「悪事は成功の鍵」?
アメリカ資本主義の中枢部、金融資本のセンターのウォール街の金融機関幹部の4人に1人が「悪事は成功の鍵」と考えているという調査結果の記事があったので、なにか書こうと思っていたら、今度は、日本のスズキ自動車のインドの工場で労働者の暴動が起きたという報道があった。
「悪事は成功の鍵」という基準が金融界で、例外ではなく一般的なものになる可能性がある。なぜなら、他が悪事で成功しているのに対してライバルたちは、自分たちも競争によって、悪事によって対抗しなければ自分たちが敗者になってしまうと考える可能性が高いからである。それから、悪事によってしか成功しないということになれば、そのシステムは終わりである。正当性の根拠が失われるからだ。福島第一原発事故は、日本の政府や東電などの無責任さ、モラル崩壊、反社会性が根強く存在していることを浮き彫りにした。電力、重電メーカーはこれまで日本資本主義の基幹産業として財界でも重きをなしてきた大独占企業であるが、それがここまでの大事故を引き起こしながらなお再稼働を求めるというとんでもない無責任なことを言っている。しかし、その背後に、これらの企業に出資している金融資本の利害があるということが明らかになっている。米国流新自由主義という企業の自由を拡大しようというイデオロギーの下で、アメリカの後追いをする日本の金融資本が見習おうとしているのは、「悪事は成功の鍵」と考える者が4分の1もいる米国金融界ということなのだろう。
「金融機関の専門家の間で不正行為が常態化しているのなら、金融システム全体の信頼性もリスクにさらされている」のであり、ギリシャの経済危機がそうだったように、国家規模でもそうした不正が行なわれ、その結果として、経済危機が生じるというのは当然である。つまり、悪事は現体制にとっての偶然事ではなかったのである。
スズキのインド工場での暴動は、労働者の規範問題をめぐる労使交渉が暴動に転化したということのようだが、数週間の労働争議による損失は5億ドル以上になり、株価は8.2%下落したという。言うまでもなく、アメリカの金融界は、この情報に注目し分析して投資戦略を立てていることだろう。その際に、この過程で不正をしてでも「成功」=儲けようとする者が4分の1いるということを想定しなければならない。それに対して、不正をしないで「成功」を目指す者もいることだろう。今のところ、それが4分の3いるということになっている。こうして、インドで起こった労働者の暴動はウォール街の金融資本の悪事による成功への野望の対象となるかもしれないという具合に繋がっているのである。
いずれにしても、「悪事は成功の鍵」なら、「戦争も成功の鍵」と思いだす者がいてもおかしくない。「資本家も馬鹿ではないから自分が損するような戦争はやらない」と言う人があったが、「悪事は成功の鍵」と考える馬鹿が4分の1を占めるウォール街の金融界で、「悪事」で成功する者は利口なのかそれとも馬鹿なのかが判然としなくなっているのは、体制の深い腐敗と末期症状を示していると言えよう。
金融機関幹部の4人に1人、「悪事は成功の鍵」=調査
2012年 07月 10日
[10日 ロイター] ウォール街などで働く金融機関の幹部を対象に法律事務所Labaton Sucharowが行った調査で、悪事や不正行為が成功の鍵と考えている人が全体の約4分の1に上ることが分かった。
同調査は、米国と英国で金融機関の幹部500人を対象に実施。全体の26%が、職場で悪事や不正が行われているのを見聞きしたと回答。金融サービスのプロとして成功するためには、非倫理的または不法な行為も必要だと認める人の割合は24%となった。また、回答者の16%は、罰を受けずに済むならインサイダー取引を行うとしている。
倫理規範や法律を違反させる要因は報酬体系にあるとの回答は約3割に上った。
Labaton Sucharowのジョーダン・トーマス氏は「金融機関の専門家の間で不正行為が常態化しているのなら、金融システム全体の信頼性もリスクにさらされている」としている。
大手金融機関をめぐっては、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作問題で先に英銀バークレイズ(BARC.L: 株価, 企業情報, レポート)が巨額の課徴金を課せられたばかり。この問題については、米シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)や英HSBC(HSBA.L: 株価, 企業情報, レポート)、UBS(UBSN.VX: 株価, 企業情報, レポート)、RBS(RBS.L: 株価, 企業情報, レポート)なども当局の調査を受けるなど、他の金融機関にも広がりを見せている。
印マルチ・スズキの工場で労働者の暴動、生産停止 1人死亡・邦人2人負傷
(2012年07月19日ロイター)
◎暴動で1人死亡・90人以上が負傷=マルチ・スズキ
◎マネサール工場は19日も生産停止
◎インド株式市場のマルチ・スズキ株は一時8.2%急落
[ムンバイ/東京 19日 ロイター] スズキ(7269.T: 株価, ニュース, レポート)のインド子会社であるマルチ・スズキ(MRTI.NS: 株価, 企業情報, レポート)は18日、インド北部のマネサール工場で労働者による暴動が発生し、自動車生産を停止したと明らかにした。
マルチ・スズキによると、同工場では従業員の規律問題をめぐって労組が行っていた抗議行動が暴動に発展し、マネジャーや幹部を含む少なくとも90人が負傷して病院に搬送された。工場の施設も放火された。
広報担当者によると、現在は警察当局が事態の収拾に当たっている。
日本のスズキの広報担当者によると、現地作業員1人が死亡した。このほか、日本人駐在員2人が殴られて負傷し、入院中だが、命に別条はないという。
マルチ・スズキの広報担当者は、暴動が発生したマネサール工場の操業を19日も停止することを明らかにした。
マネサール工場では昨年も労働者による暴動が数週間続き、5億ドル以上の被害を受けた経緯があり、今回も工場閉鎖が続けば、自動車生産が深刻な打撃を受ける可能性がある。
マネサール工場の年産能力は55万台で、マルチの生産全体のおよそ3分の1を占めている。
19日のインド株式市場では、マルチ・スズキの株価が一時8.2%急落した。
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