« 新年のご挨拶 | トップページ | タイとカンボジアの軍事衝突 »

経済記事1題

 今年の経済を占う上で、以下の記事はポイントになるだろう。

 とっくにわかっていたことだが、中国は昨年も高成長を続け、ついに、名目GDPで日本を抜いて、世界2位になった。

 以下の記事にある金のネックレスのエピソードは、1980年代後半以来のバブル時代の日本であってもおかしくないような話だ。

 中国もこの調子でバブルに入っていくのか、あるいはすでにバブルなのか。問題は、記事にあるような高成長の中で拡大している撹乱や矛盾の調整がどうなるかである。中国政府は、政策的にそれをうまく収めることができると考えているようだが、それは甘くはないか。

 いずれにしても、中国経済の行方が世界経済のカギを握ることの持つ重みは非常に大きくなっているのである。もちろん、日本にとっても。

 中国:GDP2位 内需主導へ道半ば インフレ・所得格差、成長維持に課題

 <分析>

 中国が20日発表した2010年の国内総生産(GDP)は3年ぶりの2ケタ成長で、経済の好調ぶりを示した。名目GDPは約5・88兆ドル(米ドル換算)と、日本を抜き米国に次ぐ世界2位の座を確定的にした。「世界の工場」と言われる輸出依存型の成長から「巨大消費市場」としての内需主導型の成長へ変わろうとする中国。しかし、足元ではインフレ懸念が広がり、成長持続へ向けた中国政府の手綱さばきは難しさを増す。一方、43年ぶりに「GDP世界3位」に転落する日本は内需低迷で、中国経済への依存度を高めている。

 「金のネックレスが開店3時間で完売。昨年の大みそかから今年の元日未明の営業で5億5600万元(約69億円)を売り上げた」。上海市内の百貨店「浦東第一八佰伴(ヤオハン)」の恒例の年越しセール。前年より3割以上多い約28万人の客が押し寄せ、衣料品や宝飾品を買い込んだ。

 安い労賃で外資に生産拠点を提供。「世界の工場」として輸出で稼ぐ途上国型成長モデルから、国民所得を向上させて先進国型の「消費大国」に変わろうとする中国の姿を映す。しかし、中国の「1人当たりGDP」が日本の約10分の1にとどまることに象徴されるように、都市部の富裕層と農村部の低所得層の貧富の差はなお深刻で、消費大国への歩みは一様ではない。

 さらに、足元ではコメや野菜など食品を中心とする物価急上昇が「消費大国」の主役の中間所得層を圧迫。バブルが指摘される住宅価格高止まりとともに、食・住への出費拡大が消費意欲に影響し始めている。実際、2月はじめの春節(旧正月)の書き入れ時を前に、小売業者の間では「売れ筋が安値商品にシフトし、今年は高級酒が売れないのでは」(上海の酒販店)と心配する声も上がる。

 実質成長率が10・3%と3年ぶりの2ケタ成長となった10年の中国経済。ただ、中身を見れば、経済対策や上海万博などを背景に前年比23・8%増となった公共工事など固定資産投資や、31・3%増の1兆5779億ドルと過去最高を更新した輸出が高成長を支えた。

 購入補助を追い風に新車販売が32・4%増の1806万台と2年連続の世界一となるなど消費も伸びたが、それでも個人消費がGDPに占める割合は4割弱。米国の7割、日本の5割に比べて小さく、内需主導の成長に転換しきれていない。

 そんな中、物価上昇は最大の懸念材料。国民の不満も高まっており、温家宝首相は今月1~2日、内モンゴル自治区のスーパーなどを視察した際、「中央政府は物価安定に向けた措置をさらに重要な課題として位置づける」とインフレ抑制姿勢を強調した。

 本来なら、食品など輸入物価抑制には人民元の大幅な切り上げが有効だが、それで輸出が落ち込めば、高成長を維持できず、国内の工場の過剰設備問題など急成長のきしみが噴き出しかねない。このため、中国人民銀行は昨年10月以降、2度の利上げを実施。中国共産党と政府は11年の金融政策の基本方針を前年の「適度に緩和」から「穏健(慎重)」へと転換、金融引き締めによるインフレ退治を探る。

 ただ、引き締めが行き過ぎれば、景気を必要以上に冷やすリスクがある。「GDP世界2位浮上」という“栄誉”にも、中国政府が「現実を冷静に見る必要がある」(中国国家統計局の馬建堂局長)と慎重なのは、困難さを増す経済政策運営を意識しているからだ。【山本明彦、北京・成沢健一、上海・鈴木玲子】

 ◇強まる「中国で稼ぐ」-日本

 内需低迷にあえぐ日本の企業は自動車、家電からサービス業まで消費大国化に向かう中国で稼ぐ動きを強めている。中国のマイカーブームは沿岸部から内陸部に広がり、11年の新車市場規模は日本の約4倍の2000万台に拡大すると期待される。日産自動車は「内陸部の需要が増える」と見て、460店の販売店網(昨年末時点)を年内に530店以上に増強。トヨタ自動車やホンダも追随する。

 従来、内需型とされてきたサービス業者も日本市場縮小を受け、中国進出を加速。教育大手のベネッセコーポレーションは、子ども向け学習商品「こどもちゃれんじ」の中国版を06年度から展開し、会員数を10年10月の27万人から18年度には150万人に伸ばす皮算用をはじく。一人っ子政策を取る中国の教育熱は高く、「日本(会員125万人)を逆転しそう」と期待する。

 挙式大手のワタベウェディングも昨年9月、上海に1号店を出店。富裕層の中国人カップルの挙式需要の増加をにらみ、沖縄やサイパンの婚礼施設に中国語を話せるスタッフを常駐させるなど、需要取り込みに躍起だ。

 経済産業省によると、日本企業の海外現地法人の09年度の売上高は米欧で前年割れとなったのに対し、中国事業は3・6%増を記録。10年7~9月期には前年同期比24・7%増と高い伸びを記録した。中国経済の先行きについて、みずほ総研の細川美穂子研究員は「購買力を高められるかが成長力持続のカギ」と指摘する。【井出晋平、米川直己】

|

« 新年のご挨拶 | トップページ | タイとカンボジアの軍事衝突 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 経済記事1題:

« 新年のご挨拶 | トップページ | タイとカンボジアの軍事衝突 »