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宮本常一

 宮本常一の本3冊を読み始める。『民俗学の旅』(講談社学術文庫)、『日本残酷物語Ⅰ』(平凡社)、『聞書 忘れえぬ歳月』(八坂書房)である。『日本残酷物語』は再読である。まず、『民俗学の旅』から読み始めた。

 冒頭から引きこまれ感動するところが多い素晴らしい本だ。自伝的なものだが、その中に、宮本の思想とその形成過程、そして民衆の姿が鮮やかに浮かび上がる。『神聖家族』でマルクスは、批判的批判者たちが、大衆の上にたち、自らにとって都合のいい民衆像を作り上げ、その絵に従って民衆を改造しようと企てたことを批判しているが、それとまったく違った歴史を作る民衆の主体的な生き様、生活が生き生きとつかまれている。それには、祖父・祖母、父・母の影響があり、貧困生活の中での労働や暮らしから形成されたものがある。とりわけ、祖父から物語を聞かされて育ったことは、後の民俗学の調査・研究に活きている。いろいろと心ひかれる話があるが、最初の方では、大阪に行く前に彼の父親が語り聞かせたという話があって、それには自分がこれまでやってきたことといくつか似ているところがあり、不思議な感じがする。しかし、以下の8.のようなところはちょっと意味がわからない。1.のようなところはわかる。東海道線で西に向かうと、関ヶ原を境に瓦屋根ばかりに変わる。

  1.  汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何が植えられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。駅へついたら人の乗りおりに注意せよ、そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。また、駅の荷置場にどういう荷がおかれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。
  2.  村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上がってみよ、そして方向を知り、目立つものを見よ。峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ、そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへはかならずいって見ることだ。高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。
  3.  金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。
  4.  時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。
  5.  金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。
  6.  私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。
  7.  ただし病気になったり、自分で解決のつかないことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。
  8.  これからさきは子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。
  9.  自分でよいと思ったことはやってみよ、それで失敗したからといって、親は責めはしない。
  10.  人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。(『民俗学の旅』講談社学術文庫37~8頁)。

 これは二日で読み終わって、『日本残酷物語Ⅰ』に入っている。並行して、中国の歴史ドラマをいくつか観た。それらは『史記』を元にしているが、『史記』を読むと違っているところもけっこうある。日本の歴史ドラマもそうだが、ナショナリズムを基調にしたものが多い。

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