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「高校無償化」からの朝鮮学校排除問題

  「天安」艦撃沈事件以来、国連を舞台にした「共和国」非難決議云々の外交問題や米韓合同演習、アメリカによる経済制裁強化など、朝鮮半島をめぐる情勢が緊迫している。

 「天安」艦撃沈事件については、国際調査団の見解では、「共和国」軍による撃沈説は否定され、水深の浅い海域での航行中に、スクリューに網のようなものが絡まり、漂流する形で深い海の方に流され、その際に機雷に触れた可能性があるということになる。国際的には両説が合わせて報道されているようで、日本のメディアだけが「共和国」軍による魚雷攻撃説一色になっているようだ。

 こうした中で、「高校無償化」からの朝鮮学校排除について、今月中に文科省が結論を出すという報道がなされた。この問題は、鳩山前首相が、民主党政権の目玉政策の子育て支援策の一部としての高校無償化措置から朝鮮学校を含めるかどうかの判断延期を決めたことから始まった。以来、危機感を強める朝鮮学校に子供を通わす親たちなどが、署名や集会などを通じて、それから朝鮮学校を排除しないように訴えてきた。鳩山前首相自身が判断根拠を示せなかったのだが、歴史的に見ても国際法的に見ても朝鮮学校を排除する理由は見当たらない。

 しかし、与党民主党内にも、かつて形成された「朝鮮学校は金正日朝鮮労働党総書記の肖像を学長室に掲げて政治思想教育を行っている」というイメージをそのまま国会質問で繰り返している右派議員がいて、とくに「拉致事件」発覚以降、右派の猛烈な宣伝によって広められた「共和国」イメージをそのまま厳密な検証抜きに、とにかく「共和国」敵視政策の方向に政権をもっていこうと画策している。生きて帰った「拉致」被害者たちを、同じ日本人という理由で民族的感情を煽り立てて同情を拡大しようとし、そして、今思えば怪しげな写真やら噂やら証言者やらを次々と登場させた。また、ペテン師、詐欺師まがいの者がSFのような話を広めたのであった。そのバブルはとっくに崩壊しているが、それにも関わらず、マスコミ全体のスタンスは固定化し、その言説はステレオタイプ化してしまっている。

 こうした宣伝空間の中では、いい加減事実が欲しいと人々は思うだろう。「4月時点での適用は見送ったが、政務三役は「無償化は純粋に教育制度として考えるべきで、朝鮮学校の教育内容を検証して改めて判断する」というのは当然である。また、国際法の国際人権条約で民族自決権の原則が定められていることから、このような差別的扱いをした場合、国際的な批判を受ける可能性がある。

 とにかく、この問題は民族自決権に含まれる国内少数民族に民族教育の権利を認めるということを戦後一貫して日本政府が拒んできたことに根があって、それに時々の朝鮮半島情勢などが絡んできて政治問題化させられてきたのである。

 基本的な問題は在日朝鮮人に民族自決権を認めるか認めないかという点にある。

朝鮮学校も無償化へ調整 文科省方針、政権内になお異論

2010年8月4日asahi

 今年度始まった「高校無償化」制度をめぐり、文部科学省は、全国の朝鮮学校の除外措置を解除する方向で最終調整に入った。文科省は教育の専門家による会議を設置して制度適用の可否を議論してきたが、「日本の高校に類する教育をしており、区別することなく助成すべきだ」との判断を固めたという。

 文科省は月内にも会議の検討結果を公表する予定で、4月にさかのぼって適用し、私立高生と同じく年約12万円、低所得層は倍の約24万円を上限に助成したい考えだ。ただし、朝鮮学校への適用は、中井洽・拉致問題担当相の反対論などでいったん見送られた経緯がある。今回も首相官邸には「政府全体でどう判断するかは別問題」と党内情勢を見極めた上で最終判断すべきだとの声が上がっている。

 高校無償化は昨夏の総選挙での民主党マニフェストの柱で、「幅広く高校段階の学びを支援すべきだ」という考え方に立っている。文科省は一般の高校や他の外国人学校と同様、全国に10校ある朝鮮学校の高校段階(高級学校)の生徒約1900人にも適用する前提で予算を組んでいた。

 反対論を受け、4月時点での適用は見送ったが、政務三役は「無償化は純粋に教育制度として考えるべきで、朝鮮学校の教育内容を検証して改めて判断する」として5月に専門家による会議を設置。学校制度や教員養成の専門家、大学の学長経験者ら6人の委員を集めて議論してきた。

 会議は委員名や日程などすべてが非公開で進められているが、関係者によると、事務局の文科省職員がすべての朝鮮学校を訪ね、カリキュラムや教科書などに関する資料の提供を受けた。授業風景や施設などもビデオで撮影し、検証材料にしたという。

 会議では「朝鮮学校は社会に向けてさらに情報をオープンにすべきだ」との意見が出たといい、文科省は制度適用に合わせ、カリキュラムや財務情報、学校法人の役員名など一般の高校並みの情報開示を求める方向で検討している。仮に今回も適用方針に異論が出た場合は、文科省の政務三役は「専門家が検証した結論だ」として反論するとみられる。(青池学)

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