以下のことを促進する国際協調の重要性を想起する。(a)人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘い、(b)これらの慣行を禁止した国際条約と国際文書の各国による効果的な実施、(c)この点に関する国際憲章の目的、(d)一九九二年にリオデジャネイロで開催された「国連環境会議」、一九九三年にウィーンで開催された「世界人権会議」、一九九四年にカイロで開催された「人口と発展国際会議」、一九九五年にコペンハーゲンで開催された「社会発展のための世界サミット」、一九九五年に北京で開催された「第四回世界女性会議」、一九九六年にイスタンブールで開催された「国連人間居住会議(ハビタット)」、一九九六年にローマで開催された「世界食糧サミット」で設定された目標の達成。そして、これらの目標が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者すべてを公平に包み込むことを確保すること。

110 世界中の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いにおける諸国家、関連国際機関、地域機関、国際金融機関、NGO、諸個人の間の協力の重要性、および、その闘いの成功にはこれらの差別の被害者の不満、意見および要求をとくに考慮する必要があることを認める。

111 世界のさまざまな地域の難民と避難民への財政援助などの国際的対応と政策は、その難民や避難民の人種、皮膚の色、門地(世系)、ナショナルまたはエスニックな出身に基づく差別に基礎を置くものであってはならないことを強調し、この点では、国際社会に、出身国、とりわけ発展途上や移行期にある受け入れ国に公平な基礎で適切な援助を提供するよう求める。

112 一九九三年一二月二〇日の国連総会決議48/134に附属した「人権の促進と保護のための国家機関の地位に関する諸原則」に合致する独立の国内人権機関、および、オンブズマン制度などの人権の促進と保護のために法によって設立されたその他の関連特別機関が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対する闘いにおいて、ならびに、民主主義的価値と法の支配の促進のために、重要であることを認める。適切であれば、そうした機関を設立するよう各国に奨励し、促進、保護および予防の任務に取り組んでいる諸国の政府や社会一般に、これらの機関の独立性を尊重しつつ、可能なかぎり協力するよう呼びかける。

113 国内人権機関の地域連合などの関連地域機関が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いに重要な役割を果たしうること、これらの機関が地域レベルで不寛容と差別を監視し意識を高めるのに果たしうる鍵の役割を認め、これらの機関が存在する場合にはこれを支援し、これらの機関の設立を奨励することを再確認する。

114 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容との闘いにおいて、議会には、適切な立法を行い、その実施を監督し、必要な財政資源を配分する最高の役割があることを認める。

115 訓練と発展計画の立案と実施における関連社会パートナーとその他のNGOの重要性を強調する。

116 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対する闘いにおいて、市民社会がもつ基本的役割を認める。それはとくに、国家がこれらの形態の差別に対する措置と活動、フォローアップを行うために規則や方策を策定することを援助することである。

117 社会における異なった集団の間の尊重と信頼を大きく促進することが、政府組織・政治指導者・草の根組織・市民が共有する責任、しかし、それぞれ異なった責任でなければならないことを認める。市民社会は、公益を促進すること、とくに人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うことで重要な役割を果たすことを強調する。

118 人権教育を促進し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容についての認識を高めるのにNGOが果たす触媒としての役割を歓迎する。NGOは、その国別の経験、地域の経験および国際的経験に基づいて、国連の関連機関においてこうした問題についての認識を高めるのにも重要な役割を果たすことができる。NGOが直面している困難を心にとめて、人権NGO、とくに人種主義に反対するNGOが、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うのに効果的な機能を果たすのに助けとなるような雰囲気を醸成することを、われわれは引き受ける。人種主義に反対するNGOなどの人権NGOが世界の多くの地域において不安定な状況にあることを認める。われわれの国際的義務を実行し、およびNGOの効果的な機能に対する不法な障壁を取り除くという公約を表明する。

119 本世界会議のフォローアップへのNGOの完全な参加を奨励する。

120 国際的および国内的な情報交換と対話、および若者の間のグローバル・ネットワークの発展が、文化間の理解と尊重を構築するのに重要かつ基本的要素であり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の廃止に役立つであろうと認める。

121 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うための、前向きの国家戦略、地域戦略および国際戦略の発展と政策に若者を参画させることの有用性を強調する。

122 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の全体的廃止のためのわれわれのグローバルな運動が着手され、行動計画に含まれた諸勧告が連帯と国際協調の精神で果たされ、国連憲章および関連する国際文書の目的と原則によって奨励されることを確認する。これらの勧告は、過去、現在および未来を考慮して、建設的かつ前向きのアプローチでなされるものである。これらの戦略、政策、計画および行動の策定と実現は、効果的かつ迅速に実現されるべきであり、国家レベル、地域レベルおよび国際的レベルの市民社会の完全な関与のもとに、すべての国家の責任であることを認める。

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韓国併合100年

  8月22日、日本による韓国併合から100年を迎えた。韓国紙の中央日報は、韓日国民意識調査を行い、その結果を公表している。そこで、日韓の人々のこの問題に関する意識の違いが大きく出ている。

 日本人の4パーセントが韓国併合を「良かった」と答え、「悪い点もあるが良い点もあった」が60パーセントと答えている。このことは、この間の、歴史教科書を考える会や自由主義史観研究会、その他の保守派や右派のイデオロギーがかなり浸透していることを示している。後者の「悪い点もあるが良い点もあった」というのは、一種の相対主義的理解、是々非々的な俗論的態度である。それは、歴史理解そのものを避けている態度であって、基本的態度として、帝国主義批判を欠いているということである。基本はどっちなのかということを判断していないで、部分的現象をもって、歴史や物事を判断しているのである。ここからどちらに振れるかわからないというところに立っているのだ。

 アメリカは、この間、イラクでの戦争やアフガニスタンへの戦争を、解放戦争と言い募り、侵略戦争と認めていない。しかし、事実は、侵略戦争である。この戦争の性格は、事態の動きの中で変化したのだが、現時点で見れば、明らかに侵略戦争である。一時期のアメリカ人の多くがそうだったように、政府や右派イデオローグの宣伝に引っかかったら、侵略戦争に加担させられていき、そして、国際的な人々の絆は悪い方向に行かざるを得ない。それは多くの人々に不幸をもたらすことは明らかだ。だから、韓国併合を「良かった」と価値判断するのはもちろんだが、「悪い点もあるが良い点もあった」とする相対主義的な価値判断に陥るというのは、「良い」ことではない。

 韓国併合は「悪かった」というのが基本であり、いくら当時の親日派なるものを持ち出したところで、その基本は変わらないのである。別の道もあり得たのだ。そして、このような日本人の歴史認識の有様を、一部を除いた政府上層が望んでおり、利用しようとしているということを見逃してはならないのである。

 

 【韓日国民意識調査】韓国を訪問した日本人ほど「強制併合は悪かった」(8月23日 中央日報)

   日本の天皇が韓日両国の友好と理解増進のために1-2年以内に韓国を訪問することについては、韓国(58%)・日本(48%)ともに多数が賛成した。反対は韓国で23.1%、日本で28%だった。特に韓国の10-20歳代は65%が賛成した。

  未来志向的な関係を構築する案については差があった。韓国では「歴史教科書の共同制作」(34.6%)が最も多く、過去の問題を最大の障害と考えている。次いで「相互文化理解」(21.7%)、「経済協力の強化」(17.4%)などだった。

  しかし日本では「歴史教科書の共同制作」(14%)が少ない一方、「相互文化理解」(28%)、「経済協力の強化」(19%)、「民間交流の拡大」(16%)などが多く、交流と協力を重視していることが分かった。

  民間人の交流拡大は関係改善に大きく寄与していることが明らかになった。日本を訪問した韓国人は訪問していない人に比べ、多くの人が日本に対して「良い感情」を抱いていた。韓国を訪問した日本人は訪問していない人に比べ、「韓日強制併合は悪かった」「韓日関係は良い」と考える人が多かった。

  相手国を訪問した経験がある人のうち、韓国では77.5%、日本では53%がまた訪問することを望んでおり、交流がさらに活発になると期待される。

  訪問経験がない人のうち、韓国では49.9%、日本では41%が訪問を計画していることが分かった。

 

 【韓日国民意識調査】日本人60%「強制併合、良い点もあった」

   日本の韓国強制併合に対する評価では、両国国民の間で見解の違いが大きかった。

  韓国では「悪かった」(78.9%)という回答が圧倒的に多く、「悪い点もあるが良い点もあった」(16.3%)は少なかった。「良かった」という回答はなかった。

  しかし日本では「悪かった」(20%)が少なく、「悪い点もあるが良い点もあった」(60%)が多かった。「良かった」という評価も4%だった。

  植民地支配に対する日本の謝罪についても、韓国では「謝罪が不十分または謝罪をしていない」(82.4%)が、「十分に、または一定部分で謝罪した」(12.7%)を大きく上回った。

  一方、日本では「謝罪した」(47%)が「謝罪していない」(15%)に比べてはるかに多かった。

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「高校無償化」からの朝鮮学校排除問題

  「天安」艦撃沈事件以来、国連を舞台にした「共和国」非難決議云々の外交問題や米韓合同演習、アメリカによる経済制裁強化など、朝鮮半島をめぐる情勢が緊迫している。

 「天安」艦撃沈事件については、国際調査団の見解では、「共和国」軍による撃沈説は否定され、水深の浅い海域での航行中に、スクリューに網のようなものが絡まり、漂流する形で深い海の方に流され、その際に機雷に触れた可能性があるということになる。国際的には両説が合わせて報道されているようで、日本のメディアだけが「共和国」軍による魚雷攻撃説一色になっているようだ。

 こうした中で、「高校無償化」からの朝鮮学校排除について、今月中に文科省が結論を出すという報道がなされた。この問題は、鳩山前首相が、民主党政権の目玉政策の子育て支援策の一部としての高校無償化措置から朝鮮学校を含めるかどうかの判断延期を決めたことから始まった。以来、危機感を強める朝鮮学校に子供を通わす親たちなどが、署名や集会などを通じて、それから朝鮮学校を排除しないように訴えてきた。鳩山前首相自身が判断根拠を示せなかったのだが、歴史的に見ても国際法的に見ても朝鮮学校を排除する理由は見当たらない。

 しかし、与党民主党内にも、かつて形成された「朝鮮学校は金正日朝鮮労働党総書記の肖像を学長室に掲げて政治思想教育を行っている」というイメージをそのまま国会質問で繰り返している右派議員がいて、とくに「拉致事件」発覚以降、右派の猛烈な宣伝によって広められた「共和国」イメージをそのまま厳密な検証抜きに、とにかく「共和国」敵視政策の方向に政権をもっていこうと画策している。生きて帰った「拉致」被害者たちを、同じ日本人という理由で民族的感情を煽り立てて同情を拡大しようとし、そして、今思えば怪しげな写真やら噂やら証言者やらを次々と登場させた。また、ペテン師、詐欺師まがいの者がSFのような話を広めたのであった。そのバブルはとっくに崩壊しているが、それにも関わらず、マスコミ全体のスタンスは固定化し、その言説はステレオタイプ化してしまっている。

 こうした宣伝空間の中では、いい加減事実が欲しいと人々は思うだろう。「4月時点での適用は見送ったが、政務三役は「無償化は純粋に教育制度として考えるべきで、朝鮮学校の教育内容を検証して改めて判断する」というのは当然である。また、国際法の国際人権条約で民族自決権の原則が定められていることから、このような差別的扱いをした場合、国際的な批判を受ける可能性がある。

 とにかく、この問題は民族自決権に含まれる国内少数民族に民族教育の権利を認めるということを戦後一貫して日本政府が拒んできたことに根があって、それに時々の朝鮮半島情勢などが絡んできて政治問題化させられてきたのである。

 基本的な問題は在日朝鮮人に民族自決権を認めるか認めないかという点にある。

朝鮮学校も無償化へ調整 文科省方針、政権内になお異論

2010年8月4日asahi

 今年度始まった「高校無償化」制度をめぐり、文部科学省は、全国の朝鮮学校の除外措置を解除する方向で最終調整に入った。文科省は教育の専門家による会議を設置して制度適用の可否を議論してきたが、「日本の高校に類する教育をしており、区別することなく助成すべきだ」との判断を固めたという。

 文科省は月内にも会議の検討結果を公表する予定で、4月にさかのぼって適用し、私立高生と同じく年約12万円、低所得層は倍の約24万円を上限に助成したい考えだ。ただし、朝鮮学校への適用は、中井洽・拉致問題担当相の反対論などでいったん見送られた経緯がある。今回も首相官邸には「政府全体でどう判断するかは別問題」と党内情勢を見極めた上で最終判断すべきだとの声が上がっている。

 高校無償化は昨夏の総選挙での民主党マニフェストの柱で、「幅広く高校段階の学びを支援すべきだ」という考え方に立っている。文科省は一般の高校や他の外国人学校と同様、全国に10校ある朝鮮学校の高校段階(高級学校)の生徒約1900人にも適用する前提で予算を組んでいた。

 反対論を受け、4月時点での適用は見送ったが、政務三役は「無償化は純粋に教育制度として考えるべきで、朝鮮学校の教育内容を検証して改めて判断する」として5月に専門家による会議を設置。学校制度や教員養成の専門家、大学の学長経験者ら6人の委員を集めて議論してきた。

 会議は委員名や日程などすべてが非公開で進められているが、関係者によると、事務局の文科省職員がすべての朝鮮学校を訪ね、カリキュラムや教科書などに関する資料の提供を受けた。授業風景や施設などもビデオで撮影し、検証材料にしたという。

 会議では「朝鮮学校は社会に向けてさらに情報をオープンにすべきだ」との意見が出たといい、文科省は制度適用に合わせ、カリキュラムや財務情報、学校法人の役員名など一般の高校並みの情報開示を求める方向で検討している。仮に今回も適用方針に異論が出た場合は、文科省の政務三役は「専門家が検証した結論だ」として反論するとみられる。(青池学)

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