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インドと近代化

 難民講座でビルマのことをやったが、調べている時に、ビルマがインドとの関係が深いということがわかったので、インドのことが気になったのだが、間に合わず、あまりわからないままだった。そこで、中村元氏『古代インド』(講談社学術文庫)を読んだ。いろいろと勉強にはなったが、中に、資本家という概念がよく出てくるので引っかかって仕方なかった。古代インドに商業資本家がいたというのだが、資本の概念がはっきりせず、商品経済・貨幣経済があるともう商業は資本主義的になっていると思われているようである。『資本論』を読めば、商人と商業資本家の違いがわかるので、これは簡単に直せることである。

 宗教と階級性を結びつけて考えようとするのはいいのだけれど、これでは、古代から資本主義があるということになり、資本主義の歴史的特殊性がわからなくなってしまう。貨幣経済はイコール資本主義ではなく、資本主義の成立には生産過程での変化、とりわけ工場制度の成立が必要である。資本関係、つまり資本―賃労働関係が成立しなければならない。工場制度のない古代に商品経済・貨幣経済の発展があったことをもって、資本家がいて、それが仏教やジャイナ教などの当時の新興宗教・イデオロギーの階級的支持層であったというのである。もちろん、階級性は変わっていき、また、階級階層にあった分派が生まれた。特に労農派系に商品・貨幣経済と資本制経済を同一と見る傾向が強く、なかには『資本論』の最初の商品の部分(とりわけ価値形態論)がわかれば後は読まなくていいという極論をはく人もいて、あきれてしまうこともある。こういうたわけた寝言を真面目に主張する偏った人が生まれるのが専門的学問世界であり、うかつに信用すると痛い目にあうのである。1980年代初頭に、スタグフレーションの昂進から世界経済の破綻と革命情勢の到来を説いた宇野派の経済学者さんがいた。結果は大外れで、日本では竹下バブルが来て、それがはじけると、その後、クリントン政権時代にアメリカが好況となり、アメリカでニュー・エコノミクス派が、アメリカ経済(資本主義経済)の永久繁栄を謳いあげた。それも大外れした。それも学問世界では大目に見られて、出世しなすったのだが、今ではすっかりそんなことも口にしなくなったようである。

 21世紀に入ると、アメリカ発で世界不況に突入する。マルクス経済学と近代経済学のどっちも大外れである。だから、どちらでもないという時に、マルクス主義からその自己批判と自己変革を通じて、再生するというのが、課題となっている。近代経済学ではそれは不可能である。かれらがまっすぐに自画像を描くことはできないのは最初から明らかであるからである。例えば、かれらは人間の欲望は計算可能であるというありえない幻想を前提にしている。

 カーストの制度を打破しようとする運動は、後世に仏教徒などによって盛んに唱導された。しかしついに、インド社会機構の根幹を変革することができなかった。イギリス帝国もカースト制の改革には手をつけようとしなかった。カーストはそれほどねづよく、インドの土に密着している制度であるといえよう。そうして、これを打ち破りつつあるものは、インド産業の近代的な機械化にほかならない(80頁)。

 これに対して、インドの工場の現実は以下のようだという。

 たとえば、二十世紀になってからでも、インドの工場では同一カーストの者のみが寝所をともにする。工場では手洗水をカーストごとに別々の容器に用意しなければならない。工員たちは労働者であるという意識よりも、カースト所属員としての意識のほうが強いから、彼らは団結してストライキを起こすことが少ない。これは資本家にとってはなはだ有利な点であるといわれている。かつて大都市において共同食堂を儲けようとしたところが、カースト別にせよというという反対論が起こったほどである(78頁)。

 カースト制度をもっぱら農村の封建的制度とみて、それに対して資本主義的近代化をその解体力とみて、近代化バンザイと資本主義的近代主義に白旗を振っているようにしか見えない。こういう態度は、マルクス・エンゲルス・レーニンの態度は全く違う。近代化すればなんでも解決していくかのような、講座派、労農派に共通する民主主義万能的な超楽天主義にはあきれ果てているし、とっくの昔に縁を切っている。これらを止揚するのが課題だと考えている。

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